映画の殿 第77号 韓国ドラマ編 part26

20251019 top
【今回もROCKHURRAHが表紙を作成してくれたよ!感謝!】

SNAKEPIPE WROTE:

今回の「映画の殿」は韓国ドラマ編にしてみよう。
前回書いた「トンイ編」より前に鑑賞しているドラマもあって、少し内容を忘れているよ。
SNAKEPIPEの備忘録として書いているシリーズなのに、本末転倒だね。(笑)
いつも書いているけれど、ROCKHURRAH RECORDSが視聴した順番で書いていて、制作年順ではないのでよろしく!
※ネタバレしている可能性がありますので未鑑賞の方はご注意ください

最初は「大丈夫、愛だ(原題:괜찮아, 사랑이야 2014年)」から。
「最高の愛〜恋はドゥグンドゥグン〜」や「椿の花咲く頃」など、様々なドラマで主役を務めているコン・ヒョジンが主役なので、前から観たいと思っていたドラマだよ。
「ラブコメの女王」の異名を持つコン・ヒョジンが、通常とは違う役柄に挑んだというので興味があったんだよね。
今から10年以上前の作品なので、なかなか配信されていなかったところ、ROCKHURRAHがAmazonプライムで発見してくれた!
念願叶い視聴を始めたのが今年の7月頃だったか。
どんなストーリーなのか、あらすじを引用させていただこう。

チ・ヘスは様々な問題を抱えた患者と向き合う精神科医。
男顔負けの手腕で慌ただしい日々を送りながら、自身も異性と関係を持つことを怖がる“恋愛恐怖症”を克服しようとしていた。
ある日トークショー番組に出演することになったヘスは、イケメンベストセラー作家のチャン・ジェヨルと出会う。
精神科医をバカにした物言いに反感を覚えるヘスだったが、ジェヨルは素っ気ない態度のヘスに興味津々。
彼女が住むシェアハウスに越してきて、積極的なアプローチを仕掛けてくるが…!?
(Filmarksより)

続いてトレイラーも観てみよう。

「大人のためのヒーリング・ラブコメディ」って書かれているね。
およそ2分半の予告の中で、何回キスシーンが出てきたことか。(笑)
コン・ヒョジンの相手役ジェヨルを演じているのは、ドラマ「ムービング」で空を飛んでいたチョ・インソン。
予告の中で明かされているように、主役の2人共が精神的に不安定なんだよね。

コン・ヒョジンが暮らすシェアハウスには、他に男性2人が住んでいる。
そのうちの1人が「ライブ〜君こそが生きる理由〜」や「殺人者の買い物リスト」「トンイ」などで知っているイ・グァンス(画像左)。
コメディ要素がある役どころだったけれど、トゥレット症候群(チック症)を患っているんだよね。
そんなグァンスを見守る、もう一人の住人が精神科医役のソン・ドンイル(画像右)。
この2人のおかげでドラマに息抜きが生まれた感じがするよ。
全体的には重たい雰囲気のドラマなので好みが分かれるかもね?

続いては「悪の心を読む者たち(原題:악의 마음을 읽는 자들 2022年)」ね。
これは韓国初のプロファイラー、クォン・イルヨン教授とコ・ナム作家が実話をベースに2018年に執筆した同名小説を基にしたドラマだという。
実際にあった連続殺人事件の犯人がモデルとなって登場しているらしい。
デヴィッド・フィンチャー監督が手掛けたドラマ「マインドハンター」みたいな感じかな?
主演は「熱血司祭」のキム・ナムギルと映画「エクストリーム・ジョブ」でマ刑事だったチン・ソンギュ。
今まで2人のコミカルな演技を観ているけれど、今回は雰囲気が違うみたいだよ。
あらすじを確認してみよう。

物語の始まりは1990年代後半の韓国。
まだ、プロファイリングという言葉が認識されておらず、サイコパスの概念がなかった時代。
遠からず動機のない殺人事件が増えるであろうことを見据え、危機感を覚えた鑑識班のヨンスは必死の思いで周囲を説得し犯罪行動分析チームを設立。
ハヨンにプロファイラーの資質があることを見抜き、韓国初のプロファイラーとしてチームに招く。
最初は殺人鬼の残虐性に気分を悪くするだけのハヨンだったが、共感力が高く真面目な性格が故、悪の頂点に立つ連続殺人犯の心理を理解しようとすればするほど悪に蝕まれ自分を見失っていく…。
悪の心を持つものと持たないもの、その違いはなぜ生まれるのか、どこで違ってしまったのか。
その答えこそが、悪の心の中にある。
次の犯罪を阻止するため、そして真犯人を捕まえるために、ハヨンたちは犯人の心を操り本心を聞き出すことができるのか━。
(公式サイトより)

トレイラーはこちら。

予告の中には、一切笑顔のシーンがないよね!
犯罪者たちがリアルでとても怖い。
そんな犯罪者に正面から向き合っていると、精神的におかしくなってしまうのも不思議ではないね。
2016年6月に鑑賞した「シリアルキラー展」の中で「朱に交われば赤くなる」という「ことわざ」がパンフレットに載っていたことを書いた。
人は付き合う人によって良くも悪くもなるという意味だよね。
犯人に面会し続けているうちに、心が揺らいでしまうのも仕方ないことかもしれない。
アレハンドロ・ホドロフスキー監督が提唱する精神療法が「サイコマジック」で、相談者に「ファミリーツリー」を作ってもらうことから治療がスタートするという。
生まれ育った環境だったり、どんな教育を受けたのかなどを何代も前からの家系図によって、精神の問題を解き明かしていくんだとか。
家族や友人など、出会う人がどれだけ大事かよく分かるよ。
心地良いと思う人と付き合っていきたいね!(笑)

続いては「悪縁(原題:악연 2025年)」について書いていこう。
このドラマは全6話なので、毎日1話ずつ観ていたとしても1週間で鑑賞できてしまうんだよね。
あっさり観てしまったためか、ストーリーをすっかり忘れていたSNAKEPIPE。
ROCKHURRAHも同様だったようで、あらすじや登場人物を確認して2人で思い出したよ。(笑)
ポスターを見ると主役級の見知った俳優が多数出演しているのに、忘れているとはひどい!
あらすじを確認しよう。

不可解な事故の目撃者、トラウマに苦しむ医師、巨額の負債を抱える者、不当な解雇を受け危険な仕事に就く男、成功させていた伝統医学がある悲劇をきっかけに地に落とされる人物、波乱を呼ぶ出来事を引き起こす女…
抜けたくても抜け出せない悪縁で絡み合った6人の男女を描く緊迫の犯罪サスペンス。
(Filmarksより)

あらすじ通り、確かに6人がポスターにいるよね。
予告も観てみよう。

負債を抱えた男が、お金欲しさに恐ろしい計画を立てたことから、偶然6人に悪縁が生まれてしまう。
「こ゚縁がありますように」
なんて神社で手を合わせ、お祈りする人は多いだろうけど、こんな因縁は嫌だよね。(笑)
欲を剥き出しにする人間が巡り合うと悲劇が起こってしまうのは当然かも。
このドラマにも一番最初に書いた「大丈夫、愛だ」に出演していたイ・グァンスが登場しているよ。
メガネをかけ漢方医院長役なので、いつものヘラヘラ笑う役とは違っていてまるで別人みたい。
ネタバレになってしまうので詳しくは書かないけれど、上の6人以外の人物がキモで、最後を締めくくっているよ。
予告にも登場しないので、これから鑑賞する方は誰が出演しているのか乞うご期待!(笑)

最後はこちら!
「TRY 〜僕たちは奇跡になる〜(原題:트라이: 우리는 기적이 된다 2025年)」は、高校のラグビー部を舞台にしたドラマなんだよね。
主演は「誘拐の日」や「誰もいない森の奥で木は音もなく倒れる」などに出演していたユン・ゲサン。
ROCKHURRAH RECORDSでは「ゲサンが出演しているドラマに外れなし」と認識しているので、期待しちゃう!
先に書いた3本のドラマは重たい題材だったので、毛色の違うドラマを観たいと思ったんだよね。
我らがゲサン、一体どんな活躍をしてくれるだろう?
あらすじを引用させてもらおう。

不祥事によりキャリアを失ったラグビーの元スター選手が、母校のラグビー部の監督に就任。
チーム一丸となって成長し、どん底からの復活を果たそうとする。
(Filmarksより)

あらすじを引用させてもらってるのがFilmarksばかりだね。(笑)
予告も観てみよう。

コミカルな雰囲気で楽しそうだよね!
ラグビーについては詳しくなくても、ドラマ鑑賞には支障ないみたい。
あらすじにあった「ラグビーの元スター選手」がゲサンで、ユニフォームを着たた姿は本物の選手みたいだったよ!
韓国の俳優は鍛えている人が多いので、軍服やユニフォームを身につけると一瞬で「その世界の人」に見えてしまうのがすごい。
ストーリーは予想通り、ダメダメだったチームがトップに上っていく、いわゆるスポ根モノ。
ラグビー部が快進撃を続けていく様子は、一緒に応援したくなったよ!(笑)
学校関係者にイマドキいないだろうと思うほど、強烈なパワハラや不祥事を働いている教師などが登場して驚いてしまう。
韓国には、こんな教師がまだいるのかなあ?
ゲサンは、前回のドラマ「誰もいない森の奥で木は音もなく倒れる」での鎮痛な表情を浮かべる役より、軽快で少しコミカルなラグビー部監督役が似合っていたよ。
ジンクス通り「ゲサンのドラマに外れなし」で良かった!(笑)

今回はラブコメ、サスペンス、スポ根といった趣の違うドラマを紹介してみたよ!
ドラマの内容を忘れる前に「映画の殿」をマメに更新しないといけない、と反省したSNAKEPIPE。
次はどんなドラマを特集するのか、楽しみに待っていてね!

ANDY WARHOL SERIAL PORTRAITS 鑑賞

20251012 top
【エスパス ルイヴィトン東京エレベーター脇にある看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

エスパス ルイヴィトン東京で開催されているのは「ANDY WARHOL SERIAL PORTRAITS」。
来年の2月まで鑑賞できるようだけど、善は急げ!(笑)
台風接近により雨風が強い中、ROCKHURRAHと表参道に向かったのである。

表参道・原宿界隈は天候に左右されず、いつもと同じ程度の人出だね。
傘をさして歩くと、すれ違う時に傘同士が触れ合ってしまう人混みだよ。
「ちいかわらんど 原宿店」がリニューアルオープンしたおかげで、キディランド近辺がいつも以上に混雑していたね。
ルイヴィトンに入る前に2021年10月に書いた「ギルバート&ジョージ Class War, Militant,Gateway」を思い出したSNAKEPIPE。
ドアマンとの雨傘に関する「やり取り」について書いたのがこれ。

「自分でやりますよ」「いえいえ、こちらで」

なんて押し問答めいたやり取りの末、傘袋に入った傘を渡され終了。
買い物に来たわけじゃないから、本当に申し訳ない気持ちになるよ。(笑)

この教訓を活かし(?)今回は最初から傘を自分で畳んでから入場する。
エレベーターまでドアマンが案内してくれたけれど、前回の雨の時よりは「すんなり」通過できたよ!

会場に入ると、かなり大勢のお客さんでごった返している。
さすが知名度が高いウォーホルの展覧会だよね。
案内の方が近寄ってきて、撮影は動画と書籍以外全てオッケーです、と教えてくれる。
以前もお会いしたことがある女性のような気がしたけど、記憶違いか?
撮影しながら鑑賞を進めることにしよう!

今回の展覧会はウォーホルのポートレートを展示しているので、当然ながらたくさんのウォーホルがいたよ!
1977年にポラロイドカメラで自撮りしたのが、こちら。
あらぬ方角を見つめるウォーホルが着ているのは、自分の名前がプリントされた水色のTシャツ。
アーティストがわざわざ名前入りの洋服着てるのって見たことないかも。(笑)
自己アピールと自己愛の強さを感じてしまうよね。
1928年生まれのウォーホル、このポートレートの時には49歳くらいかな?
眉毛が太くて黒いんだね!

自身のポートレートをシルクスクリーンにした作品3点。
左の2点は上のセルフィーと同じ1977年、右の赤い作品は1981年だって。
ウォーホルはサングラスとヅラで、イメージづくりをしていたと言われていて、作品と同じくらいウォーホルの顔も有名だよね。
認識しているウォーホルのイメージは、フライト・ウィッグと呼ばれる銀髪のボサボサした髪だったり、サングラスをかけている肖像だよ。
それ以外の顔写真だけを見ても、ウォーホルと分からないかもしれない。
これらの作品も「ウォーホル展」で展示されていなかったら誰だか分からないかも。
逆も然りで、同じヅラかぶってサングラスかけたらウォーホルになれるかもしれないよ。(笑)

2014年3月に森美術館で鑑賞した「アンディ・ウォーホル展」にも展示されていた女装写真!
10年以上前に観ているのでハッキリ覚えていないけれど、やっぱり衝撃的な写真だよね。(笑)
ウォーホルがゲイだったことは知られているし、ウィッグを多数コレクションしていたことも情報として入っている。
今回の展覧会では、ちょっとゴツめのドラァグクィーンに見える画像左や黒髪のウィッグで冷たい視線を送る画像右のような女装姿が10枚展示されていたよ。
女装写真とは別に、ポラロイドで撮影されたセルフ・ポートレートも12枚展示されている。
後ろ姿が入っているところに興味が湧いたよ!
自撮りの時、後ろ姿ってあまり撮らないよね?(笑)

「20世紀のユダヤ人10人の肖像」は1980年に制作された作品だという。
SNAKEPIPEは初見で、とても嬉しかったよ。
ユダヤ系の偉人10名の中にフランツ・カフカ(画像上段一番左)を発見!
他にアインシュタインや精神分析学者のフロイトなども入っているんだとか。
この作品は複数のインクを1つのシルクスクリーンプリント用スクリーンに配置して混色させ、グラデーション効果を生み出す「スプリット・ファウンテン」という技法が使用されているんだって。
10点が並んで展示されている様子は圧巻だったよ!

1955年から57年に描かれた「Unidentified Male(名のない男)」というスケッチも展示されていた。
紙にボールペンで描かれているようで、プライベートなものだったみたい。
そのためなのか、半分でやめてしまったのか完成しているのか不明の展示物がいくつかあったよ。
目が空洞で、ちょっと不気味だよね。(笑)
自宅に招いた男友達をふざけて描いたような感じかな。
有名人になると、何もかもさらけ出されてしまうね。

1978年制作の「セルフ・ポートレート」は、色調が違う4枚を並べた「ウォーホルらしい」作品だね!
自分の顔写真を使用して、こんなにたくさんの作品を発表しているアーティストは他にいるのかなあ。
横尾先生も自分をモデルに描いている作品多いけど、ウォーホルを上回ることはないんじゃないかな。(笑)

ウォーホル展が予約制ではなく「すんなり」入れたことに驚いたよ。
雨風に負けないで行って良かった展覧会だよ!
エスパス ルイヴィトンに感謝だね。(笑)

収集狂時代 第26巻 高額アート編#05

20251005 top
【Judy Kensley McKieのフィッシュ・ベンチは6千万円だって。ステキ!】

SNAKEPIPE WROTE:

2021年5月以来、更新していなかった「収集狂時代 高額アート編」。
毎年のように情報の確認はしていたけれど、ランキングにさほど変動がなかったんだよね。
いつでもベーコンさんだったりリヒターやマーク・ロスコといったお馴染みの顔ぶれが高額取引されていて、少々食傷気味。
何十億円もの作品について、SNAKEPIPEがそんな発言をするのは「けしからん」話だけどね!(笑)
ただ世間的にもSNAKEPIPEも似たような感想を持つ人がいるようで、不動の人気を誇ったウォーホルやジャコメッティの作品が落札されない事態が発生しているんだとか。
価格帯は抑えめで女性アーティストの作品が人気になっているという。
今年のトレンドはどんな感じなのか、早速見ていこう!

下半身を剥き出しにして「どうだ!」と言わんばかりに正面を見据えた挑発的な女性が描かれている。
凝視するのが憚られるような作品だよね。(笑)
作者はMarlene Dumas(マルレーネ・デュマス)。
1999年に制作された「Miss January(ミス・ジャニュアリー)」が、$13,650,000(日本円で約20億円)で落札されたという。
マルレーネ・デュマスは初めて聞いたアーティストかも。
少し調べてみようか。
1953年南アフリカ共和国のケープタウン生まれの、現在72歳。
1975年にケープタウン大学美術学士号(ファインアート)を取得する。
1976年にオランダに移住し、ハールレムのアトリエ63で美術を学び、1979年から1980年にはアムステルダム大学で美術と心理学を学んだという。
自ら撮影したポラロイド写真やメディアに流通している映像や画像などを基に描くこともあるという。
2000年代には、写真家のアントン・コービジン(今の読み方はアントン・コービンみたい)と協働し、アムステルダム歓楽街のナイトクラブを取材した「Stripping Girls」を発表というところが気になったよ。
アントン・コービジンは、ジョイ・ディヴィジョンのヴォーカル、イアン・カーティスの伝記映画の監督だったよね。
その映画についての感想は2009年12月の「BREAK ON THROUGH TO THE OTHER SIDE」をご参照ください!
マルレーネ・デュマスは、このオークションで生存する女性アーティスト作品の史上最高額を更新したんだって。
他の作品も観てみたいよ。

$6,220,000(日本円で約9億1,500万円)で落札されたのは、Remedios Varo(レメディオス・バロ)の「Revelación (El relojero)(啓示(時計職人)」。
天幕のような天井に突き刺さるほど大きな時計が8つ。
それぞれの時計には窓があり、一人ずつ人間が配置されているのは何を意味しているのか。
中央に腰掛ける人物が恐らくタイトルの時計職人だろうね。
窓から、なにやら透明の円いモノが漂って来ている様子。
これが啓示なのかもしれない。
このシュールな絵は、1955年の作品だという。
レメディオス・バロは1908年スペイン生まれで1963年に亡くなったシュルレアリスト。
22歳で結婚したにも関わらず、旦那を置いてメキシコへ逃避行をしてしまったというから驚きだよ。(笑)
最終的には、また別の男性と結婚することになったというから、恋多き女性だったのね。
まるでドラマみたいな話も、レメディオス・バロの肖像写真を確認して納得してしまった。
ちょっとキツめの美女だもんね!(笑)
1930年にパリに移りアンドレ・ブルトンから影響を受けた、とWikipediaに載っているよ。
本場でシュルレアリスムを宣言した本人に出会ってるとはね!
レメディオス・バロの他の作品も気になるよ。

2012年6月に「SNAKEPIPE MUSEUM #16 Dorothea Tanning」で紹介したDorothea Tanning(ドロテア・タニング)の名前がランキングに登場していて嬉しくなる。
1944年の作品「Endgame(エンドゲーム)」が、$2,340,000、日本円で約3億4,500万円で落札されたという。
以前のブログにも書いているように、ドロテア・タニングはマックス・エルンストの奥様なんだよね。
「エンドゲーム」は、エルンストと出会った直後に制作されている。
2人が興じたチェスが題材になっていて、エルンストとタニングが向かい合っている様子まで想像してしまうよ。(笑)
チェスといえばマルセル・デュシャンを思い出すね。
きっと1920年代や30年代のパリでは、カフェでシュルレアリスト達がチェスをしていたんだろうなあ。
「エンドゲーム」では、白いシルクのスリッパがクイーンの駒として描かれていて、ビショップを踏みつけているんだって。
将棋もチェスも経験がないSNAKEPIPEなので、駒の意味を理解できていないよ。
解説だけを読んで感想を言うなら「クイーン(女性)がキリスト教の聖職者(男)を踏んでいる」と聞くと、「かかあ天下」をイメージしてしまうね。(笑)
踏みつけ方が強烈で、チェス盤が歪むほどの圧力だよ。
下方に破れたように見える風景は、2人が滞在していたアリゾナ州セドナかも?という記述があったよ。
出会ってすぐに親密になったというエルンストとタニング。
2人のカッコ良い肖像写真を載せてみたよ!
先のレメディオス・バロ同様、タニングも女優みたいだよね。
シュルレアリスト同士、惹かれ合って刺激的な毎日を過ごしたんだろうなあ。
13年前の記事にも書いたけれど、ドロテア・タニングの展覧会どこかで開催して欲しいよ。
全貌を観てみたいね!

続いては彫刻作品の紹介だよ!
高さ約3メートルのブロンズ彫刻はSimone Leigh(シモーヌ・リー)によるもの。
2020年に制作された「Sentinel IV(守護者4)」は、$5,730,000(約8億4,400万円)で落札されたんだとか。
シモーヌ・リーは、アフリカ美術や土着の物から着想を得ることが多いアーティストだという。
「守護者」は女性の体を基部にして、ズールー族の儀式用スプーンにインスパイアされた形状を頭部に配置しているんだって。
上のほうが重そうに見えるけど、バランス取れているんだね。
3メートルもの大きさがある作品を購入できる人は、高い天井の豪邸か広い庭の邸宅にお住まいなんだろうね!
3部作である「守護者」のうち1体は、テキサス大学オースティン校のアンナ・ヒス体育館前に設置されているというから、個人蔵ではなくてパブリック・アートとして購入されていることもあるんだね。
シモーヌ・リーは1967年、ナザレン教会の宣教師としてアメリカに渡ったジャマイカ移民の両親のもとに生まれたという。
1990年にインディアナ州リッチモンドのアーラム大学で美術学士号を取得。
ニューヨークのグッゲンハイム美術館、ロンドンのテート・モダンなどの名だたるギャラリーや美術館で個展を開催し、2022年のヴェネツィア・ビエンナーレではアメリカ館代表に選ばれ金獅子賞を受賞しているという。
どこかで鑑賞するチャンスがあるかもしれないね?

今回の高額アートは女性アーティストに絞って紹介してみたよ。
日本には世界的に有名な御年96歳の草間彌生という偉大な女性アーティストがいるためなのか、女性がトレンドと言われても何を今更と感じてしまったSNAKEPIPE。
2021年7月に森美術館で開催された「アナザーエナジー展:挑戦しつづける力」にて、世界の女性アーティスト16人の作品を鑑賞し、感銘を受けたことがあったっけ。
皆様80歳以上になっても強い情熱を持って作品を制作されているんだよね。
オークションでのトレンドは、目新しくて好奇心をそそられる作品、ということなのかもしれない。
女性アーティストとシュルレアリスムの作品が高額取引の常連になったら、また別のトレンドが生まれるのかもね。(笑)

ROCKHURRAH紋章学 Anton Stankowski 編

20250928 top
【謎の人形と一緒のアントン・スタンコフスキー(左)とセルフ・ポートレート作品(右)】

SNAKEPIPE WROTE:

2025年8月に書いた「ROCKHURRAH紋章学 Herbert W. Kapitzki 編」で予告したように、「アイデンティティシステム」で気になったもう一人のデザイナー、アントン・スタンコフスキーについて特集しよう。
グラフィックデザイナーとして有名なスタンコフスキーは写真家や画家としても活躍していたみたい。
経歴を調べてみよう。

1906 ゲルゼンキルヒェンに生まれる
1926–29 フォルクヴァング造形学校で学ぶ
1929–34 チューリッヒの広告スタジオ、マックス・ダラング事務所で勤務
1938 シュトゥットガルトで「グラフィッシェス・アトリエ」をエミール・ツァンダーと共同設立
フリーのグラフィックデザイナーとして活動を始める
1940–48 徴兵され、戦後まで捕虜となる
1951 キレスベルクにデザイン事務所を設立
1964– ウルム大学で教鞭をとる
1970– ドイツ銀行、ミュンヘン再保険、REWE、バーデン=バーデンのオリンピック会議などの有名なロゴや商標を制作
1972 ヴェネツィア・ビエンナーレに参加
1976 バーデン=ヴュルテンベルク州から教授の称号を授与される
1985 スタンコフスキー財団設立
1991 シュトゥットガルト市のハンス=モルフェンター賞受賞
1998 ドイツ芸術家協会よりハリー・グラフ・ケスラー賞を受賞
エスリンゲン・アム・ネッカーにて逝去

1920年代末から1990年代末までずっと活動を続けていたんだね。
1940年からの数年間は戦争のため拘束されていたようだけど、帰還後は『シュトゥットガルター・イラストリルテ』誌で編集者・グラフィックデザイナー、写真家として働いたという。
モンドリアン、ファン・ドゥースブルフ、マレーヴィチ、カンディンスキーらの抽象絵画に影響を受け、グラフィックデザインを「自由芸術家や科学者との協働を要する絵画的創造の領域」として提唱したとWikipediaに載っているよ。
情報と創造的衝動を統合し、純粋芸術と応用芸術を横断したとされるスタンコフスキーの作品を観ていこう!

かつてSNAKEPIPEがモノクロ写真を撮影し、自分自身で現像やプリントをしていたこともあり、モノクロームの作品に注目しちゃうんだよね。
写真家としても活躍していたスタンコフスキーの写真がとてもカッコ良いよ。
左は「Begrüßung(挨拶)」で 1934年の作品だという。
俯瞰して撮影しているところがモホリ=ナギを思わせるよ。
ハットをかぶった人物とシルエットのバランスが素晴らしい!
影の面白さは右の作品も同じだね。
1932年に撮影されていて、タイトルはないみたい。
恐らく水か何かが流れて筋を作っている様子を捉えているようだね。
写真の切り取り方がデザイナーらしい、と思ったよ。
これらの作品は販売されていて、左が30.3×23.7cmで$7,500(112万円)、右が22.9×17.8cm$9,500(140万円)とのこと。
SNAKEPIPE MUSEUMに所蔵したいね!

スタンコフスキーのコラージュ作品だよ。
1927年に制作された「Foto-Auge (Foto-Eye)(写真の眼)」は、スタンコフスキーの恩師であるMax Burchartz(マックス・ブルハルツ)へのオマージュなんだとか。
ブルハルツの最も有名な作品である、ブルハルツの妻の写真を見上げるブルハルツ、傘とブルハルツの髪を組み合わせているという。
黒色の扱いが大胆で、印象的だよね。
21x 28.5cmのサイズで6.448€ (約112万円)で販売されていたらしい。
この作品も並べて展示したいね!

スタンコフスキーの代表作として知られているのがドイツ銀行のロゴなんだよね。
「史上最高のロゴ」の2位にランクインしているという情報もあるほど、世界的に有名なんだね。
ロゴ・デザインの1位はウールマーク、3位は「ブリティッシュ・レール(イギリス鉄道)」だって。
ウールマークはセーターの内側についてる、あれね。(笑)
スタンコフスキーのロゴは、1973年に発表されてから現在に至るまで、ほとんど手を加えられることなく使用されているという。
「新しく、独自であり、時代を超えていたから」というのが理由で、銀行職員でも発表されてから受け入れるまでに2年かかったと書いてある記事もあったよ。
正方形をきっちり真ん中で分けるようにはされていない右上がりの斜線が、このロゴ・デザインを特別なものにしているんだとか。
「正方形の枠は安全性を象徴し、上向きの斜線はダイナミックな発展を表している」として採用が決定したというから、ロゴ・デザインを選んだ審査員は先見の明があったんだね。
一度見たら認識できるシンプルさも強力だよね。
SNAKEPIPEも、もう覚えましたとも。(笑)

とてもカラフルなシルクスクリーンの作品もあるよ。
1981年に制作された約60cm四方の17枚組の作品なんだよね。
1から17までをデザインしていて、とても楽しいよ!
色や構図などが念入りに考えられているんだよね。
と、書いたところで「5」だけが少し「ぞんざい」な気がするよ。
どれか一つ選ぶとしたら?
迷いながら「10」にしたよ!
あなたならどれを選ぶ?(笑)

スタンコフスキーが手掛けたポスターを2点載せてみよう。
左は1978年に制作された貯蓄銀行の「世界貯蓄デー」用のもの。
数字の「8」を表しているのかな。
マットなトーンの色合いがおしゃれだよね。
右は1984年の「クライス貯蓄銀行エスリンゲン=ニュルティンゲン10周年記念」ポスターだって。
10周年だから10色を使用しているのかと思いきや8色だった。(笑)
同じ屈折線を色と方角を変えて組み合わせたデザインで、シンプルなのに複雑に見えてしまうね。
構図の見事さと空間の使い方に日本画を思わせる作品だね!

MOMAに所蔵されているスタンコフスキーの作品がこちら。
「Buchstaben und Schriften BAG A–Z 1929–1934(文字と書体)」という本を出版しているようだよ。
内容についての表記がMOMAのページにないので、恐らくスタンコフスキーがタイポグラフィについて記しているんじゃないかな。
内容も気になるところだけど、表紙(?)と思われる画像のカッコ良さにノックアウトだよね!
白、黒、赤という3色だけの配色に3種類のフォントを使用したデザイン。
文字の上に文字を重ね、フォト・コラージュならぬフォント・コラージュ(というのか)しているなんて、PUNKの切り貼りみたいだよね。(笑)

今回はドイツのグラフィック・デザイナーで写真家のアントン・スタンコフスキーについて特集してみたよ!
独自の「デザイン理論」を打ち立て、構成的グラフィックアートの先駆者であったスタンコフスキー。
ロゴ・デザインや広告ポスターなどを勉強したり仕事で関わっている人にとっては、教科書のような存在なのかも?
SNAKEPIPEは、たまたまギンザ・グラフィック・ギャラリーの企画展「アイデンティティシステム」で知り、興味を持ったんだよね。
血湧き肉躍る(大げさ)ような作品に出会えて、とても嬉しかったよ!
こんなきっかけを与えてくれたギンザ・グラフィック・ギャラリーに改めて感謝だね。(笑)