CULT映画ア・ラ・カルト!【16】「Holy Motors」「TOKYO!」

【ROCKHURRAH制作。「merde!」連発のPere Ubuとのコラボ】

SNAKEPIPE WROTE:

前回「 CULT映画ア・ラ・カルト!」を書いたのが2013年10月だったので、このカテゴリーは約1年半ぶりの記事ということになるんだね。
久しぶりに「これは!」と思える狂気の人物を観ることができたので、まとめておきたいと思う。
何を持ってCULTと断定するのかは個人的な判断で良いよね?(笑)

レオス・カラックス監督についての記憶は曖昧で、確かに1980年代に話題になったし映画も観ていたはず。
当時はレオス・カラックス以外にもリュック・ベッソンアレックス・コックスジム・ジャームッシュなど、インディーズ出身の若手監督が台頭していた時代だったんだよね。
新作は必ずチェックしていたし、新しくてカッコ良い映像を知ることがお洒落だと思っていたし。(笑)
情報を得るのに貪欲だった少女時代のSNAKEPIPEなので、レオス・カラックスも観ているはずなのに全く覚えていないんだよね。
TSUTAYAの良品発掘でレオス・カラックスの3部作が復刻された時にも、それほどの興味を示さなかった。
ROCKHURRAHにとってはかなり懐かしい監督の一人のようで、レオス・カラックスの3部作に加え「ポーラX」も映画館まで観に行ったという。
その「ポーラX」から13年の時を経て、新作が発表された。
それが今回紹介する「ホーリー・モーターズ」(原題:Holy Motors 2012年)である。

ROCKHURRAH RECOREDSでは毎週2本は映画を鑑賞しているので、 近いうちに観ようと軽い気持ちで借りていたそうだ。
「面白いかどうか分からないけど」
何の予備知識もないまま映画が始まった。
リムジンが舞台になっているという設定はデヴィッド・クローネンバーグの「コズモポリス」(原題:Cosmopolis 2012年)に似ているね。
どちらの作品も2012年だったとは!
リムジンに乗る人物が流行だったのかしら?(笑)
更に調べてみると両作品とも「パルム・ドールを競った」なんて書いてあるから、カンヌ映画祭で上映されたことも同じなんだね。
実は「コズモポリス」は映画館で鑑賞したSNAKEPIPEだけど、今から思えば「ホーリー・モーターズ」のほうが映画館向きだったかも?

簡単にあらすじを書いてみようか。

ひとつの人生からもうひとつの人生へ、旅を続けるオスカーの1日。
ある時は富豪の銀行家、またある時は殺人者、物乞いの女、怪物、そして父親へと、次々に姿を変えてゆく。
オスカーはそれぞれの役になりきり、演じることを楽しんでいるように見える。
ブロンドの運転手セリーヌを唯一の供に、オスカーはメイク道具を満載した舞台裏のような白いリムジンで、パリの街中を移動する。

最初は一体何が起こっているのか分からない。

ドニ・ラヴァン演じる主人公のオスカーは手渡されたファイルを元に「誰か」に成り切って演じているからだ。
一つの人格が終わったと思うと、また別の「誰か」になっている。
一体何のために?
誰のために?
などいくつもの「?」が頭をよぎっていく。
そしてその中に登場した強烈なキャラクターが緑色のスーツの男だった。

マンホールのアップ。
場所は墓場のようである。
どんどんマンホールにカメラが近付いていく。
蓋が少しズレると、中から人が出てくる。
緑色のスーツを着た、片目が濁った赤毛の男。
裸足なのに墓石をひょいひょい軽く飛び越え、献花を奪い取っては食べている。
なんだ、この狂人は!(笑)
かなりメチャクチャで、いわゆる一般常識なんてものは通用しない傍若無人タイプ!
意味不明の行動を起こし、 何がなんだか分からないうちに緑色の男のチャプターが終わってしまった。
「ホーリー・モーターズ」では最も印象に残る「人生」だったね!

長い一日が終わって、リムジンが駐車場に戻ってくる。
いくつもの人格を演じ終えたオスカーは自宅(?)で休養するようだ。
そしてリムジン同士が話をするシーンで映画が終わるんだけど。
上に3行書いた部分がなかったほうが良かったのに、と残念に思ってしまうSNAKEPIPE。
何がなんだか分からないうちに映画が終わってしまったら、CULT映画として素晴らしかったのに!(笑)
えっ、ほとんどの人は映画に意味を求めてしまうって?
確かにそうなのかもしれないけどね。
この部分が追加されているために、ちょっと陳腐になってしまう気がする。

それにしても緑色のスーツの男があまりに印象的だったので、鑑賞後に早速調べてみる。
レオス・カラックスの「アレックス3部作」と呼ばれる、熱狂的な支持を集めた作品の主役だったドニ・ラヴァンの怪演ったら!
「すごい!」としか言いようがないほどの奇人・変人ぶりだよ。(笑)
このキャラクターはフランス語で「糞」の意味である「メルド」という名前だという。
ミシェル・ゴンドリー、ポン・ジュノとのオムニバス映画「TOKYO!」(原題:TOKYO! 2008年)に出ているらしい。
これは早速観なければ!(笑)

それぞれの監督が「東京」を舞台に、日本人の俳優を起用して撮影をしている。
ミシェル・ゴンドリーの「インテリア・デザイン」は、自分の存在価値を見出す女性の話。
ポン・ジュノの「シェイキング東京」は引きこもりの男とピザ配達人の話。
そしてレオス・カラックスは「メルド」だった。

怪人「メルド」がマンホールから現れる。
そしてなんと!銀座の中央通りを裸足で闊歩!
あの異様な風体で、通行人にぶつかったり、タバコを乳母車に投げ捨てたり、札束を奪い取り口に入れたり!
大部分は雇われたエキストラだと思うけど、もしかしたら本当の通行人もいたかもしれないよね?
あんな怪人「メルド」に街中で遭遇したら、かなり怖いはず!
更に渋谷の交差点でのテロ行為。
撮影だと知っていても怖いだろうし、知らないで近くを通りかかったとしたら、なんて考えただけでも恐怖だね。

オムニバス映画の「メルド」も「ホーリー・モーターズ」と同じように、裁判のシーンがなくても良かったのでは?と思ってしまうSNAKEPIPE。
この短編も「意味不明だった」という感想で充分印象的だと思うからね。
拘置所の所長役に嶋田久作の姿を発見したのは嬉しかった!


「メルド」は何語なのか分からない、不思議な言語を使う。
前歯を指で小突いたり、自分の頬を張ったりしながら、妙な高音のカワイイ声で話す。
同じ言語を使うことができる弁護士というのが、「メルド」と似た濁った片目や特徴的なアゴ髭。
2人の会話しているシーンはまるでギャグ!
「メルド」を擁護する人が出てくるのも面白かったし、「メルド・フィギュア」のシーンはYMOの「増殖」を思い出してしまったよ。(笑)
この「メルド・フィギュア」あったら欲しかったな!

「メルド」は次回ニューヨークに出没、なんて最後に予告されていたけれど、ニューヨークでのテロ行為はいくら撮影でも難しいかな?
SNAKEPIPEが鑑賞した順番が逆だったけれど、「TOKYO!」の次に出没したのが「ホーリー・モーターズ」のパリ、ということになるんだろうね。
また別の土地で「メルド」に再会したいね!(笑)

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