好き好きアーツ!#21 DAVID LYNCH—Mulholland Drive

【マルホランド・ドライブのトレイラー】

SNAKEPIPE WROTE:

SNAKEPIPEは毎日夢を見る。
そして夢を断片的にでも朝まで覚えている。
一体どこからの発想なのかも分からないほど奇想天外なストーリーや意味不明の単語まで登場して、翌日ROCKHURRAHに聞いてもらう度に不思議がられるのだ。
「夢日記を付けてみたら?」
と何度も勧められている程、ユニークな夢が多いようだ。
通常の場合、自分の夢は人に話しても退屈させるだけだと思うけれど、ROCKHURRAHが面白がってくれるので、ちょっといい気になってしまうね。(笑)

今回の「好き好きアーツ!」はデヴィッド・リンチ監督迷宮系3部作(?)の第2弾として「マルホランド・ドライブ」を特集してみたいと思う。
どうして冒頭にSNAKEPIPEの夢について語ったのか。
それはいずれ明らかになるであろう!(予言)

「マルホランド・ドライブ」(原題:Mulholland Drive)は2001年に制作されたシュール・ネオ・ノワール映画と書かれているね。
誰がこんな言葉を考えたんだろうか。(笑)
サイコロジカル・スリラーという分類もされているらしい。
文章だけ読んでいるとサッパリ訳が分からなくなりそう!
「マルホランド・ドライブ」の前のリンチの作品は「ストレイト・ストーリー」という、感動で涙が溢るヒューマンドラマで、配給会社がなんとディズニー(!)だったんだよね。
リンチがディズニー?とびっくりしたのは1999年のこと。
リンチアンなので当然のように「ストレイト・ストーリー」は劇場で観たけれど、
「リンチ、大丈夫かな?もうこっちには戻らないんじゃ…」
と不安を感じていたところに次回作として発表されたのが「マルホランド・ドライブ」だったのである。
恐らく同じように危惧していたファンはたくさんいただろうなあ。
「マルホランド・ドライブ」を鑑賞し終わって、ホッと一安心。
やっぱりリンチはリンチ、だったんだよね。(笑)

では早速「マルホランド・ドライブ」について書き進めてみようか。
「マルホランド・ドライブ」は時系列に物語が進行しないし、同じようなシーンがまた別のシチュエーションで登場したり、同じセリフが複数の人物によって語られたりする、いくつものエピソードで構成されている映画である。
そのためさっぱり意味が分からないと思う人が多いだろうし、SNAKEPIPEも実際に映画館で一番初めに鑑賞した時には首をかしげてしまった。
個人個人の好きな感じ方で良いと思っているから、謎解きをしようとは思わないので、それらを期待して読んでいる方を裏切ってしまうだろうね。(笑)

リンチによって提示された10のヒントがあるので、参考までにご紹介しようか。

  • 1
  • Pay particular attention in the beginning of the film: At least two clues are revealed before the credits.
    映画の冒頭に、特に注意を払うように。
    少なくとも2つの手がかりが、クレジットの前に現れている。
  • 2
  • Notice appearances of the red lampshade.
    赤いランプに注目せよ。
  • 3
  • Can you hear the title of the film that Adam Kesher is auditioning actresses for? Is it mentioned again?
    アダム・ケシャーがオーディションを行っている映画のタイトルは?
    そのタイトルは再度誰かが言及するか?
  • 4
  • An accident is a terrible event — notice the location of the accident.
    事故はひどいものだった。その事故が起きた場所に注目せよ。
  • 5
  • Who gives a key, and why?
    誰が鍵をくれたのか? なぜ?
  • 6
  • Notice the robe, the ashtray, the coffee cup.
    バスローブ、灰皿、コーヒーカップに注目せよ。
  • 7
  • What is felt, realized and gathered at the Club Silencio?
    クラブ・シレンシオで、彼女たちが感じたこと、気づいたこと、下した結論は?
  • 8
  • Did talent alone help Camilla?
    カミーラは才能のみで成功を勝ち取ったのか?
  • 9
  • Note the occurrences surrounding the man behind Winkie’s.
    Winkiesの裏にいる男の周囲で起きていることに注目せよ。
  • 10
  • Where is Aunt Ruth?
    ルース叔母さんはどこにいる?

これらのヒントに即答できるのは、「マルホランド・ドライブ」を何回も鑑賞されている方だろうね。
そして当然ながら熱狂的なリンチアンだと思う。
SNAKEPIPEは2つ、すぐに答えられない問いがあるけれど、あまり気にしないな。
このヒントによって謎解きができるとも思えないしね。(笑)
ではあらすじに感想を加えながら書いていこう。
※毎度のことながらネタバレしていると思いますので、鑑賞前の方はご注意下さい。

男性2人と共に車に乗っていた黒髪の女性は、突然同乗者からピストルを向けられ、殺されそうになったところを前方からの暴走車両の激突により命を救われる。
同乗者の男性2名は即死だったようで、生き残っていたのは黒髪の女性だけ。
足がカクカク、フラフラしながらも逃げる。
旅行に出かけるため家を留守にするという女性の空き家に侵入することに成功。 その家で身を隠すことにする。

ここで突然場所が変わる。
ウィンキーズというダイナーで自分が見た夢について語る男と聞く男。
この男2人の関係については謎。
語っている男(写真上)の顔がものすごくインパクトあるんだよね!
眉の太さ、額の狭さ、笑っても全然笑ってない目とか全てがヘン!
きっとリンチはこの役者の顔が気に入ってキャスティングしたに違いない。(笑)
夢を見た男は、その夢が悪夢だったので正夢ではないことを確かめたいと言う。
見た夢に沿って行動する2人。
すると夢は正夢で、悪夢通りウィンキーズ裏手には「恐ろしい顔」の男がいた!
それを目にした途端、夢を見た男は恐怖のあまりに失神してしまう。

空き家で眠り続ける黒髪の女。
「女はまだ見つからないのか?」
謎の人物から人物へ、謎の通話が数回繰り返される。
どうやら黒髪の女性の行方を追っているようだ。
この一連の通話の中で、一番の大物だと思われるのが上の写真の人物!
そうです!「ツイン・ピークス」ファンなら誰もが知っている、あのダンスする小人であるマイケル・J・アンダーソンの登場!
リンチがずっと映画化しようと進めてきたプロジェクトである「ロニーロケット」でも アンダーソンを起用する予定だった話をどこかで読んだことがあるよ。
「ツイン・ピークス」以外でも是非出演してもらいたいって思ったんだろうねえ。

女優を夢見てハリウッドを目指してきたベティ。
隣にいる白髪の女性はたまたま飛行機で乗り合わせて意気投合した人。
ベティは叔母が留守にしている間、叔母の家で居候することになっている。
しかしそこには、自動車事故に遭い、こっそり侵入した黒髪の女性がいた!
てっきり叔母の知り合いだと勘違いしたベティは、何者かも分からない黒髪の女性を歓迎する。
名前を尋ねると「リタ」と答える黒髪の女性。
たまたま壁に貼ってあったリタ・ヘイワースのポスターから借用した名前だ。
具合が悪そうにしたリタをベッドに眠らせるベティ。

場面が変わり、ライアン・エンターテイメントのビルの一室。
監督やプロデューサーらが映画の打ち合わせを行なっている。
そこに後から登場するのがカスティリアーニ兄弟という映画界の黒幕。
この兄弟は「This is the girl」(まさにこの子だ!)とカミーラ・ローズという女優を推薦するために会合に来たのである。
「This is the girl」とフレーズが似ている「This is it」は、「ブルーベルベット」の中に出てきた店の名前だったなあ。
このフレーズがリンチの好みなんだろうね。(笑)

エスプレッソを注文した兄弟のうちの一人。
エスプレッソが気に入らなかったらしく、白いナプキンに含んだコーヒーをケローンと吐き出してしまう。
おや?なんとこのおかしな役を演じているのは、リンチ作品には欠かせない作曲家のアンジェロ・バダラメンティじゃないの!(笑)
セリフはほとんどなかったけれど、非常に印象的なおいしい役どころ!
役者としても活躍していたとは驚きだね。 (笑)

監督にはキャスティングの権利が一切なくて、黒幕が暗躍して映画やスターが作られてるんだよ、という業界裏話のような逸話。
このエピソードが、リンチが描きたかった「ハリウッドの闇」の一つなのかもね?

次のエピソードは、ハリウッド有名人の電話番号を記録してあるノートを奪うために、殺人を犯す男の話。
1人だけを殺すはずが、ひょんなことから3人を殺すハメになってしまう。
殺人なのに笑いが出てしまうという、ブラックユーモアに溢れたシーン。
これもリンチ得意の「ハッピー・バイオレンス」なんだろうね。

出張先の叔母と電話をしていたベティは、リタが叔母とは全く関係のない女性だということを知る。
実は事故のために記憶がない、というリタ。
リタのバッグに何かヒントがあるかも、とバッグを開けてみる。
そこにはたくさんの札束と謎の青い鍵が入っていた。
リタが一つだけ思い出した単語は「マルホランド通り」。
恐らくそこに行く途中で事故に遭遇したはずだ、というリタの言葉を確かめるために警察に電話をし、本当にマルホランド通りで事故があったことを知る。
コーヒーを飲みに入ったウィンキーズのウエイトレスの名前から、ダイアン・セルウィンという名前を突然思い出すリタ。
電話帳で調べてみると、ダイアン・セルウィンが実在していることが判明。
もしかしたら記憶を蘇らせる手掛かりになるのでは、とベティとリタはダイアン・セルウィンの住所を訪ねるのである。

映画が自分の思い通りにならないことに怒り狂った監督アダム・ケシャーは、カスティリアーニ兄弟の車をボコボコにした後、自宅へ。
そこで妻の浮気現場を目撃、腕っ節の強い浮気相手に反撃され追い出されてしまう。
いつの間にかクレジットカードは凍結、資産もゼロになっている。

秘書から「カウボーイ」に会うように指示を出され、ビーチウッド・キャニオンという夜中の牧場に会いに行く。
「カウボーイ」は、本当にカウボーイの格好をした謎の人物だった!
ほとんど表情がなく、目に光もなくてまるで蝋人形のような顔立ち。
「マルホランド・ドライブ」は至るところに「ハリウッド映画」へのオマージュが散りばめられているので、もしかしたらこの「カウボーイ」はジョン・ウエインを意図してるのではないかと感じるのはSNAKEPIPEだけかな?
だから死んだような目をして、喋り終わった途端に一瞬で消えたんじゃなかろうか?
カウボーイはみんな同じ格好だからSNAKEPIPEの思い過ごし?(笑)

「カミーラ・ローズを見たら、彼女だ!と言うこと」
カスティリアーニ兄弟の意見が絶対だったようで、従わなければ監督生命も奪われかねないようだ。
それにしても「カウボーイ」のセリフ「人の態度はその人の人生を左右する」はなかなかの名言だよね!(笑)

オーディションに向かうベティ。
これは父親の親友との恋愛を描いた作品で、相手役の俳優が若い女を相手にするためなのか、やる気満々の「いかにも」な男なんだよね。(笑)
それに応え、着衣のままだけれどエロティックな雰囲気を醸し出し迫真の演技をするベティ。
その場にいた人達はすごい新人が現れた、と喜ぶ。

別のスタジオではアダム・ケシャーがカウボーイの指示通りに自身の映画のためのオーディションをしている。
しかし、これは出来レース。

カミーラ・ローズ(写真上)が出てきた瞬間、アダム・ケシャーはまるで自分が決めたかのように
「This is the girl」
と言うのである。
「カウボーイ」の言いつけ通りにしたアダム・ケシャーは、これで安泰といったとことか。(笑)
このアダム・ケシャーのオーディションは、すっかりリンチ・ワールドになっていてフィフティーズ全開なんだよね!(笑)
この時のオーディションの映画のタイトルが、リンチ・ヒントの3番めだよ!

タクシーに乗り、記憶を蘇らせる手掛かりを求めて、ダイアン・セルウィンのアパートに向かうベティとリタ。
アパート周辺にはサングラスをかけた怪しげな人物が何人もいる。
裏口から入り、なんとかダイアン・セルウィンの部屋までたどり着く。
ノックをしても出ないので、窓から侵入してしまう。
部屋の中で見たのは、ダイアン・セルウィンと思われる女性の死体だった!
このシーンはまるでホラー映画みたいで、本当に怖いんだよね。
部屋に入った時から鼻に手をやり、臭いを防ぐような仕草を見せていたので、予想はしていたものの、かなり本格的な死顔メイク(というのか)。
慌てて逃げ出す2人。
その後、身の危険を感じたリタは黒髪を切り、金髪のウィッグで変装するのである。
この後、ベティとリタのラブシーン!
えっ、なんで急にこうなるの?とびっくりな展開に戸惑ってしまうね。(笑)
身の危険を共有したことで、まるで吊り橋効果のように恋愛感情に発展してしまったのかもしれない。

一緒のベッドで手をつないで眠る2人。
リタが寝言で「Silencio」と繰り返す。
これはスペイン語で「お静かに」という意味らしい。
何度も声に出しているので、ベティが起きだす。
「一緒に行ってもらいたいところがあるの。今すぐに!」
急に何かを思い出したようなリタに従い、夜中の2時に2人は揃って「クラブ・シレンシオ」という怪しげな劇場へと向かう。
そこでは「バンドがいない、全てが録音された音」という摩訶不思議なステージが繰り広げられている。

ステージで歌うのはロスアンゼルスの泣き女、レベッカ・デル・リオ
言語はやっぱりスペイン語で、曲のタイトルは「Llorando」という。
迫力満点の見事なアカペラを披露してくれる泣き女。
歌詞がとても重要だと思われるので、字幕から拾って載せてみよう。

しばらくは元気だったの
笑顔でいられたわ
でもゆうべあなたに会ってあなたの声を聞いた時、私は取り乱さなかったわ
だからあなたには分からなかったのね
あなたを慕って泣いていることに
あなたを思って泣いているのよ
あなたはさよならを言って私を置き去りにした
私は一人で泣いている
なぜなのかしら
あなたに会っただけで また私は涙にくれる
あなたを忘れたと思っていたわ
でもこれは本当のこと
以前にも増してあなたを愛してる
でも私に何ができるの
あなたの愛は冷めてしまった
だから私は永遠にあなたを慕って泣き続けるだけ
あなたを思って泣き続けるだけ

なんとも悲痛な心の叫びを表現して、泣き女は失神してしまう。
あれ?映画の中で失神者は2人目だね!
そして録音されているだけあって、失神した後も歌声は続いているよ。(笑)
歌声を聴いていたベティとリタも肩を寄せ合い泣きじゃくっている。
泣き女節が伝染したのか、それとも何か思うところがあるのか?
このシーンがリンチの7番目のヒントの箇所だね。
SNAKEPIPEは前述したように、歌詞がポイントだと思うな!

失神してしまった泣き女を見届け、涙を拭こうとバッグを開けた時、ベティはバッグの中に青い箱を発見する。
リタのバッグに入っていた謎の青い鍵がピタリと符合しそうな、三角形の穴も見える。
きっとこれが鍵穴に違いないね!
自宅に戻り、いよいよ青い箱を鍵で開けようとする時、何故だかベティの姿が見えない。
ドキドキしながら一人で鍵を差し込むリタ。
箱を開けると中には暗闇が広がっている。
その闇に吸い込まれるように画面が黒くなり、次のシーンでは床に転がる青い箱だけが映し出される。
うーん、なんとも暗示的なシーンなんだよね。
ベティがいなくなったこと、青い箱の中身とか、ね。(笑)

青い箱が開いてから、映画は更にショート・シークエンスの連続になってくる。
一応映画の進行通りに書き進めていくけど、文章だけ読むと意味不明かもしれないね。(笑)

赤い髪の女が部屋にいる。
ベティの叔母でカナダに行っていたはずでは?
何もなかったわよね、と室内を点検。
床に転がっていたはずの青い箱は見当たらない。

ダイアン・セルウィンと全く同じポーズでベッドに横になっている黒髪の女性。
「へい、かわい子ちゃん、起きる時間だよ」
ドアを開けて入ってきたのは「カウボーイ」だ。

また同じ姿勢でベッドに横になっている女性。
今度は金髪の女性に変化している。
誰かがドアをノックしている。
起き上がったのはベティだったはずの女性。
訪ねてきたのは部屋を交換した、以前の住人。
金髪の女性がダイアン・セルウィンということになるのかな。
「刑事2人があなたを捜してたわよ」
聞いた途端に動揺するダイアン・セルウィン。
「カミーラ、帰ってきたのね」
リタだったはずの黒髪の女性に笑いかけながら、次第に泣き始める。
ダイアンの妄想とか幻覚が映像化されているようだ。

またしてもカミーラとダイアンのラブシーン。
「もうやめましょう」
カミーラから一方的に別れを切り出されるダイアン。
「原因は彼ね?」
カミーラもダイアンも女優で、カミーラは映画監督のアダム・ケシャーと恋仲になっていたのだった。
この場面は実際にあった記憶だと思われる。

着飾ったダイアンの元にカミーラから電話がある。
カミーラがダイアンをパーティに誘っているようだ。
ここで映画冒頭の車のシーンと全く同じマルホランド通りを走る車の映像。
車に乗っているのはダイアンだ。
途中で迎えに来たカミーラに案内されて向かったのはアダム・ケシャーの家だった。

パーティの席で、映画界で働く叔母の遺産が入ったためカナダの田舎町からハリウッドを夢見て上京したこと、カミーラの口利きで女優を続けていられるという話をするダイアン。
聞いているとかわいそうになってしまうような惨めな状態のダイアンである。
そんなダイアンを横目で見ながら、カミーラは意地悪く他の女とイチャついて見せたり、挙げ句の果てにアダム・ケシャーと結婚することも発表し、ダイアンをイジメ抜くのである。
「カウボーイ」が室内を横切る。
悔し涙を流すダイアン。
そんなダイアンの視線を充分に感じていながらも、カミーラは知らん顔である。
んまあ、なんて嫌な女なんでしょ!
恋人関係にあった相手に対してそこまで意地悪できるとは、相当性格悪いよね。 それでもダイアンは、執着心とか嫉妬心を飼い馴らせなかったみたいね。

場面が変わって、またウィンキーズ店内である。
ダイアンが男に会っている。
これはドジを踏んで3人を殺すハメになった男じゃないか?
「This is the girl」
そう言ってダイアンが男に写真を渡す。
この写真はカミーラだね。
自分を捨てて監督との結婚を決めたカミーラへの復讐として、お金で殺しの依頼をしているようだ。
「片付いたらこの鍵を置く」
男が見せたのは青い鍵!
何の鍵かと尋ねると、男はただ笑うだけである。
またここでも「This is the girl」 という同じセリフが登場し、青い鍵も出てきたね。

赤いライト。
ウィンキーズの裏手だ。
映画の初めに登場した「悪夢を見た男」が遭遇した「恐ろしい顔の男」が青い箱を手に座っている。
「恐ろしい顔の男」が青い箱を袋に入れた後、小さな初老の男女が笑いながら袋から出てくる。
この初老の男女は、ベティが飛行機で乗り合わせた人達じゃないか?

テーブルに乗っている青い鍵。
殺し屋の男の仕事が片付いたのだろうか。
その鍵をじっと見つめるダイアン。
ドアをノックする音。
ドアの隙間から侵入する小さな初老の男女はゲラゲラ笑っている。
笑い声はいつの間にか悲鳴に変わり、ノックの音が強くなってくる。
小さかったはずの初老の男女は、いつの間にか等身大に変化し、笑いながらダイアンを追い回す。
錯乱状態になったダイアンはピストルを自らの口に当て、引き金を引く。
「恐ろしい男の顔」と「クラブ・シレンシオ」のオーバーラップ。
笑い合うベティと金髪のリタが薄ぼんやりと映し出される。
背景はハイウッドの夜景である。
このシーンはダイアンの人生回顧(ライフレビュー)なのではなかろうか。
愛にも夢にも絶望してしまったダイアンの最期である。

クラブ・シレンシオ。
青いライトの中、ステージには誰もいない。
青いライトが徐々に消えていく様子を見やっていた青い髪の観客の女性が一言。
「Silencio」

青い髪の女性は、ベティとリタが「クラブ・シレンシオ」を訪れた時にも座っていたんだよね。
この女性だけが残っていて、更に青い髪、というのもポイントなんだろうな。
「マルホランド・ドライブ」には青色がたくさん出てくるよね。
青い箱、青い鍵、青い髪、青い光。
それらの関係を考えると謎解きになるのかもしれないね?

ひ~!
軽くまとめるつもりがこんなに長くなってしまった!
「マルホランド・ドライブ」は複雑だから簡単に、なんて無理だよね。(笑)
迷宮系3部作の1作目である「ロスト・ハイウェイ」にも出てきた、同じ俳優が演じる複数の役柄というのが「マルホランド・ドライブ」にも採用されているね。
ベティ/ダイアン、リタ/カミーラという2人の女性。
恐らく本当はダイアンとカミーラなんだろうな。
その2人以外にもたくさんの人物の本当の姿が釈然としないよね。
どの時系列が正しいのか、現実にあった事と妄想や夢との違いの分かりにくさに加えて青い箱と鍵やら「クラブ・シレンシオ」のような怪しげな場所が混在しているので、何回観ても難解なんだよね。(ぷっ!)

「マルホランド・ドライブ」の解釈については、様々出ているようだ。
青い箱を開ける前までを前半でダイアンの妄想(もしくは夢)として、箱が開いた後がダイアンの現実とする意見が大多数みたい。
確かに青い箱のシーンから後の部分というのは、細かいエピソードが連続しているので混乱してしまうよね。

時系列に直して鑑賞しても良し。
リンチによって提示されたそのままを、解釈などせずに受け入れるも良し。
SNAKEPIPEは「謎は謎のままで良い」というリンチの言葉通り、後者でいこうと思う。

このブログの冒頭で書いた夢の話の続きを書いてみよう。
夢の中では、テレビでしか見たことがない人と会話していたり、行ったことがない場所にいたりする。
つながるはずのないAとBが混在したり、Cの場所からいきなりDの地点に移動していることもある。
脈略のないストーリーが展開されることも多いよね。
そういった夢ではお馴染みの手法を採用したのが、「マルホランド・ドライブ」なんだろうね。
自分の夢でも整理して説明できないんだから、他人の夢を見させられたら困惑するに違いない。
理不尽で整合性がないのは当たり前!
わからなくたって いいじゃないか ゆめだもの みつを

SNAKEPIPE MUSEUM #21 Melvin Edwards

【メルヴィン・エドワーズの作品。重厚でカッコ良いね!】

SNAKEPIPE WROTE:

今年の3月にフランシス・ベーコン展を鑑賞して以来、またとんと美術館にはご無沙汰のSNAKEPIPE。
今月が終われば今年も半分終わってるってことだよね。
なんとも月日の経つのは速いねえ。
そのうちに美術館は夏休み用の企画を立てるに違いないから、また子供向けのあまり好みじゃない展覧会のオンパレードになるんだろうなあ。
そんなことならいっそのこと、またいつものように自分が好きなタイプのアートを個人的に楽しむ時間を持ったほうが良さそうだね。

ROCKHURRAH RECOREDSのプロフィールにも書いているように、シルバー色でピカピカ光るインダストリアル系はSNAKEPIPEの大好物!(笑)
上の作品を目にした瞬間、
「ひーーー!カッコ良い!」
と叫んでしまったのである。
なんとも重厚で、意味不明の物体。
一体これは何?

調べてみると、これはメルヴィン・エドワーズというアメリカの彫刻家の作品だということが判明。
日本には「アモーレの鐘」で有名な美ヶ原高原美術館に作品が展示されているようだけど、アーティスト本人に関する詳しい情報はほとんど見当たらない。
そこでまたもやSNAKEPIPEが翻訳して、紹介してみようと思う。
毎度のことながら誤訳があったらごめんなさい。(笑)

メルヴィン・エドワーズは1937年アメリカのテキサス州生まれの今年76歳。
ニューヨークに住み、一年のうち数ヶ月はセネガルで過ごし、そこで彫刻家として活動しているらしい。
メルヴィン・エドワーズはアフリカ系アメリカ人なので、インスピレーションを祖先が住んでいたアフリカに求めているんだって。
南カリフォルニア大学を卒業した後、更にLos Angeles City Collegeとthe Los Angeles County Art Instituteでも勉学に励む。
1964年にはSan Bernardino Valley Collegeで、その後the Chouinard Art Instituteやthe Orange County Community College in New York、the University of Connecticutで教鞭を執っていたとのこと。
専門が何だったのかは書かれていないけれど、大学教授だったとはすごいね!
1965年、カリフォルニアのサンタバーバラ博物館で初めての個展を開催。
1972年から2002年まで、Rutgers Universityにおいて、彫刻や第三世界の芸術家についての授業を行う。
1975年にグッゲンハイム助成金を与えられる。
これはジョン・サイモン・グッゲンハイム・メモリアル財団が毎年主催する助成金制度で、アメリカ国民と永住者、ラテンアメリカとカリビアン諸島の人が申し込むことができるとのこと。
助成期間は1年間で2008年には約4万3000ドルの奨学金の支援をしてくれた、と書いてあったよ。
現在のレートで約420万円の資金援助は、かなり助かるだろうね!(笑)

それ以降も数々の個展の開催や、メトロポリタン美術館やニューヨーク近代美術館など多くの美術館に永久保存作品としてコレクションされているとのこと。
メル・エドワーズはアメリカの主要な同時代の彫刻家のうちの1人です、と書かれている通りにかなり有名な、しかもインテリジェンスなアーティストなんだね!

メルヴィン・エドワーズは立像型の彫刻と壁掛け型彫刻やリトグラフ、アクリル絵の具などを使った絵画も手がけている。
その中でSNAKPEIPEが一番興味を持ったのは壁掛け型の彫刻で、「Lynch Fragments」というシリーズである。


上の写真は、2012年の11月から12月にかけてニューヨークのAlexander Gray Associatesというギャラリーでの個展の模様である。
手前に有刺鉄線が下がっていて、左にはチェーンみたいなのも見えるよね。
更に奥の壁には、「Lynch Fragments」が展示されている。
いいねー!
この雰囲気、「SNAKEPIPE MUSEUM #19 Kendell Geers」で特集した、南アフリカのアーティスト、ケンデル・ギアーズに近いよね?
結局SNAKEPIPEの好みが、アブナイ側寄りってことなんだろうな。(笑)
それにしても「Lynch Fragments」シリーズは、どういう意図で制作されているんだろうね?
スペルが同じだから、デヴィッド・リンチに捧げる作品とか?(んなバカな)

「Lynch Fragments」は公民権運動からインスパイアされてできた作品で、1963年から現在まですでに200を超える作品が制作されているらしい。
公民権運動ってことは人種差別を撤廃せよ、とアフリカ系アメリカ人が立ち上がった運動のことだよね。
やはりメルヴィン・エドワーズも社会的な思想の元、制作をしていたんだね。
作品は金槌やハサミ、岩やチェーンなどの様々な素材を使用し、視覚的にも構造上にもバッチリな構成の元に接合されている。
恐らくそれぞれの素材にも公民権運動や、アフリカからアメリカに連れられた歴史などに関する意味があるんだろうな。
チェーンは完全に理解できるよね。


鋼の見事なシェイプにうっとりしちゃうね!
破壊的で、サイバーパンクっぽい雰囲気。
フランク・ステラの彫刻にも似た感じだね。
ううっ、たまらない!
200個の内の5個くらいをチョイスして、是非自宅に飾ってみたいよね!
もしくはこのモチーフでブローチがあったらとても素敵だと思うんだけど?
重過ぎて洋服には使えないのかしら?(笑)

メルヴィン・エドワーズの個展、やらないかなあ。
レプリカで良いから「Lynch Fragments」を手に入れたいな!

ROCKHURRAH視察団/かっぱ橋道具街編

【かっぱ橋道具街のシンボル、かっぱ河太郎にございやす!】

SNAKEPIPE WROTE:

先週の記事である「アンチヴァイラル鑑賞」の時、友人Mとランチを食べたのは、タイ料理のチャンパーだった。
本当は映画を鑑賞した渋谷のチャンパーを目指していたのであるが、いつの間にか渋谷店がなくなっていたとはね!
最近こういうこと多いんだよねー。
前はここにこんな店があったのに、と発言した後から
「確かあれは15年くらい前だったよね」
と付け足し、我ながら情けなくなってしまうのである。 (とほほ)
チャンパーのレッドカレー食べたいね、と軽く言ったつもりが「どうしてもチャンパーでなければ」という切実な思いへとチェンジし、新宿まで出ることになった。
伊勢丹会館の中で念願のレッドカレーを食べ大満足!
ふとスープ用のレンゲに目をやり、あっと声をあげるSNAKEPIPE。
「これっ!このレンゲが欲しいのっ!」

ものすごく小さな話で恐縮だが、ラーメンやうどんを食べる時に使用するレンゲを自宅に所持している人は多いと思う。
レンゲと聞いてパッと思い浮かべるのは、恐らくラーメン屋ならプラスチックや陶磁器素材の白くてどんぶりの縁にひっかけられるように少し細工がされているタイプだったり、うどん屋なら天然素材を使用したラーメンタイプと同型の物やお玉を小ぶりにしたようなタイプが多いのではないだろうか。
実際にレンゲを買おうと思って探しても上の写真のタイプに近い物が多いよね。
SNAKEPIPEはその手のレンゲではなくて、アルミかステンレスのレンゲを探していたのである。

チャンパーで見たレンゲはシルバー色にピカピカ光る、なんとも軽いステンレス製、見事なフォルムと実用性を兼ね備えた、まさに理想的なデザイン!(大げさ)
「お店で売ってるかもしれないからお会計の時に聞いてみようよ」
友人Mの提案の通り、会計時に男性従業員に聞いてみることにする。
「スプーン類の販売はやっていません。かっぱ橋辺りにあるんじゃないですか」
というものすごくそっけない返答が返ってきただけ!
よし、それならば「かっぱ橋」に行って探し出してみようじゃないか!(笑)

テレビでも見かけるし、業務用の食器なら「かっぱ橋」だよね、など会話の中にも頻繁に登場する「かっぱ橋」という地名だけれど、この年になるまで一度も縁がなかった場所である。
そもそも「かっぱ橋」ってどこにあるの?と調べてみるとちゃーんとHPあるんだよね!(笑)
正式名称を「かっぱ橋道具街」という料理関係の道具ならなんでもござれの問屋街は台東区にあり、東京メトロ銀座線の田原町や東京メトロ日比谷線の入谷から徒歩5分程度らしい。
ROCKHURRAH視察団、いざ出陣!(笑)

とは言っても今回ROCKHURRAHの参加はなかったため、友人MとSNAKEPIPEが「かっぱ橋道具街」を探索してみた。
目的はステンレス製のレンゲ!(笑)
入谷駅で待ち合わた2人は、よくテレビで見かける大きなおじさんの像を探そうとしていた。(右の写真のおじさん)
方向音痴のSNAKEPIPEは、友人Mに連れられるように進んで行く。
「多分こっちだと思うんだけど」
方向感覚バッチリの友人Mの「多分」はかなり頼りになる。(笑)
ほどなくしてかっぱの絵が描いてある看板が見えてきて、道具街の文字が見えてきた。
「かっぱ橋道具街」というのは一本の道を挟んで両側にたくさんの店舗が営業しているストリートだったんだね!
「レンゲ」の探索のために、両側共歩くことにする。
右側の一番外れまで歩いたところで上のおじさんを発見!
駅からはとても見えない場所だったんだね。(笑)

片方の道側にある目ぼしい店舗でレンゲを探すけれど、全く見当たらない。
反対側も探してみることにする。
「いらっしゃいませ」
大抵のお店の人は店の奥深い場所にいることが多かったけれど、あるお店では店員さんが店先に出て呼び込みをやっていた。
片方の道沿いの店舗では見つけることができなかったので、ここは一つ店員さんに聞いてみよう!
「ステンレス製のレンゲありますか?」
「こんな感じかな?」
と言って持ってきてくれたのは、まさに探していたステンレス製レンゲ!
ただしチャンパーで見かけたレンゲより若干小ぶりのタイプ。
一つの店舗にあったならば、もしかしたら違う店舗での扱いもあるかも?
店員さんにお礼を言い、更なる探索に出る。
ここで丁度正午。
ランチタイムだ。

情報収集能力に長けている友人Mは、ランチの情報まで仕入れてきたらしい。
「気になるカレー屋さんがあるから行ってみない?」
友人Mはカレーと韓国料理、タイ料理だったら毎日食べても良いと豪語するほど、その手の店に関してのチェックを怠らないのである。

外見は元倉庫だったところをほとんど改造せずにおりますので良くないですが、勇気を出して一歩入ってみてください(笑)

という説明を後から調べて知ったけれど、 「ここだよ」と言われた瞬間に見えたのはとても「気になるお店」とは思えない外観だった。
お店の名前は「パスカレッソ」という。

お昼時だったせいか、女性客ばかり5人程度入っている。
メニューはカレーとパスタ。
カレーならチキンかポークを選べるようになっており900円。
サラダと飲み物がセットになると1300円、ケーキがセットで1600円である。
初めて入るお店の場合は単品を注文することが多いので、今回もチキンカレーをチョイス。
「口コミですごく評判が良いから食べてみたかったんだ」
という友人Mの話を聞きながらカレーを待っていると
「はい、どうぞ」
女主人がにこやかにサラダを置いていく。
「あれ?単品の注文だよね?」
顔を見合わせているSNAKPEPIPEと友人Mに
「ちょっとだからね、食べて~」
と言いながら、もう去っていく女主人。
すごいサービスだね、と言いながらサラダをつついているとカレー登場。
真っ黒いカレーに2かけのチキンが浮かんでいる。
ほとんどスープ状態のツーツーカレーだ。
一口食べてびっくり!
「おいしーーー!」
スパイスが効いた辛めの、コクと旨味が凝縮された抜群のカレーである。
「こんなカレーは初めて食べた!ここにして良かった」
今まで様々なカレーを食べてきた友人Mも満足気だ。

カレーを食べ終わり、そろそろ探索を続けようかと思った頃、
「少しだけど食べてみて~」
とまたもや女主人が何種類かのシフォンケーキを切り分けた皿を持って登場。
「さっきサラダもご馳走になってしまったので、そんな!」
「あら、いいわよ~。召し上がれ!」
という押し問答の末、とまどいながらも嬉しいサービスを頂くことにする。
「んまーーーい!」
シフォンケーキはふわふわで、口に入れた瞬間とろけるほどの柔らかさ。
「このケーキ買って帰ろうね」
と打ち合わせている時に、またもや女主人登場!
「良かったら、お茶いかが?暖かいのと冷たいのどっちがいい?」
ええーーー?!
SNAKEPIPEと友人Mは単品のカレーしか注文してないのに!
また遠慮する言葉を言いかけると
「あら、いいじゃない、お茶くらい!ゆっくりしていって!」
とお茶までご馳走してもらうことになってしまった。
当然のように初めからケーキ付きセットを注文している人とは違うだろうけど、オマケがいっぱいでびっくりしてしまった。
とてもにこやかで、おいしいとお客さんから言われてコミュニケーションを取ることが何よりも嬉しいといった雰囲気の女主人は客商売のプロだと思った。
また「かっぱ橋道具街」に行く時には、必ず寄りたい店だね!

お腹もいっぱいになったところでレンゲの探索開始!
店員さんにレンゲがあるかどうかを聞いてしまったほうが手っ取り早いということに気付いたため、片っ端から店員さんに商品の有無を聞いて回る。
するとあるわ、あるわ!(笑)
午前中に歩いていた時には、自力で探そうと躍起になっていたため全く見当たらなかったのに、午後になってからは複数の店舗でレンゲを発見することができた。
そして気付いたのが値段の違い。
午前に見つけた店舗でのレンゲ価格は370円。
午後になってからは410円、295円、290円とお店によって値段がまちまちだと判る。
本当に欲しかったチャンパータイプではなかったけれど、SNAKEPIPEは295円でレンゲを購入。
最安値の290円は購入後気付いたので仕方あるまい。(笑)
一応ステンレス製のレンゲの探索ということでは目的は達成されたね!
チャンパーのレンゲと同じ物は、また別の機会に探してみたいと思っている。


かなり歩き回り、目的も達成したのでお茶でも飲もうと入ったのがオシャレなカフェ。
「かっぱ橋道具街」の下町的な雰囲気とは一線を画した、「ここはどこ?」と思ってしまうようなガランとしたガレージを思わせる広い空間。
高い天井と、非常に少ない座席数も好みである。
気を利かせた友人Mが、2階に上がっても良いのか、写真を撮っても良いかなどを店員さんに確認している。
店員さんの説明によると、どうやらそこはSturdy Style Tokyoという建築士事務所で、カフェの奥が建築事務所になっていて、2階は事務所の方が商談のために使用するスペースとのこと。
トイレは2階にあるので、上がることができるし写真撮影も構わないという。
友人MはSNAKEPIPEが撮りたがることを知って、予め聞いてくれたんだね!

「ここに住みたい」
と思ってしまったほど、素敵な空間だった。
2階に上がってみると、そこには商談用の(?)テーブルがいくつか置かれていたり、仕切られた部屋が点在していたり、30名くらいが鑑賞できるようなシアターも完備されていた。
プレゼンテーションをやる時に使うのかな?
恐らく2階の部屋にある一つ一つも、1階のカフェもその会社のデザインで、Sturdy Styleはこんなデザインやってるんですよという宣伝なのかなと思った。
家を建てようとか店舗運営を考えている人には、実際に目で見て体験できるデザインという画期的なアイデアだよね。
それにしても奥の事務所で仕事するのは、お客さんの視線とか気にならないのかしら?(笑)

初めての「かっぱ橋道具街」は、テレビで見たままの食玩の店を実際に見ることができて感激したり、一番最後に紹介した下町らしくないオシャレカフェを発見したりで、とても面白かった。
品物を探す時の教訓は「店員さんに聞くこと」だね。(笑)
同じ商品でも値段が違っていたのも発見だったので、すぐに決めないでいくつかの店舗を回ることも必要ということも判った。
そしてやっぱり一番印象に残ったのは「パスカレッソ」の女主人さん!
本当にご馳走様でした!
また伺います!(笑)

アンチヴァイラル鑑賞

【アンチヴァイラルのトレイラー】

SNAKEPIPE WROTE:

今年の4月中旬にデヴィッド・クローネンバーグ監督の最新作「コズモポリス」を観に行った。
主人公が所有するキャデラックに、複数の人が交代で乗車し、そこで繰り広げられる会話や行為を描いた映画だった。
一緒に観に行った友人Mは途中から爆睡していたというほど、淡々として動きがなく単調で、SNAKEPIPEもブログのネタにすることができなかったんだよね!
あとから解説や他の人の感想を読み、多少は理解できたけれど、風刺と言われてもねえ?
結局のところは好みじゃなかったんだろうね。(笑)

そのクローネンバーグ監督の息子が初監督した映画が公開されるというニュースを持ち込んだのは、またもや友人Mだった。
「面白そうだから観に行こうよ!」
「コズモポリス」の時も同じセリフを言ってなかったか?(笑)
トレイラーを確認すると、確かにちょっと面白そうである。
公開する劇場を調べてみると、関東地方で埼玉、千葉、東京、神奈川のそれぞれ1館でのみ上映とされている。
SNAKEPIPEと友人Mが近いのは渋谷シネマライズだった。
そしてびっくりなことに上映期間はたったの3週間のみ!
無名監督の作品上映って、最近はこんなもんなの?

いくら初監督作品とはいっても、お父さんは有名な監督だから、2世監督なわけだよね?
2世タレントとか2世俳優とは違って、あんまり話題にならないのかな?
2世監督としてパッと思い付くのは、フランシス・コッポラ監督の娘、ソフィア・コッポラデヴィッド・リンチの娘、ジェニファー・リンチかな。
上の話とは関係ないけれど、デヴィッド・リンチのサイトにセカンド・アルバムに関するニュースがあったよ!
なんと7月15日に発売予定らしい。
もしかしたら今は、映画制作より音楽に興味があるのかしら?(笑)
話を元に戻して。
そして今回2世監督として追加されることになったのが、デヴィッド・クローネンバーグの息子、ブランドン・クローネンバーグである。
1985年生まれというから、28歳の若手ですな!(笑)

3週間しか上映していないので、慌てて予定を合わせ渋谷に向かう。
シネマライズ、随分久しぶりだなあ。
前に何を観に行ったのか、思い出せないほど。
もしかしたらフランシス・ベーコンを描いた「愛の悪魔」だったかもしれないな。
長らくご無沙汰だったシネマライズに向かい、当日のチケットを買うために販売開始時間前に待っていたのは、なんとSNAKEPIPE1人だけ!
もしかしたら行列しているかもという予想は大きく外れた。(笑)
館内に入って更にびっくり。
約200人が入れる劇場に、お客さんはたったの15人のみ!
SNAKEPIPEと友人Mを含めての数である。
これで経営が成り立つんだろうか、と余計な心配までしてしまう。
ゆったり鑑賞できるのは有難いけど、大丈夫か、シネマライズ?(笑)

ではあらすじに感想を加えながら書き進めてみよう!


近未来の話。
この世界ではセレブリティとの究極の繋がりを求めて、様々な病気に感染したセレブリティのウイルスが売買されている。
セレブリティのウイルスをマニアに注射する「ルーカス・クリニック」に勤務する注射技師シド・マーチが主人公。
シドは巧妙なセールストークで、ウイルスの販売に貢献する。
「熱狂的なファンのあなたには、こちらのウイルスはいかがでしょう?」
高いお金を払って、セレブリティと同じ病気になりたいと思う客がいることが不思議だけど、この世界ではその行為が成立するみたいだよ。(笑)
自分のウイルスを売るセレブリティにも疑問を感じるけどね?


「ルーカス・クリニック」では真面目そうな社員ということで通ってるシドだけど、実は希少価値の高いウイルスを外部に持ち出し、闇マーケットに横流しするという違法行為を行なっている。
客に注射した後の残りを自分に注射して、自宅でウイルスだけを取り出すんだよね。
そんなことができる装置まで隠し持ってるし、闇販売ルートまで確保してるんだから恐れ入る。
そして闇ルートが確立されているほど、たくさんの人がセレブのウイルスに関心があるということも判るよね。


ある日、大人気のセレブリティで究極の美の持ち主ハンナが原因不明の重病に冒されて突然死亡。
映画の中では「中国で原因不明のウイルスに感染」と言われていたよ。
なんだか本当にありそうだよね。(笑)
ハンナの死の直前、ハンナから直接採取したウイルスを自らの肉体に注射していたシドも、異様な幻覚症状に見舞われる。
ハンナを死に至らしめた特殊なウイルスの唯一の宿主となったシドは、何者かに追われ始める。
そしてウイルスをめぐる巨大な陰謀の真相究明に乗り出すのだが…。
というところで、あらすじに関しては終わりにしておこうかな。
本当はラストを知ろうが知るまいが、どっちでも良いタイプの映画だと思うんだけどね。

SNAKEPIPEがこの映画で一番面白いと感じたのは、上に書いたそのまま「ウイルスの売買」って行為だったから。
熱狂的なファンが、憧れの人に少しでも近付きたいと思い、その人が身に付けていた物と同じ物を購入する、オークションで縁のある物を多額のお金で手に入れる、似た顔に整形する、なんていうのは今でも行なっている人が多い行為だよね。
それをもっと突き進めていくと、病気を共有したい、細胞が欲しいというレベルになっても不思議ではないなあと思うのである。
SNAKPIPEはいくらファンだとしても、「同じ病気になりたい!」とか「うつされたい!」とは思わないけどね。(笑)

ブランドン・クローネンバーグのインタビューによれば、この映画は細胞からステーキ肉を作るというような、実際の技術から着想を得たという。
そして誰かに夢中になり過ぎると、それは一種の狂気になるというのがテーマとのことらしい。
着想から8年かけて完成させたというから、かなり強い思いがある作品なんだね!

それ以外のSNAKPEIPEの感想は、と言うと。
主人公シドを演じるケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、この役柄を非常にうまく演じていたんだけど、顔や腕とか背中のそばかすが物凄いんだよね。
役作りのために描いたのかな?と思ってしまうほど。
手が血だらけの上の写真でも判るよね。
この映画が108分みたいだけど、恐らく90分くらいは具合が悪い状態だったよ! 主人公がここまで具合が悪い映画っていうのも珍しいよね。(笑)


お父上であるデヴィッド・クローネンバーグ監督と同じように「ボディ・ホラー」というジャンルで括られている映画なので、細胞科学の知識が全くないSNAKPIPEには
「今、彼は一体何をやってるんだろう?」
と思うような場面があったんだよね。
シドが自分にウイルスを注射しているのは、てっきりセレブへの憧れのためだと勘違いしていたから尚更かもしれない。
そして自分の血液からウイルスだけを取り出す作業も、観ている時には意味不明だった。
鑑賞前には解説を全く読まなかったので、帰宅後に調べてみてやっと意味が理解できたような次第。

病気のウイルスに顔があり映像化できるとか、ウイルスをコピーされないようにガードをかける、もしくはコピーガードを外すといったような、まるでパソコンで使うような言い方がされているのはは面白かった。
病気のウイルスとして出てくるのが、歪んだ顔の画像。(上の写真)
その歪みによって不調が判るとされてるんだけど、この画像ってまるでフランシス・ベーコンだよね。(笑)
悪いウイルスの画像コレクション、あったら欲しいな!
と書いてからまた調べてみたら、ベーコンからの影響を受けていることが載っていたよ。
ああ、やっぱり!って感じだね。

もう一つ気になったこと。
SNAKEPIPEは、欧米諸国の人達の考え方として「私は私」というような、個性とか個人としての自立や確立を尊重し、自己顕示欲が強い人種だと思ってるんだよね。
この映画の中では、ほんの数人のセレブだけを対象に、その人達に近付きたいと誰もが思っているというところが理解し難かったな。
もう少しマニアックなファンが登場しても良かったかもしれないよね?(笑)
元々SNAKEPIPE自身が特定の誰かに憧れるということがないから、余計解らなかったのかもしれないけどね。
熱烈に支持する誰かがいる人には、共感できるのかな?

「この前のお父さんの映画よりは面白かったかな」
とは友人Mの感想。
冒頭に書いた「コズモポリス」と比べて、ということだけど、そうは言いながらもまた少し寝ていたらしいので、本気の発言かどうかは不明である。(笑)

残念ながら、SNAKEPIPEはデヴィッド・クローネンバーグ監督の初期の傑作と言われている「ラビッド」や「ヴィデオドローム」を観てないんだよね。
どうやらROCKHURRAHはかなり早い段階からクローネンバーグ作品に触れていたらしく、「ラビッド」も「ヴィデオドローム」も「スキャナーズ」も鑑賞済とのこと。
さすがホラー好きだね!(笑)
「アンチヴァイラル」には、それらとの関連を指摘するような解説が載っていたけれど、考察できないのが悔しいな。

そういえば「コズモポリス」では主人公の婚約者の役どころだった女優が、「アンチヴァイラル」ではセレブリティ役で登場していたね。
親子で同じ女優を採用するとは。
やっぱり好みが似ているのかしらね?

渋谷のシネマライズでは6月14日まで上映しているようなので、気になる方はご鑑賞あれ!
シネマライズのトイレ、ものすごく80年代っぽくて、なかなか良かったよ!(笑)