時に忘れられた人々【17】ギター・ポップ編2

【SNAKEPIPE作、ギター・ポップのポップアート。使ったギターは大好きなダンエレ】

ROCKHURRAH WROTE:

最近、週末に色んな予定が立て込んでいる事もあって、ブログを書くのも本当にギリギリの状態。今週もまた土曜日にいやな予定で半日が潰れてしまった。あーあ、やりたい事はちゃんと出来てなおかつ、ゆったりしたいよ。

さて「続きはありそうだね」などと前回の最後に書いたから今回もギター・ポップ編のパート2を書いてみよう。
ちなみにROCKHURRAHの言うギター・ポップと世間一般で言われているこのジャンルがちょっと違うかも知れないが、そもそも定義もないアバウトな音楽の世界、誰が書いても偏るのは当たり前だと思ってね。

Steaming Train / Talulah Gosh

ギター・ポップやネオアコは他のロックと比べると女性の比率が高い音楽だと思うが、そういうキュートなガール・ポップの中でも知名度が高いのが1980年代後半に活躍したタルラー・ゴシュだろう。たったの2、3年くらいしか活動してないにも関わらずインディーズ界での人気も高く、彼女たちから影響を受けたバンドも数多く出現している。
知名度が高いとは書いたものの、これはあくまでギター・ポップなどに興味を持った人の間でのみの知名度。一般的なロックの世界ではほとんど知られてないに違いない。

中心となるのは短髪でボーイッシュな美少女のアメリア・フレッチャー(マリーゴールド)とフランス映画に出てきそうなキューティ美少女のエリザベス・プライス(ペブルス)。この二人の女性ヴォーカルを中心にオタクっぽいメガネ男たちが脇を固めたのがタルラー・ゴシュだ。

見たわけじゃないのではっきりした事は全然わからんが、この2人は前回の記事で登場したパステルズのバッジをお互いつけてたので知り合ったというような結成のなれそめらしい。
うん、よくあるよな。ROCKHURRAHはそんなにライブハウス通いをしてたような人間じゃないけど、富士急ハイランドで大昔に買ったドクロのピンバッジを同じ日につけてたから初対面の人と「あー!同じバッジ」などと盛り上がった経験もある。友達にはならなかったけどね。

パステルズ・バッジはギター・ポップの世界にとって象徴的アイテムらしく、タルラー・ゴシュもフリッパーズ・ギターもこのバッジに関する歌を歌っている。
そのパステルズのステファン・パステルによる53rd&3rdというレーベル(カート・コバーンが大好きだったバンド、ヴァセリンズもこのレーベル)がリリースした事もあって、タルラー・ゴシュはまたたく間にインディー・ポップの注目バンドとなったらしい。

女の子のファッションやスタイルが1980年代後半と今では随分違っているのは当たり前だが、この時代のギター・ポップやアノラックをやってたバンド女子(略してバンジョでいいのか?え、略さなくていい?)の好むスタイルが集約されたバンドがタルラー・ゴシュだった。アメリアやエリザベスのファッションや髪型はこの時代の「Cutie」などに載っててもおかしくないガーリーな(う、書いてて恥ずかしい)ものだった。
ちょっとパンキッシュで勢い余ったポップな名曲や本当にワン・アイデアのみで作ったようなシンプルな曲、演奏はどちらかと言うと下手だと思えるバンドなんだが、どれもこれも魅力的で素晴らしい。メロディ・センスはアノラック界でもトップレベルだと個人的には思うよ。

エリザベスは途中で抜けてしまって、タルラー・ゴシュも短い期間しか活動してないが、その後ヘヴンリー、マリーン・リサーチ、テンダー・トラップとアメリアは違うバンドを続けてゆく。どのバンドも共通してるメンバーは大体一緒だが、もう一人女性ヴォーカルを加えたという男女混成が好きみたいだ。残念ながら個人的にタルラー・ゴシュよりも好みのバンドではなかったからROCKHURRAHは継続してファンではなかったが。

しかし今回のギター・ポップ編を書こうと思って調べていてはじめて知ったのだが、その元タルラー・ゴシュのエリザベス・プライスが近年はアーティストとして活躍していて2012年度、英国の権威あるターナー賞に輝いたとの事。これはすごい。今気づいたみたいに書いてるがファンの間ではすでに去年くらいに盛り上がってた話題なんだろうね。さすが音楽情報に疎いレコード屋、ROCKHURRAHだな。
アメリアの方も負けてなくてオックスフォード大学の経済学博士号まで持っているらしい。経済にも疎いからよくはわからんが公正取引委員会の局長とかやってるそうで、これまたすごい。
日本ではレコードもCDも同時代には出てなかったように感じるし情報も少なかったし、タルラー・ゴシュやってる時はそんな大物になるとは夢にも思ってなかったけど二人の才女を擁するまさにレジェンドなバンドだったんだね。

Our love is heavenly /  Heavenly

ここまで書いたからついでにヘヴンリー。上に書いたようにタルラー・ゴシュ解散後にアメリアがほとんど同じようなメンバー構成でやっていたのがこのバンドだ。心機一転というには程遠いけど、タルラー・ゴシュのようにちょっとパンク風な部分は少なくなって、純粋にギター・ポップの路線を継承してその方面の人には絶大な人気があった。そういう意味でのバンド名変更だったのかね?
音楽的に成長して練れた、という部分よりパンクやアノラックの初期衝動のままDIY精神でやってた方がROCKHURRAHの好みだったので、このヘヴンリーはそんなに熱心には聴かなかったけど、親しみやすく優しいポップスが好きなタイプだったらこれこそ最高という人も多いことだろう。
残念ながらタルラー・ゴシュ時代から一緒にやってた弟、マシュー・フレッチャーの自殺によりヘヴンリーの活動はここまでとなる。
その後、マリーン・リサーチ、テンダー・トラップとコンスタントに活動を続けて基本的な音楽性も前髪パッツンのスタイルもあまり変わってない。同じように短髪美女だったシニード・オコナー(短髪というより坊主頭)のすごいおばちゃんへの変貌と比べても(年齢もほとんど一緒)アメリアの方がずっといい歳の取り方をしているように感じる。ん?顔で判断するなって?

Teenage / The Brilliant Corners

セロニアス・モンクの曲名からつけたバンド名だが特にジャズっぽいわけではない。英国ブリストル出身で1983年から10年間活躍したバンドだ。
どうやら随分音楽が盛んな土地らしく、ブリストル出身の有名バンドも数多い。カオスUKにカオティック・ディスコード、ディスオーダー・・・むむ、ハードコア系ばかり挙げてしまった。80年代的に言うならポップ・グループという偉大なバンドから派生したピッグバッグ、リップ・リグ+パニック、マキシマム・ジョイ、マーク・スチュアート&マフィアなども全部ブリストル出身。同じバンドにいたわけだからそりゃ当然同じ出身地だな(笑)。3行に渡って書くまでもなかった。
他にもものすごくたくさんの著名ミュージシャンの故郷だが、書いてるだけで日が暮れてしまうから先に進む事にする。

さて、ギター・ポップの中でも特にヘタれたアノラック系を前回から延々と書いていたが、このブリリアント・コーナーズはそういう素朴な路線とは違っていて、「パッパラ系」とでも言うような音楽で燦然と輝く活躍をしたバンドだ。メンバーの中にパッパラパーがいたわけではなく、曲の合間に「パッパラ ラ パッパッパラ」みたいな合いの手が入るというオシャレな楽曲を残したから勝手に誰かがそう言ってるだけ。
彼らの代表曲「Delilah Sands」がそのパターンで、ネオアコやギター・ポップの世界では永遠の定番曲だと言える。

これがその名曲なんだがイントロからそのもの。パッパラ系と書いた意味が一目瞭然でわかるな。メンバーの見た目も青春ギター・ポップのような素行良さそうな感じはしないし、ヴォーカルはモロに80年代の青春映画に出てくるワルっぽい感じ。本当のワルから見たら青臭い事間違いなしの半端な雰囲気がたまらないね。見た目と曲のギャップがすごいな。ちょっと強そうな黒人の兄ちゃんも従えて、歩き方までチンピラっぽい。

順番が逆になったが上の方の曲「Teenage」はその「Delilah Sands」の一年後、1988年の作。こちらもまた大好きな曲で今でも聴いている。PVはこちらの方がいかにもカラフルでポップな印象。 同じバンドのプロモとは思えないね。

パッパラ系の代表選手みたいな書き方をしてしまったがデビューした頃はなぜかサイコビリー系のコンピレーションに入ってたりしたし、スミスみたいな曲調の時もあったし、最後の方はちょうどその頃流行っていたマンチェスター勢とも呼応したようなダンサブルな音楽もしていたな。先に書いたヘヴンリーのアメリアが参加した曲などもある。

ブリリアント・コーナーズの解散後、ヴォーカルとベーシストは短い期間エクスペリメンタル・ポップ・バンドというのをやっていたが、これは90年代頃に流行ってた渋谷系の親戚みたいな音楽だった。ここもベーシストが途中で他界してしまい、ヘヴンリーと似たような運命で活動を停止したらしい。

今回はたった3つのバンドのみだったが、意外と長く書いてしまったのでここらで一旦終わる事にしよう。
ROCKHURRAHがギター・ポップばかりをメインで聴いてた時期はなく、自分の音楽履歴の中でも例えばパンクや初期ニュー・ウェイブ、ポジパンなどを熱心に聴いてたのに比べれば随分扱いも軽い。80年代にはもっとエキサイティングな事がたくさんあったしね。
一言コメントみたいな感じで本当はもっと多くのバンドを紹介してゆくつもりだったけど、なぜか意図してた構成と違うものになってしまったよ。

最後に、ROCKHURRAH RECORDSはゴールデンウィークを利用してサーバーの移転という面倒な事をしてしまって、意外と色々な問題が起きて解決出来てないままという状態。ブログだけは何とか続けているけど、オンライン・ショップやオフィシャル・サイト(大げさ)の方はまだまだ実用に耐えうるまで復活してないんだよね。これから少し時間をかけて、工事中の閉店をしないまま改造してゆくので「何じゃこのサイト?」などと思わないでね。

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