【これがTHE ROTTERS CLUBね!】
SNAKEPIPE WROTE:
ついに鳥飼否宇先生の最新作が発売された!
今か今かと待ちわびていたSNAKEPIPEとROCKHURRAH。
前回鳥飼先生の作品について書いたのが2011年9月のこと。
「好き好きアーツ!#8 鳥飼否宇 part3 –物の怪–」としてまとめさせて頂き、鳥飼先生ご本人からコメントを頂戴する、というファン冥利に尽きる経験をさせて頂いたんだよね!
そしてまた今回の新作についても拙いながらも、ブログで感想を書いてみようと思っている。
鳥飼先生の新作のタイトルは「妄想女刑事」!
もうこのタイトルを聞いただけで、「あっち系の路線かな?」と勝手に想像してしまったSNAKEPIPE。
そう、あっち系とは先生の小説の中に登場する「増田米尊」のこと!
興奮すると頭の回転が速くなり、スラスラと推理を展開し事件を解決に導いてしまう増田教授。
SNAKEPIPEは増田米尊も大好きなんだよねー!(笑)
妄想する女ってことは、まさか増田米尊の女バージョンかいな?
新作の主人公、妄想する女の名前は宮藤希美。
日本人の女性にしては長身、痩せ型、ベビーフェイス、ショートカット。
知性と運動能力を兼ね備えている29歳、と聞くと
「ドラマに出てくる感じの女刑事」
と思ってしまうけれど、宮藤希美には黒いセルフレームのメガネと酒好きが加わる。
この2つが加わったことで「妄想女刑事」になるのである。
実はSNAKEPIPEも、ド近眼で激しい乱視のため、長い年月ハードコンタクトレンズを使用していた。
ところがハードコンタクトレンズは目にゴミが入ると激しい痛みと共に、涙がボロボロ!
化粧まで崩れてしまい、大変な思いをすることがしばしば。
ここ数年は、ほとんどコンタクトの使用を控え、メガネにしているのである。
宮藤希美と全く同じ黒いセルフレーム!(笑)
「一般人とはかけ離れたセンスのダサいフレーム」
と書かれていて、ショック!
宮藤希美とSNAKEPIPEは同じ感覚の持ち主なのかも?(笑)
その宮藤希美とコンビを組むのが、42歳の独身で、福々としたほっぺたを持つ美少女マニアの荻野正則である。
この荻野正則を表現する際に用いられたのが、七福神。
「恵比寿さま、もしくは布袋さま、あるいは大黒さまに似ている」とのこと。
確かにこの区別を付けられる人ってあまりいないよね?
Wikipediaで調べてみたら上の画像を発見。
ちょっと編集して並べてみたんだけど、どお?
やっぱり区別つかないなあ。(笑)
更に「マントヒヒの尻のような顔」って表現もあったから、こちらも画像検索。
ははあ、なるほど。
マントヒヒの尻っていうのは、出っ張っているんだね。
しかもその部分だけ毛がなくてむき出しでピンク色なんだ!
うーむ、こんな赤ら顔の40男で美少女マニアというのは、かなり不気味かも。(笑)
そんな荻野正則と宮藤希美がコンビを組んで事件を解決していくのである。
※注意して書いているつもりですが、万が一ネタバレになる記述があった場合はお許し下さい。
事件ファイル1 独身中年ゴシチゴ暗号事件
「マントヒヒの尻のような顔」こと荻野正則の元に、かつての同級生であり、親友でもあった福井義男から、意味不明の手紙が届くことから話が始まる。
事件ファイル名にある「ゴシチゴ」とは、「五七五」、つまり俳句のこと。
その謎の手紙は、俳句のような文章の羅列だったのである。
事件ファイル1にはたくさんの俳句や俳人の名前が登場する。
ほとんど俳句の世界について知らないSNAKEPIPEなので、自由律俳句というジャンル(?)にはびっくり。
「定型から自由になろうとすることによって成立する俳句」のことを指すらしく、感情表現が重要な世界みたいだね。
小説内に出てくる自由律俳句を読んでいると、一行だけの詩のようにも感じてしまう。
「単なる一行詩がそのまま自由律俳句となるわけではない」と、Wikipediaに注意書きされているので、難しいところだね。(笑)
鳥飼先生の作品は人名がユニークで、かつて「 好き好きアーツ!#8 鳥飼否宇 part2」では「爆発的」の登場人物の名前当てクイズに挑戦したSNAKEPIPEとROCKHURRAH。
今回の作品では、人名は県名にされてることが多かったね。
荻野正則の親友は福井、福井のアパートの住民に千葉、富山、石川。
宮藤希美の先輩女性刑事の名前まで秋田汐里、と県名になってるね!
そしてとても興味深かったのが、宮藤希美のキテレツで珍妙な推理の中に横溝正史作品からインスパイアされた説を展開している点。
事件ファイル1には「獄門島」(とははっきり書かれていなかったけれど)が登場していた。
確かに「獄門島」も俳句が出てきた事件だったよね!
言うまでもなく、横溝正史のトリックをそのまま使った作品ってことじゃないので、あしからず。(笑)
宮藤希美の当てずっぽうな推理や荻野正則との会話のやり取りはとても楽しく読めたけれど、メインであるはずの(?)事件の解決はあっさりしていてびっくり!
「やだっ、解けちゃった!」という言葉が宮藤希美から飛び出す。
これがこのシリーズに必ず出てくる宮藤希美の決め台詞なのである。
事件ファイル2 通勤電車バラバラ殺人事件
JR山手線内で切断された男性の左腕が発見される。
そしてまた都営大江戸線内でバラバラ遺体が発見されるのである。
こんなニュースを聞いたら「何事か?」と耳をそばだてること間違いないだろうな。
確かに日本人は野次馬が多く、猟奇殺人事件が好きなのかも。
長野、山口、福岡、志賀、奈良、徳島、逢坂(おうさか)、若山(わかやま)、とまたもや県名を人名にした人物達が登場する。
大阪や和歌山では無理があるため、違う漢字が充てられてるのがミソ!
そして今回もまた横溝正史作品「蝶々殺人事件」を持ち出す宮藤希美。
酒を飲み、酩酊状態になったところで繰り広げるトンチンカンな迷推理も相変わらずである。
事件ファイル2で、「グランドホテル方式」とでも言うのか、昔観た「ショート・カッツ」という映画を思い出した。
注意深く読んでいかないとね!(意味深発言)
事件ファイル3 日本観光コスプレ変死事件
もうこのタイトルからして、「鳥飼先生らしい!」とニヤリ。(笑)
詳しくは書かないけれど、ベルギー人の被害者が発見された時の様子が笑ってしまうような状況なのである。
変死体なのに笑ってしまう、というこのあたりのバランスが絶妙だよね!
そしてまたこの変死事件を担当するのが、宮藤希美と荻野正則のコンビなのである。
美少女には目がない荻野正則は、美少女フィギュアをコレクションしたり、アイドルのコンサートに足を運んだりする40男。
当然のように美少女アニメにも詳しいことから、事件解決に向けたヒントを出す場面が非常に面白かった。
「ナース戦隊看護レンジャー」って、本当にありそうだもんね?(笑)
その荻野正則の趣味のせいで、コスプレさせられるハメになる宮藤希美は災難だったけど!
香川、宮崎という人物が登場する。
今回は「本陣殺人事件」が会話の中に出てくる。
エルキュール・ポアロはベルギー人だったんだっけ?
アガサ・クリスティ読んでたのは中学時代だったなあ。
懐かしい名前を目にしたよ!
今回も記憶力を試されている感じね。(笑)
事件ファイル4 先輩刑事モンペで殉職事件
今回の事件4はタイトルだけですでにいくつかの情報が入ってるよね。
「先輩刑事」「モンペ」「殉職」。
上述した中に「先輩」という言葉を使っているし、「殉職」という言葉も組み合わされていると「もしかして?」と想像してしまう。
「モンペ」だけは謎!(笑)
岡山、宮城が今回の登場人物。
こうしてみると確かに県名が苗字になってることって多いんだね。
横溝正史作品は「悪魔の手毬唄」!
市川崑監督の映画を観た時に、SNAKEPIPEが一番怖かったのは「原ひさ子」!
正座をすると腰が曲がってほとんど畳につきそうなのに、毬をつきながら歌うんだよね。
恐らく毬が弾む距離は10cmくらいだったのではないだろうか?
今でもあのシーンを思い出すと怖くなるよ。
おおっ、またもや記憶力テストだ!
実を言うとSNAKEPIPEは2回読んでから感想をまとめている。
1回目はストーリーを追うことに集中。
で、2回目になってから県名と記憶力テストについて確認しながら読んだんだよね。(笑)
事件ファイル5 世界遺産アリバイ幻視事件
アメリカ人ドキュメンタリー映画監督が、杉並区で起きた殺人事件の重要被疑者として防犯カメラに写っていた。
しかし当の本人は小笠原諸島にいた、とアリバイを主張。
そのアリバイ崩しを目的に、宮藤希美と荻野正則コンビが小笠原諸島の母島に出向くことから話が始まるのである。
母島にある「ペンション乳房山」という名前がおかしい!
英語にすれば「ペンション・ツイン・ピークス」なんだよね。(笑)
ありゃ、でも本当に「乳房山」があるとは知らなかったよ。
宮藤希美が疑問に感じた「父島で一番高い山の名前」については、SNAKEPIPEも同感だった。
調べてみると…えっ、朝立ち山?本当?(笑)
長崎、熊本とまた県名の苗字が登場。
そして横溝正史作品は「八つ墓村」である。
SNAKEPIPEが観たのは野村芳太郎監督版なので、残念ながら金田一耕助役は渥美清だったんだよね。
渥美清はやっぱり寅さんだから、なーんか違う!
SNAKEPIPEが一番馴染み深いのは、石坂浩二が演じる金田一。
石坂浩二で「八つ墓村」が観たかったなあ!
事件ファイル5の最後の最後でまた「あれ?」と思ってしまったSNAKEPIPE。
事件ファイル4までとは違う幕切れだったね。
5つの事件を通して出てきたのが「ロッターズ・クラブ」というバー。
何故だか宮藤希美が酩酊し、捜査に行き詰まった時にだけ登場する。
そのバーのバーテンダー・御園生独、がヒントになるような発言をすることで、宮藤希美の「やだっ、解けちゃった!」を聞くことになるのである。
「ロッターズ・クラブってどういう意味だろうね?」
と聞いたSNAKEPIPEに
「ハットフィールド・アンド・ザ・ノースのアルバムのタイトルだったんじゃないかな」 と即答するROCKHURRAH。
さすがによく知ってるね!
SNAKEPIPEは全く知らない世界のバンドなんだな。
ハットフィールド・アンド・ザ・ノースはイギリスのプログレッシブ・ロックバンドとのこと。
鳥飼先生の作品にはジャーマン・ロックやプログレッシブ・ロックのネタが多いのもポイントなんだよね!
「妄想女刑事」はタイトル通りに、宮藤希美があるフレーズや見て感じたことから、自分の世界の中で妄想に浸っている様子が面白かった。
当てずっぽうな推理も「本当に刑事か?」と思ってしまうほど、珍妙で愉快なものが多かったし、「鳥飼先生らしい!」と吹き出しそうになるシーンも多くて楽しく読ませて頂いた。
語り手が宮藤希美本人でなかったせいもあるけれど、SNAKEPIPEには宮藤希美を想像し難かったのが残念。
SNAKEPIPEの個人的な趣味で言うと、宮藤希美よりもオギッペのほうを主役してもらったほうが好みなのかもしれないね?
でもそれだと増田米尊とキャラクターが似てしまうのかな。(笑)
またまたありがとうございます。少しでも楽しんでいただけたのなら幸いです。カンタベリー系はあまり聴かないのですが、”Rotter’s Club”ってのは名前がいいなと思って、使いました。
いずれ、増田米尊物も書きますね。
話は変わりますが、2,3日前にストレートなUKパンクが無性に聴きたくなりました。ところがワタシが所有してるのはThe StranglersとかWireばかりで、ちょっと気分が違うんだよなと思いつつYouTubeでいろいろ聴きあさって出た結論がThe Damned最高! と、こちらのブログでもまさしくワタシが観たばかりの’Love Song’が取り上げられているではないですか! あまりのシンクロぶりに驚きました。
鳥飼先生
今回もコメントして頂き、ありがとうございます!
「妄想女刑事」は今までの鳥飼先生の作品とは違った手法で(トリックも含めて)トロンプ・ルイユみたいで面白かったです。
ストラングラーズやワイアーはROCKHURRAHも聴きまくっていたそうで、そういう好みが似通っていた事も光栄に思います。
こんな名もない2人のブログですが、これからも興味ある事柄を書いてゆきたいと思います。
ずっと応援しています!
増田米尊物も楽しみにお待ちしております。(笑)
本当にありがとうございました。