ROCKHURRAH紋章学 レーベル・マーク編

【紋章学にちなんで昔の西独逸、地方自治体の構成図。今見てもカッコイイね】

ROCKHURRAH WROTE:

タイトルは大げさだが、やろうとしている事は単純明快。世の中に溢れているロゴマークとかについて語ってみようという誰でも考えつきそうな企画だ。
ただ、ROCKHURRAHがやるからにはやっぱりウチらしく、という切り口で出来たらいいなと思っている。

第一回はやはりROCKHURRAHにとって馴染みの深い、レコード・レーベルのロゴマークについてだ。何度かこのブログを読んで下さっている方には言うまでもない事だが、今回も70〜80年代のパンク、ニュー・ウェイブ限定で話を進めてゆこう。さらに今回もよりによって選んではみたものの、到底盛り上がる話も書けそうにない。最初から企画倒れになりそうな予感満載。まともに書いてたら書いてる本人が苦行となりそうだし、自動筆記の境地でやってみるか。

KOROVA RECORDS
見ればわかる通り、単なる牛だ。これは見る人が見れば一目瞭然、「時計じかけのオレンジ」に登場するコロヴァ・ミルク・バーから連想したレーベル名なのは間違いない。あらゆる意味で革新的だった映画だが、登場する暴力的な若者はナッドサットという独自のスラング(ロシア語由来とのこと)で会話をする。その影響をストレートに表現したのがコロヴァ・レコードのマークというわけだ。ご丁寧にも「時計じかけのオレンジ」と同じような字体にしているから、より一層わかりやすいね。
1980年にデビュー・アルバムをリリースしたリヴァプール発の大型新人、エコー&ザ・バニーメンのヒットにより一躍知られたレーベルなんだが、他にもぽっちゃり型ネオ・サイケの雄、ザ・サウンドやデビュー・シングルのみリリースしたテンポール・テューダー、ケバ顔&水玉で有名な二人女子、ストロベリー・スイッチブレイドなども在籍していたっけか?
レコード盤のレーベル部分もピンクと黄緑というピストルズ風カラフルな色合いでいかにも当時のニュー・ウェイブ真っ盛りの派手さ、そこが良かったな。
何と、デザインについてはほとんど語ってなかったな。というか、ただの牛です。

COCTEAU RECORDS
フランスの大型詩人(巨人という意味ではなくてマルチな活躍をしたアーティストという意味でROCKHURRAHがテキトウに命名)、ジャン・コクトーへの傾倒をストレートに表現したのがコクトー・レコード、何て当たり前の説明だろう。この人の描く漫画、落書きのような簡素なドローイング、そしてサインもそれだけでいっぱしのデザインになってるところがすごい。いかにもサラサラっと描いてる感じだし、それが本業でもないのに、さすが多才。
さて、このコクトー・レーベルを設立したのは70年代にビー・バップ・デラックスを率いていたビル・ネルソンだ。そこではギタリスト兼シンガーだったわけだが、後のバンド、レッド・ノイズやソロとなってからはギター、ベース、ドラムにシンセサイザーなどの主要楽器をほとんど自分一人で担当している場合もあった。その辺のマルチな才能もコクトーに相通ずるところなんだろう。とにかく自分の目標で憧れを直截的に表したのがこのレーベルというわけだ。
そこまでの心意気は立派だが、コクトー・レーベルにはビル・ネルソン本人以外にはこれといって目立つアーティストがいなく、彼の秘蔵っ子と言えるようなバンドもいない寂しい状態だったのは確か。唯一、80年代にちょびっとだけヒットしたシーガル・カット(髪の毛の両サイドがかもめの羽根のように開いてる)の変なヤツ、ア・フロック・オブ・シーガルズがこのレーベル出身という程度か。デビュー曲のみでヒットした「I Ran」は確かメジャー移籍後だったから「あれ(シーガルズ)に目をかけてやったのはワシじゃよ」などとは言えない状態。他にはスキッズ解散後のリチャード・ジョブソンが詩の朗読をしたものやビル・ネルソンの弟イアン・ネルソンがやっていたフィアット・ルクスなどなど、何だか家族・友人といった内輪の世界でやっていた私家レーベルという印象がある。
あっ、またしてもデザインについて何も語ってなかった。というかビル・ネルソン要素は全くなくてただのコクトーです。

KABUKI RECORDS
歌舞伎もカブキ・ロックスも特に興味はないが、外国人が日本の文化について目をつけて紹介したようなものを見るとつい見入ってしまう。その辺の感覚を深く掘り下げて語るほどのヒマはないから考察はしないが、単なる外国かぶれなのかね?
屏風で同じようなものがもしあったとしても特に何とも思わないけど、それがスカジャンの柄になったらカッコイイと思う、そういうのと一緒か。
まあそれは特に関係ないが日本の文化、歌舞伎をレーベル名にしたのがこれだ。単にKABUKIと下に書いてあるだけで何か洋風、カッコイイと思ってしまうROCKHURRAHは単純すぎる気もする。絵を見てもよくわからないがおそらく歌舞伎の一場面なんだろう。
このKABUKIレーベル、たまたま持っていたKissed Airというアイルランドのバンドのレーベルらしい。ちょっとファンクな要素があるけど全体としてはダークなトーンで地味なバンドという印象だ。ギャング・オブ・フォーとかグラクソ・ベイビーズとかその辺を小型化したような音楽に感じる。他にはマイクロディズニーとかオペレーティング・シアターなどもここの出身なんだが残念なことに名前程度しか知らない。だったら書くなよー、といういつものROCKHURRAHのパターンになってしまうが、好きじゃないものについてでもこんなに長文書けてしまうのも何かの才能、まあ良いではないか。
デザインは特にこのレーベル特有のものではなく、ただの歌舞伎です。

MERCIFUL RELEASE
最後にやっと紋章っぽくなってきたな。んがしかし、このマークについて何か書けって言われても「よくわからん」としか言いようがないよ。トホホだよ。
かつてプラモデル好きでよく作っていたROCKHURRAH(少年時代)だが、その当時は人体模型のようなプラモが確かあったように記憶する。しかし戦車や戦闘機、サンダーバードやマイティジャックの秘密基地とかそういうものにばかり興味あったので、人体模型のような世界には走らなかった。そっち方面を極めて今の自分が形成された、などと言えた方がROCKHURRAHっぽいような気がするが。本当は血を見るのも解剖も大嫌いだがイタリアにあるラ・スペコラ解剖博物館所蔵の人形などを見ると、無条件に見に行きたくなってしまう。
前置き長すぎて何を書こうとしてたか忘れてしまったが、このマーシフル・リリースのシンボルが人体模型をちょっと思わせる、という一文を書きたかっただけ。とりとめのない割には大した事書けなくて申し訳ない。
このマーシフル・リリースはポジティブ・パンク、ゴシックの帝王と呼ばれたバンド、シスターズ・オブ・マーシーがほぼ独占していた。このバンドのファン以外は「何これ?」の世界だろうと推測はつくが、大きくても小さくてもレーベル・マークなんてのは作った人(あるいは選んだ人)の好き勝手。外部の人にとっては意味不明でも本人にとって何か意味があればそれでいいんだろう。
紋章学と銘打っておきながら結局デザインについては何も語らなかったなあ。

というわけで駆け足、企画倒れの記事になってしまったようだが、世の中には至る所にロゴ・マークが転がってる。まだまだ色々な切り口で語る事が出来るはずなので、これからも新シリーズとしてやってゆきたいと思う。

では発売日に買った「ゼルダの伝説 スカイウォードソード」の攻略の続きでもやりますかな。もう一応終わったけどギラヒム様、強すぎ。

収集狂時代 第1巻 高額アート編#01

【これが紀元前3000年の作品「Guennol Lioness」。素晴らしい出来にうっとり】

SNAKEPIPE WROTE:

先日テレビで「最も値段の高い写真」が紹介されていた。
オークションで付いたお値段が3億3千万!
ほー、写真にもそんなに高いお値段がつくんだなあと感心してしまった。
「写真は芸術ではない」
という風潮が昔にはあって、複製できる写真は一枚しか現存することがない絵画に比べると軽く見られがちだからね。
またいつひっくり返るのか判らないけれど、今のところの写真部門第一位の最高値を付けた写真がこちら。
1955年ドイツ生まれのアンドレアス・グルスキーの作品「Rhein II」(1999)である。
スティッチング技法という聞きなれないテクニックを使用して制作されているとのこと。
これは何枚もの写真をつないで一枚の写真にする方法なんだって。
そのためキメの細かい、大きな作品に仕上げることができるそうである。
今回の作品もかなり大きく81 x 140インチ…ってことは205.74 × 355.6cmとのこと。
そうね、写真としてみるとかなり大型作品になるんだろうね?
恐らくほとんどの人がこの作品を観ても意味不明だと思うけれど、観る人によっては高い価値を持つ作品なんだろうなあ。
きっと実物を鑑賞しないと解らないような気がするよ
なーんて観ても解らなかったりして?(笑)。
アンドレレアス・グルスキーという写真家は2007年にも「高額写真ランキング1位」になったことがあったらしく、その時は「99 Cent II Diptychon」という作品で2億5千万円也!
ひゃー、すごいねこの5年間で6億近くを手にするとは!
写真家ってなかなか金持ちになれないと思うんだけど、グルスキーは別格なのかな。
写真家というよりも現代アートに近い感じがするしね?

写真家で2番目に高い値が付いたのはシンディ・シャーマンだって。
1981年に制作された「アンタイトルド」シリーズ、例のシンディが女優みたいに自身を着せ替えてるセルフポートレートね。
これが今年の5月に$3,890,500、ということで2億9千800万、ほとんど3億円の値が付いてるとはすごいねえ!
やったね、シンディ!(笑)
高額写真のリストを見ると、エドワード・スタイケンアルフレッド・スティーグリッツリチャード・アベドンアッジェなどの大御所写真家の名前もあってちょっと驚き。
現代アート寄りの写真が高額、と決まってるわけじゃないんだねえ。
ふーむ。

では絵画部門はどうなってるんだろう?
これまたいつ順位が変わるのか判らないけれど、現段階での一位はジャクソン・ポロックの「No. 5, 1948」で、お値段なんと140ミリオンダラー!
ってことは…ひゃっ、107億!!!
しかもこれ、現在のレートで計算してるからねえ。
ここまでの円高じゃなかったらもっとお高いんだろうね。
見慣れない桁数でパッと金額がでてこないよ。(笑)
2位はデ・クーニングの「Woman III」で137.5ミリオンダラー、105億円也!
1位と2位の差がたったの2億か、と思ってしまったSNAKEPIPEがおかしいのかな?
金額が巨大すぎるから、1、2億の違いじゃ驚かなくなってくるから不思議だよね。(笑)
はい、続いて3位はグスタフ・クリムトの「Portrait of Adele Bloch-Bauer I 」、135ミリオンダラー、103億ね。
2億ずつの違いだから、きっと近い将来また順位の変動がありそうだよね!
その昔、調べてみたら1987年だったけど、安田火災海上が「ゴッホのひまわり」を当時の金額にして58億で購入というニュースを聞いた時には「すごい金額!」って思ってたけどねえ。
ちなみに日本人で高額落札者として名前があるのが大昭和製紙(現・日本製紙)代表取締役名誉会長だった齊藤了英って方。
1990年ゴッホの「Portrait of Dr. Gachet」を125億円で、ルノアールの「 Bal du moulin de la Galette」を119億円で落札してるんだねえ。
しかもこの2枚を買ったのが2日違い!
3日間で240億円を使うってすごいよね。
なんてバブリーな話題!(笑)

続いて彫刻部門!
10位以内に3つの作品が入っているのはジャコメッティ
104、53、27それぞれミリオンダラーってことで総額約140億円。
さすがジャコメッティ、知名度が違うよね。
彫刻部門は他にピカソやマティスが入ってることにちょっと驚き。
更に驚いたのが紀元前の作品が2つも10位以内にラインクインしているところ。
当然ながら「作者不詳」の作品なんだよね。
美術館で所蔵されていたけれど、オークションにかけられたみたい。
美術館とか博物館に展示されていたような歴史的にも美術的にも価値がある作品を自分のモノにするってどんな気分だろうね?
Guennol Lioness」という名前で呼ばれているメソポタミア文明(紀元前3000年)の彫刻は、人間のようにも見える不思議な動物をイメージしているようだ。
写真で観るだけでもその作品にはとても強い力を感じることができる。
恐らく岡本太郎が目指していたモノに近いんじゃないかな?
現代人にはとても真似ができそうにない、ピュアな作品だと思った。

美術品の値段というのは、恐らく買い手が決めることがほとんどで、その買い手側の何かしらの事情によって高額で売買されたり、されなかったりするんだろうね。
好事家が「絶対この作家の作品買う!」って決めたら、相手が「うん」と言うまでお金を積み上げるだろうし。(笑)
時代の変化が作家の評価に影響する場合もあるしね。
デパートで売られているような物品と違うから、コストに対しての利益を考えて値段が決められる種類のものでもない。
それなのに億単位のお金が動く世界、すごいよね!
世界中にたくさんのコレクターがいて、お金持ってるんだなーと改めて知ったSNAKEPIPE。
特に2000年を過ぎてから余計に高額出費に拍車がかかっているからね。
このコレクター関係の企画、また書いてみたいと思う。

ビザール・ベッド選手権!3回戦

【森の中でぐっすりオヤスミ…うわ!ベッドから木が生えてないか?】

SNAKEPIPE WROTE:

ここのところ急に寒くなってきて朝、ベッドから出るのが億劫。
このままずっと眠っていたい、と思う人多いんじゃないかな?(笑)
かくいうSNAKEPIPEは子供の頃から変わらず、冬に限らずいつでもネムイネムイ病状態の何時間でも眠っていられる眠り姫。(プッ)
心地良い睡眠には、快適なベッドや枕が必要だよね!と思いながらもついつい気にして見るのはビザールな逸品!(笑)
心地良さ、よりも面白さに興味があるってことだね。
今まで世界のビザールな椅子を紹介した記事「ビザール・チェア選手権」を2回書いているけれど、今回は「ビザール・ベッド選手権」とタイトルを変えてまとめてみたいと思う。

実用性とファッション性を兼ね備えているな、と感心した逸品がこちら!
120個のボールを組み合わせて作られている、ボール・マット。
自由自在にカタチを変えることができるので、ベッドにもソファにも早変わり!
折り返せばサンドイッチ状態の布団にもなる優れものね!
前回の「ビザール・チェア選手権!2回戦」で紹介した「パイプを使った椅子」も同じように自分の好きなカタチに変化させることができるタイプだったけれど、こちらのベッドは柔らかい素材で、しかもより簡単に形を変えることができるみたいね。
ちょっと寝転がりたい、なんて時にはもってこいだね!
要らない時には畳めそうな手軽さもグッド。
いいなあ、欲しくなったね。(笑)

こちらはかなりユニークなタイプ。
なんと!ベッドとは寝転がるモノ、という常識を根底から覆す逸品!
立って寝る、なんて今まで考えたことないよね?
確かに電車の吊革に捕まったまま、グラグラ揺れながら眠ってる人って見かけたことあるけど、あのままずっと眠り続けてるわけじゃないもんね?(笑)
このベッドは「完全な眠り」を考えて作られてるみたいなんだよね。
真ん中の男性、すっぽり挟まれて気持ち良さそうだし。(笑)
それにしても、わざわざ白いベッドに白の上下の寝間着に揃えなくても良いのにね?何か訳があるのかしら?
やったことがないから解らないだけで、もしかしたらこの方法もアリなのかも?
一度試してみたいね。

こちらもかなり特殊なカタチ!
なんと「横向きに寝る人用」のベッドなんだよね。
とは言っても…人によって横向いた時の手足の曲げ方っていろいろだと思うけど?
このベッドに寝た時には「絶対この角度に曲げてね」って強制的に決められちゃう。
しかも「たまには逆向きになりたい」と思っても無理!(笑)
左向きにだけ寝る人用のベッド。
逆にこんなベッドを探していた人には「待ってました」という商品なのかな?
ちなみにSNAKEPIPEは仰向けで寝ることが多いから、このベッドは無理だな。
欲しかったのに、残念!(うそ)

どうしても目に入ってしまう「シルバー色でピカピカ光る」インダストリアル系のこちらの逸品!
素材が何なのか不明なんだけど、恐らくステンレス製じゃないかと思われる。
足の部分は上向きに鋭く尖っていて、まるで凶器!
縁飾りも触るだけでかなり痛そうだしね。
どうやら、これは「ゆりかご」みたいなんだけど、赤ん坊向け商品にしてはかなり危険な雰囲気だよね。
上部に付属している「メリー・モビール」も、ほとんど釣り針って感じでシャープだし。
この「ゆりかご」が似合うのは「ローズマリーの赤ちゃん」くらいなもんか?(笑)
SNAKEPIPEはオブジェとして飾っておきたいけどね!
かなりグッときた逸品!素晴らしいね!(笑)

最後にこちら!
ホラー好きにはたまらない、怖いベッドね!
いやあ、それにしてもいくらホラーが好きでもちゃんと眠れるのか不安になりそうだよね。
血みどろベッドだからねえ。
一時ホラーっぽい映画を観ていたら、怖い夢ばかり見て夜中に悲鳴を上げたことがあるSNAKEPIPE。
こんなベッドで眠るどころか、部屋の中にあるだけで幻覚見えそう。(笑)
万が一、警察にでも踏み込まれたらなんて言い訳すれば良いのかも考えちゃうしね。
えっ、普通にしてれば警察なんて来ない?それもそうか!(笑)

世界には本当にたくさんの、見ているだけでワクワクしたり笑ってしまったりするビザールな逸品があるんだよね。
今回のベッド特集以外にもまだまだ面白いグッズがあるので、「ビザール・グッズ選手権」としてシリーズ記事にしていきたいと思う。
次は何をまとめていこうか。
楽しみにお待ち下され!(笑)

ゼロ年代のベルリン展鑑賞

【毎度お馴染み?展覧会告知ポスターを撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

「やっぱり文化の日には文化的なことがしたいよね」
と出かけたのが東京都現代美術館
2008年の文化の日にも全く同じようなことをしていたことに後から気付いたよ。(笑)
3年前に観たのは森山大道とミゲル・リオ=ブランコの共同展示で、「大道・ブランコ・コーヒー」としてブログにまとめてるね。
今回の現代美術館の企画は「1989年の壁の崩壊後、政治、経済、文化の実験場として世界の注目を集めてきたベルリンに住む18組のアーティストの紹介」とのこと。
元々そんなにドイツのアートについて詳しいわけでもないし、特にベルリンと限定されてしまった場合には一人のアーティストも知らない状態での鑑賞となる。
興味を感じることができるのかどうか判らないまま、文化的なモノを求めて美術館に向かったのである。

11月3日は薄曇りの、散歩を楽しむには丁度良い気温の日だった。
東京都現代美術館までの道のりには木場公園が広がっているので、毎回美術館を訪れる時には公園内をゆっくり散歩するのがならわしになっている。
今回もいつも通り散歩を楽しみながら歩くROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
都会の喧騒を忘れるような緑に囲まれた公園って気持ち良いねー!
かなりの数のランナーが走っていて、その足の筋肉に見惚れるSNAKEPIPE。
結構な年配の方も走り慣れた様子で、しっかりとした筋肉を保持。
うーん、負けていられませんな!
SNAKEPIPEも頑張って筋力アップしないとね。(笑)

現代美術館の館内は、文化の日だというのにガランとしていて予想していたよりずっと来客数が少なく感じた。
いいねー!ゆっくり鑑賞するには最適!(笑)
関係ないけど、チケットもぎりの女性が菊地凛子に瓜二つでびっくり!
絶対「似てる!」って言われてるんだろうなあ。(笑)
凛子似の彼女から受け取ったリーフレットを見ながら会場を歩く。
ほとんどのアーティストが1970年以降の生まれ。
ということで40歳以下の若手が中心の展覧会なんだね。
18組の中でSNAKEPIPEが気になったのは3組のアーティスト。
それぞれについて感想をまとめてみようかな。

この展覧会ですっかりファンになってしまったのが、シンガポール生まれのミン・ウォン
パゾリーニ監督1968年の作品「テオレマ」を再演した作品なのである。
「テオレマ」というのは、突然現れた謎の青年がきっかけで崩壊していくイタリアのブルジョア階級を描いた物語とのこと。
「実生活を営むヨーロッパにおいても、映画の中でも『よそ者』を演じるウォンが示すのは、アイデンティティとは演じることで存在し補強されるが、その存在を維持するためには演じ続けなくてはならない」
という意味のアートらしい。
この説明を受ければ「なるほど」と思う人もいるのかもしれないけれど、SNAKEPIPEにとっては「ウォーリーを探せ!」みたいに劇中の「ミン・ウォンを探せ!」状態で映像に目が釘付け。

パロディと言ってしまって良いのかどうか迷うところである。
演じている時のミン・ウォンはワハハ本舗梅ちゃんに似ていて、そこもまた大注目!
残念ながら「テオレマ」を鑑賞していないので、ミン・ウォンがどこまで再演しているのか判らなかったけれど、その成り切りぶりには目を見張るものがあった。
だって、家族全員を一人で演じちゃうんだもん!
主人、妻、娘、息子、家政婦、訪問者とざっと数えただけで6人!
特に女装シーンの熱演はすごい!
現代アートの鑑賞で腹を抱えて笑ったのは初めての経験だったかもしれないなあ。(笑)
結局ミン・ウォンがやりたいことは森村泰昌と同じなんだろうね。
森村泰昌は写真を使い、ミン・ウォンはその映像版っていう理解で良いのかもしれないね。
そして劇中の演じているウォン自身を肖像画として油絵にしている展示もあって、興味深かった。
このポストカードがあったら欲しかったなあ!(笑)

次に気になったのはフィル・コリンズの「スタイルの意味」という映像作品。
そう、元ジェネシスの…じゃなくて!(笑)
同姓同名の別人で、ターナー賞候補になったこともある1970年生まれのアーティストなんだよね。
イギリス生まれとのことなので、もしかしたら意外と多い名前なのかな?
ちなみにあっちのフィル・コリンズは1951年生まれだから60歳、還暦だね!(笑)
「スタイルの意味」という作品は、何故なのか解らないけど「Oi!/スキンヘッズのブーム」が起きているマレーシアが舞台。
1960年代にイギリスで流行した反体制的なスタイルである、Oi!/スキンヘッズの代表的なファッションであるMA-1にジーンズ、編上げブーツでイキがる若者の集団を記録した作品である。
熱帯雨林気候で、平均気温が27℃という国でMA-1着るのは暑くないか?(笑)
恐らく日本人もそうだと思うけど、マレーシアでOi!を気取っている彼らも、本場イギリス人からは僧侶に見えるんだろうね。
どこかの寺院で、仏像レリーフの前に立たせて撮影したのはそういう意味だったんじゃないかな?
「スキンヘッズのスタイルがいかに『ねじれ』を持って受容されているか」
に焦点を当てたそうなので、きっと「滑稽さ」を表したかったんだろうね。
以前ROCKHURRAHが「ROCK連想ゲーム」で紹介したことがあるジェネレーション69というシンガポールのOi!パンクバンドを知った時に感じた違和感と似た種類なんだろうね。(笑)

最後にもう一つ。
マティアス・ヴェルムカ&ミーシャ・ラインカウフの作品「ネオンオレンジ色の牛」。
これもまた映像作品だったんだよね。
前にも書いたことがあったけど、「現代アート」とされる作品で最近多いのが映像作品だから仕方ないのかもしれないけどね。
本当はチラッと観て「?」と思ったら最後まで観ないSNAKEPIPEなんだけど、今回は一応観たんだよね。(笑)
タイトルは「時計じかけのオレンジ」みたいで何が起こるのか想像がつかない感じだけど、実際の作品は単純なものだった。
地下鉄の線路内や橋の下などの「こんな場所で?」というような場所でブランコをする、というパフォーマンスを記録した映像だったんだよね。
アート、というよりはシルク・ドゥ・ソレイユなどのサーカスっぽい感じ。
なーんて例えで書いたけど、観たことないんだよね。(笑)
もしくは、いつでもどこでも同じ振り付けしてるVISAカードのCFに出演してるマットさんみたいな感じ、とでも言えば良いのか。(笑)
マティアス・ヴェルムカ&ミーシャ・ラインカウフは無許可でゲリラ・パフォーマンスを行うと紹介されていて、止まっているバスや電車の窓をゲリラ的に「無許可で」掃除するアートも行なっているとのこと。
ウチの近所で毎週同じジャンパー着て「ゲリラ的に」掃除している中高年の方々がいるんだけど、もしかしたらアレもパフォーマンスアートなのかも?(笑)

紹介した3つの作品共に共通して感じたのは「現代アート定義領域の拡張」かな。
それぞれをパロディ、ドキュメント、大道芸などと言葉を替えて紹介することもできる作品だったからね。
ただ、やっぱり全体的には物足りなさを感じてしまった。
SNAKEPIPEには現代美術館の常設展のほうが好みだなあ。
もっと面白い企画を用意してもらいたいと思うし、展覧会開催中に図録が用意できていないという事態は避けて欲しいよね。
9月下旬から始まっている展覧会なのに、未だに図録が出来上がっていないなんてちょっとひどい!
図録を購入するのが楽しみなSNAKEPIPEには、特にお気に入りの美術館だけに残念に感じてしまった。