誰がCOVERやねん5

【今回も80年代ネタ満載の独自路線で頑張るっちゃ(小倉弁)】

ROCKHURRAH WROTE:

ROCKHURRAHが最も得意とする音楽ジャンルは70年代のパンク・ロックとそこから発展していった70〜80年代のニュー・ウェイブなんだが、その辺を元ネタとするカヴァー曲ばかりを特集したのがこのシリーズ企画だ。

今回の趣向としてはあまり数多くのカヴァー曲が存在しないバンドのカヴァーを敢えて選ぶ、という難題に取り組んでみよう。

しかしカヴァーがあまり存在しない理由とは一体何だろう?

  • 原曲があまりにも素晴らしすぎて、または個性的過ぎてカヴァーしても自分の無力さに気づくだけというパターン。俺って才能ないのかなあ?
  • 元ネタのバンドがマイナー過ぎてカヴァーだと大きく明記しない限り誰も気づかないパターン。明記しなかった時に限って気づくヤツ続出で盗作呼ばわりされる。
  • 原曲が駄作で、なんかこれをカヴァーした自分が情けなくなってしまうパターン。あぁ恥ずかしい。

大きく分ければこんなもんか。もっとある?ROCKHURRAHはあまり理屈っぽくないと自分では思ってるのでこれ以上は考えられないのだ。

そういう被カヴァー率の低そうなのを、その場限りの思いつきで少し選んでみたので早速進めてみようか。

原曲は当ブログでもしつこいほどに何度も出ているビー・バップ・デラックスの1stアルバム「美しき生贄」に収録されている曲。
1974年から1978年までの間に6枚のアルバムを出した英国のバンドで初期はグラム・ロック寄りの音作りをしていたが、ビル・ネルソンのSF趣味をふんだんに盛り込んだ凝った楽曲で本国ではまあまあの人気だった。そのうちギターだけではなくシンセサイザーを多用して未来派ロックなどとも呼ばれたが、後の時代のニュー・ウェイブ、特にエレクトロニクス・ポップに多大な影響を与えたバンドだ。
あまり大した事は書いてないが当ブログのこの記事で特集してるからそっちも参照してみてね。

この曲は「空間の聖地」などと邦題がついてるようだが、個人的には「ロケット大聖堂」でいいじゃないか?と思うよ。
関係ないがイメージとしては「聖マッスル」と並ぶ伝説のカルト漫画「地上最強の男 竜(風忍)」に出てきた仏塔みたいなヤツ。
何とビー・バップ・デラックスの中で唯一、ビル・ネルソンがヴォーカルを取ってない(作詞作曲も別のメンバー)という珍しい曲でもあるな。

そんな曲をカヴァーしたのが全然接点がなさそうに見えるこの人、元ストレイ・キャッツのブライアン・セッツァーだ。
今の時代に誰でも知ってるとは言えないかも、という人物だがビル・ネルソンよりはよほどメジャーだろうな。
1980年代初期に流行ったネオ・ロカビリーという音楽ジャンルの中心的存在がストレイ・キャッツだった。ポールキャッツやロカッツ、レストレス、デイブ・フィリップスなどなど、ネオロカと呼ばれたバンド達は見た目も音楽もキメキメ(死語か?)でROCKHURRAHもかつてはネオロカなリーゼントしてたなあ。
ストレイ・キャッツはあまりにも王道過ぎて、聴くのも買うのも気恥ずかしかったからごく初期しか知らないけれど、ブライアン・セッツァーのギターはさすがにキレが違うな。
そしてこのライブ映像はもう随分歳取った恰幅の良い姿。
芸術的なリーゼントにタレ目、威勢のいいやんちゃ小僧だったあの時代を知ってるだけに少し悲しいよ。

セッツァー本人も「歌詞はひどいがギターは素晴らしい」というような発言しているようだったが確かにひどい歌詞。「俺のロケット大聖堂は宇宙を目指してるぜ」だってよ(笑)。ビル・ネルソンの作詞じゃなくて逆に安堵したよ。
原曲の方でもビル・ネルソンのギターは縦横無尽にはじけまくってて個人的には素晴らしいと思う。後にはギターはアンサンブルの一部となって、突出したギター・ソロが目立たなくなるバンドだが、この初期はまだ個人プレイで突っ走っていたなあ。

ビー・バップ・デラックスの曲はこれ以上再構築するのが難しいくらいに完成されたものが多いからか、これをちゃんとしたカヴァーでやったプロのバンドが少ないのかもね。

スキッズもウチのブログ「時に忘れられた人々【01】」で特集していたが、ROCKHURRAHに多大な影響を与えてくれたバンドだ。いや、別に自分で音楽作ってるわけじゃないから影響も何もないんだけどね。

スコットランド出身の彼らはロンドン・パンクの真っ只中、1977年にデビューした。
勇壮なスコットランド民謡を大胆にパンクとミックスさせてバグパイプのようなギター奏法と応援団風の体育会コーラスで仕上げた、というありそうでなかった正攻法ストロング・スタイル、壮大な音楽を得意としていた。
これを武器にスキッズは人気バンドとなってゆくが、バンドとして一番ピークの頃にバグパイプ奏法のギタリスト、スチュアート・アダムソンが脱退して自身のバンド、ビッグ・カントリーでまさかの大ヒットを飛ばす。
残った老け顔のリーダー、リチャード・ジョブソンはますます老成して、たかが20代前半にして渋いトラッドにのめり込んだ音楽を完成させてしまった。彼らの最後のアルバムはもうパンクもロックもなくて「土と伝統と共に生きる」というような内容が異色だったな。
その後ずっと老成して若年寄のまんまかと思いきや、1984年にはスキッズ×マガジンの残党とアーモリィ・ショウというバンドを組んでニュー・ウェイブの世界に舞い戻ってきた。上記の老成した境地が1981年の事だからわずか3年くらいの自然主義だったというわけか?

この曲は代表曲「Into The Valley」と並ぶスキッズ初期のヒット曲で陰影のある曲調が印象的な名曲。スキッズのアルバムは必ず威勢の良い曲とこういうマイナーコードの曲がバランス良く収められていて、サビの盛り上げどころが非常にうまいバンドだったな。
時代的にパンクの括りで語られる事が多かったけど、後のパワーポップにも充分通じるところがあったな。全盛期のライブを見たかったよ。

U2とグリーンデイが一緒にやってるカヴァーが有名なんだが王道過ぎて面白くない。
で、ROCKHURRAHが選んだのがドイツのVon Thronstahlというバンドがカヴァーしたもの。うーん、読めん。
何度も何度も書いてるように80年代のノイエ・ドイッチェ・ヴェレ(ドイツ産ニュー・ウェイブ)とかは好き好んで買っていたが、このバンドが出たのが2000年代前半あたりと言うから、さすがにもう世代が違うね。どうやらインダストリアル要素とフォークがミックスされたダークな感じのバンドらしいが、見ても聴いても「これだこれ!」というような高揚感は全然なくて、ああなんか最近のバンドっぽいね、くらいしか感想が湧かないんだよな。
ただPVの雰囲気はいかにもドイツ。この国でやっていいんかい?というようなナチ風の衣装はかつてのライバッハあたりを思わせるね。
いわゆる「ちょいナチ」系?ん、そんな言葉はないのか?
写真の写り方も往年のインダストリアル・バンドっぽくて方向性はわかるんだけど、生まれた時代が悪かったと思って諦めて下さい。

70年代パンクがじきにニュー・ウェイブと呼ばれる音楽に進化していった頃に異彩を放っていたバンドがワイヤーだ。

「ロックでなければ何でもいい」などというカッコイイ名セリフが語り継がれているが、ROCKHURRAHはこういう言葉に変な理屈はつけたくない。
その時代に言う普通のロックとはパンクロック誕生以前の古い世代のロックの事で間違いないだろう。そしてワイヤーは確かに既存のロックからの影響を感じさせない音楽を作り出したバンドだと思える。

後にDOMEあるいはギルバート&ルイス名義でアヴァンギャルドな音響工作に走る2人と、サイケデリックだが奇妙にポップという独特の世界を紡ぎ出すコリン・ニューマン(+ロバート・ゴートゥベッド)と完全に2つに分かれてしまうんだが、この4人による個性のぶつかり合いが様々な音楽を生み出す。
まだこの頃にはジャンルとして確立されてなかったニュー・ウェイブの音楽ジャンルのいくつか、その元祖的な事をすでにワイヤーは1977年にやってしまっていた。要するに実験性に富んだ曲作りをしてたってワケね。
そういう先進性を持っていたものの、演奏力はあまりなかったために曲はシンプルでスカスカ、このイビツな感覚こそが真骨頂でもある。
アートの世界で言うならこれはダダイスムと言うべきかな。

ちなみに4人組のバンドで真っ二つに分かれてしまって片方は実験的、片方はポップ路線と言うとどうしてもそれより前の時代の10ccとかぶってしまうが、その辺は「ロックでなければ何でもいい」などと言ったバンドと対比する自体が間違ってるのか。

関係ないがROCKHURRAHは小倉(福岡県)の図書館の視聴覚室で何度もワイヤーの「ピンク・フラッグ」をリクエストして聴いてた思い出がある。買えばいいのになぜか図書館で聴いてたなあ。

この曲は「The 15th」と並んでワイヤーの中でも最もポップで聴きやすいのでカヴァー曲も多少存在しているな。上に書いた「ピンク・フラッグ」ではなくて2ndアルバム「消えた椅子」に収録されている。

さて、これをカヴァーしたのは在英日本人のハーフ娘がヴォーカルという変わり種、ラッシュというバンドだ。
カタカナで書くと写真左(RUSH)と間違いそうだが右の方(LUSH)ね。ヴォーカルのミキは真っ赤な髪の毛で日本人としては微妙な顔つきだが、母親が「プロテクター電光石火(70年代の海外TVドラマ)」に出てた日本人女優という微妙な人物なので、きっと遺伝なんだろうな。男女二人ずつという構成のこのバンドは1980年代末から90年代初頭にかけて英国4ADレーベルで活躍した。
4ADと言えば初期はバウハウスやコクトー・ツインズ、バースデイ・パーティにデッド・カン・ダンスなどなど、80年代ニュー・ウェイブの中でも特に暗黒な香りのするバンドの宝庫だったレーベルだ。前述したワイヤーのコリン・ニューマンもギルバート&ルイスもここからレコードを出してたな。
そういう初期の大物たちがひしめいてた最盛期の4ADからすでに10年近く経ったわけで、 ラッシュが登場した頃の音楽シーンは時代を引っ張ってゆくほどの大きな流れがなかった。彼女たちの音楽はポップな時もあるし暗い時もある、というどっちつかずの印象。正直あまり多くは知らないが、まあ90年代的って事なんだろうね。←安易な表現。
このバンド、ワイヤーの事がよほど気に入ってるみたいで彼らのデビュー曲「マネキン」もカヴァーしている。

さて、今回も何だかよくわからんものばかりをチョイスしてしまったが、カヴァー曲はまだまだ尽きない。これからも安易な選曲でたびたびこのシリーズ企画を続けてゆくからね。

ではまた来週。

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2 Comments

  1. ROCKHURRAH

    鳥飼先生。

    毎度毎度言ってることなので煩わしいとは思いますが、またまたコメントを頂き本当にありがとうございます。
    森高千里はあまり知りませんでしたがこんな曲をやっていたんですね。

    ワイヤーは他にもアメリカのフィーリーズが「アウトドア・マイナー」と「マネキン」、今回書いたラッシュと全く同じ曲をカヴァーしていました。ラウンジ・リザーズやペル・ユビュにも参加していたアントン・フィアーもこのバンドの出身ですね。

    まだまだ80年代音楽ネタ満載のブログを書いてゆきたいと思いますので、これからもよろしくお願いします。

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