【五木田智央のネタ帳?のような壁一面を埋め尽くす作品群】
SNAKEPIPE WROTE:
先日書いた「収集狂時代」の中でマーク・ロスコについて触れた後、無性にロスコと対面したくなってしまった。
DIC川村記念美術館では、現在何の展示がされているのかROCKHURRAHが調べてくれたところによると、五木田智央という1969年生まれのアーティストの展覧会が開催されているという。
モノクロームの油絵はちょっと珍しいし、ROCKHURRAH曰く、シュルレアリズムっぽいとのこと。
3連休を利用して行ってみようか。
キレイな秋晴れの日、久しぶりの佐倉である。
車を持っていないROCKHURRAHとSNAKEPIPEはいつも電車で出かけ、川村記念美術館の送迎バスを利用して美術館に行っている。
今まで何度もその方法で行っているけれど、今回はバス停で待っている人数の多さに驚く。
今まではいてもほんの数人、時にはROCKHURRAHとSNAKEPIPEの2人だけで、バスが貸し切り状況になったこともあった。
なんと今回は補助席以外の席が全部埋まっている状態!
路線バスクラスの大型バスなのに、満席って!
しかもバスで20分以上もかかる僻地にある美術館なのに?(笑)
えっ、五木田智央ってそんなに人気あるの?
ROCKHURRAHの見立てでは、美術館目的というよりは、併設されている自然散策路の紅葉を目的にしている人が多いのではないか、と言う。
果たして本当にそうなのか?
バスを降りるとバス停近くにチケット売り場が見える。
観察していると、バスから降りた乗客がチケット売り場に並んでいる!
えーっ、やっぱりほとんどの人が五木田智央展の鑑賞のために来てるんだ!とびっくりする。
人を見た目で判断するわけじゃないけど、とても現代アートに興味があるようには見えない方がたくさんいたので。(笑)
それにしてもバスが満員だったこと、チケット売り場に人が並んでいる光景は、川村記念美術館に限っては初めて見たので驚いた。
少し時間をズラしてからチケットを購入。
美術館への道すがら、見事に紅くなった紅葉を鑑賞する。
館内に入ると、先程行列していた人達はどこにいるのか、いつも通りのゆったりした空間が広がっているので安心する。
まさかとは思うけど、自然散策路に入るために間違ってチケットを購入した人もいたのかな?
まずは常設展から鑑賞していく。
何度か来ているので、作品の配置を多少は覚えていて、前回来た時とは違う作品が展示されていることに気付く。
常設展も少し変化があるんだね!
ジョゼフ・コーネルの作品は、前回と同じようにコーネル・ルームとして単独の部屋で展示されていて嬉しくなる。
フォトモンタージュの作品と、箱の作品。
箱のオブジェはいつ見てもかわいいな!
マックス・エルンストの「石化せる森」も観られて良かった。
いよいよお待ちかねのロスコ・ルーム!
さすがに今回は途中で何度か他の客が入り、ROCKHURRAHとSNAKEPIPEだけの特別鑑賞会にはならなかったのが残念。
それでもなんとも言えない重厚な空間に身を置くと、自分の存在とロスコの絵との距離感が曖昧になってきて、トリップしちゃうんだよね。
自分が絵に溶け込んでしまったような。
無我の境地ってこんな感じかもしれないね?
ロスコルームを鑑賞し終えると、1階の展示は終了である。
続いて2階へ。
入ってすぐにジャクソン・ポロック!
フランク・ステラの大型作品は、いつ観ても迫力があるね!
最後の部屋が、今回の展覧会である。
実は五木田智央という名前は川村記念美術館のHPで初めて知った。
略歴によるとサブカルチャーに多大な影響を与えたイラストレーターとのこと。
どうやらミュージシャンのイラストで有名らしいけど、見たことあるのかな?
最近は画家として活躍し、ニューヨークのメアリー・ブーン・ギャラリーでは絵が完売ってすごいよね。
日本より先に海外で認められた、いわゆる逆輸入アーティストということになるらしいよ。
五木田智央展に関しては撮影オッケーとのことなので、バシバシ撮ってみよう!
入ってすぐに飛び込んできたのは、スクエアのキャンバスに描かれたモノクロームの作品群。
どうやら全て2014年の新作らしい。
余程筆が速いのか、かなりの数が並んでいる。
サラサラと描いた感じが出ていて、ちょっと会田誠を思わせる、人をおちょくったような雰囲気を感じる。
まるでリンチの「イレイザーヘッド」を彷彿とさせる謎の生物まで発見したよ。
これ、あの赤ん坊だよね?(笑)
既に発表されている、パロディ風の大型モノクローム作品群。
ピカソの絵画からパクった手が描かれているのを観て、笑ってしまう。
撮影した画像はピンぼけになってしまったけれど、判るかな?(笑)
他の作品も何かのパクリのように見える、どこかでみたことがあるような?
キリコやイヴ・タンギーなどの画家の影響について聞かれることが多いというのも納得だよね。
それにしても「影響」と「流用」の違いってなんだろうね?(笑)
左の画像は「Slash and Thrust」という2008年の作品である。
インタビュー記事で読んだ情報では、なんとこの絵は3時間で描いてしまったというから驚いてしまう。
かなり大型の作品だったし、描きこまれていたのにね!
ブルーを基調としたシリーズやオレンジ系の暖色のシリーズは、モノクロームに慣れた目には意外性を感じた。
何が描かれているのか判然としない具象画だから余計だったのかもしれない。
好みの問題だと思うけど、SNAKEPIPEはモノクロームの絵のほうが五木田智央らしさを感じるな!
初期の作品で、紙に墨や鉛筆で水面を描いているようなシリーズがとても良かった。
まるでリンチを思わせる黒々とした作品群は、今回の展覧会の中で1番好きだったな!
鑑賞しているうちに、五木田智央の自己破壊願望、つまり自殺願望のような衝動を感じたのは気のせいだろうか。
リンチの暴力性は完全に外に向かって放たれているため凶暴だけれど、五木田智央の場合は内側に向かう暴力なので、攻撃性は感じられない。
溜め込まれた怒りが黒色として静かに爆発している印象。
インタビューでは飄々とした雰囲気の五木田智央なので、SNAKEPIPEの思い過ごしかもしれないけどね?(笑)
「五木田智央 THE GREAT CIRCUS」を鑑賞して、パンク的な破壊衝動を強く感じたSNAKEPIPE。
実際「PUNK」というモヒカンの頭部を描いた作品もあったしね。(笑)
五木田智央が実際にはどんなジャンルの音楽を聴いたり、DJとして選曲してるのかは知らないけれど、根本にパンク魂があるような気がしてならないな。
DEATH DEATH DESTROY !って感じでこれからもG.I.S.M.っぽくいきましょー!(笑)