【ヴァニラ画廊入り口のポスター】
SNAKEPIPE WROTE:
2016年6月に鑑賞した「シリアルキラー展」は、その後も何度か展覧会を開催していたようだね。
「シリアルキラー展2022」の情報を知らせてくれたのは、6年前同様に長年来の友人Mだった。
友人MとSNAKEPIPEは鑑賞している展覧会だけれど、ROCKHURRAHは未鑑賞。
観てみたいというROCKHURRAHと一緒に、狂気の世界を再び覗き見ることにしたのである。
以前は銀座方面から歩いたはずのヴァニラ画廊だけれど、銀座8丁目に位置しているので、ほとんど新橋なんだよね。
今回は新橋から向かうことにする。
サラリーマンの街として有名な新橋で降りるのは、乗り換え以外では初めてかも。
心なしか銀座とは空気が違う感じがするよ。
蒸し暑くて、たまに日差しがあると体感温度が上がる。
ヴァニラ画廊は親切に、画像付きで道案内を載せてくれているので迷わないで到着!
オンラインチケットを予約しているので、チケットを提示しようとネットにつなげようとしたけれど、ヴァニラ画廊が地下2階のためか電波が入らないんだよね。
画廊側も心得ていて、名前を言うことで予約確認してくれる手際の良さ。
テキパキしているのは良いね!(笑)
コロナの関係で人数制限をしていて、1時間ごとの完全入れ替え制なので、6年前よりは快適に鑑賞できそう。
すでに並んでいるお客さんは若い女性2人組。
後ろに並んだのは40代くらいのカップル、次にはまた若い女性。
おそらく1時間に10名程度のお客さんだけ入場させているのかな。
これもまた6年前と同じだけど、「いかにも」な雰囲気のお客さんは見当たらない。
アイドルに歓声を上げているように見える女性たちなのに、シリアルキラーに興味があるとは。
人は見かけによらないんだね。
「いかにも」に見えた1位は、やっぱりROCKHURRAHだろうね。(笑)
いよいよ入場。
ヴァニラ画廊はAとB、2つの展示会場があり、所狭しと作品が並んでいる。
10名程度の入場でも、作品の前で立ち止まりじっくり鑑賞する人がいると、相当苦労して回避する必要がある。
シリアルキラーがどんな犯罪を犯したのかを説明する文章をすべて読むと、「じっくり」になっちゃうんだろうね。
6年前も今回も、撮影はすべて禁止。
カタログからの転載も駄目という厳しい条件のため、これから先の画像は別の場所で見つけた「シリアルキラー展」には展示されてなかった作品なのでご了承ください。
ヘンリー・リー・ルーカス(Henry Lee Lucas)
娼婦だった母親から虐待を受けながら育つ。
1983年に逮捕され、11人殺害の有罪判決を受ける。
逮捕後にFBIに協力していたことから「羊たちの沈黙」のレクター博士のモデルの一人と言われる。2001年、獄中で病死。
「シリアルキラー展」ではルーカスの自画像が展示されていた。
その絵は、左の画像とは似ても似つかない、穏やかな表情をした人物なんだよね。
シリアルキラーが描いたと言われなかったら、「バッド・アート展」に紛れ込んでいてもおかしくない雰囲気。
左は邪悪な存在そのもので、とても怖い絵だよね。
まさにシリアルキラーを表現しているので、「やっぱり!」と納得できてしまう。
自画像の時よりは格段に腕前が上達しているので、獄中でたくさん描いていたのかも。
育った環境が劣悪過ぎているので、違う家庭に生まれていたら、別の人生を歩んでいたかもしれないね。
ハーバート・ウィリアム・マリン(Herbert William Mullin)
高校時代には「将来最も成功する人物」に選ばれるほど、明るく人気があるスポーツマンだったという。
薬物中毒の果てに統合失調症となり、1970年代初頭に13人を殺害する。
アインシュタイン博士からの命令で大地震や自然災害から人類を守るためだった、と主張する。
現在も服役中で、2025年には仮釈放の資格がある。
マリンには「連なる山」の絵が多く、今回も青と白を使った作品が展示されていた。
アーティストが何枚も同じ主題の作品を描くことがあるのと似てるのかな。
絵だけを観る限りでは、薬物や統合失調症の影響は見受けられないように感じるよ。
構図もシンメトリーに近いし、光と影も正確に捉えられているよね。
2025年に仮釈放されたとしたら、マリンは78歳くらい?
1973年から50年以上獄中にいた後、社会生活を送ることができるのか。
ウェイン・ロー(Wayne Lo)
1974年台湾生まれのローは、パイロットの父親とバイオリン指導者の母親という恵まれた家庭環境で育つ。
若干7歳でバイオリニストとしてデビュー、音楽もスポーツもできる成績優秀な生徒だったという。
1992年、大学で銃を乱射、教授と学生を殺害し、4人に重症を負わせる。
現在も服役中。
シリアルキラーという定義からは、少し外れているように感じるローだけど、「シリアルキラー展」に入っていたので、作品を載せてみよう。
ローが台湾系アメリカ人というのが、作品観ても分かるよね。
シリアルキラー展で鑑賞したのは、人物の顔写真に刺繍を施したものだったけれど、載せた画像はドラゴンを美しく刺繍している。
写真にミシンをかけるアートはどこかで観たことあるけれど、印画紙にここまで精巧な刺繍をするとは驚き!
頭脳明晰で音楽もスポーツも万能だったのに、どこで間違ってしまったんだろうね。
ハドン・クラーク(Hadden Clark)
1970年代半ばから1993年の間に2名の女性を殺害。
他にも殺人を自供しているが起訴にはいたっていない。
殺害後食べていたことを証言している。
現在は矯正施設に収監中。
まるで小学校に通う女の子が描いたような絵。
これをシリアルキラーが描いたと聞くと、印象がまるで違うものに変化してしまう。
クラーク自身が少女を好んでいたせいか、にこやかに笑う少女ばかりをキャラクター化して描いているんだよね。
そして特徴的なのが、手話をしている少女を登場させること。
クラークの署名の他に、「Nikayla(ニカイラ)」というクラークの分身の署名も加えることがあるという。
クラークの作品は、Serial Killers Inkで購入できることが分かったよ。
大量に在庫があるらしく、2つで$50だって。
買ってみる?(笑)
オーティス・エルウッド・トゥール(Ottis Elwood Toole)
6件の殺人事件で有罪判決を受ける。
ヘンリー・リー・ルーカスと共謀して30人から50人の殺害を自供。
1996年刑務所内で病死。
ルーカスの絵こそ、まさにシリアルキラーが描いた絵として認識されるだろうね。
稚拙だけれど残酷に見える、いかにもシリアルキラーだから。
トゥールの顔も、出会った瞬間から悪人だと分かる顔立ちなので、この人物ならこの絵を描くだろうと予想できるほど。
育った環境が劣悪で、精神障害をわずらっていたという。
教育や躾、家庭環境がトゥールに影響を及ぼしていたみたい。
時代が違っていたら、別の未来が開けていたかもしれないよね。
6年前と2022版を見比べたことになるけれど、印象としてはさほどの違いはなかったように思う。
シリアルキラーと一般大衆に、それほどの違いがないんだよね。
非常に絵が上手かったり、筆跡が几帳面な素人なんて、世間にはたくさんいるし。
本当に紙一重の世界だなと感じたよ。
どこかで、ほんの少しだけ違ってしまった方向が、どんどん思いもよらぬ世界に歩を進めてしまったような。
6年前にはHN氏だけしか書かれていなかったけれど、2022版にはH.Nakajimaと記されていた。
なかじま氏は、ずっとコレクターを続けていることが分かった。
人間像への興味ゆえ、だという。
答えが見つかることはあるのかな?
また何年後か、シリアルキラー展に行ってみたいと思う。