エドワード・ゴーリーを巡る旅 鑑賞

20230507 top
【松濤美術館入り口の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE: 

初めて渋谷区立松濤美術館に行ったのは、2022年10月の「装いの力 ー 異性装の日本史」だったROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
独自の視点を持つ企画に興味を持ち、マメに情報をチェックすることにしたんだよね。
現在開催されているのは「エドワード・ゴーリーを巡る旅」という、絵本作家であるエドワード・ゴーリーの企画展だという。
今まで聞いたことがない名前だよ。
絵本の世界について知識がないから当然かな?(笑)
サイトに小さく載っている作品は、モノトーンでちょっと不穏な雰囲気が気になるよ。
半年前の「装いの力」の時は、ネットで事前予約した記憶があるけれど、コロナの対策が緩和された現在は、直接美術館に行ってチケットを購入する以前のスタイルに戻ったみたい。
事前予約をしても、先日の「佐伯祐三展」のように、みっしりと人を詰め込み、販売枠を大幅に広げる美術館もあるけどね。(苦笑)

まずはエドワード・ゴーリーについて調べてみようか。

1925 イリノイ州シカゴに新聞記者の息子として生まれる
1942 シカゴ・アート・インスティチュートに入学
1943 半年だけ美術を学んだ後、アメリカ陸軍に入隊
1946 兵役を終えハーバード大学に入学(フランス文学を専攻)
1953 ニューヨークに移住、出版社に就職
1956〜 ニューヨーク・シティ・バレエに傾倒する
1957 「うろんな客」刊行
1972 「アンフィゴーリー」(Amphigorey)を出版
ニューヨーク・タイムズ・ブックレビューの「今年度最も注目すべき美術書の5冊」に選ばれ、「ベスト・デザイン・ブック15」として、アメリカン・インスティテュート・オブ・グラフィックアーツ賞を受賞
1973 サイラス・ピアース劇場の公演「ドラキュラ」のセットと衣裳デザインを担当
1978 「ドラキュラ」でトニー賞の衣装デザイン賞を受賞
1980 アメリカの教育テレビ番組『ミステリ!』(Mystery!)のオープニング・アニメーションを制作
1986 マサチューセッツ州ケープ・コッド、ヤーマスポートの館を買い取り移転
2000 心臓発作のため75歳で死去

除隊後にハーバード大学に入学というところに注目しちゃう。
世界屈指の有名大学、ハーバードだもんね!
アートを学び、フランス文学を学び、イラストやグラフィック・デザインをしていた絵本作家とは驚きだよ。
1980年のテレビ用アニメーション制作が気になるね。
会場でも流れていた動画がYouTubeにあったので、載せてみようか。

1980年のテレビ放送なので、画質が荒いのは仕方ないね。
輪郭が少しボケてるけど、アニメーションの面白さは充分伝わるよ!
世界中にファンがいる、というエドワード・ゴーリーの展覧会、行ってみよう。

10時の開館に間に合うよう、渋谷に到着したROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
渋谷は11時開店の店舗が多いためか、美術館までの道のりに人が少ない。
美術館まで優雅なお散歩を楽しんだよ。(笑)
この分では、美術館も空いているかもと密かに期待していたSNAKEPIPEは、裏切られることになる。
松濤美術館の立地のせいなのか、前回鑑賞した「装いの力」の時と同様、「ゴーリー」も若い女性の割合が高い。
2022年7月の「シリアルキラー展2022」にも書いたように、「ちょっと不気味」を好む人が多いんだろうね。

会場に入った瞬間、最初に持った感想は「作品が小さい!」だった。
照明が落としてあり、作品名は小さく、説明文が長い。
前回の「装い力」の時もそうだったけれど、文章を読むために立ち止まる人が多いため、作品鑑賞するために長蛇の列ができてしまうんだよね。
これはSNAKEPIPEの苦手な鑑賞法だよ。
空いている、観られる作品から観ていく方法にする。
並ぶのが苦手なんだよね。(笑)

会場は地下と2階に分かれていて、全部で5つの章で区切られていた。
松濤美術館は基本的に全ての作品の撮影が禁止されているんだけど、地下の会場前に撮影可能な作品があったよ。
引き伸ばされて大型作品になった、1961年の「不幸な子供」。
この1枚だけを観ると、タイトルの「不幸な」は全く連想できないよね。
人形遊びをしている、裕福な家庭の子供に見えるよ。
壁紙やジュータンの柄など、細部まで描きこまれた緻密な描写。
子供の顔が全く可愛らしく見えないところがポイントかな?(笑)

第1章は「ゴーリーと子供」で、先に載せた「不幸な子供」も含めた原画が展示されていたよ。
左はゴーリー自身が子供だった頃に描いた絵。
「ひよこ」と「うさぎ」は1930年頃の作品だというので、ゴーリーが5歳くらいなのかな。
生涯猫と暮らしていたというゴーリーは、子供の頃から動物好きだったんだろうね。
「ひよこ」と「うさぎ」はとてもかわいかったよ!

「不幸な子供」から2枚載せてみたよ。
前述したように松濤美術館は撮影禁止なので、画像は購入した図録からの引用にさせていただこう。
ご了承ください!
ゴーリーの絵本を読んでいないので、絵からストーリーを想像したり、もしくは絵そのものの雰囲気を楽しんだROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
線描の細かさが際立ち、ゴシックな印象を受ける。
「不幸な子供」は、本当に悲惨な最後を迎える少女の話で、びっくりしてしまった。
1950年代のアメリカとは思えないダークなバッド・エンド!
眉をひそめる人も多かったんじゃないかな?

第2章は「ゴーリーが描く不思議な生き物」。
画像は、「うろんな客」で1957年に刊行された絵本の中の一コマね。
「不幸な子供」と同様、恰幅が良くヒゲを蓄えた成人男性が登場している。
ゴーリーは読書家で有名だったようで、特にお気に入りはイギリスのヴィクトリア朝時代の本だったという。
ゴーリーが描く人々の服装はその時代を彷彿させるよね。
「うろんな客」とは、いつの間にか居座り家族に迷惑をかけ続ける、右側のペンギンみたいな謎の生き物を指している。
これは何かのメタファーなんだろうけど、それぞれ感じることができれば良いんだろうね。

左から「蟲の神(1961年)」、「狂瀾怒濤 あるいはブラックドール騒動(1986年)」、「音叉(1983年)」の画像ね。
どのシーンが何の意味を持つのかを考えずに、一枚の作品として観てもシュールさが良く分かるよね。
特に真ん中の画像は、鎖に繋がれた指の上に切断された指がバランスを取っているのが不気味。
右側の「てるてる坊主」みたいな人物(?)の行動は、順を追って観ていても何をしているのかよく分からなかった。
そこがゴーリーの魅力なんだろうね。

第3章は「ゴーリーと舞台芸術」。
年表にあったように1956年頃から、ほとんど全てのニューヨーク・シティ・バレエの公演を観劇していたというゴーリー。
映画鑑賞も好んでいたらしく、載せた画像「具体例のある教訓(1957年)」は、まるで映画のシーンみたいだよね。
こちらも絵だけを観る限り、一体どんな教訓が示されているのか不明だけど、構図やタッチが素晴らしかったよ!

「金箔のコウモリ(1965年)」は、バレエを題材にした作品。
時代を象徴する世界的なバレエ・ダンサーになった少女のサクセス・ストーリーではないようで。
ゴーリーは、絵空事のハッピー・エンドではない、掘り下げた心理を描きたかったのかなと想像させる作品が多いみたいだね。

2階の会場前に展示されていた「ドラキュラ・トイシアター(1979年)」の表紙は撮影して良いマークがついていて嬉しかった。
ゴーリーはミュージカル「ドラキュラ」の舞台演出や衣装を担当し、トニー賞を受賞する快挙を成し遂げた後、組み立て式の絵本「ドラキュラ・トイシアター」を刊行したという。
各ページを切り取って組み合わせると、「ドラキュラ」の舞台が再現できる仕掛けになっていたんだとか。
もったいなくて切り取れないよね。(笑)

第4章は「ゴーリーの本作り」で、実際にゴーリーが使用していたペンや画材が展示されていたよ。
特別感はなく、普通の道具に見えて好感を持ったよ。
画像は「不幸な子供」の表紙と裏表紙だって。
ガーゴイルが描かれていて、ゴシックだよね。(笑)

「金箔のコウモリ」と「中国風オベリスク: 四つ目のアルファベット(1961年)」の表紙。
「中国風」のほうはボツにした作品のようだけど、まるで墓地のような雰囲気で、一体どんな絵本だったのか気になるよね。
「コウモリ」はタイトル通りのデザインで、驚愕し倒れ込んだ大げさな3人の男性が面白い。
右手前のボトルにタイトルを描いているのが憎い演出だね。
「ドラキュラ・トイシアター」、「不幸な子供」や「金箔のコウモリ」が本屋に並んでいたら、興味を持って手に取るだろうね!

最終章である第5章は「ケープコッドのコミュニティと象」。
ニューヨークからケープコッドに移り住んだ時には、60歳を過ぎていたゴーリー。
その頃から新たな試みとしてエッチングを始めたという。
象を題材に選び、限定版の「エレファンタモス(1986年)」を発行したとのこと。
載せた画像左は、躍動感溢れ生き生きした印象で、まるで岡本太郎の作品のよう。
右の作品は岩の隙間に立ち、月光を浴びてエネルギーを蓄えているように見えるよ。
呪術的なイメージを持ったSNAKEPIPEだけど、どうだろう?
晩年になって抽象的な作品に取り組んだゴーリーだけど、年齢を感じさせない力強さがあるよね。
75歳は早すぎる死で、とても残念に思うよ。

最後にミュージアム・ショップを散策。
図録の購入は最初から決めていたけれど、ROCKHURRAHが面白い物を発見した。
それは「The Fantod Pack(不安な箱)」という、1995年に776部限定で出版した20枚のタロットカードの復刻版なんだよね。
展示されていた時にも「面白いね」と話していたら、ショップにあったとは!
図録と一緒にROCKHURRAHが買ってくれて、嬉しいよ。(笑)
どのカードを引いても、不安を煽り悲惨な気分になる言葉を聞かされることになるというもの。
制作したゴーリーはもちろんのこと、喜んで買う側も同類のブラック・ジョーク好きってことだね!

今まで知らなかったアーティストを知り、行って良かった展覧会だった。
作品が小さいため屈むように鑑賞した結果、解説や作品に影ができてしまい、更に鑑賞し辛くなることなどは、改善されないんだろうか?
照明の当て方や展示方法について、もう少しご配慮いただけると良いのに、と思う。

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