【ベルヴィル・ランデブーの登場人物をコラージュ】
SNAKEPIPE WROTE:
2019年1月以来、久しぶりに更新するカテゴリー「映画の殿」!
古い映画を鑑賞し、感想を記録するのが目的なんだよね。
備忘録の意味もある。
だってほら、書いておかないと忘れちゃうから。(笑)
長年来の友人Mから「この映画知ってる?」と連絡を受けたSNAKEPIPE。
友人Mは海外のインスタグラムから様々な情報を得ているようで、その中に気になる画像があったそうだ。
ネットで検索してみるとフランスのアニメ映画「ベルヴィル・ランデブー(原題:Les Triplettes de Belleville 2003年)」だと判明した。
早速DVDを借りて観ることにしたROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
今回は「ベルヴィル・ランデブー」について感想をまとめてみよう!
※ネタバレしていますので、未鑑賞の方はご注意ください
まずはトレイラーを載せようか。
簡単なあらすじをシネマトゥデイから転用させて頂こう。
内気で孤独な少年シャンピオンは自転車レーサーに憧れていた。
やがて、成長して世界最高峰の自転車レース、ツール・ド・フランスの出場選手となるまでに至った彼は、晴れのレースの最中、謎のマフィアに誘拐されてしまう。
少年シャンピオン。
全く説明はされないけれど、どうやら両親は亡くなっているようだ。
おばあちゃんと2人暮らしのようで、大事に育てられている。
まるまる太っているので、あまり外では遊んでいないのかもしれない。
おばあちゃんから子犬をプレゼントされ、ずっと一緒にいるんだよね。
シャンピオンが一番喜んだのは、自転車をプレゼントされた時。
両親の写真に自転車が写っていたのが、理由なのかもしれないね?
シャンピオンの相棒である、犬のブルーノ。
子犬の状態から、月日が流れて登場した時には、こんなに大きなサイズに大変身!
家の近所を走る電車に向かって吠えるのが日課、というバカ犬。(笑)
ただし時計が読めるようで、時間に正確なところはエライのかな。
映画の後半では大活躍しているので、主人思いの良い犬ともいえる。
ブルーノは、パルム・ドールならぬパルム・ドッグ賞を受賞しているんだよね!
シャンピオンと共に暮らすおばあちゃん。
おばあちゃんに名前はなかったのかなあ。
ほとんどセリフがない映画の中で、おばあちゃんは表情すら、ほとんど変えない。
老眼鏡を直したり、編み物したり、シャンピオンの世話をしているシーンも、すべて淡々を行っている。
シャンピオンを可愛がる気持ちが一番のようで、愛する孫のためなら危険を顧みず行動に出る。
こんなおばあちゃんがいたら心強いだろうね!
映画の冒頭で登場するシンガー、トリプレット。
スウィング・ジャズは軽快で、気分がウキウキしてくるよ!
このサントラは、ブノワ・シャレのオリジナルだという。
音楽がより一層映画を効果的にしていて、素晴らしかったよ。
トリプレットの歌声に合わせて、有名人がカメオ出演しているのも面白い演出だよね。
「あっ!ジャンゴ!」
と声を出したROCKHURRAH。
昔からファンだったというジャンゴ・ラインハルトがアニメになっているんだよね。
まだパンク少年になる前に、兄からギター教材代わりに勧められ、練習したけれどジャンゴのようにできるわけもなく(笑)今に至っているそうで。
これを教材にしようとする発想が、最初から違っているように感じてしまうけどね?
ジャンゴの曲を聴かせてもらうと、ギターは運指がなめらかで、とても表現力が豊かだなと驚いた。
やっぱり教材にはならないね。(笑)
時は流れ、成長したシャンピオンとおばあちゃん。
ありゃ?シャンピオンの様子が子供時代とはかけ離れているよ!
どうやら自転車にのめりこみ、ツール・ド・フランスの選手になるために猛特訓を積んでいるようなんだよね。
ストイックな生活を送り、すべて自転車のために生きている。
そんなシャンピオンを支えるおばあちゃん。
おばあちゃんの風貌は全然変わってないんだね。(笑)
ついに憧れのツール・ド・フランスに出場するシャンピオン。
おばあちゃんとブルーノが何故、救護車の屋根にいるのかは不明だけど、応援にかけつけているんだよね。
ツール・ド・フランスについて詳しくないSNAKEPIPEなので、少し調べてみよう。
毎年7月にフランスおよび周辺国を舞台にして行われる自転車ロードレース。
23日間の日程で行われるステージレースで距離にして3300km前後、高低差2000m以上という起伏に富んだコースを走り抜く。
賞金総額は2015年の場合で約203万ユーロ、うち総合優勝者に45万ユーロとなっている。
23日間、自転車で走り続けるレースとは!
FIFAワールドカップ、オリンピックと並んで、世界3大スポーツイベントとされるだけあって、街をあげてのお祭り騒ぎになるのも納得。
上の画像を観ても、観客が大騒ぎしてるもんね!
ツール・ド・フランスといえば、この曲を忘れちゃならないよ。
クラフトワークの「ツール・ド・フランス」お聴きください!
レースの最中、シャンピオンはマフィアに誘拐されてしまう。
元々セリフがほとんどない映画だけど、特にシャンピオンは何を考えているのか分かりづらかった。
誘拐された後も、拉致の境遇に対して不満を持っているようには見えなくて、黙々と指示に従っていたのが不思議だよ。
それでもおばあちゃんにとっては、大事な愛しい孫なんだよね。
シャンピオンに比べて、活発で人間味のあるおばあちゃん。
ブルーノをお供に、シャンピオン探しに出かけるんだもん、元気だよね!
あてもなく、お金もなく、ブルーノの嗅覚だけが頼りなのに。
おばあちゃんは迷うことなく、今やるべきこと、できることを判断し行動していく。
この姿勢は、すごいよね!
全く年齢を感じさせないんだもん。
「女だからダメ」「年寄りだからできない」なんて言い訳を一切しない、強さに感心するよ!
そんなおばあちゃんに救いの手を差し伸べる女性3人がいる。
3人の老婆は美しい歌声を聴かせるじゃないの!
まさか、この3人は?
やっぱり冒頭のモノクローム・シーンに出ていたトリプレットだ!(笑)
いつの間にか年を取り、見かけはすっかり老人だけど、この3人におばあちゃんが加わった老婆4人チームは、なかなかどうして!
マフィアも手こずるほどなんだよね。
「ベルヴィル・ランデブー」の原題は「ベルヴィルのトリプレット」なので、主人公はトリプレットだということがわかる。
3人の老婆は、いつでも人生を楽しんでいるように見えるんだよね。
身近にある物を使ってショーを行うトリプレット。
新聞紙、冷蔵庫、掃除機を楽器代わりにするとは!
まるで大道芸人のようだけど、ROCKHURRAHに聞くとそんなスタイルのバンドは実際にいるという。
フランスのLes VRPは日用品を使用して演奏しているとのこと。
トリプレットの演奏法は、そこまで意外ではないのかもしれない。
この音楽もとてもカッコ良かったよ!
「ベルヴィル・ランデブー」の面白さに「デフォルメ」があるんだけど、マフィア達の表現がその最たるものかもしれない。
全員同じ体型と顔をしていて、背中部分が四角いんだよね。
まるで将棋の駒が歩いているようで、動きが面白かった。
ボスだけは丸い顔をしていて、背も低い。
全く威厳を感じないボスだったけれど、子分達は絶対服従しているんだよね。
そんなマフィア達を翻弄するトリプレットとおばあちゃんの4人組に拍手を贈ること間違いなし!
いくつもの映画賞を獲得したのがよく分かる、鑑賞できて良かった映画だよ。
情報をくれた友人Mに感謝だね!
老人が活躍する映画について、2017年5月に「映画の殿 第24号 ハッスル老人」という記事を書いているSNAKEPIPE。
ハッスル自体が死語だし、老人と組み合わせた謎の熟語については良しとして。(笑)
「老人Z(1991年)」は大友克洋が原作・脚本・メカデザインを手がけ、キャラクターデザインを江口寿史が担当したアニメ映画で、ブログ記事に少しだけ書いているんだよね。
「ベルヴィル・ランデブー」ではトリプレットとおばあちゃんが肉弾戦でマフィアに対抗しているけれど、「老人Z」に登場する老人達はハッキングによる頭脳戦を繰り広げる。
ハッキングできるレベルの老人が3人も同室にいる看護病棟なんて、通常はあり得ないけどね。(笑)
この老人達の活躍により物語が進行して行くところが面白い!
久しぶりに鑑賞してみて、一番懐かしく感じたのは江口寿史のキャラクターかな?
老人が主人公の映画は、弱者であるはずという思い込みが裏切られ、逆転劇が展開する様が痛快なんだろうね。
平均寿命が延びてシニアと呼ばれる人口が増えているので、将来的にはもっと老人が主役の物語が増えていくのかもしれない。
「ベルヴィル・ランデブー」の監督であるシルヴァン・ショメは、元々バンド・デシネの作家だったんだね。
アニメーション作家としての作品が他にもあるようなので、是非鑑賞してみたいと思う。