【会田誠展:天才でごめんなさい トレイラー映像】
SNAKEPIPE WROTE:
どんな展覧会があるのかを検索している時に、森美術館にて会田誠展が開催されていることは知っていた。
だけどSNAKPIPEがモグリ(古い)だったため、実は会田誠というアーティストについては何も知らなかったんだよね。
美術館HPにある会田誠展の詳細を見ようとする前に出てくるのは、冒頭にも載せた水着姿の少女達の絵。
「スクール水着?ロリコン系?」
と思ってあまり興味を示さなかったのである。
「会田誠、観に行こうよ」
と長年来の友人Mから誘いがあったのは、それからしばらくしてからのことである。
「えっ、あのロリコンの?ちょっと好みと違うんじゃない?」
と誘いを断ろうとしていたSNAKEPIPEだったけれど、
「実際に観てから物を言おう」
とMの誘いに応じることを決断!
行って、観てから初めて感想が言えることになると思ってね。
ここらへんが最近少し変化してきたところ。
SNAKEPIPEも成長しているのだ。(笑)
そして年末に近い、夕方からは雨になる予報の寒い空を見ながら六本木に出かけたのである。
開催から少し時間が経過しているためか、普段ならもっと混雑している森美術館の客数はそれほど多くなかった。
できればじっくり時間をかけて作品と向き合って鑑賞したいと望んでいるSNAKEPIPEとMには好都合!
客が少なめ、というだけでは好都合とは言い切れないかな。
最近は作品解説をする音声ガイドサービスを利用する人が増えていて、通常の3倍近い時間を費やして鑑賞する人もいっぱいいる。
そういう観客をうまく避けながら鑑賞していく技は、いつの間にか身につけた。
誰だって自分の好きなように作品と対峙したいもんね?
あとは子連れの客も避けたいね。
本当に子供に観せて良い作品なのか、親が理解して連れてきてるのかなあ。
今回の会田誠展にも何組か子供連れを発見したけど、大丈夫なのかしらん?
それぞれのご家庭によって事情が違うだろうから、SNAKEPIPEがあれこれ言う問題じゃないけどね。(笑)
会場に入って一番初めに展示されていたのが「切腹女子高生」(2002年)である。
まさにタイトル通りに、切腹する女子高生を描いているもの。
内臓出てるわ、首はチョンパされてるわで「一番初めからこれか!」とちょっと驚いてしまう。
制服姿に日本刀と言うとタランティーノ監督の「キル・ビル」はもちろんのこと、タランティーノに影響を与えた「BLOOD THE LAST VAMPIRE」を思い浮かべるよね。
ちなみに「キル・ビル」は2003年公開、「BLOOD THE LAST VAMPIRE」は2000年とのこと。
もしかしたら会田誠氏もプロダクションIGのファンなのかも?(笑)
まるでビックリマンチョコのシールのようにキラキラした仕上がりは、日本古来からの責任の取り方=切腹という重さや覚悟を全く感じさせない。
このままステッカーにでもなりそうな明るい雰囲気こそが作品の狙いなんだろうね。
他にも風俗店のピンクチラシを一面に貼り付けた上に桜を描いた作品や、畑で育ったルイ・ヴィトンのバッグを「今年も豊作じゃー!」と農夫が掘り起こしてるような油絵などがあり、「パロディの人?」と思いながら歩を進める。
会田誠という美術家を評する場合に「現代美術界の奇才」や 「奇想天外」と共に「タブー」という単語も加わることが多いようだ。
作品を途中まで鑑賞していくうちに
「斜めから物を見る人」
「シニカルでブラックな笑い」
という感想を持ち始め、どんどん興味が湧いてくる。
こんなこと言ってもいいの?こんなことやっていいの?というような禁忌に触れるような作品まで登場する。
「18禁部屋」まで用意されているとはびっくり!
DVDレンタルショップの「アダルトコーナー」みたいだね。
入り口がカーテンになってるところも似てるかも。(笑)
「18禁部屋」には更にキワドイ作品が展示されていた。
とてもキレイな仕上がりの日本画と思いきや、描かれているのは手足を切断され首輪をされた全裸少女達を描いた「犬シリーズ」である。
「家畜人ヤプー」「孤島の鬼」にも登場した奇形人間の製造や永井豪の「バイオレンスジャック」を彷彿とさせるモチーフ。
確かこの手の「人間犬」は石井聰互だったか三池崇史の映画にも出てきたのを思い出す。
美少女を手に入れたい、ペットみたいに飼ってみたいという密かな願望は、絶対に口にしてはいけないし、やってはいけないタブーだろう。
少女のヌードだけでも禁止事項だしね。
それを堂々と描き、展示してしまうとは!
「18禁部屋」には他にも少女を食材に見立てた「食用人造少女・美味ちゃん」シリーズや、 「美少女」とだけ書かれた壁に向かって、全裸でひたすら自慰行為を続ける作者を撮影したビデオなども作品として展示されていてエロとグロが盛りだくさん!
ジョン・ウォーターズの「モンドトラッショ」を彷彿とさせる写真もあったね。
ウォーターズは巨大ザリガニだったけどね!(笑)
一応カーテンで仕切りはされていたにしても、これらの作品を含めた展示にGOサインを出した森美術館の決断に拍手を贈ろう!(笑)
会田誠の作品には屏風絵が多いな、と思った。
もちろん「いわゆる日本の伝統的な屏風絵」とは全く違う。
本来なら鈴虫だったり、セミやカエルを描くところをゴキブリにする。
牡丹や菊を描くところを雑草にしてみる。
上の作品は「電信柱、カラス、その他」(2012年)で、タイトルそのままに電信柱とカラスを描いた作品である。
ブログ内では見えないけれど、左のカラスはセーラー服の一部を、真ん中のカラスは人間の指をくわえていて、不吉な予感を孕んでいる。
この屏風、欲しいなー!家に飾りたいなー!(笑)
SNAKEPIPEが今回の展覧会で一番気に入った作品である。
「自分のオリジナルタッチがない、一種のパロディ的な作家」と作者本人が語るように、作品のほとんどがパロディといって良いだろう。
前述したように伝統的な日本画は題材にしなかったであろうモチーフを描く。
巻物には2チャンネルからの転用文を、意味ありげな達筆で記す。(顔文字までご丁寧に縦書になっていた!)
現代アートにありがちな「ふざけて作ってない?」と聞きたくなるような意味不明の立体作品に似た作品を作る。
これもまた現代アートでお馴染みの「結局なにが言いたいの?」と訳が解らないまま、途中で鑑賞するのをやめるビデオ作品風の映像を撮る。
アートを知らない人が鑑賞しても面白いけれど、知っている人ならばその「ヒネり」に思わずニヤリとするだろうね。
「これはダメです」という社会的な規制やルールに対抗することで成り立っている作品が多い点が特徴でもあり、ちょっと弱い印象を受ける。
元となる常識や基準が作品着想の出発点だからだ。
それが作者の言う「オリジナルタッチがない」ということなんだろうけど。
時代と共に社会の基準やルールは変わることってあるよね。
10年後、20年後にも、これらの作品は「シニカルでブラックな笑い」を持って鑑賞することができるのだろうか?
益々規制が厳しくなって、作品展示そのものが不可能なんてこともあるかもしれないよね。
実際今は手に入らなくなってしまった本などもあるくらいだから。
森美術館のトレイラーの中にも出てくるビデオ作品「日本に潜伏中のビン・ラディンと名乗る男からのビデオ」(2005年)では会田誠自身がビン・ラディンに扮して片言の日本語を喋っている。
ビン・ラディンに似ていると言われたことから、おフザケで作ったビデオみたいだけど、本当に良く似ていて笑ってしまう。
東京藝術大学美術学部絵画油画専攻卒業、東京藝術大学大学院美術研究科修了という華々しい肩書きを持つ会田誠。
ビデオの中の偽ビン・ラディンではなく、美術界の過激派としてこれからもブラック・ジョークで笑わせて欲しいと思う。
そしてパロディだけではない、エリートならではの大真面目な作品も鑑賞してみたいとも思うのだ。
過激派でエリートな会田誠がパロディをパロディに仕上げたら巡り巡って真面目になってしまった、なんてパラドックスを観てみたいね!(笑)
「電信柱、カラス、その他」には圧倒されました。同じ日に観た「ヱヴァンゲリヲン:新劇場版Q」の世界と通底しているようにも思い。
鳥飼先生、コメント頂き本当にありがとうございます!
会田誠展、鳥飼先生もご覧になりましたか!(笑)
いつの日か、どこかの展覧会で先生にお目にかかれる気がして参りました!
その暁には、お声をかけさせて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?
会田誠展を一緒に行った友人Mから「カリコリせんとや生まれけむ」を借り、これから読むところです。
あぁっ、読む本いっぱいで幸せ!(笑)