好き好きアーツ!#35 Alex de la Iglesia part1

【「スガラムルディの魔女」のポスター。スペイン版ね!】

SNAKEPIPE WROTE:

数年前より続いているスペイン熱は未だにおさまらず、面白そうな映画をチェックしては鑑賞している。
そうは言っても、スペイン映画ってほとんど劇場公開されることはないし、DVDでだけ販売されたりレンタル用として流通することが多いんだよね。
日本映画以外は、全くDVDにすらならない作品もいっぱいあるし!
スペイン映画ではないけれど、例えばアメリカでは大人気のウィル・フェレルの作品ですら、日本では劇場公開されないんだもんね。
日本の映画業界は興行収入のことしか考えていないんだなあ。
せめてスペイン語を完璧に理解することができたら原語のまま鑑賞できるのに。
今からでも頑張ってみる?(笑)

今回の「好き好きアーツ!」はスペインの映画監督、アレックス・デ・ラ・イグレシアの作品についてまとめていきたいと思う。
スペイン人俳優アントニオ・デ・ラ・トーレと間違えたり、 歌手のフリオ・イグレシアスと混ざってデ・ラ・イグレシアスと言ってしまったりするのはSNAKEPIPEだけ?(笑)
イグレシア監督の名前が一躍有名になったのは、かつて「映画の殿 第6号」の中で少しだけ触れたことのある「気狂いピエロの決闘」という作品がヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)と金オゼッラ賞(脚本賞)を受賞して注目されたからなんだよね。
もちろんその前にも作品を制作していて、大好きなサンティアゴ・セグーラが主役の「どつかれてアンダルシア」はスペインで大ヒットしたらしい。
残念ながら未見で、どうしても観たい映画のランキング上位の作品なんだよね。
TSUTAYAの発掘良品で扱ってくれないかなー?

前置きが非常に長くなってしまった。
今回はイグレシア監督の第1弾として割と最近の作品2本を特集しよう。
まずは2011年の「刺さった男(原題:La chispa de la vida)」から。

簡単にあらすじを書いてみようか。

失業してどん底状態にある元エリート男性・ロベルトは遺跡発掘現場に迷い込み、高所から転落。
命は助かったけれど、後頭部に鉄筋が刺さった状態で身動きがとれなくなってしまう。
ロベルトをめぐってメディアや関係者らが狂騒を繰り広げる。
ロベルトの運命やいかに?!

と、まあこんな感じでタイトル通りに「刺さってしまった」ロベルトなんだよね。
ロベルトを演じたのはホセ・モタという俳優なんだけど、今まで他の作品で見たことないみたい。
2年間も失業状態にあるというのに、生活できているところが不思議だったんだよね。
奥さんと家族を大事にしている様子が良く伝わってきたよね。
その奥さんとの思い出の土地を歩こうと思っただけなのに、事故に遭ってしまうとは!

ロベルトの妻ルイサを演じたのがサルマ・ハエック
一番最初にサルマ・ハエックを見たのはロバート・ロドリゲス監督の「デスペラード」だったね。
なんて美しい人!とすっかりファンになったSNAKEPIPE。
今回のルイサ役も好演していたね!

「刺さった男」にはスペイン映画ではお馴染みの俳優がたくさん出演していたところも見逃せないね。
ブランカ・ポルティージョ(写真左)はアルモドバル監督の「ボルベール」で「母が村で唯一のヒッピーだったのよ」と自慢していた役が印象的だったっけ。
イグレシア監督と名前を間違えてしまうアントニオ・デ・ラ・トーレも出演していたよ。
「ほら!デ・ラ・トーレ!」とSNAKEPIPEが指摘しても、「違うでしょ?」と信じなかったROCKHURRAH。
カメレオン俳優だから化けるのが上手いのは解るけど、ROCKHURRAHは特に疎いのかもしれないね。(笑)

元同僚として出演していたのが我らがサンティアゴ・セグーラ!
タイトルバックに名前を発見した時から「いつ登場するんだろう」と期待してしまう俳優だよね。
出てくるだけで笑ってしまう。
大ファンの俳優を様々な作品で観られるのは嬉しいね!

刺さってしまったロベルトとルイサには子供が2人いるようなんだけど、その子供達がおかしい!
1人は男の子でなんとバッチリ化粧に長いレザーコート、アクセサリーをジャラジャラ着けたビジュアル系バンドにいるような出で立ちなんだよね。
こんな服装で父親を心配しているんだもんね。

そしてもう一人は女の子なんだけど。
息子とは正反対の、真面目を絵に描いたようなダサ子ちゃんなんだよね。(笑)
分厚いメガネに英国調のコート。
この子供たちの登場を遅らせたのは、きっとイグレシア監督のギャグの一つだったのかな、と推測するよ。

1人の男が事故に遭っただけなのに、マスコミは猛烈な取材合戦をして、選挙のことしか頭にない市長や人命より遺跡の保護を優先したい館長の態度、就職を断った会社が評判を落とさないように身を守ることだけを考えたりするエゴ剥き出しの狂騒が見どころなんだよね。
人は身勝手で自分のことが一番大事、といういや〜なところが良く描けているね。
ここらへんがイグレシア監督のブラックなところなんだよね!
テレビ局のアナウンサー役だったのが、イグレシア監督と昨年結婚した監督の作品の常連カロリーナ・バング。
「気狂いピエロの決闘」ではサーカスのヒロイン役で出ていたよね。
そして次に紹介する「スガラムルディの魔女」でも登場するよ!

スガラムルディの魔女(原題:Las brujas de Zugarramurdi)」は2013年の作品である。
スペインの映画賞であるゴヤ賞で8部門を受賞、70万人以上の観客を動員した、という宣伝文句だけでもすごい作品だということが分かるよね!

簡単にあらすじを書いてみようね!

失業し、妻ともうまくいかなくなったホセ率いる強盗団は白昼堂々宝飾店を襲撃、ホセは息子らと共に偶然通りかかったタクシーに飛び乗り逃げる。
パトカーの追跡をかわすうちに道に迷ってしまった一行は、魔女伝説が伝わるスガラムルディ村にたどり着く。
人食い魔女たちの洗礼を受ける中、強盗団を追ってきた者たちも加わり魔女軍団と人間の壮絶バトルが始まるのだった。

あらすじにあったように、スピーディな強盗シーンが非常に面白い。
それぞれがまるで大道芸人みたいな変装をしてるんだよね。
キリスト、兵士、透明人間、スポンジ・ボブ、ミニーマウスになって、顔がすぐには判別できないようにして強盗をする。
あえて目立つ格好をして犯罪を犯すとはね!(笑)
そしてもうひとつ珍しいのが、子連れだったというところ。
子供まで強盗団の一員として活躍しちゃうなんて、倫理規定に厳しい国ではあり得ないんじゃないかな?
そもそもキリストに変装して強盗って時点でアウトかもしれないね?
そのキリストになっていたのが「雑魚」や「アイム・ソー・エキサイテッド!」に出演していたウーゴ・シルバ。
「雑魚」の時はアル・パチーノに似てると思ったけど、 役どころのせいだったのかな?
緑色の兵士は「空の上3メートル」でニヤけた顔をしていたマリオ・カサス。
「UNIT7」や今回はそこまでニヤけていなかったね。(笑)

一方の魔女軍団もスペインを代表する女優カルメン・真裏、じゃなくて(笑)マウラを筆頭に怖い女性たちがいっぱい!
上の写真の時はスーツ着て人間っぽくしてるから、それほどじゃないけど魔女になるとこんな状態! (写真左)
カルメン・マウラ、今年で70歳だって。
若い頃とそこまで顔に変化がないよね?
まだまだ頑張って演技を続けて欲しいものだ。
3人の魔女の一番左が、イグレシア監督と結婚したカロリーナ・バングね。
今回はバイクに乗り、ほとんどモヒカンというヘアスタイルだったよ!(写真右)
途中、半裸でセクシーポーズをキメてるシーンが見どころかも。(笑)

タイトルバックに名前を発見していたので、いつになったら登場するんだろうと心待ちにしていたのがサンティアゴ・セグーラとカルロス・アレセス!
ついに出て来た、と思ったら!
まさか2人揃って女装とは。(笑)
ROCKHURRAHがダイジェスト版として編集してくれたよ!
カルロス・アレセスは、本当にこんなおばちゃんいるわ、って感じでぴったりだよね。
同じくぽっちゃり体型のハビエル・カマラが「バッド・エデュケーション」で笑いを取るタイプの女装姿を披露していたけど、カルロスは本物の女性に見えるよ。
サンティアゴ・セグーラの女装も、意外と似合っていたね。
こういう女性もいそうだもん。
この写真を見る度に笑ってしまうので、辛いことがあった時にはこのページを見よう!(笑)

イグレシア監督の特徴として「タイトルバックがカッコ良い」点が挙げられる。
これから始まるという時に、より気分を盛り上げてくれるんだよね!
SNAKEPIPEの今までの経験でいうと、タイトルバックが良い映画は大抵面白い。(笑)

「スガラムルディの魔女」はホラー・コメディと分類されるのかな。
ホラーとコメディが一緒というと、以前観た「人狼村 史上最悪の田舎」も同じタイプだったかも?
イグレシア監督の作品はブラックな部分が多くて面白いね。
他の鑑賞済作品も次回以降にまとめていきたいと思っている。
やっぱりスペイン映画は良いね!(笑)

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