GENKYO 横尾忠則 鑑賞

20210725 top
【毎度同じ構図で看板を撮影。マンダース展が続いている?】

SNAKEPIPE WROTE:

東京都現代美術館で横尾忠則展が予定されていることは、かなり前から知っていた。
先日出かけた「アナザーエナジー展」で「GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?」のフライヤーを手に取る。
改めて確認すると、開催が7月17日からじゃないのっ!
このブログで何度も書いているけれど、開催中止になった展覧会を経験して以来、これはと思った時には、なるべく早く出かけることにしているSNAKEPIPE。
早速「GENKYO展」のチケット予約をしたのである。

例年よりも早く梅雨が明け、ギラギラした太陽が顔を出した風の強い日、ROCKHURRAHと東京都現代美術館に向かう。
到着するまでの間で、もう汗だく。
これだから夏って嫌なんだよねえ。
開館と同時刻に予約していたため、少し早目に着いたのにもかかわらず、すでに開館待ちの行列ができていた。
人数制限はされているので、そこまでの混雑ではないはずだけど?

体温測定され、手指の消毒を終えたら、いよいよ入場。
同じ時間帯に何人を上限としているのか不明だけど、会場入口付近は混雑していたよ。
密が避けられているとは言えない状態だったかな。
「GENKYO展」はいくつかのチャプターに分けて構成されていた。
それぞれについて感想をまとめていこう!
非常に残念なことに、一部を除いて撮影が禁止されていたんだよね。
画像は「GENKYO展」を紹介する他サイトから転用させて頂いたよ。

神話の森へ

横尾忠則が「画家宣言」をした1980年の夏からの作品がぎっしりと展示されていた。
ここだけで24点とは驚き!
最初の部屋に人が集まっていた、と先に書いたけれど、鑑賞するために時間がかかるのは当然かもしれない。
画像は1986年の「戦士の夢」。
この時期の作品には、スーツ姿の人物が登場することが多いんだよね。 
電飾をフレームにして「YOKOO」という文字が光る「赤い叫び」など、実験的な作品が面白かったよ。

多言宇宙論

カンヴァスの上にカンヴァスを貼り付けるという、コラージュによる作品が展示されていた。
刻まれた2枚の絵が複雑に絡み合って、想像力を掻き立てる。
画像は1988年の「薔薇の蕾と薔薇の関係」ね。
ダダイズムについて詳しくなった今は、これらの作品群がグッとくるよ! 
恐らく以前も鑑賞していたはずだけどね?(笑)
展示作品数は36点だよ!

リメイク/リモデル

「リメイク/リモデルといえばロキシー・ミュージックの曲にあったような?」
ROCKHURRAHからの指摘を受け、調べてみるとあったんだよね。(笑)

さすがROCKHURRAH、よく知ってるよね!
展覧会に話を戻そう。
ピンク色の肌色をした女性たちを、何度も描き続けた作品群が並んでいる。 
「よだれ」や「花嫁」は、ミュージアム・ショップでよく見かけるモチーフとなってしまい、今では少し食傷気味かな。
最初に観た時にはインパクト強かったけどね!
画像はアンリ・ウッソー・ヨコオとしてアンリ・ルソーの作品のパロディ物。
名前からして、もうパロディだけどね!(笑)
「フットボールをする人々」ではボールの代わりに首が、「森の中の散歩」には首をくくった女性の姿が描かれている。
これらは1967年制作というから、「状況劇場」のポスター制作と同時期ということだね。
横尾忠則のこうしたブラック・ユーモア、大好きだよ!(笑)

越境するグラフィック

「状況劇場」や「天井桟敷」といった演劇のポスターが、壁一面にぎっしり並んでいる。
こちらも「よだれ」と同じように、ミュージアム・ショップではお馴染みのモチーフになってしまったけれど、やっぱり好きな作品群なんだよね。
ほとんどの作品が1960年代に制作されているので、当時の日本人が、いかにアートに関して意識が高かったのか分かる。
SNAKEPIPEが憧れる時代の2番目が1960年代後半の新宿だから。(笑)
画像は1966年の「切断された小指に捧げるバラード」ね。 
横尾忠則が憧れた高倉健のポスターなんだけど、「死んでもらいましょー」と刀を振っているポーズとバックの波など、構図のバランスが秀逸! 
上部に書かれている文章も、ふざけてて面白いよ。(笑)

滝のインスタレーション

これは体験型のインスタレーションだったんだよね。
あえて画像を載せなかったのは、ネタバレになっちゃうから。(笑)
方向音痴で車酔いしやすい、三半規管が弱いSNAKEPIPEのような人は要注意かも。
実際SNAKEPIPEは、ちょっと怖い思いをしたからね。
もしかしたらそんな恐怖を味わえる人のほうが、インスタレーションの効果があるのかもしれないけど?

地球の中心への旅

横尾忠則は子供時代に読んだ小説や憧れていたキャラクターを、ずっと愛し続けているアーティストなんだよね。
画像は1996年の「実験報告」という作品で、左隅にいる少年2人が知らない世界を覗き見ている構図になっている。 
その少年こそが横尾忠則なんじゃないかと想像する。
幼児性を大事にすることを公言しているという横尾の、「少年シリーズ」とでもいうべき作品群は、ノスタルジーを感じさせるよね。
ROCKHURRAHも好きなシリーズと言っていたよ!
さすがは元少年、同調できるんだろうね。(笑)

死者の書

バックが赤い作品群が続く。 
まるで写真現像の暗室の中にいるような気分になる赤色の世界。
あの赤い光、SNAKEPIPEは好きだったな。
横尾忠則にとっての赤色は、どうやら空襲により赤く染まった空を表していると説明に書いてあったよ。
画像は1997年の「運命」という作品で、少年と少女が吊橋を渡っているところだね。
腰から上が見えないので、もしかしたら死者を表現しているのかもしれない。
吊橋を渡った先には、何が待っているんだろう?

Y字路にて

過去に何度も横尾忠則の展覧会で鑑賞しているY字路シリーズだけれど、なんとも言えない魅力があって大好きなんだよね。
このシリーズを知ってから、たまたま歩いた道沿いにY字路を見つけると嬉しくなってしまうSNAKEPIPE。
絵になるY字路って難しいけどね。(笑)
画像は2001年の「暗夜光路 赤い闇から」という作品。 
赤く染まった墓場が見える左の道が、とても怪しげなY字路だよね。
右の道も、暗闇に消えていて不安になりそう。
さあ、どっちの道を進もうか?(笑)

タマへのレクイエム

15年の時を共に過ごした愛猫であるタマ。
2014年に亡くなってしまったという。
そのタマを描いた作品群が並んでいた。
かつてSNAKEPIPEの実家にも猫がいて、14年間アイドルとして君臨していたことを思い出す。
あの時の喪失感が蘇り、泣きそうになってしまった。
ペットではなくて家族なんだよね。
かわいいタマの様子が生き生きと描かれていて、いかに大事にされていたかがよく分かる。
このブースを観るのはちょっと辛かったよ。

横尾によって裸にされたデュシャン、さえも

タイトルは、マルセル・デュシャンの作品である「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも」をモジり、作品は「(1)落下する水、(2)照明用ガス、が与えられたとせよ」というデュシャンの遺作のパロディなんだよね。
木製のドアの隙間から覗く、という行為により見てはいけない物を盗み見るといういかがわしさ。
そしてデュシャンの場合には、両足を広げた女性が見える仕掛けになっているという。
横尾忠則バージョンでは、そこまでの猥褻さがなかったのが残念。(笑)

終わりなき冒険

横尾忠則の作品に温泉シリーズや銭湯シリーズがあることを知らなかったSNAKEPIPE。
芸者が銭湯で湯浴みしている様子を描いた、2004年の「湯の町睡蓮(芸者鏡)」は遊び心いっぱいなんだよね。 
画面中に「LOTUS(蓮)」の文字が書かれ、芸者の顔はピカソ風!
右の芸者は顔が「LOTUS」というアルファベットで仕上げられている。
蓮といえば、有名なのはモネの「睡蓮」だよね。
バックがモネ調になっているのもパロディなんだろうな。
横尾忠則のこういうセンス、良いよね!(笑)

西脇再訪

横尾忠則の故郷である兵庫県西脇市。
西脇で過ごした少年時代の思い出が描かれた、2018年の「回転する家」。
Y字路の奥に広がる空は空襲で赤く染まっている。
手前には横尾忠則の記事が載った新聞を握った手が描かれている。
因果関係は不明だけど、横尾忠則に刻まれた記憶なんだろうね。
西脇を題材にした作品は、物悲しい気分になるよ。

原郷の森

横尾忠則の最新作が鑑賞できるブース。
画像は2020年の「高い買い物」。
もしかしたら横尾忠則が購入したアート作品を描いているのかもしれない。
タッチが具象っぽいので、よく分からないけど。(笑)
他に「寒山拾得」というシリーズが展示されていたよ。
ここで思い出すのが、我らが鳥飼否宇先生の小説「逆説的」に登場するホームレスで通称「じっとく」。
この時「寒山拾得」の画像を載せていたっけ。
横尾忠則の最新作と鳥飼先生の小説がリンクしたようで、楽しくなってしまった。(笑)

WITH CORONA(WITHOUT CORONA) 

コロナウイルスの感染拡大により、かつて発表した作品や写真に、マスクをコラージュした作品群が展示されていた。
敬愛する映画監督デヴィッド・リンチの肖像画や、岡本太郎とのツーショット写真にもマスクがされている。
2021年7月の時点で、マスク付きの作品は700点ほどになるという。
このブースのみ撮影が許可されているので、何枚も撮ってみたよ。
本当はマスクの作品が増えるのは喜ばしいことではないので、早く日常に戻れると良いね!

東京都現代美術館で2002年に鑑賞した「森羅万象」も、かなりボリュームがある展覧会だったことを調べて思い出したよ。
「GENKYO展」は、約20年前を上回る規模の大展覧会で、横尾忠則回顧展といった雰囲気だった。
ここまでまとまった数の作品を観るのが初めてのROCKHURRAHも大満足だったという。
現在85歳の横尾忠則、これからの作品も期待して待っていよう!

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