SNAKEPIPE MUSEUM #60 Nicolas Bruno

20210425 11
【この作品を観て寺山修司の映画を連想してしまったSNAKEPIPE】

SNAKEPIPE WROTE:

今回のSNAKEPIPE MUSEUMはNicolas Brunoを紹介しよう。
読み方はニコラス・ブルーノで良いはずだよ。
一枚の写真を観た瞬間から「好き!」と感じたんだよね。(笑)
ニコラス・ブルーノの経歴を調べてみよう。

1993 ニューヨーク州ノースポートに生まれる
2011〜 Instagramに写真の投稿を始める
2015 ニューヨーク州立大学パーチェス校において写真のBFAを取得

1993年生まれということは、現在28歳という若い写真家だね。
現在は広告写真家として雑誌で活躍しているという。
本人のサイトにも、ほとんど情報がないので、分かったのはこれくらいなんだよね。
作品の成り立ちについての情報はインタビュー記事などで確認できたので、作品と共に紹介していこう。

ニコラス・ブルーノの作品の特徴を一言で表すと「恐怖」だろうか。
安眠していたはずのベッドが、何者かに引きずられ川に沈んでいくシーン。
パニックになりながら、少しでも地上に向かい這い上がろうとする男。
襲われている男こそ、ニコラス・ブルーノ本人なんだよね。
15歳の頃から連日のように金縛りを経験し、不眠症になったというブルーノ。
そのうち「うつ病」になってしまったという。 
浅い眠りの間に見た夢をノートに記録し、それを写真にした作品なんだって。

作品作りが自らの治療になったと語るブルーノだけど、こんな夢を毎日見てたら怖いよね?
感じている恐怖を視覚化して認識し、相手にも伝えることで、恐怖に打ち勝つことができたということなのかな。
ブルーノにとっての悪夢が、作品になると魅力的に映るのは皮肉だけどね。
男女が椅子にくくりつけられ、下から伸びる白い腕がロープを掴み引っ張っている。
上の作品と同じように謎の誰かによって、水に沈んでいく恐怖だよね。
それにしても、この水たまりから腕だけ出す撮影はどうやったんだろうね?

縛られて的にされているブルーノ。
周りには、「かかし」が矢で射られ、転がっている。
自分も「かかし」と同じような目に遭うんだろうか。
頭から布をかぶせらているので、相手がどこを狙っているのか見えない。
矢を構え、弓の弦がきしむ音が聞こえてくる。
自分の鼓動も大きく聞こえてくるだろうね。
とても怖い夢で、目覚めた時には「生きている」と安堵しそう。

逃げる夢も恐怖だよね。
何者かに捉えられ、椅子に縛り付けられた状態。
またもや頭には布がかぶせられている。
追ってくる男2人に拉致されて、隙を見て逃走したというところか。
前が見えず、両腕が自由にならない状態が、金縛りを表しているよね。
ブルーノの作品は、モデルや小道具の使い方はもちろんのこと、構図の見事さや色合いなどがパーフェクト!
風変わりなセルフ・ポートレートだよね。

孤独の恐怖もあるよね。
気付いたら自分1人だけになっていた、という悪夢。
周りにあるのは骸骨?
近い将来、自分も同じ状態になるんだと見せつけられたら、 その時を待つしかない。
あがいても別の選択肢はない、と諦念する。
ブルーノは、子供時代に何かあったのかなと想像してしまうね。
小道具を多く使っていないのに、効果的な作品だよね。

男が指示を出す。
3人のうちの誰かが、この縄にかからなければならない。
どんな方法でも良いから、1人決めるように。
こうしたシチュエーションでは、「何故」や「どうして」といった疑問は省かれるのが常だ。
ブルーノは3人のうちの1人になっているのか、単なる傍観者か。
この作品も4人のモデルと縄以外は、見事に朽ちた壁以外ないのにもかかわらず、物語が完成しているところが素晴らしいよ!

ニコラス・ブルーノの最新作は「ソムニアタロット」というシリーズ。
タロットカード78枚の実写版を作成する、というもの。
小道具などの準備も大変そうだけど、面白い企画だよね。
1年間で完成させたというから、頑張ったね!
画像は「吊るされた男」だね。
ブルーノ自身が逆さ吊りになったらしいよ!
めまいが起きないか心配だった、なんてインタビューに答えてる。
根性あるなあ、ブルーノ!(笑)

こちらは「死神」。
軍旗を掲げ、白い馬にまたがる死神は、疫病をもたらす存在としてカードに描かれているらしい。
ブルーノの作品では、邪悪というよりは静寂を感じるね。
一回の撮影で3枚を目標にして完成を目指していた、と記事にあったよ。
小道具や衣装などを作り、天候に左右されながらの作品作りというと、まるで映画の撮影みたいだよね。
そう考えると、布の使い方がターセム・シン監督作品に近い雰囲気に見えてきたよ!

こんな作品が78枚展示されていたら、圧巻だよね!
どこかの美術館で企画して欲しいよ。
ニコラス・ブルーノはタロットの次に、どんなシリーズを展開するのか。
これからも注目の写真家だね! 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です