SNAKEPIPE MUSEUM #39 Max Beckmann

【1938年の作品「Bird’s Hell」。鳥は何の象徴だろう?】

SNAKEPIPE WROTE:

「変わった画家がいる」
と教えてくれたのはROCKHURRAHだった。
黒い線が特徴的な、非常に不気味な絵。
いかにもSNAKEPIPEが好きな雰囲気!(笑)
さすがにROCKHURRAH、SNAKEPIPEの好みを熟知してるよね。
この画家は一体誰なんだろう?

調べてみると、マックス・ベックマン(Max Beckmann)というドイツ人だった。
前回のSNAKEPIPE MUSEUMもドイツのアーティストだったなあ。
どうしてもヨーロッパに目が向いてしまうんだよね。

マックス・ベックマンは1884年ライプツィヒ生まれ。
1925年にStädelschule Academy of Fine Art(読めない)のマスタークラスを教えていたという。
そこまでの経歴についての詳細は不明なんだけど、かなり優秀だったんだろうね。
上の画像は1901年の自画像。
計算すると17歳くらいなのかな?
まるでフランシス・ベーコンを思わせる口の開け方!
フランシス・ベーコンの絵については「フランシス・ベーコン展鑑賞」に詳しく書いているので参照してみてね。
ベーコンが参考にしていた映画「戦艦ポチョムキン」は1925年だから、それよりももっとベックマンのほうが早かったね。(笑)

自己愛が強かったのか、1番身近なモデル(?)だったためか、ベックマンはセルフポートレートを多く描いていることで有名な画家だという。
オレンジ色の壁をバックにしている右の絵は「Self-portrait with champagne glass (1919)」である。
35歳くらいになってるのかな。
葉巻を挟んでいる手首の返り方が不自然なほど「ぐんにゃり」曲がっていて、デッサンのミスなのかと思ってしまうほど。(笑)
試してみると同じポーズが取れたけど、もしかしたらベックマンもSNAKEPIPEと同じように「猿腕」だったのかも!
もう一点非常に気になるのがベックマンの後方にいる人物。
メガネをかけて笑ってるんだけど、どうしても藤子不二雄の漫画に出てくるような男性にみえてしまう。
実際に当時のドイツにはこんな人がいたんだろうか?

少し笑いが出てしまったけれど、同時期に描かれたベックマンの代表作の一つが左の「Night(1918)」という作品。
クリックして拡大してみると、この絵、かなり怖いんだよね。
左には絞殺された男性、手を縛られ尻を見せている女性は拷問を受けている最中だろうか。
純朴そうに見える田舎者が結託して残酷な行為を平然と行い、秘密を守り合うことによって更に村人同士の絆を深めているような印象を受ける。
結局は誰もが持っている残虐性について描きたかったのかなと想像する。
僻地の閉鎖的なムードは、例えば横溝正史の作品などからも理解できるよね。
ベックマンは「ヨーロッパの憂鬱」を題材にしていたようなんだよね。

順風満帆だったはずのベックマンだけれど、ナチス・ドイツによって「退廃芸術」と烙印を押されてしまい、1937年にはオランダに移住する。
第二次世界大戦後はアメリカに渡り、生涯を過ごすことになったというからドイツに戻ることはなかったようだね。
「Triptych of the Temptation of St. Anthony (1936-1937)」はドイツを離れた頃の作品ということになるね。
「聖アントニウスの誘惑」は、フランシス・ベーコンでお馴染みの三幅対で表現されているね。

諸々の誘惑を象徴するかのような怪物に囲まれ、苦闘する聖アントニオスの姿は美術の題材として好まれた

聖アントニオスについて調べると、こんな記述があったよ。
1番右に、まるで「20世紀少年」の「ともだち」のような異形がいるのは、怪物だったんだね。(笑)
この絵も拡大すると、かなり怖いのでチェックしてみてね!

SNAKEPIPEのお気に入りはこれ!
「Journey on the fish (1934)」は、まさにシュルレアリスム真っ只中の時代に描かれているんだよね。
ナチス・ドイツによって迫害される前だった、ということも含めてベックマンがのびのびと自由に描いているように思う。
ベックマンは表現主義や新即物主義として位置付けられているらしいけど、この作品はシュールな感じだよね。

顔なのか面なのか分からないし、うつぶせの人物の頭部がどこにあるのか、じっくり観察してもよく分からない。(笑)
ベックマンの作品には魚が多く登場するんだけど、きっと意味あったんだろうね。
魚に乗って旅行なんて楽しそう!
いや、生臭くなるかも?(笑)

歴史的な事実や思想を絡めてマックス・ベックマンを語るべきなのかもしれないけれど、SNAKEPIPEは作品そのものについての感想にとどめておこうと思う。
1番最初に持った「黒い線が特徴的な不気味な絵」という感想は、観れば観るほど強くなっていった。
人間の持つ残虐性を寓話性を持たせた、少しコミカルなタッチで表現するのは、後のピカソに通じるように思う。
右はピカソの「The Rape of the Sabine Women(1962)」。
とても良く似た雰囲気だよね!

ベックマンの回顧展は日本で開催されていないようなので、全貌を鑑賞してみたいな!

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