好き好きアーツ!#58 世界アート(仮)探訪 4

20230625 08
【アリゾナ州の砂漠にあるジェームズ・タレルの作品】

SNAKEPIPE WROTE:

当ブログのカテゴリーである「好き好きアーツ!」の中にある「世界アート(仮)探訪」は、「鑑賞できたら良いな」という願いを込めて、SNAKEPIPEが行ってみたい場所を特集する記事なんだよね。
今回はパブリック・アートやインスタレーションについて書いてみたいと思う。
現地に赴かない限り、観ることができない作品を集めてみたよ!
早速紹介していこう!

トマス・サラセーノの作品「Cloud City」は、空中都市生活をイメージして作られたという。
確かに「メタボリズムの未来都市展」や「未来と芸術展」などで見かけたセルの集合体みたいだよ。
2012年にニューヨークのメトロポリタン美術館屋上に展示され、体験型アートとして人気だったんだとか。
実際にセルに入れるなんて楽しそう!(笑)
ちなみにこの作品の評価額は$11million、日本円で約15億8,000万くらい!
トマス・サラセーノはアルゼンチンのアーティストで、環境問題や共存についてのヴィジョンを作品に取り入れているんだって。
2020年9月に鑑賞した「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」も、環境に配慮した体験型アートを作成していて似た雰囲気だと感じるよ。
最近の傾向なのかな?

イギリス人のジェイソン・デカイレス・テイラーは、海中彫刻で有名なアーティスト。
SNAKEPIPEもメキシコにあるカンクン海中美術館の様子はインターネットで見たことあるよ!
載せた画像はモルディブの高級リゾートに配置された「Coralarium」。
ターコイズブルーの海にポッカリと浮かぶステンレスの物体。
上部と内部に人を形どった彫刻が配置されている。
内部の彫刻は次第に周囲のサンゴや海洋生物が定着していき、新たな生態系の基礎を作っていくという。
時間の経過で作品が変化していくんだね!
どんな状態になっていくのかを知る前に、この作品は2018年、宗教的な理由により破壊されてしまったんだとか。
二度と目にすることができないと聞くと、残念でならないよ。

「Vessel:Stairway to Nowhere(どこへも続かない階段)」はイギリスのデザイナーであるトーマス・ヘザーウィックによって制作されたという。
場所はニューヨークの再開発エリアであるハドソン・ヤードで、高さは80m、階段の数は2500段というから相当な高さだよね!
まるで映画のセットのようなランドマーク、目の前にあったら腰を抜かしそう。(笑)
エッシャーのだまし絵のように見える画像も見かけたよ。
入場は無料らしいけど、予約でいっぱいなんだって。
いつかニューヨークに行った時には訪れたいね!(笑)

最後はこちら!
1979年から建設が進められているという、ジェームズ・タレルの「Roden Crater」。
まるでアレハンドロ・ホドロフスキー監督作品である「ホーリー・マウンテン(原題:he Holy Mountain 1973年)」の中に入り込んだみたいじゃない?
タレルのライフ・ワークとして有名な「ローデン・クレーター」は、アリゾナの砂漠地帯に40万年前にできた噴火口に作られているという。
一体どんな様子なのか動画で観てみよう。

 

火口から地下へと続く階段があり、空を見上げるようになっているんだね。
異空間にいる気分で、世界観が変わりそうじゃない?
11の地下室や長いトンネルを作り、月や太陽の光を感じる作品になるんだとか。
アリゾナ州立大学が作品完成へのサポートをしたり、カニエ・ウェストが1000万ドル(約10億円)の寄付をしたなどの記事もあったよ。
完成した暁には、今まで誰も観たことがない作品になること間違いなし!
いつか実物を観てみたいよね。

絵画や彫刻などと違って、現地に行かない限り実物を鑑賞することができないインスタレーションやパブリック・アートを特集してみたよ!
初回なので有名な作品ばかりを集めてしまったかも?
次回もお楽しみに!

映画の殿 第58号 奈落のマイホーム

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【映画に登場する魅力的なキャラクターたち】

SNAKEPIPE WROTE:

奈落のマイホーム(原題:싱크홀 2021年)」が日本で公開されたのは、2022年11月のこと。
その情報を教えてくれたのはROCKHURRAHだった。
これまで数々の韓国映画やドラマを共に鑑賞してきているので「面白そうな映画だ」と直感したらしい。
残念ながら時間の都合がつかず、映画館に足を運ぶことができなかったんだよね。
今回やっと新作DVDで鑑賞することができたので、感想をまとめてみよう。
まずはあらすじと予告映像を載せようか。

会社員のドンウォンはマンションを購入するため、長年節約を続けてきた。
その甲斐もあり、ソウルの一等地に念願のマンションを購入することに成功。
同僚たちを招いてパーティを開くが、大雨で巨大陥没穴が発生し、マンション全体が飲み込まれてしまう。
ドンウォンは馬が合わない隣人や同僚たちと地下500mの深さから脱出しようと奮闘するが、大雨によって穴の中はしだいに水で満たされていく。(Movie Walkerより)

 

ある日突然、地面や道路の一部が陥没する現象をシンクホールという。
地中の石灰岩の溶解、排水施設の老朽、破損、建築作業や地下鉄の工事により地下水の流れが変わることが原因で陥没するらしい。
韓国では3日に2件ものシンクホールが発生し、複数の都市部で急増しているというから驚いてしまう。
日本でも2016年に博多駅前の道路が陥没したことを思い出した。
「奈落のマイホーム」は、現実に起こり得るパニック映画といえるんだね。
※ネタバレしている可能性がありますので未鑑賞の方はご注意ください

念願のマイホームを手に入れた会社員のドンウォン。
演じているのはキム・ソンギュン。
今後韓国ドラマの感想で書くことになる「離婚弁護士シン・ソンハン」で印象に残った俳優だよ!
しっかりした妻と挨拶を欠かさない礼儀正しい子供との幸せな3人暮らしが嬉しくて仕方ない。
ソウルの一等地からは通勤時間が短縮され、朝ごはんもゆっくり食べることができるようになった。
社内でも羨ましがられ、ちょっと得意気な様子だよ。

ところが同じマンションにはクセがある住人がいるんだよね。
それが画像左のチャ・スンウォン演じるマンス。
マンションを購入したドンウォンとは違って、マンスは月払いの賃貸だというから、名前がマンスなのか?(笑)
車を所定の場所に駐車せず、移動をお願いしても無視するなど、非常に態度が悪いチャおばさん。
こんな隣人がいたら嫌だろうな。

ドンウォン一家がマンションに住み始めてすぐに、不具合が起きる。
床をビー玉が転がることで建物の傾きが分かり、駐車場のヒビを発見し、マンション入り口のガラスが割れるところを目撃する。
ドンウォンの部下達が引っ越し祝いのために、新居を訪れるのがこの時。
高額で購入した我が家の恥部を見られまいとするドンウォンは、何事もなかったかのように、パーティではしゃいでいる。
部下として登場するのが「探偵なふたり:リターンズ」や「3食ごはん」などに出演していたイ・グァンス。
映画の中ではキム代理という役どころ。
キム代理といえば「ミセン~未生」を思い出してしまうのはSNAKEPIPEだけかな?(笑)

新居祝いをした翌日、断水が起きる。
屋上で給水タンクを確認しようとしたマンスことチャおばさんも転倒してしまう。
隣のマンションには、「花遊記(ファユギ)」で沙悟浄を演じていたチャン・グァンが庭木に水やりをしながら、沈んでいくマンションを見ている。
陥没した地面にどんどん落ちていくシーンはとても怖かったよ!

500m落下したマンションの生存者たちが、一箇所に集まることができたのが良かった。
仲違いしていたマンスとその息子も生きるために力を合わせる。
ダメダメな息子かと思いきや、食料や薬を調達するように指示を出し、頼もしい存在に変化していく。
究極の状況になった時には、本来の人間性が出るもの。
イ・グァンス演じるキム代理は臆病、対して紅一点のインターンであるウンジュはサバイバル精神旺盛で男勝りの強さを見せる。
弱音を吐かず、必ず前向きな発言をして皆を勇気づけていたよ。

「3食ごはん」で料理の腕前を披露しているチャおばさんが、ここでも料理を担当していて笑ってしまう。
画像は「鶏の泥焼き」のシーン。
鶏はどこから調達したのか不明だけど、鶏を泥でくるんでからアルミホイルで蒸し焼きにした後、チャおばさんが固くなった泥を空手チョップさながらにカチ割る、という豪快な料理だったよ!
極限状態でも美味しい料理を作るチャおばさんに拍手だね。(笑)

マンションが地下に落下した知らせを受けて、救助隊がかけつける。
画像左は、「元カレは天才詐欺師 〜38師機動隊〜」など韓国ドラマでは悪役が多いキム・ホンパ。
今回は良い人役だったので、意外だった。(笑)
右は「チング」や「グリッチ-青い閃光の記憶-」などに出演していたコ・チャンソク。
自らの危険を顧みず、救助しようとする姿勢が素晴らしかったね!

「奈落のマイホーム」は、パニック映画でありながら、キャラクターが立っていて引き込まれたよ。
現実に起こりうる事象というのも、韓国での公開初日に12万6千人を動員した理由なのかもしれないね。
映画の制作にあたり20ものセットを用意したり、最先端VFX(Visual Effects)の使用により、臨場感溢れる作品になっているんだとか。
考えさせられるところもあるのに、笑いも忘れないのが、さすがに韓国映画!
「奈落のマイホーム」、おススメだよ。(笑)

ポール・ジャクレー フランス人が挑んだ新版画 鑑賞

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【太田記念美術館前の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

太田記念美術館で開催されている「ポール・ジャクレー フランス人が挑んだ新版画」が気になる、とROCKHURRAHが言う。
フランス人の浮世絵ってどういうことだろうね?
ポール・ジャクレーという名前も初めて聞くよ。
まずは経歴を調べてみよう。

1896 パリに生まれる
1899 3歳の時に来日
1907 若礼(ジャクレー)という号で日本画を学ぶ
1929- 毎年南洋諸島に滞在
1934 若礼版画研究所を設立
1945 長野県軽井沢に疎開
1960 糖尿病により死去

明治29年にジャクレーの父親がフランス語の教師として来日して、その後母親と一緒に来日してるんだね。
一時フランスに帰国したようだけど、生涯を日本で過ごしたフランス人なんだって。
日本語はもちろんのこと、書道や音楽、ダンスなどの日本文化を習い、浮世絵と同じ技法で木版画を制作したという。
ジャクレーが着物姿でポーズを取っている画像を見ると、日本文化に慣れ親しんでいる様子がよく分かるよね!
フランス人が手掛けた浮世絵、確かに気になるよ。

6月なのに青空が広がる暑い日、ROCKHURRAHと一緒に原宿に向かう。
表参道駅は先月出かけたけれど、JRの原宿駅を使うのは本当に久しぶりかも。
2人とも若い頃から馴染んでいる場所なので、全く迷わずに太田記念美術館に到着。(笑)
早速会場の中へ。
そこまで多くはなかったけれど、そこそこお客さんが入っていた。
一人で来ている人がほとんどだったので、静かに鑑賞することができたのが良かったよ!
作品の感想をまとめていこう。
太田記念美術館では撮影が禁止されていて残念だった。
載せた画像はSNAKEPIPEの手によるものではないので、ご了承ください!

作品を目にした途端「キレイ!」と感嘆の声が出る。
南方の女性を描いた画家といえばゴーギャンが有名だよね。
ありのままの、野性味溢れる生命体として被写体を捉えたゴーギャンに対して、ジャクレーの作品には優美さが漂う。
浮世絵の大首絵みたいに、人物を大きく描いて背景には手を加えていないんだよね。
なんとも言えない中間色の美しさ。
版画作品でこんな色を観たのは初めてかも。

横座りしている女性が眺めているのは極楽鳥だという。
赤いターバンの布と鳥が呼応していて、見事な構図。
優雅な極楽鳥を間近で鑑賞できるなんて、羨ましいね!
上の女性たちも同様だけど、身につけている服の模様が細かく表現されていて、異国情緒をより一層感じさせるよ。
昭和初期に毎年海外を訪れ、水彩画を描いていたというジャクレー。
その絵を基に版画にしていたという。
モデルになった島の女性たちが、これらの作品を目にしたら喜ぶだろうね。(笑)

ジャクレーが男性をモデルにした作品もあるんだよね。
左は人形を手にしている中国の少年。
背景の黄色、敷物の赤、青い着物というくっきりした色使い。
背景を細かく描きこまないのに、ぽっくりを履いた人形や横に置かれた装身具は細かく描写されているよ。
右はモンゴルの王族が鷹狩りをしている様子だって。
すでに鳥やうさぎを仕留めていて、優秀な鷹のようだね。
モンゴル王族の着衣はもちろん、鷹や帽子についた孔雀の羽がいかにも日本画らしくて素晴らしい!
ジャクレーの作品を鑑賞すると、海外旅行に行った気分になっただろうね。

左は、真珠の飾りを頭に着けた満州の婦人だって。
とても裕福な身分なのか、身につけているもの全てゴージャスじゃない?
中でもSNAKEPIPEの目に留まったのは、薬指と小指につけた装身具。
これは「指甲套(しこうとう)」と呼ばれるアクセサリーで、身分の高さを表していたんだとか。
薄い絹から見える表情に貫禄があるよね!
右は陶磁に腰掛ける中国旧家の上流婦人だという。
タイトルを知らなかったら、男性に見えてしまうね。
まるで花輪和一が描いた漫画みたいな顔立ち、とROCKHURRAHとひそひそ話す。
もしかしたらジャクレーからの影響を受けたかもしれないよね?

今回の展覧会で最も惹かれたのが「満州宮廷の王女たち」という連作だよ!
日本の浮世絵では通常の場合、多くても20回の摺りで完成させるらしいけれど、「満州宮廷の王女たち」は223回摺っているんだって!
摺りが少ない作品でも113回だというから驚いてしまう。
これほど回数を重ねた理由は「色を出すため」だったというから、ジャクレーの美意識の高さが良く分かるよね。
ジャクレーには彫師と摺師がいて、摺師の談話によれば摺ることは問題ないけれど、色が難しかったらしい。
SNAKEPIPEが驚くのは、そこまで摺っても問題ない和紙があったこと。
特別注文していたらしいけど、ジャクレーの絵師としての才能以外にも、材料やスタッフの存在全てが噛み合って、唯一無二の作品が完成したんだね!

細やかな絵とビビッドな中間色は、豪華絢爛で華やかだった。
ジャクレーの作品は、アメリカ人が好んで買い求めたというエピソードも納得だよ。
東洋の神秘という言葉通りの、エキゾチックで極彩色の世界を独り占めできるんだもんね。(笑)

印刷やインターネット画像では色が違っていて、実物のほうがくっきりしていて鮮やかだったよ。
今まで知らなかったジャクレーの世界を観られて良かった!
教えてくれたROCKHURRAHに感謝だね。

横尾忠則 銀座番外地 Tadanori Yokoo My Black Holes 鑑賞

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【gggの壁一面に高倉健がっ!】

SNAKEPIPE WROTE:

ギンザ・グラフィック・ギャラリー(通称ggg)で開催しているのは、「横尾忠則 銀座番外地 Tadanori Yokoo My Black Holes」。
これは版画やポスターなどにするための原画や、版下など作品に仕上げるまでのプロセスを見せてくれる企画展だという。
2021年7月には東京都現代美術館で「GENKYO展」、2021年10月には21_21 DESIGN SIGHTで「The Artists展」など、横尾忠則の展覧会を鑑賞してきたけれど、舞台裏を覗かせてくれるとは楽しみ!
ROCKHURRAHと一緒に銀座に出かけたのである。

gggに到着すると必ず建物の外観を撮影するSNAKEPIPEだけれど、壁一面に高倉健が描かれていて驚く。
過去に数回、gggで横尾忠則展を開催していたようだけど、ROCKHURRAHとSNAKEPIPEは鑑賞していなかったみたいだね。
もしかしたら今までにも、壁一面に横尾作品が描かれていたのかもしれないな。

会場に入り、念のため撮影について問い合わせ、許可を確認する。
受付前に置かれていた作品集などに目をやっていたSNAKEPIPEは、ROCKHURRAHの驚きの声を聞く。
「ちょっと!これ、見て!」
指差す場所には訪問者が名前を記す芳名帳があり、開かれたページの最初の行に
「みうらじゅん」
と書いてあるじゃないの!
あの「みうらじゅん」も同日の、もしかしたら10分前かもしれない時刻にgggを訪れていたことが判明したから狂喜しちゃうよね。(笑)
「これは大変!」
慌ててスマホを取り出し、芳名帳を撮影しようとした瞬間、
「撮影はご遠慮ください」
と受付から注意を受ける。
まあ、確かに個人情報だからね。
スミマセン、とスマホをしまうSNAKEPIPE。
その後も他のお客さんが同様の行為を受付から注意されているのを目撃したよ。(笑)
「みうらじゅん」の人気ぶりがよく分かる。
そしてニアミスで「みうらじゅん」に遭遇できたかもしれないと思うと、とても残念だよ。

芳名帳のある受付から背後に広がる展示スペースを見ると、壁やケースには、所狭しと作品が展示されている。
企画展のサイトによれば「1960年から80年代に制作された作品資料、18000点の中から250点を厳選した」らしい。
無料の展覧会で、ここまでのボリュームとは信じられないくらいの太っ腹!
先に書いた「The Artists展」も無料だったことを思い出す。
大企業がスポンサーになって実現する文化振興、本当にありがたいよね。

今回の企画展には作品リストがなかったようだよ。
作品の展示ではないからね。(笑)
60年代の雰囲気が色濃く見える雑誌の表紙が並んでいる。
2021年1月にgggで開催された「石岡瑛子 グラフィックデザインはサバイブできるか」でも、ポスター作成にあたり色指定やフォントの調整など、本人が指示をメモしている展示があったっけ。
印刷物の作成には、多くの段階があることがわかるね。

江戸川乱歩の「パノラマ島奇談」の文字が見える。
装丁を担当したのかもしれないね。
こんな本があったら欲しいよ!
右側は1997年に「サンストリート亀戸」のオープンを告知したポスター。
このポスター、実はSNAKEPIPE所持していて、以前は部屋に飾ってたんだよね。
下絵を発見したROCKHURRAHが慌ててSNAKEPIPEを呼びに来てくれた。
ラフなスケッチの段階で、ほぼ完成図に近い状態だと分かり感激する。
ポスター作成の第一ステップだろうね。
とても嬉しかったよ!
「サンストリート亀戸」は今はもうなくて、「カメイドクロック」という商業施設になっているらしいから、歴史を感じてしまうね。(笑)

画像左は「電報シリーズ」といったら良いのか、コラージュ作品に見えるんだよね。
水兵と恋人(?)は、女性が「ぞんざい」な描き方をされていて可愛らしい。(笑)
赤と青は愛し合う男女を描いたクローズアップだね。
この2枚がとても気に入ったSNAKEPIPEだよ!
画像右はアーチ状に「TADANORI YOKOO」と書かれていて、60年代に制作された「Climax at the Age of 29」と同じように見えるよ。
中央で首を吊っているポスター、見たことないかな?
こちらも制作のプロセスがよく分かって興味深い。
グリコのポーズの、顔部分を横尾忠則本人に差し替えたバージョンが完成形みたいだね。(笑)

建物の壁にも描かれていた「新網走番外地」の高倉健。
3枚並んでいて、右と真ん中をミックスさせて一番左の作品になっているのかな?
版画に近い方法だよね。
浅丘ルリ子は横尾忠則のアイドルだった話は以前読んだことがあるよ。
ヌードを想像して作成されたシルクスクリーンの原画なのかな。
線画の時点でこの完成度の高さは素晴らしいよね。
横尾忠則が刀を持ってポーズを決めているのは「一柳慧作曲 オペラ横尾忠則を歌う」のレコード・ジャケットで使用された作品だね。
1969年発売のレコードということは、大島渚監督の「新宿泥棒日記」と同じ年。
グラフィック・デザイナーとしてだけではなく、俳優や歌手などでも活躍していたんだね。

会場は1Fと地下に分かれている。
第2会場へは階段を使うんだけど、そこから企画展のタイトル通り「ブラック・ホール」へと入っていくんだよね。
紫と緑のライトが暗闇をほんのりと照らす。
階段が見づらかったのか、前を歩いていた初老の男性が足を踏み外すシーンを目撃してしまった!
気をつけないと怪我しちゃうね。(笑)
ROCKHURRAHと無事に(?)地下に到着したよ。

地下は真っ暗で、作品にだけ照明があたっているので、とても見やすい!
撮影した画像も、くっきりだよね。
ピカソや俵屋宗達、モネやマティスのパロディのような作品が並んでいた。
子供の頃から模写が得意だったという横尾忠則、さすがに上手!(笑)
暗闇に鮮やかな色彩が浮かんで、とても美しかったよ。

横尾忠則が精神世界に通じていることは、以前から知っていた。
死をテーマにした作品も多いし、天使やUFOについて対談している本を読んだこともあったっけ。
載せた画像左は仏像の手で右は幽体離脱を描いているみたい。
横尾忠則にとって、眠って夢を見ることも現実の一部であるというので、毎晩幽体離脱しているといえるのかもしれない。
江戸川乱歩の「うつし世はゆめ 夜の夢こそまこと」という言葉とは違って、横尾忠則にとっては「うつし世も 夜の夢もまこと」ということなんだろうね。

これらの作品を観た時に、荒木経惟の「センチメンタルな旅」を連想したSNAKEPIPE。
アラーキー同様、横尾忠則も愛妻家で有名だからね!
奥様との思い出を描いているのかな、と勝手に想像したよ。
載せた画像は初めて観た作品だね。

250点もの作品を充分に満喫させてもらったよ!
60年代からの作品資料をずっと保管していることもすごいと思う。
普段は見られない制作過程を鑑賞できて、とても興味深かったね!