80年代世界一周 波蘭土編

【波蘭土は伝説的なバンドばかり】

ROCKHURRAH WROTE:

2019年の後半はブログを大々的にサボってしまってSNAKEPIPEに迷惑をかけたが、今年は少しは頑張って書いてゆきたいと思うよ。一応な。

全然関係ない話から入るが、BS12というチャンネルに個人的には大注目してて、ウチが(と言うかROCKHURRAH個人的なものが多いけど)懐かしいと思えるようなドラマをひっそり再放送してたりする。
何年か前の話。
大昔に大好きだった「傷だらけの天使」を再放送してるのに途中から気付いて録画してみたが、最初の数話が録れてなくてブルーレイ保存版が焼けない。こういうのは1話からちゃんと並べて焼きたいからね。そういう悔しい思いをしたのがこのチャンネルを初めて知ったキッカケだった。
子供から青年時代にかけて愛読してた「まんが道」のドラマ版を80年代にやってたのさえ知らなかったけど、それは運良く第1話から録画して観る事が出来た。 
運悪く完全に見逃したのが井上ひさし原作の珍しいミステリー「四捨五入殺人事件」。子供の時に原作を読んだ事あるから、他愛もない話ではあるけど、ドラマ版も観てみたかったよ。
さらに脱線するが井上ひさし原作のドラマでは、大昔に石坂浩二がやってた「ボクのしあわせ(モッキンポット師の後始末)」を子供の時に観てたので、どこかでそんなのを再放送してくれたら嬉しいんだが。
さらに海外ドラマもなかなかでドイツの大スケール・ドラマ「バビロン・ベルリン」、ウチでもシーズン1は観てた「ハンニバル」などなど、BS12偉い!と賛辞を惜しまないROCKHURRAHなのだった。
そして極めつけが大昔に楽しく観てた革新的ホームドラマ「ムー」の再放送。
同じく大好きで観ていたSNAKEPIPEと一緒に観る事が出来て嬉しいよ。
こんな時代にまた見れるとは偉い!BS12! 
などと大絶賛してBS12をここまで持ち上げてるROCKHURRAH RECORDSだから、いずれは番組プロデューサーの目にも留まるだろう(希望)。ぜひ続編の「ムー一族」もやって下さいね。 

何で突然こういう関係ない話になったかと言うと、その「ムー」の中で郷ひろみや登場人物の口ぐせになってるのが「一応な」というギャグなのか何なのかよくわからない受け答え。
これでやっと冒頭の文章につながったけど、うーむ、たったこの一言を説明するのに、ここまでの行数書いたのはROCKHURRAHくらいしかいないだろうな。

さて、久しぶりのブログだから何をやろうかと迷ったけど、今回は去年の3月以来やってなかった「80年代世界一周」という企画にしてみよう。
80年代ニュー・ウェイブの中でも、あまり多く取り上げられないような国のバンドに焦点を当てるというナイスな企画なんだけど、 これを専門的に語ってゆければ非常に有意義な記事になったに違いない。
が、そこまで英米以外のニュー・ウェイブに通暁してるわけでもなくて、偏った聴き方しかしてないROCKHURRAHがかなりいいかげんに書いてるので、真面目に研究してるマニアな人とは絶対に語り合えないレベルだよ。

今週は東ヨーロッパの波蘭土=ポーランドに焦点を当ててみよう。
世界一周などとシリーズ・タイトルつけた割には世界の歴史や地理、文化などには全く詳しくないROCKHURRAHだが、やっぱり頭の中にあった場所と地図のポーランドの位置が大きく外れていたよ。
大国ロシア(ソ連)とドイツに挟まれて、例えば国取りシミュレーション・ゲーム的に言えばかなり不利な立地だと言える。実際に過去にはその2つの国によって侵攻されまくってポーランドという国が消滅していた時代もあった、そういう悲惨な歴史が色濃く残る国という印象だ。
今回のブログのテーマはポーランドの80年代ニュー・ウェイブについてだから、政治的な事は抜きにして語りたいんだけど、80年代にはどうしてもまだ社会主義による規制が多かったのは確か。

ポーランドの民主化運動を弾圧するために1981年から戒厳令が敷かれ、「連帯」と呼ばれる労働組合(反共産主義)が取り締まられたり、夜間外出禁止などの規制があったという。民衆の力によって結局は民主化が進み、戒厳令は停止されたんだけど、81〜83年というのがちょうどその時期に当たる。
映画とかでよくあるように夜間外出で怪しいヤツと憲兵に見つかり、逃げたら銃殺・・・というほどではないとは思うけど、実際はどの程度の厳しさだったのか。
そういう戒厳令の中、どうやって彼らは音楽活動をしてたのか、その辺の知識不足は見てきたわけじゃないからわからないけど、まあ堅い話は抜きにして始めようか。

ポーランドと言えば真っ先に思い浮かぶのが首都ワルシャワ、国名よりも有名かも知れないね。
ワルシャワと言えばショパン、などと観光ガイドブックには書いてあるようだが、ROCKHURRAHの世代ではデヴィッド・ボウイの「ワルシャワの幻想」と答える人が多いだろう。
SNAKEPIPEだったら間違いなくボウイではなくスターリンかな?
昔から王道嫌いなROCKHURRAHだけど、80年代初頭くらいまでのデヴィッド・ボウイは一通りは聴いて影響は受けてるのは確か。ただ横顔がカッコいいジャケットの「Low」はちょっと苦手で眠くなる曲も含まれているな。
そこに収録されてる「ワルシャワの幻想」は大半がインストで短いヴォーカル部分は何語なのか不明の歌(ボウイ発案の言葉らしい)が入った名曲で、ジョイ・ディヴィジョンの元のバンド名もここからつけたワルシャワだった。
80年代のいつくらいだったろうか?吉祥寺にWarsawというレコード屋があったのを思い出す。
気になって調べてみたら1990年に開店とある。ROCKHURRAHの記憶もあやふやだな。
そこで一般的にはかなり無名だったベルギーのラ・ムエルテというバンドについて店員と話した時、勧めてきたレコードを全て、さらにそこに置いてないのもすでに持ってると言ったら「え?全部持ってるんですか?」と驚かれたのを覚えている。
これがROCKHURRAHにおけるワルシャワの連想なんだけど、ワルシャワという綴りも響きもいいね。

そんな憧れの地、ワルシャワ出身なのがこのバンド、Brygada Kryzysだ。
実は過去の記事「読めん!編」でも書いてたんだけど、ブリガダ・クリジスと書いてたサイトがあったので、それに倣ってみた。クライジズの方がしっくりくるけど。
パンク、ニュー・ウェイブ世代のポーランドを代表するバンドと言っていいだろう。
と言うより、少なくともその時代に日本の輸入盤屋でもレコードが見つけられた数少ないポーランドのバンドがこれくらいしかなかったんじゃないかな?
1979年に結成して80年代前半に活躍したらしいが、イギリスのフレッシュ・レコードというレーベルから出してたので日本でも少しは流通してたというわけ。
元々KryzysというバンドがあってそこからBrygada Kryzysになったようだが、どちらも共産主義のプロパガンダ・アート的なジャケットに魅力を感じながらも、個人的には素通りしてしまったのが悔やまれる。
フレッシュ・レコードから出てたアルバムは、倒れゆく文化科学宮殿(というイメージ)の横に、いかにも東欧系イケメンが立ってるというROCKHURRAH的には気になるジャケットだった。
いや、その当時は文化科学宮殿なんてものの存在を知らなかったから、エンパイアステートビルか何かだと思ってたに違いない。
実はちょっと前に「世界ふれあい街歩き」で知ったばかりの文化科学宮殿、スターリンが自分の威光を示すためにポーランドに建てたという悪名高き建造物で、地元の人間は貶しまくってたよ。そんなにイヤだったら壊してしまえばいいのにとも思うが、やっぱりもったいないのかね?
そういうスターリニズムの象徴のようなものをぶっつぶせ、と言ってるかのようなのがこのジャケットのコンセプトなのかな?と想像してみたよ。
がしかし、Kryzys名義のレコードはモロにプロパガンダ・アートみたいなのもあるし、「Komunizmu 」なんてタイトルもある。うーむ、ポーランド語も読めないし、反共産主義なのか支持派なのかよくわからんな。

その頃のポーランドはロックが盛んな自由な国ではなかっただろう(想像)けど、このバンドは一応英米にも通用する音楽性と見た目で、この国の音楽としてはかなり堂々としたものだった。
ちなみにポーランドを実質的に支配していたソ連のロックは、国が認めた国家公務員みたいな当たり障りのないロック・バンドもいたが、過激だったり思想的に反共産主義になるものは当然認められてなかったという事になるらしい。ポーランドもたぶん同じような政策だろうから、この手のバンドは反体制として抑圧されてたんじゃなかろうか。ポーランド人の友達もいないから本当は全然わかってないけど。

この曲ではないが、なぜかレゲエっぽい曲調もやってて、その辺はクラッシュやラッツあたりの影響なのかな。
上の曲「Wojna」はポーランド語で「戦争」の事だけど、本当の意味でこの国が自由を謳歌出来るような戦後になったのは日本よりずっと後になってからなんだよね。
うーむ、珍しくいいかげんじゃない方向に話を持っていけた気がするよ。

次もまたワルシャワのバンド、Dezerter。
普通に読んでデザーターかと思ったらデゼルテルなどとよそでは書かれてた。エレキテルみたいなもんか?

1981年にSS-20というバンド名で活動を始めたらしいが、SS-20というのは旧ソ連の核搭載中距離弾道ミサイル、Raketa Sredney Dalnosti (RSD) Pionerという物騒なシロモノ。
そういうバンド名は日本で言えば原爆オナニーズみたいなもんか。
この時代の映像が残ってるが、これは本当にアンダーグラウンドな通路の奥で演奏してるという、こちらが想像する通りの「戒厳令下のポーランドでの非合法地下演奏集会」みたいな感じだった。
観てないけど「ソハの地下水道」というポーランド映画を思い出したよ。それよりもずっと前にポーランドの著名な監督、アンジェイ・ワイダによる「地下水道」というのもあり、これまた未見。
その辺の影響が強いのかもね、などといいかげんな感想を書いてみたけど信用しないように。
SS-20はその後、さすがにバンド名がヤバかったのかDezerterと改名したらしいが、ポーランドの人気、実力No.1パンク・バンドだという。No.2は知らないが。

今では世界のどんな国の音でも手に入るかも知れないけど、80年代初頭にリアルタイムでポーランド盤のレコードは入手困難だったんじゃなかろうか。
聴いてみるとこれはまさに正統派ハードコア・パンクでポーランド語とも見事にマッチしている、と思いきや歌詞の最後に一拍置いて「オー」という掛け声、これでいいのかNo.1。
演奏が速く歌も速いハードコアの場合は、どこの国の言葉もちゃんと一応それっぽく聴こえてしまうという錯覚効果があるからね。
試しにROCKHURRAHが定番としている各国語によるブログの締めくくりフレーズ「ではまた、ド・ヴィゼーニャ(ポーランド語で「さようなら」)」のド・ヴィゼーニャをこの曲で連呼してみてもたぶんそれなりのはず。

ビデオでは地下活動してるはずのバンドが(勝手な想像)こんなにたくさんの聴衆の前で堂々と演奏してて映像もちゃんとしてる、と思ったらこれはポーランドのヤロチンというちょっと笑ってしまう町で開かれる大規模な野外ロック・フェスティバルでの模様を収録したものだった。
木場公園の木場ストック(ウッドストックにかけた情けない野外フェス)よりはずっと面白そうだな。

こちらはワルシャワの西300kmほどにあるポズナン出身のLombardというバンド。
ポズナンは古くからある都市だという事だが、カラフルな壁や屋根がきれいなおとぎ話の街のような感じだね。
首都ワルシャワと同じく戦火にさらされたけど街並みは復元されていて、昔のまんまを残そうという住民たちの熱意に頭が下がるよ。こういうのが本当の民度の高さというものだね。
さて、そんな美しい街の出身であるLombardは1981年に結成、現在もまだやってるというから相当に息が長いバンドだ。
これもまた普通に読めばロンバードなんだけど、上のデゼルテルみたいな感じでロンバルドなどと言うのかな?
紳士服のメーカーとかでありそうだよね。ビジネスマンの強い味方、防水、防汚、防臭、防シワ加工がほどこされたロンバードの高級スーツ、とか。

このバンド、本来はたぶんニュー・ウェイブでも何でもなくて古臭くて垢抜けない(今どきあまり言わない表現)男たちのパッとしないバンドだったんだろうが、なぜかその頃目新しかったパンク、ニュー・ウェイブ系の美女に歌わせてみたら思いのほか成功したというパターン。しかもこのバンドはもうひとり歌姫を擁してるんだよね。
失礼な言い方なのを承知で言えば、こういうロックの後進国に限らずイギリスでもアメリカでも垢抜けない男たちに囲まれた歌姫という形態のバンドが割とあるような気がする。レコード会社が「あんたたちのルックスでは売れそうにないから歌手志願のこの娘と一緒にやればデビューさせてやろう」みたいな戦略もあるだろう。
ダサいバンドが美人を誘ったらうまくヴォーカルになってくれたって話もあるにはあるだろうけど、こちらのロンバードはどうなのかね?日本語の情報が全くないのでその辺は全て想像ね。 

Małgorzata Ostrowskaという(読めん)ヴォーカル女性の見た目はかなり頑張ってるけど、バックバンドのどうでも良さが漲っててかわいそうになってしまうよ。
「パッとしないかも知れないけど楽曲作ったのは俺たちなんだよ」などと言い張るかも知れないが、うーん、もう少しセンスのいいバックバンドと出会ってたらMałgorzata嬢もポーランドを代表する歌姫になれたかも。

お次はこちら、ワルシャワの南に位置するプワヴィという工業都市出身のSiekieraというバンド。
うーむ、日本語にすると「斧」というバンド名なのはわかったが、カタカナで書いてくれてるサイトが見つからないのでROCKHURRAH得意の「読めん!」だよ。たぶんみんな自信を持って読めんに違いない。
普通に読むとシェキエラなんだろうが、どうせまた違うんだろうな。

京都のJet Setというレコード屋はROCKHURRAHも何回か行ったことあるけど、そこのコメントでは「’80s欧州最大級の音楽フェスJarocin Festivalでも多くの観客を沸かせた伝説のバンド」と評されているな。
おお、デゼルテルの時にも出てきたヤロチン・フェスね。
しかし「伝説の」などと書いてはいるものの当時の日本で紹介されてたのかね?数少ないマニアはいたんだろうけど、いつ、いかなる時に伝説となったのか知りたいよ。

どうやら初期はOi!スキンヘッドとハードコア・パンクの折衷みたいなバンドだったとの事だけど、同名の別バンドじゃないかと思って調べてみたら、やっぱり同じバンドらしい。うっそー、初期と後期で見た目と音楽性が全く違うのにビックリだよ。レコード・デビューした時にはすでに後期のサウンドになっていたと言うべきか。本当なのかな?

上の方のビデオの曲「Misiowie Puszyści」は1986年に出た1stシングルのB面の曲。
日本語に訳すと「ずんぐりしたクマ」などと、ほのぼのしたタイトルだが副題の「Szewc zabija szewca」は「靴屋は靴屋を殺す」という意味不明のもの。確かに聴けばそんな感じだね(いいかげん)。
鋭角的なギターと呪術的な歌、イギリスの暗めのバンドのエッセンスも取り入れた、この時代のポーランドとしてはかなり通好みの音楽。チープだけど「いかにも」な場所で撮影されたビデオも雰囲気にバッチリ合ってるね。
イギリスやドイツのダークなパンクが好きだったら気に入るかも。
しかし上のハードコアと同じバンドなのか?今でも信じられんぞ。 

ポーランドのロックだとかニュー・ウェイブ時代の事情をさっぱり知らずに書いてるから、最も重要なバンドをすっ飛ばして書いてたりするのは当たり前。そういう知らぬもの勝ちな態度で書いてきたけど、最後はこのRepublikaだ。
これはどう考えてもリパブリカで読み方間違ってないよな。
そして、どうせまたポーランドの伝説的なバンドなんだろうなあ。
共和国という意味のバンド名で多くの共和国はナントカRepublikaとなるが、ポーランドだけはRzeczpospolitaという特殊な単語が使われた共和国になる。何でかは不明だし今知ったけど明日には忘れる知識だなあ。 

Republikaはワルシャワ北西のトルンという世界遺産の街出身で、1981年くらいから活動してるとの事。
とても有名なポーランドのバンドらしく、英訳された歌詞まで載ってるビデオもあったしトリビュート・バンドまで存在してるそうだ。
ビデオももう少し凝ってて面白いものもあったんだが、これはデビュー曲の「Kombinat」でおそらくライブ風景という珍しいもの。原曲は1983年リリースだがたぶんその頃の映像だと思う。
日本でも使うコンビナートという言葉、元はロシア語だったのも今、調べて初めて知ったよ。
ブログの内容によるけど、何かわからないものに対して調べる事によって少しは何かの知識を得る。
人から教えられた事よりもその方が後に残る記憶になるね。 

ヴォーカルがキーボードの割にはテクノやシンセポップの要素は特になく、初期ニュー・ウェイブ時代の簡素なアイデアをそのまんま楽曲にしたような懐かしい感じがするよ。歌い方や曲調はヒカシューに似てると横でSNAKEPIPEが言ってたが、見た目の割には結構情感たっぷりに歌い上げるタイプ。なぜか真上からのカメラアングルもライブ映像としては斬新。
結構、芸達者なヴォーカルらしくて途中からキーボードをフルートに替えて熱演してるさまがロキシー・ミュージックに途中から参加したエディ・ジョブソンを思い出す。あっちはキーボードからヴァイオリンに持ち替えてのソロ・パートだったけど。

以上でポーランド編は終わりとするが、動画のないバンドは敢えて取り上げなかったから、かなり偏ったものとなったのは間違いないよ。この国のパンクやニュー・ウェイブなら任せろというほど詳しい国はないから、今後もこういう姿勢になるのは間違いないね。

それでは皆さん、風邪やインフルエンザに気をつけて。
ド・ゾバチェーニャ(ポーランド語で「ではまたね」) 

SNAKEPIPE MUSEUM #53 Caitlin McCormack

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【この作品を見ると横溝正史の小説「悪霊島」を連想してしまう】

SNAKEPIPE WROTE:

朝の出勤前に時刻と天気予報を確認するために、テレビをつけている。
何かしらせわしなく動いているため、テレビの音を聞いている、というのが正確な言い方になるのかな。
この時間だけは民放チャンネルなんだよね。(笑)
そのためCMが入り、宣伝文句がなんとなく聞こえている状態である。
「はじめてのレース編み」という雑誌の宣伝も耳に入ったことを覚えている。
最近、レース編みやってる人いるのかなあ。
昔は電話機のカバーか応接室のガラステーブルの上に敷いたり、ドアノブのカバーとして大人気だったっけ。
などとすっかり昭和の気分に浸ってしまった。
あらっ、ウチでは今でもレースよ!というご家庭もあると思うけど、これはSNAKEPIPEのイメージだからね。(笑) 

そんなプチブル(死語!)のレース信仰をぶち壊す作品を発見したよ。
どうやら2016年にヴァニラ画廊でも作品を鑑賞することができたようで、日本でも全く知名度がないアーティストではないみたい。
今頃知ったSNAKEPIPEが遅いのかもしれないね。(笑)
早速アーティストを紹介していこう!

アーティストの名前はCaitlin McCormack、ケイトリン・マコーマックの表記で良いのかな。
そういえばマコーミックって昔、スパイス・メーカーあったよねえ。
最近聞かないなあ、と思って調べてみると、ライオンと合弁後ミツカンに販売委託、現在はユウキ食品に事業譲渡している関係で、名前がユウキMCに変わってるんだって。
どうりで聞かないと思ったよ。
って関係ない話だったので、元に戻ろう。(笑)

ケイトリン・マコーマックは1988年のアメリカ生まれ、ということは今年32歳かな。
2010年にフィラデルフィア芸術大学でイラストレーションの学士号取得。
当初はイラストレーターを目指していたようだけど、路線変更したみたいだね。
フィラデルフィアを拠点に活動している繊維アーティスト、とのこと。
繊維アーティスト、なんて呼び方初めて聞いたよ。(笑)
大学卒業後より個展を開催したり、グループ展にも参加しているみたい。
あまり詳しい情報がなかったので、これだけで許してね!
では早速作品を紹介していこうか。

マコーマックは綿素材の糸を使った、いわゆるレース編みで作品制作を行っているという。
左の作品からレース編みは想像し辛いけど、編んでることは分かるよね。
そのレース編みを接着剤で固めているらしい。
骨の標本を形にしているようだけど、お花と骨というなんとも不思議な雰囲気だよ。
「Granny」は2019年の作品で、サイズは101.6 × 71.1 cmというからかなり大きめだよね。
こんなタペストリーが部屋にあったら、印象がガラリと変わりそう。
作品は販売されていて、$3,500とのこと。
日本円で約38万5000円。 
そこまで手が出せない金額じゃないね。
どれどれ、他の作品も購入候補で考えていこうか。(笑) 

「Storm of Uncles」が気に入ってたんだけど、調べてみたら売り切れだった!
2015年の作品で、大きさが94 × 64.1 × 7.6 cmと書いてあるよ。 
奥行きが7.6cmあるということは、かなり盛り上がった厚みのある作品なのかもしれないね?
直訳すると「おじさん達の嵐」って意味不明だけど、トカゲの骨格のような謎の生物は擬人化されてるってことなのかな。
マコーマックは「時間の経過や自らの視覚的偏見による記憶の歪みを修正し、再構築することが目標」なんだとか。
分かるような分からないような言葉だよね?
例えばマコーマックが子供の頃に、親戚のおじさんが突如暴れだした時の記憶を基に作品になっている、というようなことなのか。
そうして見ると、荒れ狂ったおじさんの姿に見えなくもないよね。(笑)

「A Thing I Said (Fuck You, You Motherfucking Fuck)」という、Fから始まる放送禁止用語連発のタイトルがついている2019年の作品はいかが?
よく見ると、作品に文字がレース編みされてるじゃないの!
ちゃんと「fuck you」って書いてあるよ。(笑)
34.3 × 26.7 × 8.9 cmという小さめの作品なので、家に飾るには丁度良さそう。 
マコーマックは、それぞれのパーツをかぎ針編みしてから、何度も何度も秘密の接着剤で固めていき、最終的に硬化したパーツを縫い合わせているという。
その「秘密の接着剤」というのが非常に気になるよね。(笑)
そしてこの作品は、一体どんな状況だったのかも想像しちゃうよ。
お値段は$2,500、日本円で約27万5000円!
自宅でじっくり鑑賞しながら、ストーリーを考えるのも楽しそうだね。

アンティークの時計ケースに入った「Boy Now」という作品。
そのまま直訳すると「少年は今」なんだけどね。(笑)
2段構えなので、非常に単純に考えると上が過去の少年で、下が現在なのか。
大きくなって背中が丸まった?
開いてた口が塞がった?
快活だった子供が、現在は物思いにふける思慮深い少年に変化した、と見るのは安直過ぎるかな。(笑)
マコーマックの作品はほとんどがモノクロームなので、額やケースが変わると印象が違ってくるんだよね。
アンティーク時計のケースも、ドーム状のガラスケースも、見え方が違って良いね。
「Boy Now」は69.9 × 39.4 × 10.2 cmの大きさで、お値段は$1,700、日本円で約18万7000円だって。
東京駅近くのKITTE内にある「インターメディアテク」に、そっと置かれていても誰も気付かないかもしれないよ。
博物館に展示されている標本みたい、って意味なんだけどね。(笑)

「Chicken」は、今まで観てきた「謎の生物」とは様子が違うよね。
ほとんど人間なのに、タイトルでは「にわとり」だって。
外国では「チキン」というと、「臆病者」や「腰抜け」と言った、かなり相手をバカにしたような単語としても用いられるからね。
作品では心臓部分が透けているから、余計にそう見えるのかもしれない。
SNAKEPIPEは、この作品はマコーマック自身、つまりは自画像かなと勝手に想像する。
腕は曲がり、手先も使えない状態。
八方塞がりで出口が見えないような、陰鬱な精神状態を表しているように見えるよ。
ROCKHURRAHの解釈では、頭と心臓部分が欠落していることから、思考と運動機能が停止している様子を表現してるのではないか、という。
そしてそんな状態を人間ではなく、「チキン」と呼んでいるのではないか、と推測するらしい。
なるほど、それも説得力あるなあ!(笑)
26.7 × 34.3 × 8.9 cmという大きさで、販売価格は$1,200、日本円で約13万2000円とのこと。
マコーマックの心象を伝えているような作品、他にも紹介してみようか。

「See You All in There」は、マコーマックに珍しく黒糸を使っているんだよね。
本に絡みつくように糸が増殖し、ついには塔が立ってしまったのか。
直訳すると「これらの中に全てがある」 というタイトル、本はメタファーだろうね。
SNAKEPIPEの勝手な想像を続けると、本は記憶や人生、つまりはその人の魂を表現しているのではないか。
糸を使って心象を作品にしているので、2019年9月に鑑賞した「塩田千春展:魂がふるえる」を思い出す。
マコーマックも塩田千春と同じように、苦しみに囚われているんだろうか。
トラウマや苦しみを作品にする女性アーティストって多いんだね。
35.6 × 27.9 × 20.3 cmというサイズの「See You All in There」は$1,800、日本円で約19万8000円だって。

どの作品もアート作品としてはお手頃価格じゃないかな。
ちなみにトップに載せた作品「Morgellons」が$10,000、日本円で100万を超すんだよね。
サイズも横幅が162cmという大型作品。
SNAKEPIPE MUSEUMに所蔵したいね!(笑)

レース編みという伝統的な手法を用いながら、アート作品を作るマコーマック。
ヨーロッパでは家庭的な要素があり、日本では先にも書いたように昭和には「ちょっとお上品」の象徴だったレースが不気味なモチーフに変身しているところがポイントかな。
どれほどまでに細かい作業なのか、そして「秘密の接着剤」の正体を知るためにも、実物をじっくり間近で鑑賞してみたいね!

収集狂時代 第14巻 高額アート編#03

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【2019年に高額取引された女性アーティスト1位はルイーズ・ブルジョワ】

SNAKEPIPE WROTE:

今週は、2019年の総決算として、サザビーズやクリスティーズのオークションで高額取引されたアート作品について特集してみよう。
当ブログのカテゴリーである「収集狂時代」を始めるきっかけになったのが、高額アート作品の紹介だったので、初心にかえった感じだね!
ここで余談だけど、「初心にかえる」について調べたSNAKEPIPE。
「帰る」か「返る」なのか迷ってしまったんだよね。
結局ひらがなで表記することにしたんだけど、漢字とか言い回しって、本当に難しい。

さて、それでは早速オークション結果を発表しよう!
まずは10位!
デヴィッド・ホックニーの1969年の作品「Henry Geldzahler and Christopher Scott」だよ。
ポップ・アートにも影響を与えたイギリスのアーティストだね。
正面を向きソファに座っている男性と、あらぬ方角を見つめながら直立する男性。
2人の視線は絡んでいないように見えるよ。
この絵はまるでスウェーデンの監督であるロイ・アンダーソンの作品「さよなら、人類(原題:En duva satt på en gren och funderade på tillvaron 2014年)」のワンシーンのように見えるよ。
この映画の感想については、2016年7月に「映画の殿 第21号 さよなら、人類」として感想をまとめているので、御覧ください!
どうやらホックニーの絵画に登場しているヘンリーさんとクリストファーさんはカップルだったようだけど、一体どんなシチュエーションなのかと想像するのは楽しいかも。
ちなみにオークションでの落札価格は$49.5 million、日本円で約54億1800万円!
10位でこの金額とはね。(笑)

9位にランクインしたのは、マーク・ロスコの1960年の作品「Untitled」 。
ロスコは高額で取引されるアーティストの常連だよね。
マーク・ロスコについては、今まで何度かブログに書いていると思うけど、改めて書いてみようか。
千葉県佐倉市にあるDIC川村記念美術館 には、世界で4つしかない「ロスコ・ルーム」があるんだよね!
ロスコの絵画は、実物を観る必要があるかもしれない。
「ロスコ・ルーム」に足を踏み入れると、なんとも言えない感覚に襲われるんだよね。
あんな部屋を作りたいと思ったら、高額でも購入するんだろうなあ。
SNAKEPIPEも、お金があったら自分だけの物にしたいと思うよ。
到底ムリだけど!(笑)
この作品は$50.1 million、日本円で約54億8400万円だって。
「美術館が手放すということは、大した作品ではないからだ」とディーラーが話したとか?
54億円出しても買う人がいる作品なのに、駄作扱いされるなんて驚き!(笑)

8位はフランシス・ベーコンの「Study For A Head」、55億1600万円だよ!
映画「戦艦ポチョムキン(原題:Броненосец «Потёмкин» 1925年)」に登場する老婆をモチーフにした作品だね。
高額取引ランキングでは、必ず登場するベーコン。
ベーコンさんに関しては、「SNAKEPIPE MUSEUM #07 Francis Bacon」や「フランシス・ベーコン展鑑賞」など、今まで何度も書いているので、今回は割愛しようか。(笑)

7位はエド・ルシャの1964年の作品、「Hurting the Word Radio #2」。 
RADIOという文字が金属クランプによって、縮められたり伸ばされている。
一体どんな意味が込められているんだろう?
実はエド・ルシャというアーティストについては、初耳だったSNAKEPIPE。
1937年アメリカのネブラスカ州生まれというから、今年で83歳かな。
1960年代より絵画、版画、写真、映画に携わっていたという。
検索してみると、文字を取り込んだ絵画作品が多いみたいだね。
1962年に自費出版した写真集「Twentysix Gasoline Stations」は、様々なアーティストに影響を与えたらしい。
近所のガソリン・スタンドを遠景で撮影した26枚の白黒写真だという。
単なる記録写真といえば、それまでだけど、群写真と考えるとコンセプチュアル・アートなんだよね。(笑)
現代写真のさきがけになるのかな。
今回オークションにかけられたルシャの作品は、$52.5 million、日本円で約57億4600万円!
ルシャの他の作品も観てみたいね。 

6位はアンディ・ウォーホルの「Double Elvis [Ferus Type] 」。 
エルヴィス・プレスリーが2つ並んでいる有名な作品だね!
クリスティーズで落札された価格は日本円で約58億円だよ。
5位はパブロ・ピカソの「Femme au chien」で、約60億円。
ついに60億を超えたね!(笑)
それにしても10位から見てみると、ランキングとは言っても、金額はほんの2、3億の違いだけだよね。
などと書いてはみたものの、本当は1億だって大変なんだけど。(笑)
4位はポール・セザンヌの「Bouilloire et fruits」。
印象派の巨匠であるセザンヌも、高額取引ランキングの常連だよね。
ここで一気に65億円になったよ!(笑)

ついに第3位になったね!
ロバート・ラウシェンバーグの「Buffalo II」は1964年の作品だという。 
目を引くのはやっぱりケネディ大統領だよね。
ラウシェンバーグは「コンバイン(結合)・ペインティング」と呼ばれる、様々なオブジェを取り込んだ作風で知られているアーティスト。
2013年9月に鑑賞した「アメリカン・ポップ・アート展」で、「今回の展覧会で一番感銘を受けたアーティスト」として、感想をまとめたっけ。
「Buffalo II」の落札価格は$88.8 million、日本円で約97億2000万円!
ラウシェンバーグの貴重な初期作品のほとんどは、すでに美術館や個人のコレクターによって所蔵されているとのことで、オークションに出る機会が稀だったため、価格が引き上がったという。
ラウシェンバーグの大規模な展覧会、是非観たいね!

2位はジェフ・クーンズの「Rabbit」。 
2014年に書いた「収集狂時代 第2巻 高額アート編#02」でも、クーンズの別の作品が3位にランクインしていたんだよね。
ジェフ・クーンズは、キッチュな題材を巨大化した作品が特徴で、賛否が極端に分かれる評価を受けているという。
今回登場の「Rabbit」も、風船ウサギを型取りしてから、ステンレスで鋳造後鏡面仕上げされたという、ふざけた印象の作品とのこと。
村上隆のフィギュアなどにも通じるオモチャっぽい作品だけど、落札価格は驚きの$91 million、日本円で約99億6000万円!
「クーンズの作品は高額」というレッテルを美術界に浸透させた、クーンズの作戦勝ちに思えてならないよ。
本気で素晴らしいと感じる人もいるようなので、価値観はそれぞれ、だけどね。(笑)

堂々の1位はクロード・モネの「Meules」、一般的には「積みわら」として有名な作品になるんだね。
夕日なのか朝日なのか分からないけど、積みわらの後方から差し込む光が印象的な作品だね。
2012年に公開されたマイケル・ホフマンの「モネ・ゲーム(原題:Gambit)」は、モネの「積みわら」を使って大金をつかもうとする話だったことを思い出す。
モネの作品は高額、というのは周知の事実ということなのかな。
NHKスペシャルでやっていた「モネ 睡蓮(すいれん)~よみがえる“奇跡の一枚”~」を偶然観たROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
長年行方が分からなくなっていた、「睡蓮・柳の反映」が半分ボロボロの状態で見つかったことから、その修復をするというドキュメンタリーだったんだよね。
印象派には、今までほとんど興味を示したことがないROCKHURRAH RECORDSなので、モネのタッチを出すのに苦労している様は興味深かった。
そして国立西洋美術館の女性館長と女性スタッフの厳しい表情にも大注目してしまったよ。(笑)
モネの「積みわら」は$110.7 million、日本円で約121億円!
1986年にオークションにかけられた時は、1億1000万程度で落札されたというから、ものすごい利益率だよね。
株みたいな儲け主義になっているようで、作品の価値の意味合いが変化しているように感じるよ。

2019年の傾向は、TOP10に女性アーティストが入っていないこと。
15位にルイーズ・ブルジョワの「spider」が約35億円で登場しているのが女性の第1位なんだよね。
ブルジョワの蜘蛛シリーズは、六本木ヒルズで鑑賞することができるので嬉しい。(笑)

そして1960年代の6作品がランクインしていることかな。
5年前に始めた「収集狂時代」の時と、登場するアーティストに変動がない点にも気付く。
今から5年後はどうなっているんだろうね?
確認してみたいと思う。

窓展/MOMATコレクション 鑑賞

20200105 top
【窓展の入り口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

SNAKEPIPEが担当する2020年初のブログだね!
今年もよろしくお願いいたします。

今回は2019年の最後に書いた「パラサイト/パッション20 鑑賞」 の続きを紹介していこう。
国立近代美術館工芸館で「パッション20」を鑑賞した後、その足で国立近代美術館に向かった友人MとSNAKEPIPE。 
歩いて10分程度の場所に美術館があるので「はしご」ができるんだよね。(笑)
それにしても映画から始まり、工芸館の鑑賞後にもう一つの展覧会を回るとは、ハードスケジュールだよ!

少し北風が強まってきた中、北の丸公園を散策しながら工芸館へ。
もう少し気温が高くなったら、ゆっくり散歩したい公園だね! 
前回、国立近代美術館に来たのは2016年9月の「トーマス・ルフ展」だったっけ。
あの時は友人MとROCKHURRAHという「あやしい3人組」だったね、などと話しながら到着。
館内に入り、チケットもぎりの場所で撮影について尋ねる。
一部撮影禁止の作品があるとのこと。
「トーマス・ルフ展」の時には、ウェブにアップする際には作品名や「国立近代美術館」という記載をする必要があったけれど、そういった規制もないみたい。
外国人観光客も多いし、インスタグラム等SNSが流行している現在、3年前とは状況が変わったんだろうね。

それでは早速気になった作品を紹介していこう!
と書きたいところだけど…気になる作品のほとんどが撮影禁止だったんだよね。
マルセル・デュシャンの「フレッシュ・ウインドウ」やリキテンシュタインの「フレームIV」など観たいと思っていた作品を画像でお伝えできないのが残念!

撮影できた作品で気になったのは、林田嶺一の「とある日用雑貨店のショーウインドーケース」。
1933年旧満州生まれの林田が、子供時代に見た戦争の記憶をもとに作った立体作品とのこと。
ロシア文字が並んでいるかと思うと、和服の女性が描かれていたりして、旧満州の雰囲気が表現されているみたい。
調べてみると、林田の作品はポップアートとして位置づけられているみたい。
確かに戦争の悲惨さを訴えるというよりは、純粋に子供だった頃の記憶や見たままを再現しているようで、とても可愛らしいんだよね。
SNAKEPIPEは少女時代に夢中だった「文化屋雑貨店」を思い出したよ。(笑)
現在87歳になる林田は、今でも絵を描いているというから恐れ入る。
「窓展」で初めて名前を知ったアーティスト。
鑑賞できて良かった!

山中信夫の「ピンホール・ルーム1」 は20枚を1組とした作品なんだよね。
この作品について説明されている文章を探してみると、「針穴を通して入り込む光を壁に貼られた複数のフィルムに収め、感光したフィルムはコンタクトプリントで原寸のまま焼かれ、写真はフィルムを並べた時と同様に再現され展示されるという作品」とのこと。
どうやら山中は自宅の窓を全て塞いで真っ暗にして、5円玉の穴から差し込む光を印画紙に露出させ、作品を制作していたようなんだよね。
およそ2.5mの正方形に近い大型作品というせいもあり、非常に重厚な印象を受けた。
山中は1948年大阪生まれ、69年多摩美術大学油絵科に入学する。
82年にパリ・ビエンナーレに出品し、個展が決定したパリとニューヨークの下見をするための渡米中、敗血症のため客死したという。
写真を現代アートの素材として使用する日本人の先駆けだったんじゃないかな?
34歳という若さで亡くなったのが惜しいアーティストだね。

国立近代美術館は常設展が素晴らしいんだよね。
前回までは「撮影禁止」だったはずだけど、念の為に確認してみる。
なんと、一部を除いてオッケーとのこと!
いろんな規則が変化してるんだね。 
やったー!可能な限り撮影していこう!(笑)

村山知義の「コンストルクチオン」は1925年の作品。
20年代の日本にダダっぽい作品があるとは驚き!
木片、紙、木、布、金属、皮が使用されているという。
どうやら右上に貼られているのは、ドイツのグラフ誌らしいよ。
村山知義は1922年にベルリンで様々なアートに出会っているというから、当時のヨーロッパを実際に体験した人物ということになるんだね。
1924年には構成主義についての本、1925年にはカンディンスキーについての著作があるというので、バウハウスを直接現地で知っていたんだろうな。
なんとも羨ましい境遇!
20年代の日本でも、かなり進歩的だったことがわかったよ。
村山知義は非常に興味深い人物なので、もう少し調べていきたいと思う。

尾藤豊の「シベリア紀行」は1958年の作品だよ。
赤、白、緑という3色のみ使用したシンプルだけど、ダイナミックな構図。
潔さが感じられて、気になった作品なんだよね!
尾藤豊について調べてみると、1926年生まれで1943年に東京美術学校建築科に入学だって。
1950年代から60年代にかけて、ニッポン展や日本アンデパンダン展に出品するかたわら、「フォール」や「革命的芸術家戦線」などのグループを次々と結成し、批評的な芸術運動を積極的に展開したというアーティスト。(福岡県立美術館の説明文を一部流用)
ちょっと過激なタイプだったのかもしれないね?

河原温の「物置小屋の出来事」は1954年の作品。
紙に鉛筆だけで描かれているのにも関わらず、非常にインパクトがあるんだよね。
棒状の物体が描きこまれるにつれ、徐々に画面が狭くなり圧迫感が増してくる。
息苦しくなり、不安な気分に襲われる。
塩田千春の展覧会「魂がふるえる」を思い出したよ。
他の作品も鑑賞してみたいね。

中村正義の「源平海戦絵巻」は1964年の作品。
これは小泉八雲原作の「怪談」を、小林正樹が監督し1965年に映画化、劇中で使用された絵画だという。
実はROCKHURRAHとSNAKEPIPE、映画の「怪談」鑑賞してるんだよね!
映画は4つのオムニバスで構成され、その中の「耳なし芳一」に登場した絵画とのこと。
確かに「すごい絵!」と言いながら鑑賞した記憶があるよ!(笑)
絵巻は5部作で、どれも素晴らしいんだよね。
日本画壇の風雲児や反逆の天才画家などと称される中村正義。
その生き方、パンクっぽくて気になるなあ!

最後の作品はこちら!
中西夏之の「コンパクト・オブジェ」は1962年の作品なんだよね。
これはポリエステル樹脂製の卵で、中に様々な物が入っているのが透けて見える。
魚の骨だと思われる物と金属製の何かがあるおかげで、まるでエイリアンの卵だよ。
リドリー・スコット監督による映画「エイリアン(原題:Alien 1979年)」 のデザインを担当したのはH・R・ギーガーだったよね!
ギーガーよりも制作年が早い中西夏之のオブジェが、山手線のホームや車内で行う「ハプニング」用だったと聞いて驚いてしまう。
「ハプニング」とはパフォーマンス・アートのことで、ゲリラ的な行動を起こすアートのこと。
例えば60年代、草間彌生がニューヨークで裸の男女に水玉をボディ・ペインティングする「ハプニング」を行っている。
「ハプニング」は行動なので、写真や動画が残っていないと「やったよ」という宣言だけで成り立つアートなのかどうかは不明。
中西夏之の「ハプニング」について詳細は分からなかったけど、こんな卵を突然見せられたら、ギョッとすること間違いなしだよ。(笑)
日常に突如現れた異物、というコンセプトだったのかなあ。
SNAKEPIPE MUSEUMに陳列したい逸品だね!

エイリアンについて調べてから眠ったせいで、おかしな夢を見てしまった。
教室で授業を受けているSNAKEPIPE。
黒板に先生(教授?)がエイリアン、と白墨で書いている。
先生が誰だったのかは覚えていない。
「いいですか、エイリアンはオスなんですよ。メスは語尾が変わってエイリアンヌになります」
と言いながら「アン」に下線を引き、下に「アンヌ」と書いている。
「そうなんだ、メスはエイリアンヌなんだー」
と感心している、という夢だったんだよね。
久しぶりにトンチンカンな夢を見たなあ!(笑)

SNAKEPIPEのおかしな夢は良いとして。
先にも書いたように、以前鑑賞した時には撮影ができなかった近代美術館の常設展。
今回は、ほとんどの作品が撮影可能で大満足だった。
鑑賞して気に入っていても、作品と作者名を同時に覚えておくことは難しいため、感想を書くことができなかったからね。
今までほとんど知らなかった日本のアーティストについて、調べることができて嬉しい。
様々な展覧会で自由度が高くなると良いね!