医学と芸術展 MEDICINE AND ART

【タイトルにちなんでROCKHURRAHが制作。なんだかよく分かんない。(笑)】

SNAKEPIPE WROTE:

現在六本木ヒルズ内にある森美術館で開催されている「医学と芸術」展に行ってきた。
これは去年の夏頃、長年来の友人Mから「11月に森美術館ね」と誘われていた展覧会。
松井冬子の大ファンのMはその展覧会に新作が出品される情報をキャッチしていたらしいのである。
11月、12月となかなかお互いの予定がつかず、年が明けてようやく約束することができた。
Mの目当ては松井冬子だけれど、科学の実験で使う例えばビーカーのような器具が大好きなSNAKEPIPEは、「医学とアートの融合」である今回の展示をとても楽しみにしていたのである。

会場は4つのブースに分かれていた。
第1部は「身体の発見」。
ここではレオナルド・ダ・ヴィンチに代表されるような「科学と芸術」に焦点を当てた展示がされていた。
どうやら目玉は本邦初公開のダ・ヴィンチの解剖図のよう。
ものすごく精緻で学術書に載せる、というよりはやっぱりアート。
1500年頃の作品って一体今から何年前よ?と計算がパッとできない。(笑)
さらさらっと描いたように見えるけど、さすがダ・ヴィンチね!

第1部の中でSNAKEPIPEとMが「ひー」「かわいい」「欲しい」と口々に叫んだのは、17、18世紀頃にドイツあたりで制作された象牙製の解剖模型。
体長約15cmくらいから25cmくらいのものなど、様々なサイズの人体模型が並んでいる。
男女ペアでベッドに寝かされているような模型もあり、とてもかわいい。
しかも枕もしてるし。(笑)
お腹の部分がパコッと外れるようになっていて、中に臓器パーツがバラバラに入っている。
これは医学生用なのか子供用なのか不明だけど、大雑把であまり精巧に出来すぎてないところがまた素晴らしい!
象牙じゃなくてプラスチックでも構わないからレプリカが欲しかった。
ほんと、今からでも作ってくれないかしら?(笑)

1500年頃からの人体をモデルにした絵画は、アートというよりは解剖学や医学のためのものが多かったのかな。
「解剖学シアター」での模様を描いた作品もあり、ヨーロッパでは学術としての解剖とちょっと見世物的な意味合いの解剖があったのかな、と推測。
今よりも死(死体)や解剖などが割とオープンだったのかもしれないね。

SNAKEPIPEが是非とも現物を観たいと思っていた河鍋暁斎のちょっとコミカルなドクロや円山応挙の座禅するドクロもあり、これだけでも満足するほどの作品の量と質。
やっぱり森美術館、いいね!(笑)

第2部は「病と死との戦い」。
解説の中に「メメント・モリ(死を想え)」の言葉があり、宗教的な意味と医学としての死という意味との捉え方がされた展示になっている。
美術の教科書に載っているレンブラントゴッホゴヤなどの画家がズラリと並び、豪華な感じ。
同時にエジプトのミイラまであったし。(笑)

そしてここで一番興味深かったのが、実用的に作られている義手や義足などの展示。
そのため作者の名前ではなく「××社製」などと紹介されている。
SNAKEPIPEはあまり詳しくないのだけれど、1900年頃から義手や義足の制作が始まったのだろうか。
その当時の木製の義手や義足は非常に美しく、まるで四谷シモンの人形のようである。

手術用の器具の展示もあった。
丁寧に装飾までされている美しい切断用ノコギリってどうよ!
まるでオブジェなのに、目的は切断よ、切断!(笑)
このミスマッチが余計に怖い!
この展示はデヴィッド・クローネンバーグ監督の「戦慄の絆」みたいだった。
あの映画、また観たくなったな。

実用として制作された義眼の展示もあった。
様々な眼球の色に対応できるようにとの配慮だと思うけど、タイトルがなんと「ガラス製眼球50個セット」。
「なんかジャパネットたかたみたいじゃない?」
と二人で大笑いしてしまった。
「はいっ、本日はどんな瞳の色にも対応できる眼球50個セットのご紹介です!」
みたいな感じ?
隣で観ていた外国の方も、日本語が解るようで一緒に大笑い。
国際交流してしまった。(笑)

第3部は「永遠の生と愛に向かって」。
最近の生命科学、遺伝子学や脳科学などをテーマにした展示がされている。

二人の少年がゲームボーイに熱中している作品が印象的だった。
これはパトリシア・ピッチニーニの作品で、どうやらシリコンで作られた人形のよう。
写真で観るとその精巧な作りが伝わりにくいと思うけど、実際の少年たちはまるで生きているかのように今にも動き出しそう。
作者はメッセージをこめて作品に仕上げたと思うけど、意図が解らなくても産毛まで生えたリアルさだけで怖いほどの迫力がある。
近くにいるだけでゾッとするアートというのも珍しいね。(笑)

もう一つ衝撃的だったのはイ・ビョンホというアーティストの作品。
あれ?イ・ビョンホって韓国のスターの名前と違う?近いだけか。(笑)
美術室などに置いてあるような胸像をじっと見つめていると、急激にその胸像が老人の顔に変わっていくアート。
しかけを聞けばなんとも簡単、シリコン製胸像の空気を抜いてるだけらしい。
見つめて下さいと書いてあるので数秒間見ても「全然変わらないじゃん」と思いきや、見続けていくとどんどん顔が変わっていくのは非常に怖かった。
「ひ~、怖いっ!」
と叫んでしまったSNAKEPIPEの隣で笑う外人女性が。
うわっ、あの「眼球50個セット」の時の方。
またもや国際交流だね!(笑)

最後にMの目当て松井冬子登場!
「無償の標本」と題された2009年の作品は、以前のような怨み路線とは違う気がした。
積年のドロドロした黒い塊を体内から少しずつ吐き出しながら、苦しんで描いていたような雰囲気が消えかかっているような。
作品の解説にはまるで「ドグラ・マグラ」のようなことが書かれているけれど、SNAEKPIPEにはこじつけとしか考えられなかった。
松井冬子が前向きで明るい性格になり、「今までの怨みは全部忘れたわ」と視線が過去から未来に向かう日が来たら一体どんな作品になるんだろう?

どうしてそうなったのかはわからないけれど、松井冬子の隣に展示されていたのがフランシス・ベーコンの作品「横たわる人物」。
ぐんにゃり曲がったピンク色の男が尻を見せながら横たわっている。
鏡なのか、男の後姿が見える。
フランシス・ベーコンの性癖を知っているため、題材がすぐに解っちゃうんだよね。(笑)
大好きなベーコンまで展示されているとは知らなかったので、とても嬉しかった。
第4部はビデオ作品だったため、割愛。(笑)

「医学と芸術」展は、時代や国、アートと医学など様々な垣根を外した企画でとても大掛かりだったのが良かった。
ダ・ヴィンチからデミアン・ハーストまでを一度に観られる展覧会なんてあまりないよね?
欲しくなっちゃう作品もたくさんあって、大満足。
恐らくこの展覧会のために作ったのかなと思うような現代アート作品よりも、学術書や実用のために作られた作品のほうに興味を持ったSNAKEPIPE。
実用品のほうがより芸術的で、アートに勝ってると思った。
アートと呼ばせるためのアート作品を作る自称アーティストって多いように思うから。

Mさん、また面白そうな企画あったら是非ご一緒しましょ!

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