ビザール・ウエポン選手権!22回戦

【おバカな武器といえばコレ!】

SNAKEPIPE WROTE:

第42回先進国首脳会議、通称伊勢志摩サミットとアメリカのオバマ大統領が広島を訪問するというニュースで賑わった今週。
「核なき世界への決意を表明」というニューストピックも目にした。

今回は核兵器から連想した「そんなバカな!」という武器を特集してみよう。
政治経済・世界情勢とは全く関係なく、ビザールな逸品探しね!
この手の記事の時には、いつも書いてるけど、ROCKHURRAH RECORDSはテロ礼賛とか戦争に賛同するような思想は一切ないのでヨロシクね!

世界の「おバカな武器」を調べていて、一番最初に目に入ったのがこれ!

これはアメリカ陸軍などで正式に使用されている「AR-15」という機関銃の同型なんだよね。
そのハローキティ・バージョン!
見た目はラブリーだけど、本物だからね。
機能的には通常の銃と同じらしい。
実際にこの銃を構えている画像もあったんだよね。
屈強な男性がラブリー銃を持つ、そのアンバランスでミスマッチな光景。
それが逆に怖いかも!

物騒な武器をラブリーにする企画は人気があるようで、ハローキティのピストルも登場しているんだね!
カラシニコフ銃のキティちゃんバージョンも発見したし。
探してみるとサンリオがイメージしているキティちゃんとは程遠い使われ方されてる画像がたくさんあるんだよね!
戦車にペインティングされていたり、棺桶に描かれていたり。(笑)
そこまで世界的に有名になったということかな?

もしこんなプレゼントをもらったら?
日本では大変なことになっちゃうかもね。
だけどよーく見ると…あれ?
これはchocolateweapons.comが販売しているチョコレート!
なんて精巧にできてるんだろうね?
お値段は約$30から$40なので、3,000円から4,000円くらいかな。
ギフト仕様になっていて、右の画像のようなケースに入っているみたい。
食べるのもったいないよね。
ずっと飾っておきたくなる逸品!
この会社は他に石鹸バージョンも出しているんだよね。
トランプ氏とクリントン氏の頭部石鹸もあったけど、使っていくとホラーっぽくなりそうだよね。(笑)
石鹸のピストルはオブジェに良いかもしれないな!

こちらも精巧な造り!
なんてカワイイんでしょ!(笑)
SwissMiniGun company が製造・販売している大きさ5.5cmのミニ・リボルバーである。
会社名の通り、スイス製なんだよね。(当たり前か)
世界一小さい可動式リボルバーのギネス記録も保持していて、ちゃんとwebに証明書を載せてるんだよね。(笑)
HPには機能についての説明がされていて、スペックを知ることができるよ!
スイス国内では問題ないけれど、国によって規定が違うため販売できない場合もあるとのこと。
意外なことにアメリカはダメなんだって。
もちろん日本も無理だろうね。(笑)
こんなに小さくてかわいいリボルバー、キーホルダーにしてみたいよね!
お値段は6,500スイス・フラン、日本円で約72万円也!
キーホルダーにしては高いか!(笑)

例えば「007シリーズ」などに出てくるスパイグッズに憧れることってあるよね!
SNAKEPIPEはかかとを蹴ると、つま先から毒のついた刃が飛び出す靴を思い出すよ。(笑)
「ローマの休日」ではライターに見せかけたカメラもあったっけ。
ん?時代が古い?(笑)
最後に紹介するのは、The R. J. Braverman Stinger Pen Pistol。
上の画像は途中で折れ曲がっているけれど、まっすぐにしたらペンだよね。

胸ポケットにさりげなくしのばせて、いざというときに素早く取り出し使用する、という本当にスパイ映画っぽいアイテム!
製造されたのは1990年代のようで、その時点での価格は$100くらいだったみたい。
実際に武器として使うよりは、コレクションだろうね。
現在は$500をくだらないだろうと書いてあったけど、 もっと高値で取引されていても良さそう。

実際に使用している映像があったので載せてみよう。
この方がたまたまなのか分からないけど、ペンを折るのに時間がかかってるような?
これじゃスパイ・グッズとしては失格かも。(笑)

生誕300年記念 若冲展鑑賞

【行列に並んでいる時に撮影した1枚】

SNAKEPIPE WROTE:

映画の殿 第20号」でROCKHURRAHが予告していたように、今週より当ブログのデザインを一新!
実はまだ多少の修正が必要な箇所はあるけれど、早めに切り替え作業を行っている。
今までとは違う印象になったかな?
ほとんどの作業をROCKHURRAHが一人で行っているので、SNAKEPIPEは今から勉強しないと!(笑)
では気分を新たに、今週のブログを書いていこう。

若冲展」を知ったのは、昨年10月に鑑賞した横浜美術館での「蔡國強展」だったのではないだろうか。
展覧会に行く度に、面白そうな企画をチェックするのが毎回恒例で、その時に「若冲展」のフライヤーを発見したように記憶している。
長年来の友人MとROCKHURRAHと共に
「これには絶対に行こう!」
と非常に楽しみにしていた「若冲展」。

もらってきていたフライヤーを壁に貼り、前売りチケットの販売はまだか、と待っていたSNAKEPIPE。
ようやく展覧会開始1ヶ月程前から前売りチケットの販売が始まり、早速購入手続きを済ませ、あとは展覧会鑑賞の日付を決めるだけ、という段取りになっていた。

後悔先に立たずというけれど、展覧会が始まってからすぐに鑑賞しておけば良かった…。
長年来の友人Mと日程調整が決まらないうちに、若冲展は大変な話題になっていた。
連日長蛇の列で、美術館に入るまでに180分待ち、240分待ち、などの情報が耳に入ってくるようになったのである。
どうやらNHKの番組で「若冲展」を取り上げたのが、きっかけらしい。
「若冲展」は4月22日からの開催で、NHKの「若冲 天才絵師の謎に迫る」は初回の放送が4月24日。
今から思えば、4月22日から4月24日の間に鑑賞するのがベターだったことになるね。

人混みも、長時間待つのも嫌いなSNAKEPIPE、ROCKHURRAHに長年来の友人Mが加わった「怪しい3人組」。
あれほど行く気満々で楽しみにしていたはずの「若冲展」だったのに、行くのが苦痛になってしまった。
ウダウダしているうちに会期終了も迫ってくる。
「待つのも、混雑も、覚悟の上で行こう!」
行かなくて後悔するほうがイヤだよね、ということで決着した。
3時間や4時間待たされることを前提に、軽食や飲み物を各自持参の上、「若冲展」に行くことになった。
当日は普段の出勤時間よりもずっと早く家を出た。

朝の5時から並んでいる人がいる、とか朝7時半で1000人並んでいるという情報通り、人の流れは一直線に上野動物公園方面へ向かっている。
そう、もちろん東京都美術館の「若冲展」の方角ということだ。
友人Mと合流し、行列の最後尾に並ぶことにする。
「チケットお持ちの方はあちらが最後尾です」
の案内に従い「あちら」を目指すけれど…
どこまで行っても人、人、人!
結局最後尾は東京芸大が見える位置だった。
そしてそこから更にトグロを巻いたように行列が続いている。
並んだ時に友人Mが美術館関係者が「3000人だ」と言ったのを聞いた。
朝の8時で3000人!
前代未聞の若冲フィーバーだよね。
覚悟していたとはいえ、これからの待ち時間を考えるとゲンナリする。

時間に余裕があるので、客層をチェックしてみる。
美術館にそぐわない、騒いだり走ったりする子供が皆無!
当然のようにファミリーもいない。
ベビーカーを使用しているようなママさん連中もいない。
そして圧倒的に多いのがシルバー層。
最近は美術館巡りを趣味にしている高齢者が多いと聞くけれど、鑑賞するのに何時間も待たされて大丈夫なのかと心配になるような人も大勢いた。

SNAKEPIPEをはじめ、ROCKHURRAHも友人Mも「行列ができる〜」のような記事や店には全く興味がなく、並ぶくらいなら違う選択肢を考えるタイプ。
ところが「人が並んでいるなら」と、並ぶことを選択する人って多いんだよね。
今回の「若冲展」も本気で観たいと考えて並ぶ人は少数で、話題だから観ておかないと、という理由の人が多いように感じた。
さすがに外国人は全く見かけなかったね。
並ぶの嫌いだろうからね。(笑)

一歩、二歩、という牛歩だったけれど、少しずつ列が進んで行く。
東京都美術館手前でトップの写真を撮影したのが9時半くらい。
そして実際に鑑賞を始めたのが10時半くらいだったのかな。
待ち時間2時間半、約150分ということだね!
思ったよりは短かくて良かった。(笑)

ここで若冲の略歴を書いてみようか。
1716年 京都の青物問屋に生まれる
1739年 23歳で家業を継ぐ
1755年 40歳で隠居し、絵の制作を始める
1800年 85歳で死去

ものすごく簡単にしか書いてないので、気になる方は調べてね!
絵に関しての補足としては、狩野派の画家に弟子入りしていた、とか別の画家の門弟だったなどの説があること、宋元画の模写や南蘋派の画僧・鶴亭との類似が指摘されているところかな。
SNAKEPIPEはそれぞれについてほとんど知識がないし、日本画そのものについても詳しくない。
そのため技法や専門的なことは無視して、純粋に若冲の肉筆画を直に観ることを目的にしよう!

館内に入ると、思ったよりは人が多くない印象だった。
人数制限をかけているんだろうね。
それでもやっぱり今回の目玉である「釈迦三尊像」と「動植綵絵」のコーナーは、8重(!)ほどの人だかりができていて、とても作品を目の前にすることができない。
係員が「一歩ずつズレて下さい」などの注意喚起をしても、最前列を陣取った人が動く気配はない。
作品の前に張り付いたまま、である。
他の注意としては「大人迷子が連日続出しているので、帰りの待ち合わせ場所をあらかじめ決めておいてください」というのがあった。
あれだけの人だから、いなくなっても分からないもんね!(笑)

観られるところでは近付き、人だかりがすごい場所では人の頭の間から観られる範囲だけを鑑賞する作戦に出る。
それしか方法がないしね。(笑)
近付いてみた若冲の筆使いの素晴らしさ!
タッチが精緻で非常に細かい。
そして一筆描きみたいなラインがピシャッと決まってる!

豪華絢爛な極彩色が、現代でも色褪せることなく再現されていることにも驚くけれど、SNAKEPIPEが一番「すごい!」と感じたのは構図。
なんともいえないバランスなんだよね。
前述したように、それほど日本画に慣れていいないため、他の日本画家との違いなどを論じることはできないんだけど、縦位置の写真として考えるとそのスバラシサを感じることができると思う。
左の画像「老松白鳳図」は旭日と、老いた松に白い鳳凰がいる情景を描いている。
鳳凰は想像上の伝説の鳥なので、若冲の脚色が入った幻想的な作品だと思われる。
鳳凰の目が切れ長なところ、羽根の先端が赤と緑のハートになっている点が、かなり漫画っぽくて面白いよね。(笑)
「動植綵絵」は宮内庁が管理しているため、なかなか人目に触れないんだろうなあ。
だからこそしっかりした管理がされている、とも言えるだろうけど。
全部で30幅の「動植綵絵」、こちらのサイトで観られるので、若冲の構図と色使いを確認してみてね!

上の画像「鳥獣花木図屏風」は約1cmのマス目を使って制作された「枡目描き」と呼ばれる作品である。
近付いてみると、マス目の中に小さなマス目が描きこまれているものもある。
江戸時代にこんな手法で描いていたとはビックリ。
それはまるでデジタル・アートだもんね!
若冲の作品ではない、という美術評論家もいるようだけど、作品としてとても楽しく鑑賞できたよ!(笑)

若冲は日本画家としては珍しい色の重ね塗りの技法を駆使したり、絵具にこだわりを持って制作していたようだ。
新しいことに挑戦するチャレンジャーだったのかもしれない。
その試みは成功して、没後200年以上経った今でも若冲の存在感をアピールしてるんだね。

今回の「若冲展」での教訓は、
前売り買ったら早めに行くこと!
だね。(笑)

SNAKEPIPE MUSEUM #38 Ludwig Hirschfeld Mack

【バウハウス初の展覧会を告知するポストカード。カッコ良いね!】

SNAKEPIPE WROTE:

大ニュースが飛び込んできた!
大ファンの作家である鳥飼否宇先生の作品「死と砂時計」が第16回「本格ミステリ大賞」の小説部門を受賞!
おめでとうございますっ!(パチパチパチ!)
ROCKHURRAHと手に手を取り、飛び上がって喜びを表現。(笑)
好き好きアーツ!#39 鳥飼否宇 part14–樹霊–」に頂いたコメントで「少しだけ自信がつきました」なんて仰る鳥飼先生は、ご謙遜し過ぎ!
ROCKHURRAHとSNAKEPIPEは、2016年のビッグニュースを知って大興奮している。

そしてSNAKEPIPEの頭の中では、妄想の連鎖がスタートしていた。
これをきっかけに「死と砂時計」の映画化があったりして?
いや、アニメ化のほうが合ってるかも?
それとも有栖川有栖先生の小説のドラマ化「臨床犯罪学者 火村英生の推理」のように、鳥飼先生の作品のドラマ化はどうだろう?
といった具合である。

「観察者シリーズ」の映像化は、SNAKEPIPEの脳内にそれぞれの人物像が出来上がっているため、今回はパス!(勝手に済みません)
テレビドラマだったら…増田米尊はコードがあるし…「妄想女刑事」は?
良いかも!
などと暴走が止まらないなあ。(笑)
本当に鳥飼先生、受賞おめでとうございます!
これからもずっと応援していきますっ!

それでは頬が緩みきった状態で今週の特集にいってみよう!
ニューヨークにあるグッゲンハイム美術館で5月27日からモホリ=ナギの大回顧展が開催される、というニュースを目にしたSNAKEPIPE。
モホリ=ナギに関しては2011年に川村記念美術館で開催された展覧会についてまとめた記事「モホイ=ナジ/イン・モーション」で書いているので、その中から一部を引用してみよう。

1895年ハンガリー生まれ。
絵画、写真、彫刻、グラフィックデザイン、舞台美術、映画と視覚に関係するアート全般で活躍する。
ドイツの綜合芸術学校「バウハウス」では教鞭を取り、その後シカゴに設立された「ニュー・バウハウス」では校長を務める。
マルチアーティストの先駆け的存在なのである。

非常に簡潔で解り易い文章だよね!(自画自賛)
川村記念美術館での展覧会も日本初の大回顧展だったけれど、グッゲンハイム美術館もアメリカ初の大規模な展示を予定してる、と書かれていて羨ましい限り!
国内外の美術館所蔵作品から個人蔵の作品まで一堂に会するというから、恐らく膨大な作品数が展示されるんだろうねー!
うううっ、ニューヨーク行って鑑賞したいよ。(笑)
気になる展覧会に、いつでもどこにでも気軽に行かれたら良いのになあ!

ここでふと「そういえばバウハウスに関係したアーティストについて、詳しく調べたことがない」ということに気付いたSNAKEPIPE。
今回のSNAKEPIPE MUSEUMはバウハウス出身のアーティストを取り上げてみようかな!
バウハウスって何?という方のために少しだけ説明を書いておこう。

1919年にドイツ・ワイマールに設立された、美術と建築に関する総合的な教育を行った学校のこと。
合理主義的・機能主義的なデザインが特徴である。
1933年にナチスに閉校されるまでの14年間の活動は、現代美術に多大な影響を与えた。

1919年というと日本では大正時代なんだよね。
その時代の文化というと、レトロな雰囲気になるのかな。
バウハウスにあるような直線的なイメージとは程遠い感じ。
そしてバウハウスのデザインは、今見ても新鮮で斬新!
およそ100年前に国立でこんな美術・工芸の学校を設立するドイツってすごいなー!(笑)
調べていて初めて知ったんだけど、バウハウスで学んだ日本人がいたとは驚き。
水谷武彦、山脇巌・道子夫妻だって。
SNAKEPIPE、憧れの環境だよ!
まずはドイツ語の勉強が先かな?(笑)

バウハウスに関係したことのあるアーティストを調べていて、作品に一目惚れしたのが、Ludwig Hirschfeld Mackだった。
なんて読むのかな?(笑)
ルートヴィヒ・ヒルシュフェルト=マック、のようなんだけどドイツ人名にあまり詳しくないので、ludwigでルートヴィヒとは知らなかった!
トップに上げた画像にノックアウトされちゃったんだよね。
文字と記号だけのシンプルなポストカードなのに、インパクトがあって構図も素晴らしい!(笑)
ルートヴィヒ・ヒルシュフェルト=マックとは一体何者なんだろ?

読み方を調べるだけでも難儀したほどなので、日本語で詳細が載っているページはほとんどないんだよね。
そのため海外のサイトで調べたものをSNAKEPIPEが翻訳しているので、情報が間違っていたらごめんなさい!
ルートヴィヒ・ヒルシュフェルト=マックは1893年フランクフルト生まれ。
1914年にミュンヘンの美術学校を卒業後、バウハウスで学ぶ。
2点じゃなくてイッテン(ぷっ!)、パウル・クレーカンディンスキーらが教師だったというから、それだけでも大物揃い!
すごい学校だよね。
ライオネル・ファイニンガーに弟子入りし、印刷について学ぶ。
1924年から1926年まではバウハウスで「色彩学」を教えていたという。
バウハウスが閉鎖されてからはドイツの別の美術学校で教鞭をとり、イギリス、オーストラリアでも教えていたらしい。
そのままオーストラリアに住み、1965年シドニー郊外で生涯を閉じたようだ。

ルートヴィヒ・ヒルシュフェルト=マックはどんな講義を受け、どんな授業を行っていたんだろうね?
前述したように「合理主義的・機能主義的」なデザインで工業的でもあったバウハウスなので、表現としてだけのアートではないからね。
ものすごく興味あるなあ!(笑)
上の画像「teaching aids(1923年)」は白、黒、赤、グレーの4色だけを使用したこれもシンプルな作品だよね。
色の配置を変えたり、幅を変化させることでの印象の違いを表現する実験だったんだろうか。
簡単そうに見えるけど、実はかなり計算してるんだろうね。(笑)

1924年にルートヴィヒ・ヒルシュフェルト=マックが考案したコマも、実は色彩について考えるためのもの。
回転させることで色の混ざり具合を確認する、という発想!
ただグルグル回して遊ぶためのものではない証拠に、7枚のカードには意味があるという。

  • カード1 ゲーテの色彩論に基づく色の構成
  • カード2 レンブラントの光と影の配分
  • カード3 ショーペンハウアーの芸術論に基づく色の構成
  • カード4 ベゾルドの色環
  • カード5 色の3原色
  • カード6 色の明度の観察
  • カード7 明度の順に構成される5色の不均衡な輪

おおっ!
さすがはバウハウスで「色彩ゼミ」を担当していたルートヴィヒ!
様々な理論があったのね。(笑)
ゲーテにショーペンハウアーなんて人名が出てくるところが、想像しているバウハウスにピッタリ!
アートに哲学や数学、もしかしたら物理学などを理論を融合させ、表現主義にとどまらない作品を生み出してるってことだからね。
このコマのレプリカは、購入可能なようだ。
買って試して、少しでもバウハウス気分を味わってみようか?(笑)

映画の殿 第20号 サウンド・オブ・ノイズ

【目的不明(?)、謎の音楽テロ集団。名前はまだない】

ROCKHURRAH WROTE:

前にちょっとだけ予告した通り、今回からブログのテーマをリニューアルしてみた・・・と書いてそのつもりでいたんだが、テーマ入れ替えの直後に大問題が発生(今日に日付が変わった頃の出来事)。
テスト環境でうまくいってた部分が本番の方では全く生かされてなくて白紙に近い状態になってしまっている。原因は現在究明中だけど、まさかこんなところで致命的なミスをするとは。トホホ。
受験に失敗した人みたいだが仕方ないね。
だからリニューアルは先送りにする事になってしまったよ。
読んでる人にとっては何も変わってないけどね。

さて、今回「映画の殿」で取り上げるのは2010年のスウェーデン/フランス合作映画「サウンド・オブ・ノイズ」だ。

こちらが思ったよりは色々なところで話題になったようで、知名度も高いみたい。
ストーリーはごく単純で、音楽を使ったテロ行為とそれを追う刑事の話。ん?これじゃ簡単すぎるか?もう少しは書かないとブログ記事として成立しないから何か書いてみよう。

冒頭、ドラムセットを積んだバンが女の運転で走ってゆく。ドラムの男が激しく叩き始めると車も連動したかのようにスピードアップするという手法だ。スピード違反で白バイが追っかけてくると後ろからドラムを撒き散らして追手を振り切る。
最初は車の中でドラマーのオーディションでもやってるのかと思ったが、これでこの二人組が過激な行為をやっているコンビという事がわかってくる。
この過激派組織というにはチャチ過ぎる二人組、組織名などはよくわからなかったが何か大きな事をやってやろうと目論んでるらしい。

人を顔立ちだけで判断するのはアレだが、首謀者の女が割と年配のタレ目であまり音楽関係に見えないし、ましてやテロ行為を企むような人間にも見えないけど一応、この映画のヒロイン。いいのかこれで?
パッと見た感じがスペインの大女優、カルメン・マウラの若い頃に似てると一瞬だけ思ったが・・・画像探しても似てる写真がひとつも見つからなかったので感想は却下しよう。うん、別に似てないね。

相棒のメガネ男もまた大人しそうな中年男。この顔を見てROCKHURRAH家の2人はものすごくピンときた。
過去に何度も紹介したけど、スペインが誇るコメディアン、サンティアゴ・セグーラの映画に出てない時の顔立ち(写真右)にソックリなのだ。スペイン本国ではシリーズ5まで製作された大ヒット映画「トレンテ」シリーズで知られる怪優なんだが、日本ではまだまだ知名度低いね。日本では最初のひとつがDVD化されてるだけ。話題が出たから便乗して言ってるだけなんだが、是非ともこの機会に全部DVD化して欲しいよ。
写真の左側が「サウンド・オブ・ノイズ」のテロリストの方。ただ顔立ちが似てるだけでそこまで強烈な個性がなかったのが残念。

この2人が4つの楽章から成る作品=音楽テロ行為を発案するんだが、それを実行するためにさらに4人のドラマーが必要になり、2人は人材を探してゆく。
凄腕のドラマーで既存のグループでは扱いきれないほど、型にはまってないアグレッシブさを持つ人物。そして彼らのテロ行為に賛同してくれるようなアナーキストという基準のようだが、これは割とすんなり見つかってあっという間に6人の集団が結成される。そんなのが近場に数人いる?あっけなさ過ぎじゃないか?
怒涛のティンパニ奏者とかすごい勢いでシンセ・ドラムを叩く男とか、なかなか面白そうなメンツなのに、この辺のメンバーの個性がイマイチ活かしきれてない感じがするのも残念。

そして集まった6人のテロリストが企てるのは街の中で繰り広げる音楽的テロ行為というわけ。身近にある何かを使って楽器にし、それで音楽を奏でてゆくんだが、これは即興でもなくてある種の音楽を「その楽器の代わりになるもの」で表現しただけのものだ。どちらかというと綿密な計算の結果にしか見えない。
タイトルにあるようなノイズではなく、やってる音楽もそこまで変わったジャンルとは言えないが、前衛的な実験映画ではないわけだからそれは仕方ないんだろう。

街中で単に耳障りな音を出しただけでテロ行為になるのかどうか?、そして何の目的で集団はそういう行為をしているのかは不明だが、器物破損だの住居侵入だの罪の材料になるような事をしているのは確か。

ここで捜査を始める刑事というのが実はこの映画の主人公なんだが、著名な音楽家の一家に生まれたくせに楽器が出来なくて音痴、音楽的な才能がないという設定。
名前だけ立派にアマデウスなどと呼ばれているが、音楽も騒音も嫌いで、ある種の音が聴こえなくなったり耳から出血したり、肉体的にも精神的にもどうなのか?と思える人物だ。しかも音楽的なエリートの家族とも確執があるようで・・・。
映画は割とコメディっぽく進行してゆくから狂言回しのような存在は必要なのかも知れないが、この刑事の聴こえなくなる基準もわかり辛くて「警察VSテロ集団」という図式はあってもいいけど、この悩みを持った人物が主役じゃなくてもいいんじゃないか?と思ってしまったよ。単にROCKHURRAHの理解力が足りなかっただけかも知れないが。

最初の方の病院でのテロ行為はなかなかバカっぽくて笑えたから期待して観たんだけど、刑事のサイドストーリーとかロマンスとか、話を膨らませたかった気持ちが強すぎて、音楽テロというナンセンスな行為自体の純粋度が減ってる気がしたよ。傍から見たら意味もないような行為でもアートの要因になるわけだからね。

この映画は元々短編映画だったものを長尺にしたものだと言うが、その短編の方が評価が高いのもうなずける。無駄な部分がないからね。

身近にあるものを使って楽器にした人は過去から現在まで幾多もいたわけで、この映画に使われたような音楽も目新しいものではない。
有名なところではストンプのように誰でも知ってるような集団もある。
が、ROCKHURRAHは特に知らないので何も語らず。例に出すまでもなかった。

個人的な好みで言えばビー・バップ・デラックスの「Surreal Estate」を思い出す。これはその辺にあるグラスやナベやおもちゃの楽器とかを使って演奏されていた。こういう稚気が感じられるような音楽が子供の頃から好きだったな。
別にこれが代表的なわけではなくて、今、たまたま思い出しただけに過ぎない。

80年代に最も有名だったのはドイツの前衛音楽集団、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンがやってたパフォーマンスだろう。
ROCKHURRAHがしつこいくらいに何度も書いているドイツのニュー・ウェイブ、通称ノイエ・ドイッチェ・ヴェレの中でも最も有名なバンドのひとつだ。
1980年代初頭にデビューした彼らは既成の楽器プラス、建築現場にあるようなドリルやチェーンソー、鉄板やコンクリートなどを使った即興的なパフォーマンスにより話題になった。 いや、もしかしたらすごい練習した結果がこういう演奏なのかも知れないが、偶然性に頼る部分が多いと想像するよ。

ノイバウテンについてはウチのブログで大昔に簡単だけど書いてたな
彼らも工事現場みたいなところで色々打ち鳴らすというようなパフォーマンスもやってるし、ライブ会場で床に穴を開けるという器物損壊もやっていた。
例えばパンクの衝動の中にもこういったカオスな要素はあるだろうけど、その部分を専門的に突き詰めたようなバンドが80年代には続々登場していて、ノイバウテンもそういった範疇にあった。
この映画のテロリストが目指したような事を既に80年代初期に実践していた先輩と言えるかもね。と言うよりは見た目も攻撃性もこちらの方がよほど筋金入りだな。
何かやたら「この」とか「その」とか「そういった」とかが多い文章になってしまったな。

上の映像は「爆裂都市」や「狂い咲きサンダーロード」などで有名な石井聰互監督が撮った廃墟パフォーマンスの模様で「1/2 Mensch(半分人間)」などという素敵なタイトルが付いていた。あの時代のニュー・ウェイブを体験した人にとっては観てて当たり前、の映像だったよね。ブリクサや他のメンバーもすごいが肉体労働者系ノイズ・パフォーマーのF.M.アインハルトが大活躍。ものすごい躍動感(?)だね。

ノイバウテンに限らず、インダストリアル・ミュージックやノイズ/ジャンク系の世界では少なからずメタル・パーカッションや既存の楽器以外で演奏をするミュージシャンが多い。これが特徴や個性や魅力となってはいるんだが、この手の音楽に対して免疫のない人にとってはどれも大差ない騒音でしかないのも確かだ。

ROCKHURRAHが育った北九州もドイツと似た工業地帯で(単なる想像)、街中や本当に稼働中の工場じゃ無理だが、ちょっと田舎の埋立地に行けば無人地帯もたくさん。廃鉄骨や廃鉄パイプなどは簡単に入手出来たという環境だった。
家に持って帰ったりはしなかったが、一人でデイ・クルップスごっことかしていたのを思い出す。「俺の体の筋肉はどれをとっても機械だぜ」などという崇高バカ理念で機械と人類の一体化を目指したのもノイバウテンと同時代だったな。

(註:探したビデオがなくなってたので別のビデオで代用。下の文章と違う映像ですがご了承下さい)

現場にあるものを使って音楽にした例をもうひとつ。これは別にリアルタイムでやってるわけじゃなかろうが、映像と音楽のバランスが良かったので挙げてみた。
フェアライトなどのサンプラーが出始めの頃はマシン性能の限界がネックとなっていたが、近年だったらやりたい事は大体出来るというような時代になってるんだろうかね。作ったのが誰なのかわからんが、機械工具以外に作業服のジッパー開け閉めとかまで音楽にしてるのがうまい。

結局、ROCKHURRAHのいつものパターンだが、映画本編については大して書かなかったな。ストーリーに余計なものが入ってるとかは個人的な感想なので観る前の人は気にしないでね。やってる音楽テロ行為自体はよく出来てるし、こういう変わったジャンルの映画はもっと色々出て欲しいよ。

ではまたHej då! (スウェーデン語で「さようなら」)