カルトは儲かると?(博多弁)

【「ピンクフラミンゴ」、「イレイザーヘッド」、「リキッドスカイ」より】

SNAKEPIPE WROTE:

4日はSNAKEPIPEの誕生日!
おめでとう、SNAKEPIPE!(笑)
いくつになっても「誕生日は嬉しい日」と言い続けていこう!
ROCKHURRAHから手作りヒップバッグのプレゼント!
春夏用、作ろうと思ってたんだよねー!
さすがに良く分かってるね!どうもありがとう!(笑)
今回は一つ年をとったSNAKEPIPEが、10代の頃から好きな分野について熱く語ってみたい。

まだカルト映画、というジャンルが確立される前、レイトショーでロングランされていた映画がある。
「イレイザーヘッド」、「リキッドスカイ」、「ピンクフラミンゴ」が代表的な作品であった。
(他にもアレハンドロ・ホドロフスキーが有名だけれど、これはまた別の機会にまとめたいと思っている。)
情報だけが先行して実際に上映されるのはごく限られた、ある一部の劇場でだけ。
もしくは上映すらされなかったのかもしれない。
今のようにネットで簡単に情報が手に入る時代ではなかったので、情報を集めるのは大変だった。
本屋で仕入れる、レンタルビデオ屋で探す、映画館での予告、など実際に足を使って調べていた。
似た趣味の友人から今度どこそこでこんな企画があるらしい、という耳よりニュースもあった。
当時の記憶が定かではないため、どのようにして実際にそれらの映画を観ることに成功したのかはっきりしない。
ただ後のSNAKEPIPEに多大な影響をもたらしたことは確実である。(大げさ)

「イレイザーヘッド」(1977年)はこのブログに何度も書いているけれど、敬愛する映画監督デヴィッド・リンチの初長編映画。
フィラデルフィアの重くどんよりした空気を上手く伝えるモノクロ映像である。
主役のジャック・ナンスが若い。
そして、あの髪型。
リンチがこの映画の完成に5年近くの年月をかけたことは有名な話だが、ナンスはその間ずっとあの髪型だったとは!
改めて観直してみると、リンチがこだわりを持って映像を作り上げていったのがよく解る。
モノクロームの美学。
それは光と影を使ったグラデーション。
室内の撮影はライトで調整できるだろうが、屋外では自然光のため、思い通りの映像に仕上げるのは難しいだろう。
映画開始から約10分程度の完成までに1年半かかっている、という記事を読んだ。
ものすごい執念、物凄い情熱!
粗筋として物語を語ると平凡な男に奇妙な子供ができた話になるが、この映画はそんなに単純ではない。
本筋以外の奇妙な出来事や脇役が映画をより効果的に盛り上げているように感じる。
出口がない閉鎖的な空気、将来が予想できない奇妙な赤んぼう。
いや、果たしてアレを子供と呼べるのか?
未だにあの赤んぼうの撮影秘話は語られていないそうだが、さすがは秘密を大事にするリンチ。
謎は謎のままでイイ。
あの話を現実のものと考える、もしくは誰かの頭の中の脳内映像(もしくは夢)と考えるなどの解釈は鑑賞者の好きでいいのだろう。

リンチは恐らく子供の頃に観たモノクロホラー映画の影響を受けているのだろう。
先日観た「ドラキュラ」に「イレイザーヘッド」によく似たショットがあった。
ドラキュラも影の表現が秀逸な作品で、モノクロのエンターテインメントを堪能することができる作品である。。
写真もそうだけど、色のない世界を表現するほうが難しいだけに練られている感じがする。
ムードも抜群だしね。
もちろん好みの問題もあるけれど。
以前紹介したプレイステーション2のCFでのニック・ケイブ版はまるでイレイザーヘッドだった。
異形の出現。
なんだか分からない未知の世界に迷いこんだ恐怖。
あり得ない光景を目にして、何が真実なのか分からなくなり自分の存在自体を疑ってしまうような精神の揺れ。

近所のレンタル屋では「イレイザーヘッド」をホラーのくくりに入れてるのに違和感を感じていたけれど、実はその見識は鋭かったりして?(笑)
というよりもカルトコーナーがないのがおかしいんだけどね!

ファンならサントラも持ってて当然なんだけど、これが効果音とか赤んぼうの泣き声などが収録されている代物で。
とても夜中に聴けないよー。えーん、こわいよー!
唯一音楽といえるのはラジエーターの中で少女が歌うリンチ作詞の「In Heaven」だけ。
これは後にジュリー・クルーズに提供した詩の雰囲気と同じで、ふわふわとした浮遊感とけだるさを同時に体感できる不思議な曲である。
やっぱりリンチの主題は「夢と現実の曖昧な境界」なんだね。

「ピンクフラミンゴ」(1972年)もかなり衝撃を受けた作品である。
今まで何度観直したことだろう。
一番最初に観たのがいつのことだったか全く記憶にない。
ディバインの圧倒的な存在感とキテレツな主題だけが印象に残っていた。
ディバインのチームと、我々こそが一番と名乗りをあげたマーブル夫婦とが最低人間世界一を競うというのがテーマ。
なんとおバカでお下劣なんでしょ!(笑)
そこがこの映画の醍醐味であり魅力なんだけどね。
ディバインの派手な化粧や衣装、音楽もオシャレで悪趣味な部分以外を楽しむこともできる。
公開当時はかなりショッキングだったであろうこの映画も、今ではMOMA美術館に永久保存される栄誉を獲得したらしい。
前述のイレイザーも同様に永久保存認定。(ちなみにロメロ監督の「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」トビー・フーパー監督の「悪魔のいけにえ」も永久保存だって)
人の価値観が変わったのか、アートの領域が広がったのか。
今ではバッドテイストやB級というのは宣伝文句になってるしね。
インディーズ、というジャンルと同じ運命をたどっているのが残念な感じ。
昔を懐かしむつもりはないけれど、あまりになんでもアリでオープンな状態は面白味に欠ける気がしちゃう。
2008年にはノーカット・無修正版も登場!
ずーっと昔に新宿で掘っ立て小屋みたいなモグリの上映でノーカットを観た時以来の無修正版鑑賞となった。
日本も随分コードがゆるくなったもんだね!(笑)

「ピンクフラミンゴ」はサントラも素晴らしい!
前に書いたことがあるけれど、「サーフィンバード」が非常に効果的に使用されていたり、全体にガレージ色の強いノリがいい音楽満載。
ラストの問題のシーンで使用されている「(How Much Is) That Doggie in the Window?」はご愛嬌だね。(笑)
誰にでもお勧めできる映画ではないがSNAKEPIPEにとっては重要な一本である。

最後に紹介するのは「リキッドスカイ」(1982年)。
ニューヨークを舞台にナイトクラブに集う若者たちを描いた作品である。
音楽、ファッション、部屋の装飾、途中で挿入される商業写真など、全てがスタイリッシュ。
主人公が住んでいるような屋上テラス付きのマンションにどれだけ憧れたことだろう。以前まではレンタルで簡単に観られたのに、今では入手困難。
元々DVD化はされてないため、ビデオにプレミアが付いてる模様。
待ってるファンも多いはずだけど、何か問題があって再発できないとか?
欲しいと思ってる人、多いだろうにね?
サントラだけは再発され、当然のように入手。
監督自身も参加した完全なオリジナル曲は、ニューウェイブというよりインダストリアル・テクノと言ったほうがいいかもしれない。
かなり独創的で、音楽も強烈な印象を持つ。
劇中エイドリアンが歌う曲は、ほとんどラップ!
歌詞はパンクでなかなか面白い。
亡くなった教授に向かっても「you go to hell!」って呪いのラップを捧げてたしね。(笑)

自分の生い立ちから始まりどうしてNYに来たのかを語る主人公マーガレット。
最先端を行く飛んでる女(古い)にもこんな一面があったとは。
いや、もしかしたら現代の都心部で生活している人たちも似たような心情を持つのかもしれない。
結局自分の絶対的な理解者が一人いれば、その他大勢の視線や噂に名前が上ることでの存在確認は必要がなかったはずだ。
存在価値を見出すための他者がすべていなくなってしまった後、エイリアンに救いを求めてしまうマーガレット。
この人は自分を理解し必要としてくれる、と勘違いしちゃったんだね。
まるでウェディングドレスのような裾の長いドレスを着て、旅立って行くマーガレットは美しいけれど、切なく哀しい。

それにしてもこの映画を観た後って必ずアップルパイが食べたくなっちゃうんだよね!(笑)

上記3本が10代の頃から大好きなカルト映画である。
最近のカルト事情をよく知らないなあ。
どうやらかなりカルトの範囲が広がってるようなのでこれもカルトと呼ぶのか、と思ってしまうこともしばしば。
なんかこうグッと来るようなカルト作品にめぐり会いたいなあ!
ひとまずはリンチの新作に期待かな。(笑)

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