時に忘れられた人々【08】80’s ネオサイケ part2

【私的ネオ・サイケ名盤コレクション】

ROCKHURRAH WROTE:

色々と今、語らなければならない事はあるに違いないが、ROCKHURRAH RECORDSの方針として、今回からはいつも通りのブログに戻る事にする。

さて、今回は予告通りに80年代前半のネオ・サイケと呼ばれた音楽特集、そのパート2といこう。
読んでないけど何だか気になる人はパート1から先に読んでね。

前回の最後で地に潜むネオ・サイケ残党を募ったが全く反響はなかったので、いよいよこのジャンルは本当に廃れてしまったのかも知れないね。というわけで一人で時代錯誤に挑む事にしよう。
今回はいよいよマイナーなもの中心に、とも思ったがそもそもこういうジャンルで世界的に大ヒットしたバンドはないと思える。メジャーとかマイナーとかは抜きにして思いつくままに書いてみよう。
では始めますか。

80年代ニュー・ウェイブの初期に活躍したバンドを数多く抱える、インディーズの中でも名の通ったレコード・レーベルと言えばラフ・トレード、そしてチェリー・レッドあたりが最大のものだった。
チェリー・レッドはそれまでのパンク、ハードコア・パンクの集大成とも言える歴史的コンピレーション・アルバムをリリースしたり、パンク方面でも有名なレーベルなんだが、もう一つ、ネオ・アコースティックというパンクとは正反対の運動も推進していて、ちょっと変わった方針の会社だったな。
フェルトはそんな中に出てきたバンドだった。
ローレンスという美形ヴォーカリストが中心で人気者になれるルックスを持っていたのに、レコード・ジャケットも曲も地味の極み(初期)。インストの曲も多くて、はかなく繊細なギターによる工芸品のような音楽が特色だった。
陳腐な表現ですまん。
本来はネオ・アコの分野で語られるバンドなんだろうけど、哀愁の名曲というと必ずこの曲が頭に浮かんで来る。ROCKHURRAHが前回から書いているネオ・サイケの代表的な曲調ともそんなに変わらない世界なのでここに紹介した次第。
ちなみにこのローレンスはフェルトの後でデニムというバンドを始めたんだが、これが上記の繊細で叙情的な旋律とは正反対のもの。グラム・ロックにパブ・ロック、80年代のニュー・ウェイブなどがごっちゃまぜになったインチキっぽいB級ポップスをやっていて、紛い物大好きなROCKHURRAHの路線とかなり一致している。
興味ある人は是非聴いてみて欲しい。

ネオ・サイケの世界では有名な英国ミッドナイト・レーベルの中心的存在がこのサッド・ラヴァーズ&ジャイアンツだ。
叙情派ネオ・サイケの中でも群を抜いて正統派だと思えるし哀愁度の高さもかなりのレベル、しかしヴォーカルも演奏も致命的に特徴がなく、生真面目に面白くない側面を持ったバンドだったなあ。
そんな感想を持っているROCKHURRAHも実は初期シングルやアルバムも持ってたし、好きで集めてた時代もあった。
あまりの地味さにこのバンドを飛び出した(?)トリスタンが結成したスネーク・コープスはなかなかドラマティックな曲調だったが、本家サッド・ラヴァーズの方はあくまでも中庸路線。ビデオの映像はたぶんバンドとは何の関係もなさそう。
これだけ特徴のないのもある意味個性なのかも。

80年代初期は世界各国でニュー・ウェイブが盛んだった時期だが、あまりロックの世界で語られる事がなかったオランダでも頑張っているバンドがあった。
ディック・ポラックの率いるメカノがネオ・サイケの世界では有名なものだった。
前に商品ページでも書いたが、メカノとは穴の開いた平べったい棒のようなパーツで、これを自由にネジ留めして飛行機とか機関車とかさまざまなものを作るという欧州の知育玩具の事だ。まあレゴ・ブロックみたいなもんか?
それをバンド名にしてレコード・ジャケットもメカノをモチーフにしたシュルレアリスム絵画風の素敵なもの、というバンドだったが、音の方も英国製軟弱ネオ・サイケと比べて図太くシンプルで、ある意味豪快さも漂わせていた。
全部が全部そんな感じではないけど、数あるジョイ・ディヴィジョンもどきの中では個人的に高得点なバンド。
ちなみに別の国にも同名バンドが存在しているから非常にわかりにくい。
今回紹介するフリューはそのメカノのトルソー・レーベルからリリースされたバンドで、メカノとはメンバーもかぶっている兄弟バンドみたいな感じ。
兄貴よりは少し繊細とかアラビアン風要素があるとか細かい特徴は違うが、素人目にはほとんど同じようなものだ。
あまり多くの人が語るようなバンドではないので紹介してみた。
トルソー・レーベルには他にもジョイ・ディヴィジョンを彷彿とさせるミック・ネスという暗黒なバンドもいて、人とは違うネオ・サイケを探してる人には強力にオススメ出来る。

詳細はよくわからないが前回に書いたオーケストラ・ルージュなどと同じくフランスのネオ・サイケ・バンド。
フランス=ナポレオンという事で非常にわかりやすいな。ネオ・サイケでどんなバンドがあったっけな?と思い探してる時に、ふとこのバンドを思い出したというわけ。
バンド名以外に特にフランスっぽい要素もなくてここで取り上げる事もなかったかな。

ネオ・サイケというよりはポジティブ・パンク、ゴシック系のバンドとして語られる事が多いが、明確なジャンルの判別はあまり意味が無いので、ROCKHURRAHとしてはネオ・サイケとして扱う事にしよう。
ちょいとぽっちゃり少年顔のヴォーカルが「美形」と「かわいい」の狭間で揺らぐ(大げさな表現)、主に叙情派好きの女子に大人気だったバンドだ。
ただしその音楽は見た目よりは遥かに本格派で、ファンになるにはそれなりのネオ・サイケ通である事が望ましい。
まあそんな事は全然気にしなくて見た目から入るのも構わないけどね。何だこのどうでもいいような言い方は?
この曲は知ってる人は誰でも知ってる、ローリング・ストーンズのカヴァー。
原曲はサイケデリックな名曲だが、このダンス・ソサエティの方はいかにも80年代ネオ・サイケ風に仕上がっている。

これまたメカノと同じく同名バンドがいるために誤解を受けやすいが、80年代初期のネオ・サイケ・バンド。
確かロンドンの下町イーストエンドあたりのバンドだったように記憶する。
ブリッジハウスというレーベルからリリースされていたが、オンリー・ワンズのピーター・ペレットのお気に入りバンドとして一部では有名だった。
歌も演奏もルックスも良く、ポップな曲もあればヘヴィなのもあり、その辺のネオ・サイケ・バンドよりは通ウケする内容だったな。
80年代のヴェルベット・アンダーグラウンドという位置に近かったと個人的には思うが日本ではほとんど無名のまま終わってしまった。
ギタリストのロッコー・ベイカーはいち早くフレッシュ・フォー・ルルに参加してそちらの方が多少知られている程度。
ウェステッド・ユースは個人的に好きな雰囲気の曲が多く、輸入盤屋で結構探して少しずつ手に入れた思い出がある。
今ではネオ・サイケ要素は全くないROCKHURRAHだが、どんな音楽でも一番輝いていた時代があって、その最盛期に熱中して聴けた事は幸せだったんだと思う。だから聴かなくなってもこういうジャンルの音楽があった、そして自分が好きだったという事を忘れたくないから、ROCKHURRAH RECORDSを続けてるんだろうな。

「ネオ・サイケとは」と語る時に必ず出てくるようなバンド達を見事にすっ飛ばして書いてるような気もするが、そのイビツなバランスもROCKHURRAHの特色と言えるのかもね。
最後は何とスイスのネオ・サイケ、ブルー・チャイナを紹介しよう。ルドルフ・ディートリッヒなどという大仰な名前の人物が中心となっていたようだが、さすがにスイスの音楽事情となると調べるのも困難。
同じくスイスの初期ガールズ・バンドだったクリネックス(リリパット)の初期メンバーだったとの事だが詳細は不明。
男なのでガールズ・バンドにいられなくなったんじゃなかろうかと推測する(笑)。
何だかよくわからんコメントばかりで、こんなんでいいのか?とも思うが仕方ない、つまりよく知らないバンドという事。
かつてスイスのバンドでガールズ・フロム・タヒチというのを持っていたが、そこでこのルドルフ・ディートリッヒがプロデュースしていたような記憶がある程度。
今回は敢えて違う曲を紹介したが、ビートルズのサイケデリック名曲「Tomorrow Never Knows」をカヴァーしていたな。CDが出てるとかそういう情報はとんと知らないが、レコードの方はかなり希少で値段も高かったはず。
そのB面に収録されているこの曲も大好きな哀愁の名曲。

さて、ネオ・サイケなどという地味で生真面目な音楽を2回に分けて書いてきたが、あまり面白くも深くもない内容になってしまったな。
まあ完全に廃れてしまったような音楽について語るのは個人的には楽しい行為なので、今後も需要などに関わらず不定期に「忘れられた人々」について書いてゆこう。

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