【上野公園内の看板を撮影】
SNAKEPIPE WROTE:
上野の東京都美術館で「デ・キリコ展」が開催されることを知ったのは、昨年だったかな。
展覧会情報を検索していて見つけたんだよね。
キリコといえば、2010年5月に「SNAKEPIPE MUSEUM #03 Giorgio de Chirico」というブログを書いているSNAKEPIPE。
その記事にも記述したけれど、2005年に東京大丸ミュージアムで開催された「巨匠 デ・キリコ展~異次元の森へ迷い込む時」を、ROCKHURRAHと一緒に鑑賞したんだよね。
あれが2人で行った最初の展覧会だったかもしれないなあ。(遠い目)
その記事の最後に「またどこかでキリコ展あったら観にいきたいと思う」と綴ったSNAKEPIPEの願いが叶うことになるんだね!(笑)
SNAKEPIPEにとっては、東京都美術館に行くのは2021年7月の「イサム・ノグチ 発見の道」以来、ROCKHURRAHにいたっては2016年5月の「若冲展」以来なので、およそ8年ぶりなんだね!
上野公園に点在する美術館・博物館としては2022年5月の「空也上人と六波羅蜜寺」で訪れたっけ。
上野に行く自体も久しぶりになるんだね。
かつてはミリタリー・グッズを求めて、上野、秋葉原を巡ったり、正月の買い出しではアメ横に行ってたのに。
ROCKHURRAHもSNAKEPIPEも、変化しているんだね。(笑)
最近では珍しく土日祝のみ時間指定するチケット予約になっている。
ゴールデン・ウィーク前から開催されている展覧会なので、2ヶ月が経過しているにもかかわらず、時間で割り振らないとお客さんが多いってことなのかも。
朝一番の回を予約し、2年ぶりの上野へ。
昨年、事務所を移転する前は、日比谷線を使って上野に行っていたROCKHURRAH RECORDS。
今回はJRで上野に行ったので、公園口の改札を抜ける。
さすが公園口、目の前が上野公園だよ!(当たり前だけど)
東京都美術館まで結構歩いた記憶があったのは、日比谷線だったからだね。
美術館の開館時間に余裕で到着。
すでに20人くらいの人が並んでいる。
チケット予約の枠を何人に設定しているのか不明だけど、後続の人数を観察すると軽く100人はいたんじゃないかな。
いよいよ会場へ。
チケット予約していると、QRコードの画面見せるだけだから簡単。
すんなり入場して鑑賞を始める。
予想していたことだけど、やっぱり会場内の撮影は禁止。
今回のブログで使用している画像は、会場で撮ったものではないので4649!
会場は5つのセクションに分かれていた。
セクション1は「自画像・肖像画」。
キリコの自画像が多数展示されている。
画家が自分自身を描いた作品は、見慣れていると思っていたけれど、キリコは違ったね。
「闘牛士の衣装をまとう」「鎧をまとう」「17世紀の衣装をまとう」など、いわゆるコスプレを楽しんでいるみたい。
今回展示されていたのは1950年以降の作品だったので、1888年生まれのキリコが60歳を過ぎてからの自画像なんだよね。
載せたのは「自画像のある静物(1950年代半ば)」で、ポール・セザンヌの静物画のようにテーブルの果物に焦点を当てているのかと思いきや、壁にかかっている自画像が主役の作品!
この手法には、森村泰昌もびっくりなんじゃない?(笑)
セクション2は形而上絵画。
そもそも「形而上」ってどんな意味?
調べると「感性的経験では知り得ないもの。有形の現象の世界の奥にある、究極的なもの(Oxford Languagesより)」だって。
分かるような、分からないような説明じゃない?(笑)
キリコはニーチェの思想から着想を得たとされているので、哲学的な実験絵画を制作したということになるみたいだね。
載せたのは「運命の神殿」という1914年の作品。
複数のモチーフでコラージュを描いているところが面白い!
ダダより早い時期の作品かもしれないね。
キリコは時代によってスタイルを変えていった画家だと教えてくれたのは、日曜美術館「アートシーン」だった。
形而上絵画から印象派、更に新形而上絵画へと変化したらしい。
今だったら「シン・形而上絵画」と書くのかも。(笑)
セルフ・カバーとでもいうのか、1910年代に描いたモチーフに再び挑んでいるんだよね。
展覧会は、年代順に作品展示をしていなかったので、キャプションを確かめながら鑑賞していたSNAKEPIPE。
「孤独のハーモニー」は1976年の作品なので、「新形而上絵画」のほうみたい。
三角形の木材が積み上げられ、奥にはキリコ特有の青緑色の空が広がっていて、色彩が美しい。
左右にある黒い空間には何があるのか非常に気になるよ。
展覧会のポスターになった「預言者(1914-1915)」や「形而上的なミューズたち(1918年)」に描かれたマヌカンが、新形而上絵画にも登場する。
展覧会にちなんでマヌカンって表記したけど、マネキンと言ったほうがシックリするな。
「ヘクトルとアンドロマケ」は1970年の作品だという。
キリコは、ホメロスによるギリシアの叙事詩「イリアス」に登場するトロイアの王ヘクトルと王妃アンドロマケを何度も題材に選んでいるんだよね。
かつて文学少女だったSNAKEPIPEだけど、「イリアス」は読んでないなあ。(笑)
どうやら戦場に向かう夫ヘクトルを送り出す、今生の別れのシーンらしい。
表情がないマネキンなのに、寄り添っている様子や男女であることは分かる。
ギリシャ文学に親しんでいる方なら、タイトルだけで情景が浮かぶのかもしれないね。
マネキンのバックの建造物や背景の色だけでも、SNAKEPIPEにはグッとくる一枚だよ!
セクション3は「1920年代の展開」。
キリコはシュルリアリストたちとの交流もあったけれど、後に決別したという。
その後も友人関係を続けていたのはジャン・コクトーだったらしい。
2024年3月の「箱根初上陸続編!ガラスの森美術館」でもコクトーの名前を書いていたことを思い出したよ。
100年近く前のことを、当ブログでは記事にしてるってことだね。(笑)
展覧会に話を戻すと、1934年キリコは、ジャン・コクトーの詩集「神話」のために10点のリトグラフを制作したという。
載せたのは、そのリトグラフと同じモチーフの「神秘的な水浴」で1965年の油彩画。
右下に1939と書かれているのが謎だけどね?
水が「ツイン・ピークス柄」で表現されている点やエッシャーの騙し絵みたいな不思議な構図に見入ってしまう。
「一番左の人物はコクトーだよね?」
ROCKHURRAHに言われて、納得したよ。
確かに似てるわ!(笑)
2005年の展覧会で鑑賞した時にも「ウチに欲しい」と思っていた彫刻!
今回も展示されていて、再び同じ感想を持ったよ。
こういう作品をモチーフにした物がミュージアム・ショップにあったら良いのにな。
相変わらず「クリアファイル」とか「ショッピング・バッグ」なんだろうな。
「ペネロペとテレマコス」は1970年のブロンズに銀メッキされた作品。
どうやらこれはホメロスの「オデュッセイア」の登場人物らしい。
キリコはホメロスに傾倒していたのかな。
どんなシーンが切り取られているのか不明だけど、観ているだけでワクワクする彫刻作品だよ!
自宅にあったらどんなに嬉しいだろう。(笑)
キリコが舞台美術を手掛けていたとは知らなかった。
説明によると、1924年パリでバレエの舞台美術と衣装を担当したのがスタートだという。
1960年代まで続けていたというから、キリコも楽しんでいたんだろうね!
展覧会ではスケッチと実際に使用された衣装が展示されていた。
1942年の衣装スケッチを載せてみたよ。
腰からスカートにかけて、建築のデザインというから斬新だよね。
一体どんな舞台だったんだろう。
キリコの新たな一面を知ることができたね!
ミュージアム・ショップを探索する。
予想通り相変わらずの商品が並ぶ中、今回変わっていたのは、イタリアの食材が並んでいたこと。
イタリアのお菓子「ビスコッティ」やオリーブオイルなど、あまり見かけないグッズが販売されていたのは面白かった。(笑)
100点以上にも及ぶ展示作品数は観ごたえ十分。
「形而上絵画」と「新形而上絵画」の区別を知ったことが収穫だったSNAKEPIPE。
前から好きだったキリコ、もっと好きになったよ。
行って良かった展覧会だね!