デ・キリコ展 鑑賞

20240630 top
【上野公園内の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

上野の東京都美術館で「デ・キリコ展」が開催されることを知ったのは、昨年だったかな。
展覧会情報を検索していて見つけたんだよね。
キリコといえば、2010年5月に「SNAKEPIPE MUSEUM #03 Giorgio de Chirico」というブログを書いているSNAKEPIPE。
その記事にも記述したけれど、2005年に東京大丸ミュージアムで開催された「巨匠 デ・キリコ展~異次元の森へ迷い込む時」を、ROCKHURRAHと一緒に鑑賞したんだよね。
あれが2人で行った最初の展覧会だったかもしれないなあ。(遠い目)
その記事の最後に「またどこかでキリコ展あったら観にいきたいと思う」と綴ったSNAKEPIPEの願いが叶うことになるんだね!(笑)

SNAKEPIPEにとっては、東京都美術館に行くのは2021年7月の「イサム・ノグチ 発見の道」以来、ROCKHURRAHにいたっては2016年5月の「若冲展」以来なので、およそ8年ぶりなんだね!
上野公園に点在する美術館・博物館としては2022年5月の「空也上人と六波羅蜜寺」で訪れたっけ。
上野に行く自体も久しぶりになるんだね。
かつてはミリタリー・グッズを求めて、上野、秋葉原を巡ったり、正月の買い出しではアメ横に行ってたのに。
ROCKHURRAHもSNAKEPIPEも、変化しているんだね。(笑)

最近では珍しく土日祝のみ時間指定するチケット予約になっている。
ゴールデン・ウィーク前から開催されている展覧会なので、2ヶ月が経過しているにもかかわらず、時間で割り振らないとお客さんが多いってことなのかも。
朝一番の回を予約し、2年ぶりの上野へ。

昨年、事務所を移転する前は、日比谷線を使って上野に行っていたROCKHURRAH RECORDS。
今回はJRで上野に行ったので、公園口の改札を抜ける。
さすが公園口、目の前が上野公園だよ!(当たり前だけど)
東京都美術館まで結構歩いた記憶があったのは、日比谷線だったからだね。
美術館の開館時間に余裕で到着。
すでに20人くらいの人が並んでいる。
チケット予約の枠を何人に設定しているのか不明だけど、後続の人数を観察すると軽く100人はいたんじゃないかな。

いよいよ会場へ。
チケット予約していると、QRコードの画面見せるだけだから簡単。
すんなり入場して鑑賞を始める。
予想していたことだけど、やっぱり会場内の撮影は禁止。
今回のブログで使用している画像は、会場で撮ったものではないので4649!

会場は5つのセクションに分かれていた。
セクション1は「自画像・肖像画」。
キリコの自画像が多数展示されている。
画家が自分自身を描いた作品は、見慣れていると思っていたけれど、キリコは違ったね。
「闘牛士の衣装をまとう」「鎧をまとう」「17世紀の衣装をまとう」など、いわゆるコスプレを楽しんでいるみたい。
今回展示されていたのは1950年以降の作品だったので、1888年生まれのキリコが60歳を過ぎてからの自画像なんだよね。
載せたのは「自画像のある静物(1950年代半ば)」で、ポール・セザンヌの静物画のようにテーブルの果物に焦点を当てているのかと思いきや、壁にかかっている自画像が主役の作品!
この手法には、森村泰昌もびっくりなんじゃない?(笑)

セクション2は形而上絵画。
そもそも「形而上」ってどんな意味?
調べると「感性的経験では知り得ないもの。有形の現象の世界の奥にある、究極的なもの(Oxford Languagesより)」だって。
分かるような、分からないような説明じゃない?(笑)
キリコはニーチェの思想から着想を得たとされているので、哲学的な実験絵画を制作したということになるみたいだね。
載せたのは「運命の神殿」という1914年の作品。
複数のモチーフでコラージュを描いているところが面白い!
ダダより早い時期の作品かもしれないね。

キリコは時代によってスタイルを変えていった画家だと教えてくれたのは、日曜美術館「アートシーン」だった。
形而上絵画から印象派、更に新形而上絵画へと変化したらしい。
今だったら「シン・形而上絵画」と書くのかも。(笑)
セルフ・カバーとでもいうのか、1910年代に描いたモチーフに再び挑んでいるんだよね。
展覧会は、年代順に作品展示をしていなかったので、キャプションを確かめながら鑑賞していたSNAKEPIPE。
「孤独のハーモニー」は1976年の作品なので、「新形而上絵画」のほうみたい。
三角形の木材が積み上げられ、奥にはキリコ特有の青緑色の空が広がっていて、色彩が美しい。
左右にある黒い空間には何があるのか非常に気になるよ。

展覧会のポスターになった「預言者(1914-1915)」や「形而上的なミューズたち(1918年)」に描かれたマヌカンが、新形而上絵画にも登場する。
展覧会にちなんでマヌカンって表記したけど、マネキンと言ったほうがシックリするな。
「ヘクトルとアンドロマケ」は1970年の作品だという。
キリコは、ホメロスによるギリシアの叙事詩「イリアス」に登場するトロイアの王ヘクトルと王妃アンドロマケを何度も題材に選んでいるんだよね。
かつて文学少女だったSNAKEPIPEだけど、「イリアス」は読んでないなあ。(笑)
どうやら戦場に向かう夫ヘクトルを送り出す、今生の別れのシーンらしい。
表情がないマネキンなのに、寄り添っている様子や男女であることは分かる。
ギリシャ文学に親しんでいる方なら、タイトルだけで情景が浮かぶのかもしれないね。
マネキンのバックの建造物や背景の色だけでも、SNAKEPIPEにはグッとくる一枚だよ!

セクション3は「1920年代の展開」。
キリコはシュルリアリストたちとの交流もあったけれど、後に決別したという。
その後も友人関係を続けていたのはジャン・コクトーだったらしい。
2024年3月の「箱根初上陸続編!ガラスの森美術館」でもコクトーの名前を書いていたことを思い出したよ。
100年近く前のことを、当ブログでは記事にしてるってことだね。(笑)
展覧会に話を戻すと、1934年キリコは、ジャン・コクトーの詩集「神話」のために10点のリトグラフを制作したという。
載せたのは、そのリトグラフと同じモチーフの「神秘的な水浴」で1965年の油彩画。
右下に1939と書かれているのが謎だけどね?
水が「ツイン・ピークス柄」で表現されている点やエッシャーの騙し絵みたいな不思議な構図に見入ってしまう。
「一番左の人物はコクトーだよね?」
ROCKHURRAHに言われて、納得したよ。
確かに似てるわ!(笑)

2005年の展覧会で鑑賞した時にも「ウチに欲しい」と思っていた彫刻!
今回も展示されていて、再び同じ感想を持ったよ。
こういう作品をモチーフにした物がミュージアム・ショップにあったら良いのにな。
相変わらず「クリアファイル」とか「ショッピング・バッグ」なんだろうな。
「ペネロペとテレマコス」は1970年のブロンズに銀メッキされた作品。
どうやらこれはホメロスの「オデュッセイア」の登場人物らしい。
キリコはホメロスに傾倒していたのかな。
どんなシーンが切り取られているのか不明だけど、観ているだけでワクワクする彫刻作品だよ!
自宅にあったらどんなに嬉しいだろう。(笑)

キリコが舞台美術を手掛けていたとは知らなかった。
説明によると、1924年パリでバレエの舞台美術と衣装を担当したのがスタートだという。
1960年代まで続けていたというから、キリコも楽しんでいたんだろうね!
展覧会ではスケッチと実際に使用された衣装が展示されていた。
1942年の衣装スケッチを載せてみたよ。
腰からスカートにかけて、建築のデザインというから斬新だよね。
一体どんな舞台だったんだろう。
キリコの新たな一面を知ることができたね!

ミュージアム・ショップを探索する。
予想通り相変わらずの商品が並ぶ中、今回変わっていたのは、イタリアの食材が並んでいたこと。
イタリアのお菓子「ビスコッティ」やオリーブオイルなど、あまり見かけないグッズが販売されていたのは面白かった。(笑)

100点以上にも及ぶ展示作品数は観ごたえ十分。
「形而上絵画」と「新形而上絵画」の区別を知ったことが収穫だったSNAKEPIPE。
前から好きだったキリコ、もっと好きになったよ。
行って良かった展覧会だね!

収集狂時代 第23巻 楽器編

20240623 top
【楽器が描かれた名画といえばアンリ・ルソーの「眠れるジプシー女」】

SNAKEPIPE WROTE:

2024年6月に鑑賞した「GOMA ひかりの世界」で、初めて知ったのがディジュリドゥという楽器だった。
「世界にはいろんな楽器があるんだね!」と感想を書いたSNAKEPIPE。
そこからヒントを得て、今回は珍しい楽器を特集してみよう。
ただし、SNAKEPIPEは楽器に関して全く知識がないので、詳しい方からすれば「こんなことも知らないのか」と呆れられてしまうかもしれないけどね?(笑)

「なんだこれは!」と思わず口に出してしまいたくなるよね。
ジャズ・ギタリストであるパット・メセニーが、1984年にリンダ・マンザーに特注したギターなんだとか。
「できるだけ多くの弦を持つギター」というリクエストに「4つのネック、2つのサウンドホール、42本の弦」を持つ「ピカソ・ギター」が誕生したという。
このネーミングも納得だよ。(笑)
オブジェじゃなくて、本当に演奏できるからすごいよね!

一人で複数のパートをこなしていてビックリ!
こんな演奏ができたら楽しいだろうなあ。

円盤が着陸した画像?
まさかと思うけど、これも楽器なのかな。
正解はハングというイディオフォン(体鳴楽器)に分類される楽器なんだって。
深絞りされた窒化鋼板の2つの半球をリムで接着して作られていて、内部は空洞で凸レンズの形状をしているとのこと。
上部(「ディング」)側には中央にハンマーで打ち込まれた「ノート」があり、その周りに7つまたは8つの「トーンフィールド」が配置されているという。
下部(「グー」)側は平らな面で、中央に巻き込まれた穴があり、リムを打つことで調律された音が生成される、と説明されているよ。
一体どんな音なんだろう?

形状から想像していたのとは違う音じゃない?
環境音楽とかヒーリング・ミュージックと呼ばれるジャンルになるのかな。
演奏しているのはHANG MASSIVEというデュオで、プロのミュージシャン!
インドのゴアで出会った、とプロフィールに書いてあるね。
オフィシャル・ビデオはチベットで撮影されたみたい。
壮大な風景と音楽がマッチしているよね。

こちらも不思議な形状だけど、本当に楽器なのかな。
調べてみると、1761年にベンジャミン・フランクリンによって発明されたグラス・ハーモニカと判明!
今から250年以上前から存在していた楽器とはびっくりだね。
「ワイングラスの縁を濡れた指で擦って音を出す現象について、ガリレオも『新科学対話』の中で考察していた(Wikipediaより)」なんて書いてあるよ。
時代が遡り過ぎて、いつの話をしているのか分からなくなるね。(笑)
グラス・ハーモニカはガラス製の大きさの異なる円盤を配列し,水で濡らして回転させ,それを指で押えて演奏する体鳴楽器、だって。
音を聴いてみよう。

グラスの縁を指でなぞって音を出すのは「新春かくし芸大会」で見たことあるけど(古い!)、横にして回転させると音が連続するんだね。
音を聴いて、ホラー映画を連想してしまった。(笑)
SNAKEPIPEは寂しい、悲しい、怖いと感じたけど、人それぞれ感想は違うよね!

最後はこちら!
画像だけでは、どんな楽器なのか想像もつかないよね。
細かい部品がみっちり詰まっていて、手巻きのリールのような物も見えるよ。
これはスウェーデンのWintergatan(ウィンターガタン)というフォークトロニカ・バンドが自作したMarble Machine(マーブル・マシーン)という楽器だという。
手動でリールを動かし、鋼鉄の玉の移動により、機械下部に設置された楽器を叩き、音を奏でる仕組みなんだって。
ビブラフォン、ベースギター、シンバルやドラムの音を出すことができるという。
実際に機械楽器を動かしている映像がこちら。

一人で忙しそうに機械を操っているね。
木材に手書きで文字が書いてあったり、ネジを手回しする部分はアナログなのに、プログラミングされて動くところは未来的。
レトロ・フューチャーとでもいったら良いのか、面白いよね!
ウィンターガタンは、この機械楽器を2年かけて制作し、そのプロセスを動画配信しているという。
すでにこの初号機は解体され、2号機も完成しているみたいだね。
ウィンターガタンのサイトには、マーブル・マシーンの設計図が「お代は自由にどうぞ」として、ダウンロード可能になっているよ。
「同じ楽器を作りたい」と思ったら、自作できるんだね!
工学と音楽を組み合わせた斬新なバンドを知ることができて良かったよ。

今回はSNAKEPIPEが、今まで見たことも聴いたこともない楽器を特集してみたよ!
目と耳が刺激されて、とても楽しかった。
世界にはまだ色々な楽器があるので、続きを検討してみよう。
次回もお楽しみに!

Mark Leckey Fiorucci Made Me Hardcore 鑑賞

20240619 top
エスパスルイ・ヴィトン エレベーター前の看板】

SNAKEPIPE WROTE:

現代アート好きの友人Hと待ち合わせ、ジャイルギャラリーで「GOMA ひかりの世界」を鑑賞した話の続きを書いていこう。
ランチに向かったのは、友人Hが「素敵なところ」とお勧めしてくれたお洒落なイタリアン・レストラン。
予約していなかったけれど、すんなりテラス席に案内してもらう。
この店名は、もしや?
SNAKEPIPEの記憶にある「80年代に大好きだった店」が蘇ってきた!
看板をみると「since 1977」と書いてあるので、間違いないよ。
当時は珍しかった「全粒粉パン」「白いパン」や具材を選び、その場で作ってくれたサンドイッチ屋さんだったんだよね。
気取ってランチを頂いたものよ。(遠い目)
今はイタリアンの店になっていたんだね。
チョイスしてくれた友人H、ありがとう!(笑)

ゆったりしたランチ・タイムを過ごした後、次に向かったのはエスパスルイ・ヴィトン!
「ギャラリーに行きたいんですけど」
ドアマン対策を万全にしたおかげで(笑)すんなりエレベーターを案内される。
アジア系のお客さんが案内係の男性と共に、先にエレベーターを待っていた。
同じエレベーターに乗り込むと、案内係が「何階ですか?」と聞いてくるので「ギャラリーです」と応じる。
アジア系の方々は「本当のお客さん」なので、5階で降りていったよ。
「レセプショニスト、ってバッジつけてましたね」
友人Hが案内係を観察していたようだ。
「昔ならエレベーター・ボーイじゃない?」
などと言っている間にギャラリーに到着。
鑑賞前にまず化粧室に立ち寄る友人HとSNAKEPIPE。
ルイ・ヴィトンで最初にトイレに行くとは、大物感あるわあ。(笑)

いよいよ会場へ。
実はジャイルギャラリー同様、エスパスルイ・ヴィトンでの展示についても全く予習してこなかったSNAKEPIPE。
今回はMark Leckeyの「Fiorucci Made Me Hardcore feat. Big Red SoundSystem」という展覧会が開催されている。
ここからはマーク・レッキーと表記していこう。
初めて聞くアーティストなので、経歴を調べてみようか。

1964 イギリスのバーケンヘッド生まれ
1990 ニューカッスル工科大学にて学士号取得
1999 「Fiorucci Made Me Hardcore」を発表
2005-2009 ドイツのシュテーデル美術大学で映画学の教授を務める
2008 ターナー賞を受賞

今年60歳のアーティストなんだね。
ターナー賞受賞者で、大学教授まで経験しているアーティストだったとは!
これは帰宅後調べて知った事実で、会場入りした時には知識ゼロだからね。
先入観なく素直に作品と対峙できるってことだ。(笑)

暗い会場に足を踏み入れると、大きめの音量と巨大スクリーンが見える。
エスパスルイ・ヴィトンの係の方がにこやかに駆け寄ってくる。
「ごゆっくりご覧ください。撮影もできます」
最初から言ってもらえると助かるー!(笑)
お礼を言って、早速映像作品に目を向けるSNAKEPIPE。
ダンス・シーンが続いている映像なんだよね。
これが展覧会タイトルの「Fiorucci Made Me Hardcore」で、フィオルッチとはファッション・ブランドのフィオルッチのことだって。
80年代を知っている人にとっては懐かしいブランドだよね。
直訳すると「フィオルッチが俺をハードコアにしてくれた」になるね。(笑)
それにしてもルイ・ヴィトンの会場でフィオルッチとは良い度胸してるわ。
YouTubeに「Fiorucci Made Me Hardcore」の映像があったので、載せてみよう。

改めて最初から最後まで観てみたよ。
70年代から90年代のクラブ(ディスコ)でのダンス・シーンを、マーク・レッキーがアレンジした作品だという。
ファッションと音楽が個人のアイデンティティや文化的背景に与える影響を象徴的に表現し、ノスタルジアや文化の変容を探求する作品として評価されているんだって。
日本とイギリスの違いはあるけれど、サブカルチャーやファッション、そして音楽を栄養源として育った人には、共感できる題材だよね!
最後まで観ると、少し寂しい気持ちになるのは、「踊っていたあの頃」を思い出すからかな?

ね、そう思わない?と話しかけようとすると、友人Hの姿が見えない。
どこに行ったのか周りを見渡すと、スクリーンの真後ろにある赤い作品の前で微動だにせず立ち尽くしている。
この作品は一体何?
「サウンド・システムですね」
友人Hが答えてくれた。
サウンド・システムって聞き覚えがあるなあ。

90年代によく聴いていたのが、サウンド・システム「Stone Love」だったことを思い出した!
ジャマイカで本場のダンスホール・レゲエ体験していたわけではなく、CDを愛聴してたんだよね。
サウンド・システムとは、「野外ダンスパーティを提供する移動式の音響設備、および提供する集団を指す(Wikipediaより)」とのことなので、機材だけでもサウンド・システムなんだね。
友人Hは音質の良さに圧倒され、じっくり観察していたという。

サウンド・システムの後ろの天井部分には、巨大なフェリックス・ザ・キャットが寝転んでいる。
かなりの大きさ!
どうやら身長(?)12m、胴体が5mもあり、送風機で空気を送り膨らませているみたいだね。
マーク・レッキーなりの解釈でフェリックスを題材に選んでいるようだけど、意味を理解しなくても良いような?
観た瞬間に驚かせるのが現代アートだからね!(笑)

最初の映像もトニー・パーマーが1977年にテレビのために撮影した映像などを編集した作品で、フェリックスもオリジナルではない。
マーク・レッキーは「レディ・メイド」を得意にしているのかもしれないね?
帰ろうとした時、エスパスルイ・ヴィトンの係の方がにこやかに近寄ってくる。
そしてマーク・レッキーが来日し、オープニング・セレモニーの時にシャンパン片手にサウンド・システムの音量を上げてご機嫌だった話を教えてくれたよ。
「その音を聴きたかった!」
友人Hが残念そうに言う。
本当に耳の人なんだね。(笑)

1日に2つのギャラリーを鑑賞できて楽しかった。
どちらも初めて知ったアーティストなので、知識が増えて嬉しいよ。
そして同じ感動を味わった友人Hに感謝!
また約束しましょ。(笑)

GOMA ひかりの世界 鑑賞

20240609 top
【ジャイルギャラリーの入口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

現代アート好きの友人Hと久しぶりに約束することになった。
前回は、「Holidays In The 散歩 ファーレ立川」で、立川に点在するパブリック・アートを散策した2023年11月のことなので、約半年ぶりになるんだね!
友人Hから、表参道のジャイルギャラリーへのお誘いを受けたので、今回は表参道〜原宿を歩くことに決定。
せっかくだからエスパス ルイ・ヴィトンにも行ってみよう。
「おかしな服装でも入れますか?」
友人Hからの問いに、全く問題ないですよ、と回答するSNAKEPIPE。
軽く答えてはみたものの、例えば2021年10月の「ギルバート&ジョージ Class War, Militant,Gateway」などで、居心地の悪い思いもしてるんだけどね。(笑)
堂々としていればいいんです。
きっとそれがポイントなんだよ!(ふふふ)

友人Hと約束したのは、「紫外線対策は万全に」と天気予報で言っていた通り、気温が高くしっかりと晴れ間が見える日だった。
天気に恵まれて良かった!
オープン時間の11時に友人Hとジャイル・ビルの前で待ち合わせる。
先に待っていてくれた友人Hは、SNAKEPIPEを認めた瞬間に笑い転げるじゃないの!
「服装がかぶってる!」
確かに2人とも、モノトーンのワンピースにスニーカーで、まるでニコイチ・ファッション。(笑)
似た趣味の者同士、服の好みまで似通っているとはね!

ジャイルビルの前でオープンを待っていた人たちが、続々とビルの中に入っていく。
そのあとに続き、友人Hとジャイルギャラリーに向かう。
今回は「GOMA ひかりの世界」という展覧会が開催されているんだよね。
一番で会場に入った男性2人組が最初の作品を熱心に鑑賞しているので、トップ画像用の撮影ができないSNAKEPIPE。
友人Hをお待たせしてしまい、申し訳なかったよ。

やっと撮影し、会場へ。
その途端に全身を包み込む不思議な音。
全く学習しないでギャラリーに来てしまったけれど、どうやらアーティストのGOMAは、オーストラリア先住民アボリジニの伝統楽器「ディジュリドゥ」の奏者なんだとか。
ディジュリドゥは1000年以上前から使用されている、世界最古の管楽器とのこと。
鼻で息を吸い、口で吐く循環呼吸で演奏するんだって。
SNAKEPIPEが習っているピラティスも鼻で吸って口で吐くんだけど、胸式呼吸なんだよね。
循環させながら息を長く保って、演奏するのは難しいだろうね!

まるで僧侶がお経を一斉に唱えているような、耳からだけではなく毛穴から体内に沁み込んでくる音に戦慄する。
夏の暑い日、竹藪の中でセミの大合唱を聴いたことを思い出したよ。
意識が飛び、自分がどこにいるのか分からなくなる神秘的な体験だったっけ。
あの時の感覚に近い音を聴いている気がしたSNAKEPIPE。
会場には白一色だけの作品が並んでいて、音響との相乗効果でめまいが起きそう。
友人Hがいなかったら倒れていたかも。(おおげさ)
白い画面に近づいてみると、「こんもり」と盛り上がった点や線が確認できるよ。
絵の具の厚みが模様になっているんだね!

会場に設置された文章やパンフレットに「GOMAは2009年交通事故に遭い、事故の後遺症によって意識を失っているときに見た光景を描いている」と書かれている。
白い光が見えるという。
これは「チベット死者の書」に書かれている「チカエ・バルド(死の瞬間のバルド)」で、光が現れる状態と同じじゃない?
ということは、GOMAは何度も臨死体験を繰り返してることになるのかも。
敬愛するデヴィッド・リンチの「ツイン・ピークス」にも、ローラのお父さんであるリーランドの死に際に「into the light(光の中にお行きなさい)」とクーパー捜査官が言うところあったよね!
またリンチのネタを書いてしまった。(笑)

予習しないで訪れた展覧会で毛穴から音が入り、幻惑され、絵の中(宇宙)に吸い込まれそうな体験して大感激したSNAKEPIPE。
そうなのよ、言葉じゃなくて感覚が大事なんだよね!
友人Hの神経も刺激されたようで、2人でホクホクしながら次の会場に向かう。
ヒモみたいな「のれん」をかきわけると、第2章は撮影禁止エリアだった。
今までジャイルギャラリーで撮影不可だったことなかったのになあ。
展示されていたのは大型の作品で、素晴らしかったよ。
「発光体に色がついてきて『脳と体が合体する』のを感じると意識が戻る」とサイトに載っている。
白の世界からカラーの作品に一転したのは、現れた光が白から着色されて近寄ってきたイメージなのかもしれないね。
ここで意識が戻ったのかもしれない。

撮影できなかった第2章から、またヒモみたいな「のれん」から出ると、グッズと作品が販売されていた。
何か記念に欲しい!
作品まで販売されていて、お値段33万円!
お金に余裕があったら購入してたよ。(笑)
友人Hは迷わずCDを手に取り、レジに進んでいく。

レジにいた男性が立ち上がり「ありがとうございます」と挨拶してくれる。
「サインしましょうか?あの、本人です!」
えっ、ええーーーっ?
本人ってまさか、あの、GOMAさん?
なんと、本当にアーティストご本人だったんだよね!(笑)
レジの人だと思ってたから、これにはびっくりんこだよ。
自分から「本人です」と名乗るアーティストって珍しくないか?
友人HはCDにサインを書いてもらっている。
SNAKEPIPEもCD気になったけど、やっぱり曼荼羅っぽいTシャツに決めた。
「わざと大きくしてワンピースみたいにしたらカワイイ」
という友人Hのアドバイス通り、XXLにしてみたよ。
パンフレットにGOMAさんのサインをいただき、更に3ショットで記念撮影もしてもらう。(笑)
とても良い経験ができたよ!
ジャイルギャラリーに誘ってくれた友人Hに感謝だね。

GOMAさんの演奏がYoutubeにあったので、載せさせていただこう。

これは2009年、今から15年前の映像みたいだね。
もしかしたら事故に遭う前で、まだ絵を描いていない頃なのかもしれない。
かなりダンサブルで、聴いていると踊りだしたくなるリズムだね。
ジャイルギャラリーの会場で耳にした音は、瞑想するのに似合う宗教的な雰囲気だったので、印象が全然違うよ。
ディジュリドゥという楽器が、モンゴルのホーミーやブライアン・ジョーンズの「ジャジューカ」などと同じように魂に響くことが良く分かる。
帰宅後ROCKHURRAHに話すと、「ああ、ディジュリドゥね」と即答されてしまい、ちょっと悔しい。
SNAKEPIPEだけが知らなかったのか。(涙)
世界にはいろんな楽器があるんだね!

音楽と映像と絵画を駆使して表現活動しているGOMAさん、初めて知ったアーティストだったよ。
あれ、いつの間にか「GOMAさん」ってさん付けになってる。
会話して記念撮影させてもらったしね!(笑)

友人Hとはこの後、ランチを楽しくいただき次の会場に向かう。
この続きは来週にしよう!
次回をお楽しみに。(笑)