SNAKEPIPE MUSEUM #70 Eli Lotar

20240602 08
【1929年の作品「ラ・ヴィレットの食肉処理場にて」】

SNAKEPIPE WROTE:

約3ヶ月ぶりに更新するカテゴリー「SNAKEPIPE MUSEUM」では、Eli Lotarを紹介していこう。
読み方はエリ・ロタールで良いのかな。
1920年代から30年代にかけて活躍した写真家なんだよね!
経歴を調べてみようか。

1905 パリに生まれる
1926 パリでジェルメーヌ・クルルの助手となる
1929 ジョルジュ・バタイユが編集した雑誌「Documents」に写真が掲載される
1930 ジャック=アンドレ・ボワファールとスタジオをパリに設立
1933 ルイス・ブニュエル監督「糧なき土地」の撮影監督を務める
1934〜 フリーランスの写真家として活動
1939 結婚し、娘が生まれる
1960〜 アルベルト・ジャコメッティと住み、彫刻のモデルを務める
1969 死去

錚々たる名前が出てきたよ!
バタイユ、ブニュエル、ジャコメッティだって。(笑)
1920年代のパリにいたら、有名な人達との交流があるんだろうな。
エリという名前だから、てっきり女性だと思っていたら、男性だったよ。
載せた画像は、パリのポンピドゥー・センターが所蔵している「1925年頃撮影された作者不詳」のエリ・ロタール肖像写真だという。
20歳くらいだと思うけど、甘いマスクの持ち主(死語)だったみたいだね!

ROCKHURRAH RECORDSでは、エリ・ロタールの作品を以前鑑賞していたみたい。
2011年3月の「シュルレアリスム展~ポンピドゥセンター所蔵作品」で、すでにお目にかかっていたんだね。
SNAKEPIPEは、ちゃんと図録も購入してたし。(笑)
13年前の記事の最後に「シュルレアリスムはまだこれからも勉強していきたいジャンルだね!」と書き残していた通り、SNAKEPIPEの探求は続いているよ。

エリ・ロタールの作品を観ていこうか!
「シューーーールーーーーッ!」
と叫んでしまいたくなるほど、絵に描いたようなシュルレアリスム写真作品じゃない?
絵に描いたような写真、という表現は間違ってるけど、とても分かり易いシュルレアリスムの例だと思う。
「Hôpital des Quinze-Vingts」は1928年の作品だという。
陳腐だけど、病院の廊下に時計というと、死が刻々と迫っている様子なのかな?
この背景、ROCKHURRAHが2016年8月に作成した「ROCKHURRAH RECORDS残暑見舞い2016」によく似ているよ。
記事によれば、どうやらSNAKEPIPEの具合が悪くなったらしく、ROCKHURRAHが急にブログを担当することになったらしいので、どうやって残暑見舞いを作ったのか謎だね。(笑)

「Punishment(罰)」は1929年の作品。
膝のあたりから下だけが残されていて、とても怖いよ。
靴のサイズや雰囲気から推測すると、少年の足元じゃないかな。
立ったままなので、瞬時に吹き飛ばされてしまったように見える。
もしくは義足かもしれないね?
ハンス・ベルメールの作品か、四谷シモンが作っている途中の人形みたいだよ。
足元の荒れたレンガも効果的で、印象に残る作品だね。

「Draining of the Zuiderzee」は1930年の作品で、撮影地はオランダだって。
シュルレアリスムというよりはドキュメンタリーのジャンルになるのかな。
どうやらフランスでは1928年から1945年まで650号が刊行された「Vu(ヴュ)」というグラフ雑誌があったらしい。
アメリカの「ライフ」より先を行ってたんだね!
名だたる写真家の作品が掲載されていた雑誌で、エリ・ロタールも活躍していたんだとか。
まさに「決定的瞬間」を捉えてるよね!

年表の1929年にあったジョルジュ・バタイユ編集の雑誌に載ったのが左の作品。
「Aux abbatoirs de La Villette(ラ・ヴィレットの食肉処理場にて)」は、エリ・ロタールの代表作だね。
ジョルジュ・バタイユが「食肉処理場というのは宗教に所属する」と書いた、「ドキュマン第6号」の挿図として採用されたんだとか。
屠殺というのが、宗教的に供物と同義であるというのは理解できるね。
この作品は静寂と残酷さが共存していて、構図もバッチリで素晴らしい!
バタイユが絶賛したのも納得だよ。(何様のつもりだ?)
一番上に載せたのは、足部分のクローズ・アップ。
近づいて撮ったんだろうね。

「ラ・ヴィレットの食肉処理場」第3弾。
かなり生々しく、ぬめりまで感じられる作品だよね。
牛に見えるけど、パッと見た時には敬愛するデヴィッド・リンチ監督作品「イレイザーヘッド(原題:Eraserhead 1977年)」に登場する赤ん坊(通称スパイク)に似ていると思ってしまったSNAKEPIPE。
なんでもリンチに結びつけるのは悪いクセかも。(笑)
リンチといえば「6月5日に何かがやってくる」と謎のメッセージを動画で配信していて、気になってるんだよね!
一体どんなサプライズがあるのか楽しみに待っていよう。(笑)

今回はシュルレアリストの写真家、エリ・ロタールを特集してみたよ!
1920年代のアーティストについて調べると芋づる式に、様々な名前が登場してきてワクワクしちゃうね。
エリ・ロタールが関係していたアーティストも気になるので、調べてみよう。
SNAKEPIPEの勉強はまだまだ続くよ!(笑)

SNAKEPIPE MUSEUM #69 Benjamin Mackey

20240218 03
【ツイン・ピークスのタロットカードが秀逸!】

SNAKEPIPE WROTE:

SNAKEPIPEが仮想美術館に所蔵したいと思う作品を紹介するカテゴリー「SNAKEPIPE MUSEUM」の更新は久しぶりになるね。
今回は2017年9月に書いた「ビザール・TWIN PEAKS選手権!27回戦」に登場したBenjamin Mackeyを特集しよう!
読み方はベンジャミン・マッキーで良いのかな?
一番上に画像を載せたツイン・ピークスのタロットカードを作成したイラストレーターなんだよね。

ツイン・ピークスをこよなく愛していることが分かる、素晴らしいタロットカードだよ!

これ、本当に欲しいなあ!

こんな文章を載せているSNAKEPIPE。
タロットカード以外の作品を調べてみると、ベンジャミン・マッキーはSNAKEPIPE同様デヴィッド・リンチが大好きなことが分かる。
リンチをモデルにした作品に愛があるよね。(笑)
「ブルー・ベルベット」「イレイザー・ヘッド」や「ワイルド・アット・ハート」などほとんど全てのリンチの映画作品をポスターにしているんだよね。
恐らく「リンチ映画祭」のような企画のために描かれたみたい。
写実的というよりは、おどけた雰囲気の作品なので、ちょっともったいない感じがする。
ベンジャミン・マッキーだったら、もう少しスパイスの効いたポスターが作れたように思うけど?

この「ツイン・ピークス」のイラストは素晴らしいよね!
カイル・マクラクラン演じるクーパー捜査官を中央にして、シンメトリー構図になっている。
赤とブルーで2分割されているところがポイント!
ツイン・ピークスでは「ホワイト・ロッジ」と「ブラック・ロッジ」のように2つの世界があることが前提になっていたことを効果的に表現しているんだろうね。
テーブルの上に置かれたコーヒーとドーナツ、チェリーパイもファンにはたまらないよ!(笑)

「ピンク・フラミンゴ」の映画監督ジョン・ウォーターズを描いた作品もあったよ。
囚人服を着たジョン・ウォーターズが中央に立っているね。
手前にフラミンゴ、その後方にはディバインが見える。
そして右後方には映画「マルチプル・マニアックス」に出てきた巨大ザリガニ!
ベンジャミン・マッキーが好む題材は、SNAKEPIPEの嗜好と似てるみたいで嬉しいね。(笑)
ジョン・ウォーターズの映画は大昔に観たきりになっているので、再鑑賞したいよ。

カルト映画の代表作「ロッキー・ホラー・ショー」も描いているね。
通常は主役のティム・カリーを中心にすることが多いのに、ベンジャミン・マッキーはメガネの男を手前にしているところが珍しい。
何か特別な思い入れがあるのかも。(笑)
SNAKEPIPEは、強烈な個性があるティム・カリーがポスターになっているほうが好みだけどね!
色合いがとても美しい作品なので、ちょっと残念。

2007年4月に書いた「インダスとリアル(意味不明)」に、SNAKEPIPEが装飾を施したトイレの画像が載っている。
ポストカードを壁に貼って、小さな美術館のようにしていたんだよね!
その中の1枚に1968年のアメリカ映画「The Mini-Skirt Mob」(画像左)があったことを思い出す。
ベンジャミン・マッキーは、そのポスターのパロディ版「MONDO MONDAYS」を描いているんだね。
骸骨のポーズはほとんど同じだけれど、細かい点が描き直されていて「間違い探し」をするように見比べるのも楽しい!

大友克洋の「アキラ」もパロディになっているよ!
こちらも「Mini-Skirt〜」同様、構図は踏襲しながらも描き直されているんだね。
血のスープや人肉ミンチを作るシーンなので、ホラー映画のためのポスターだったのかもしれないね?
結構グロい。(笑)
ベンジャミン・マッキー日本文化にも興味があるようで、ウルトラマンの怪獣もシリーズとして描いているよ。
親近感が湧くね!

2022年1月に国立映画アーカイブで鑑賞した「MONDO 映画ポスターアートの最前線」も、似た傾向の作品が展示されていたね。
現役のイラストレーターが独自視点で切り取ったシーンを描いていて、興味深い展覧会だった。
もしかしたらベンジャミン・マッキーも展示されていたかもしれない、と調べてみたけれど名前はなかったよ。

雑誌や映画のフリーランス・イラストレーターとして活動しているベンジャミン・マッキー。
作成年ごとに作品をアップしているようだけど、2015年から観ていくと、どんどん失速しているように感じる。
ベンジャミン・マッキーには、トップに載せたツイン・ピークスのタロットで見せてくれたようなセンスがある作品を描き続けて欲しいと思う。
やっぱりあのタロット、買うべきだったなあ。(笑)

SNAKEPIPE MUSEUM #68 Kirsten Stingle

20231001 11
【まるで仏像のような彫刻だね!】

SNAKEPIPE WROTE:

今回のSNAKEPIPE MUSEUMは、Kirsten Stingleという女流彫刻家を特集してみよう。
読み方はキルスティン・スティングルで良いのかな?
コロンビア大学演劇学部を卒業していて2児の母親、というくらいの情報しか確認することができなかったよ。
演劇からどうして彫刻の道を目指すことになったのかなどは不明なんだよね。
作品に興味を持ったから、他に知らなくても良いのかな。(笑)

一番最初に目にしたのがこちらの作品。
特にタイトルがついているわけではないようで、スティングルのサイトには画像Noしか載っていなかったよ。
頭に針(?)を刺した「おどけた」表情の左の女性を見て、笑っているような右の女性。
双生児のようにも見える繋がった体も気になるよね。
秀ちゃん吉ちゃん(孤島の鬼)と思ってしまうよ。(笑)
他の作品を調べてみたいと思ったきっかけになったよ!

「Awakening(覚醒)」と題された作品。
頭に載っているのはサボテン?
口にも痛そうなトゲトゲが入っているよね。
しかめっ面をする女性。
上の作品でも感じたけれど、スティングルの内面を表しているのかもしれないね。
拷問を受けているような苦しい表情、筋がたった首筋などは、直視するのをはばかるほど。
SNAKEPIPEが、自分の内面と重ねて見てしまうのかもしれないなあ。(笑)

年代物の陶器ですよ、と言われたら信じてしまいそうな古めかしい印象の作品だよね。
箱の中に入っているのはサーカスの団員かな。
箱の作品というと、ジョセフ・コーネルを思い出すね。
人形を操っているような手付きの女性はバレリーナ?
オルゴールの音色が似合いそうな雰囲気だよね。
美しさにシュールが加わって、とても好きな作品だよ!

こちらもダブル・イメージの作品なのかな。
本体と内面みたいな区分けと解釈するのは陳腐かもしれない。
手足をもぎ取られ、空を見つめる本体と、無表情な操り人形の組み合わせだから、そう感じてしまうのも無理はないよね。
ところがスティングル御本人の画像を見ると、「私はいつでもハッピー!」といった感じで明るく笑っているんだよね。
こうした内省的な作品を制作するようなタイプには見えないなあ。
人は見かけによらない、のかな。

この作品を観て、合田佐和子の「イトルビ」を思い出したSNAKEPIPE。
こんなブローチがあったら欲しいよ!
「イトルビ」も欲しいと言ってたっけ。(笑)
ブルーが垂れている、フランスの貴族みたいな帽子かぶってる真ん中のがいいなー!
勝手に「ミッシェル」と名前付けたくなるね。
何故ミッシェル?(笑)

「Journey Through Wonderland(不思議の国の旅)」というタイトルはピンとこないけれど、作品はとても素敵だね。
不気味で可愛い、相反するイメージが混ざり合っているよ。
この女性もサーカス団員、もしくはバニーガール?
骨のトナカイに引いてもらって行く先はどこだろう。
この作品から物語を作ってみたくなるね。

頭に刺さっているのはネジ?
キリキリとハンドルを回すと、ネジが少しずつ頭部に埋もれていく。
逆回しにして、ネジを抜いているところかもしれない。
周りに飛んでいるのは蝶なのかな。
この作品からイメージしたのは「ライ麦畑でつかまえて」だよ。
頭の中がお花畑みたいって思ったからね。

スティングルの作品を間近で鑑賞してみたいね。
そこまで小さな作品ではないようなので、細部までじっくり観たいよ。
会場はヴァニラ画廊でお願いします!(笑)

SNAKEPIPE MUSEUM #67 Jane Windsor

20230813 03
【黒魔術を連想させる作品だね】

SNAKEPIPE WROTE:

今回のSNAKEPIPE MUSEUMは、Jane Windsorというコラージュ・アーティストについて特集してみよう。
読み方はジェーン・ウィンザーで良いのかな?
カナダで生まれ、ネバダ州の田舎で育ち、現在オレゴン州ポートランドに住んでいること程度の情報しか手に入らなかったよ。
グループ展や個展も開催しているようだけど、2019年頃から活動を始めているみたい。
もしかしたら若い女性なのかもね?

最初に目にしたのが「Maneater」と題された作品。
「マンイーター」と聞いて、80年代にヒットしたホール&オーツの曲を思い出してしまった、あなた!
SNAKEPIPEも同じだから!(笑)
作品に話を戻すと、顔は人間、体はライオン(?)で鳩の羽(?)が生えているキマイラのような生物が、微笑みながら男性の首を弄んでいる。
残酷なシーンなのに、美しく咲いた黄色いバラが周囲を彩っているんだよね。
この作品を観て、興味が湧いたよ。
まさかこの作品が、切り抜いた紙を貼り付けた、ダダさながらの手法で作成されたとは思わなかったよ!

双頭の白鳥のバックには、心臓モチーフと十字のマーク。
蓮の花のような台座に、棘のあるイバラを組み合わせ、バランスの良い構図だよね。
四隅には「北部」「南部」と書いてあるので、どこでどんな星座が見られるのかを教えてくれる星座早見表みたいだよ。
SNAKEPIPEの勝手な想像では、十字軍が位置を確認するために携帯していたようなイメージ。(笑)

「黒蜥蜴」ならぬ、「黒サソリ」なのかな?
えっ、まさかロブスターじゃないよね。
こうして提示されるとどちらなのか判断し難いことが分かって、驚き!
ジェーンの作風としては「サソリ」で間違いないはずだけどね。
美しい皿に盛り付けられた料理のように見えてしまったのが原因かも。(笑)
毒々しいモチーフを美しくまとめるセンスが素晴らしいよ。
赤と黒が入ると、アジアっぽい印象も受けるよね。

「頭痛」と題されたこちらの作品、ジェーンのサイトで販売されてるんだよね!
大きさは8×10インチなので、A4より少し小さめかな。
すぐに取り付けられる額入りで、お値段は$350、日本円で約4万円ほど。
紙を切り貼りして作成したなら、一点ものなんだろうね。
ゴシックや中世好きなら手に入れたいはず!

最後は「なぞなぞを聞いて」と題された作品にしよう。
「マンイーター」のように、下半身がライオンで天使のような羽を持つ慈悲深そうな女性。
手にしているのは金色のティアラを着けた首!
周りにいくつもの髑髏があるので、今までも同じ光景が繰り広げられたようじゃない?
「なぞなぞ」を語っているのは、首になのかネズミに対してなのかわからないね。
ちなみにこの作品、$350から値下げして$200になったところで売れたみたい。
好みの作品がお手頃価格になったら嬉しいよね!(笑)

美しさと残酷が同居している、ダーク・アートはSNAKEPIPEの好み!
ジェーンは紙を実際に切り貼りして作品制作しているらしいので、どこから素材を調達しているのか気になるよ。
2019年に東京都庭園美術館で鑑賞した「岡上淑子展」では、1950年代の「ハーパース・バザー」などの雑誌を切り取ってコラージュしてたと記憶している。
ジェーンは一体どこからインスピレーションを得ているんだろうね。
今後の活躍に期待だよ!