【TOHOシネマズの看板を撮影】
SNAKEPIPE WROTE:
スペインの映画監督であるペドロ・アルモドバルの新作が発表されるニュースを知ったのは、随分前のことだ。
映画のタイトルは「ペイン・アンド・グローリー (原題:Dolor y gloria)」。
ROCKHURRAHが教えてくれた情報によると、アルモドバル監督の常連である俳優、アントニオ・バンデラスやペネロペ・クルスも出演するとのこと。
2019年9月、アルモドバル監督プロデュースの映画「永遠に僕のもの」の感想をまとめた時にも新作映画のトレイラーを載せていたっけ。
公開日がいつになるのか、ROCKHURRAHと心待ちにしていたのである。
ところが…。
新型コロナウイルスの影響により、美術館や映画館は予定の公開を見合わせたり延期することになった。
コロナ以前には映画や展覧会情報を定期的に集め、鑑賞の計画を立てるのが日常だったけれど、そうした習慣が叶わなくなってしまった。
アルモドバルの新作についての情報を集めることも失念していたSNAKEPIPEとROCKHURRAH。
2周間前に「森山大道の東京 ongoing」の中で、約半年ぶりに長年来の友人Mに会ったことを書いた。
情報通の友人Mから「そういえばアルモドバル、始まったね」 という発言があった。
なんと!
情報検索を忘れている間に、いつの間にか公開日が決定していたとは!
ありがとう、友人M。
早速、ROCKHURRAHと映画鑑賞の日取りを決めたのである。
アルモドバル作品を劇場で観るのは、今回が2回目だ。
前回は「アイム・ソー・エキサイテッド!」だったので、今から6年も前のことになるんだね。
実は2016年に「ジュリエッタ」が公開されているけれど、劇場には足を運んでいない。
DVDになってから鑑賞していたことを思い出したよ。(笑)
アルモドバル監督作品のコンプリートを目指しているので、この作品もブログにまとめないとね!
「ペイン・アンド・グローリー」を観るのに選んだのは日比谷のTOHOシネマズ。
ここは2019年12月に「パラサイト 半地下の家族」鑑賞のために訪れていて、「恐らくどのシートに座っても、快適に映画が楽しめそう」と感想を書いているSNAKEPIPE。
いつ雨が降ってもおかしくない曇天の中、ROCKHURRAHと共に出かけたのである。
電車の遅延が発生し、予定より少し遅れて日比谷に到着。
上映されるスクリーンによってフロアが異なっているようで、予約したチケットを発券しようとしても「予約なし」という画面しか出てこない!
フロアが違うのか、と4Fに上がって作業を繰り返すも結果は同じ。
チケット販売の係に問い合わせると
「こちらはTOHOシネマズ シャンテのチケットで当TOHOシネマズ日比谷ではございません」
ときっぱり言われてしまうではないの!
がーん!
日比谷にTOHOシネマズが2つあるんだよね。
間違った方に行ってしまい、慌ててエスカレーターを降りる。
この時点でROCKHURRAHと共に小走りになり、東京ミッドタウン日比谷を出る。
出る間際にいた係員に「TOHOシネマズ シャンテはゴジラの後ろの建物」と教えてもらい、走って行く。
電車で遅延した時間、劇場を間違えた時間が悔やまれる。
無事に上映開始時間には間に合ったけれど、2人とも汗だく!
次回日比谷のTOHOシネマズに行く時には、ちゃんと調べてからにしようね。(笑)
案内役が遂行できなくて、ROCKHURRAHに「ごめんなさい」だよ。
2014年にも「マチェーテ・キルズ」鑑賞の時、チケット予約の日にちを間違えるという大失態があったよ、とROCKHURRAHから指摘が!
全然学習してないなあ。
重ね重ね、本当にごめんなさい!
前振りが非常に長くなってしまったけれど、話を戻して。
「ペイン・アンド・グローリー」のトレイラー(日本バージョン)を載せようか。
続いてあらすじを紹介しよう。
脊椎の痛みから生きがいを見出せなくなった世界的映画監督サルバドールは、心身ともに疲れ、引退同然の生活を余儀なくされていた。
そんななか、昔の自分をよく回想するようになる。
子供時代と母親、その頃移り住んだバレンシアの村での出来事、マドリッドでの恋と破局。
その痛みは今も消えることなく残っていた。
そんなとき32年前に撮った作品の上映依頼が届く。
思わぬ再会が心を閉ざしていた彼を過去へと翻らせる。
そして記憶のたどり着いた先には・・・。 ( 公式サイトより)
それでは感想を書いていこう。
ネタバレしないように書いているつもりですが、未鑑賞の方はご注意ください。
「ペイン・アンド・グローリー」の主役、サルバドールを演じるアントニオ・バンデラス。
あらすじにもあるように映画監督なんだよね。
これはもうアルモドバルの分身と言って良い設定だよ。
予告で観た時には「老けたなあ」なんて思ってしまったけれど、年齢なりの魅力が増しているのが分かる。
グリーンのレザー・ジャケットをさりげなく着こなしたりして、「ちょい悪オヤジ」系ファッションが良く似合うこと。(笑)
バンデラスがアルモドバル監督作品で主役を務めるのは「私が、生きる肌 (原題:a piel que habito 2011年)」以来じゃないかな?
収まるところに収まったような、非常にしっくりくるキャスティングで、観ていて安心感があった。
そしてバンデラスの演技も、自然でとても良かったね!
ペネロペ・クルスも「しっくりくる」女優の一人。
アルモドバル監督作品では「ボルベール」で主役を務めていたことで有名かな?
「ペイン・アンド・グローリー」では、少年時代のサルバドールの母親役だった。
貧しい暮らしぶりだったため、華やかな衣装に身を包むことはなく、どちらかというといつもイライラしている役どころ。
それでもペネロペの美貌は健在で、現在46歳だけれど老けた感じはなかったよ。
セシリア・ロスもアルモドバル監督作品の常連。
「アイム・ソー・エキサイテッド!」ではSMの女王役だったよね。
「ペイン・アンド・グローリー」では、冒頭にちょっとだけ出演していたけれど、存在感は抜群!
サルバドール監督作品にかつて出演したことがある女優、という役どころ。
サルバドールをアルモドバルに置き換えても、全く問題ないよね。(笑)
フエリタ・セラーノも、アルモドバル監督作品でお馴染みの女優だね。
「バチ当たり修道院の最期 (原題:Entre tinieblas 1983年)」から出演しているので、相当長いお付き合いだよ。
リンクを貼った「バチ当たり〜」についての感想に、若き日のフリエタの画像があるので、見てみてね!
御年87歳だけれど、そこまで老けてなかったフリエタ。
サルバドールの母親役がぴったりだったよ!
少年時代のサルバドールが座って読書をしている。
あらすじにある「バレンシアの村での出来事」のワンシーンなんだよね。
この時点では意識していなかったようだけど、恐らく白いタンクトップの青年に出会ったことが同性愛者であることを自覚する引き金になったようだよ。
そしてこの子供時代のエピソードが、アルモドバルの自伝的映画「バッド・エデュケーション (原題:La Mala Educación 2004年) 」以前の物語なんだろうな。
「ペイン・アンド・グローリー」で神学校に推薦されることになっていたからね。
あらすじにあった「マドリッドでの恋と破局」の相手がフェデリコ。
演じているのは、アルゼンチン俳優レオナルド・スバラーリャ。
出演作を調べていたら鑑賞している作品が何本かあったよ。
バンデラスと並ぶと2人が似ていて分からなくなることがあったので、服の色で区別していたSNAKEPIPE。
皆様もお気を付けください。(笑)
32年前のサルバドール作品に出演し、仲違いしていた俳優のアルベルト。
セリフを勝手に変えたことが原因だったらしいけれど、実際の映画制作現場でもありそうな話だよね。
アルベルトを演じたのは、アシエル・エチェアンディア。
カッとしやすい雰囲気がとても上手だったよね。
そして画像で着用しているレザー・ジャケットがオシャレ!
バンデラスが着ているグリーンのジャケットもそうなんだけど、こちらのスタッズ付きジャケットも販売されているんだよね。
映画を元に作ったんじゃないかな?
因みにスタッズ付きは$179、日本円で約19,000円だって。
お買い得かも?(笑)
過去における3つのペインが上述した3人の男たちとの関係なんだよね。
そして身体には脊椎の痛みもあるサルバドール。
サルバドールを癒やしてくれるのはアート作品だったのかもしれない。
アルモドバルの作品には、今までにも数々のアートが登場してきたよね。
まるで美術館のようなサルバドールのコレクションを紹介してみようか。
上の画像で右端にチラリと見えている絵画。
Sigfrido Martín Begué、シグフリド・マルティン・ベゲと読んで良いのか?
読み方違ってたら教えてください!
そのカタカナで検索してみたところ、日本のサイトで情報は得られなかったよ。
1959年マドリッド生まれのシュールレアリズムや未来派の絵画を描いていた画家だという。
これは「El olfato Santa Casilda」(サンタ・カシルダの香り)というタイトルで1986年の作品とのこと。
シチュエーションがよく分からないけれど、大きな絵画でインパクトがあったよ。
Maruja Mallo、マルーハ・マロは1920年代のスペインの画家だという。
スペインでの呼び方なのか「1927年の世代」と言われるアーティストの一人なんだって。
よくゴルフなどで同年代にキャリアをスタートさせた大型新人グループを、「黄金世代」と呼ぶことがあるけれど似た感じなのかな?
マルーハ・マロは女流画家でダリ、マグリット、エルンストやミロといった錚々たるメンバーの仲間だったらしいのに、SNAKEPIPEは初めて名前を知ったよ。
教えてくれてありがとう、アルモドバル!(笑)
バンデラス演じる主役の名前がサルバドール・マロなのは、マルーハと関係があるのかもしれないね?
「El racimo de uvas」(ぶどうの房)は1944年の作品だという。
シンメトリーの構図で、一粒一粒の輝きが美しい。
左右で光の当たり方が違うところが人の運命のようにを感じてしまうのは陳腐な感想だろうか?
リビングに飾られていたのはGuillermo Pérez Villalta、ギレルモ・ペレス・ビジャルタの作品。ビジャルタは1948年生まれの画家、彫刻家、デザイナーだという。
1949年生まれのアルモドバルとはまさに同世代のアーティストだね。
この作品は「Artista viendo un libro de arte」(アーティストがアートブックを閲覧)とのこと。
まるで着物のように見える衣装を身に着けたのっぺらぼうの人物。
2次元と3次元が混ざりあったような不思議な空間は、昼なのか夜なのかも判別できない。
本当に画集を観ているのだろうか?
とても奇妙な絵画に見えるけれど、アルモドバルはどんな感想を持っているのかな。
「ペイン・アンド・グローリー」はアルモドバルの自伝的映画とのことで、私物を多く使用したらしい。
アート作品以外にも家具や食器など、心から愛している物を登場させることでリアリティを出したかったんだろうね。
アルモドバルの感性に触れることができて、「あの部屋に行ってみたい!」と思ったSNAKEPIPEだよ。
アルモドバルは今年で70歳。
人生の終盤にさしかかり、過去の振り返りを行っているのかもしれない。
そしてその時々で心に深く刻まれた印象的な出来事を映像化しているのかな。
そうしたペインがあるからこそ、今のアルモドバルがあり監督として成功しているという意味のタイトルなのか。
ちょっと短絡的かな?(笑)
2019年のカンヌ国際映画祭でパルム・ドール、 2020年のアカデミー賞国際映画賞も獲ったのは、ポン・ジュノ監督の「パラサイト」だったけれど、アルモドバルもノミネートされてたんだよね。
どちらかの賞はアルモドバルだったんじゃないかな、と思ってしまったSNAKEPIPE。
いつの日かアルモドバルにもパルム・ドールなどのグローリー獲って欲しいよね。
まさに「GET THE GLORY!」だよ。(笑)
次回作も楽しみに待っていよう!