ポール・ジャクレー フランス人が挑んだ新版画 鑑賞

20230611 top
【太田記念美術館前の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

太田記念美術館で開催されている「ポール・ジャクレー フランス人が挑んだ新版画」が気になる、とROCKHURRAHが言う。
フランス人の浮世絵ってどういうことだろうね?
ポール・ジャクレーという名前も初めて聞くよ。
まずは経歴を調べてみよう。

1896 パリに生まれる
1899 3歳の時に来日
1907 若礼(ジャクレー)という号で日本画を学ぶ
1929- 毎年南洋諸島に滞在
1934 若礼版画研究所を設立
1945 長野県軽井沢に疎開
1960 糖尿病により死去

明治29年にジャクレーの父親がフランス語の教師として来日して、その後母親と一緒に来日してるんだね。
一時フランスに帰国したようだけど、生涯を日本で過ごしたフランス人なんだって。
日本語はもちろんのこと、書道や音楽、ダンスなどの日本文化を習い、浮世絵と同じ技法で木版画を制作したという。
ジャクレーが着物姿でポーズを取っている画像を見ると、日本文化に慣れ親しんでいる様子がよく分かるよね!
フランス人が手掛けた浮世絵、確かに気になるよ。

6月なのに青空が広がる暑い日、ROCKHURRAHと一緒に原宿に向かう。
表参道駅は先月出かけたけれど、JRの原宿駅を使うのは本当に久しぶりかも。
2人とも若い頃から馴染んでいる場所なので、全く迷わずに太田記念美術館に到着。(笑)
早速会場の中へ。
そこまで多くはなかったけれど、そこそこお客さんが入っていた。
一人で来ている人がほとんどだったので、静かに鑑賞することができたのが良かったよ!
作品の感想をまとめていこう。
太田記念美術館では撮影が禁止されていて残念だった。
載せた画像はSNAKEPIPEの手によるものではないので、ご了承ください!

作品を目にした途端「キレイ!」と感嘆の声が出る。
南方の女性を描いた画家といえばゴーギャンが有名だよね。
ありのままの、野性味溢れる生命体として被写体を捉えたゴーギャンに対して、ジャクレーの作品には優美さが漂う。
浮世絵の大首絵みたいに、人物を大きく描いて背景には手を加えていないんだよね。
なんとも言えない中間色の美しさ。
版画作品でこんな色を観たのは初めてかも。

横座りしている女性が眺めているのは極楽鳥だという。
赤いターバンの布と鳥が呼応していて、見事な構図。
優雅な極楽鳥を間近で鑑賞できるなんて、羨ましいね!
上の女性たちも同様だけど、身につけている服の模様が細かく表現されていて、異国情緒をより一層感じさせるよ。
昭和初期に毎年海外を訪れ、水彩画を描いていたというジャクレー。
その絵を基に版画にしていたという。
モデルになった島の女性たちが、これらの作品を目にしたら喜ぶだろうね。(笑)

ジャクレーが男性をモデルにした作品もあるんだよね。
左は人形を手にしている中国の少年。
背景の黄色、敷物の赤、青い着物というくっきりした色使い。
背景を細かく描きこまないのに、ぽっくりを履いた人形や横に置かれた装身具は細かく描写されているよ。
右はモンゴルの王族が鷹狩りをしている様子だって。
すでに鳥やうさぎを仕留めていて、優秀な鷹のようだね。
モンゴル王族の着衣はもちろん、鷹や帽子についた孔雀の羽がいかにも日本画らしくて素晴らしい!
ジャクレーの作品を鑑賞すると、海外旅行に行った気分になっただろうね。

左は、真珠の飾りを頭に着けた満州の婦人だって。
とても裕福な身分なのか、身につけているもの全てゴージャスじゃない?
中でもSNAKEPIPEの目に留まったのは、薬指と小指につけた装身具。
これは「指甲套(しこうとう)」と呼ばれるアクセサリーで、身分の高さを表していたんだとか。
薄い絹から見える表情に貫禄があるよね!
右は陶磁に腰掛ける中国旧家の上流婦人だという。
タイトルを知らなかったら、男性に見えてしまうね。
まるで花輪和一が描いた漫画みたいな顔立ち、とROCKHURRAHとひそひそ話す。
もしかしたらジャクレーからの影響を受けたかもしれないよね?

今回の展覧会で最も惹かれたのが「満州宮廷の王女たち」という連作だよ!
日本の浮世絵では通常の場合、多くても20回の摺りで完成させるらしいけれど、「満州宮廷の王女たち」は223回摺っているんだって!
摺りが少ない作品でも113回だというから驚いてしまう。
これほど回数を重ねた理由は「色を出すため」だったというから、ジャクレーの美意識の高さが良く分かるよね。
ジャクレーには彫師と摺師がいて、摺師の談話によれば摺ることは問題ないけれど、色が難しかったらしい。
SNAKEPIPEが驚くのは、そこまで摺っても問題ない和紙があったこと。
特別注文していたらしいけど、ジャクレーの絵師としての才能以外にも、材料やスタッフの存在全てが噛み合って、唯一無二の作品が完成したんだね!

細やかな絵とビビッドな中間色は、豪華絢爛で華やかだった。
ジャクレーの作品は、アメリカ人が好んで買い求めたというエピソードも納得だよ。
東洋の神秘という言葉通りの、エキゾチックで極彩色の世界を独り占めできるんだもんね。(笑)

印刷やインターネット画像では色が違っていて、実物のほうがくっきりしていて鮮やかだったよ。
今まで知らなかったジャクレーの世界を観られて良かった!
教えてくれたROCKHURRAHに感謝だね。

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