春色ジャケット大特集(なわけない)

【ROCKHURRAH制作の意味不明なレコード・ジャケット】

ROCKHURRAH WROTE:

短い2月も最終日、先週などは最高気温18℃以上などという日もあり、すっかり春らしくなってしまったな。前にブログで「夏嫌い」と書いた(「マルワランド・ドライブ」参照)ROCKHURRAHだが風が強くて寒いのか暑いのかハッキリしない、花粉の舞い散るこの春という季節も大嫌いなのだった。大好きな革パンもムートンも防寒フライトジャケットもまた晩秋までおあずけになってしまうしなあ。
とにかく春物なんてあまり持ってないから毎日が楽しくない。
しかし世間は着実に春物になってゆくだろうし、春らしいカラフルな服も出回っている。そこで思いついたのが今回のテーマ、レコード(またはCD)ジャケットに使われるさまざまな色について。しかし毎回このブログ読んで下さる方にはおなじみだけど、相変わらず何も考察はしない、思いつきだけの浅はかな記事になるに違いない。またまた相変わらずだけど世の中に出回ってるレコード・ジャケットではなくて、あくまで個人的な持ち物だけを語るから実はあまり色のヴァリエーションもなかったんだよね。しかもやっぱり音楽全体ではなく70〜80年代のパンク、ニュー・ウェイブのみ。こんなんだけで商いやってて飽きない?と聞かれそう。

赤とか黄色とかでも細かいニュアンスの違いが言葉ではわかりにくいので今回はこういう色見本みたいなの用意してみた。見る人の環境によっても随分違うだろうなあ。さらに今回の青色リンク文字はジャケットが拡大するので、記事と一緒に見てね。


まずはもしかしたら最も多いかも知れないこの白黒の基本的な組み合わせ。
季節に関係なくこれを基本カラーにしている人も多い事だろう。
この色合いで最も印象深かったのはやはり70年代後半から80年までの変革期に活躍したジョイ・ディヴィジョンだろうか。少なくとも自分の中では真っ先に思い出される。とにかく最もありふれた色だから思いつくと言えばいくらでも出てくるだろう。例えば同時期のバウハウスなども白黒を基調としたイメージなんだけど、1stが黒白、2ndが白黒というジョイ・ディヴィジョンの方が明確。曲の方も多少ヴァリエーション豊富なバウハウスに比べて完璧なモノトーンであり、ポップな曲も難解で理解不可能な曲もない。あまり演奏力のあるバンドではなかったからというのもあるがシンプルこの上ない音楽。ムダなものは一切なし。
タイトルがそのものズバリ「Black And White」というストラングラーズの3rdアルバムもこの配色の代表的なものだろう。彼らのアルバムでどれを好きかと聞かれれば即座にこの作品を挙げる人も多いはず。ホワイトサイドが比較的聴きやすくてブラックサイドが実験的、とかそんな事はどうでもいいくらいに、もうストラングラーズにしか出せない音が高密度で詰まっている。「Tank」や「Sweden」といった攻撃的な音楽に痺れて、ピストルズやクラッシュよりも聴き狂っていた時期もあった。


個人的に白い服が苦手で最も似合わない色だと思えるROCKHURRAHはむしろこのような色合いのコーディネートの方が好きだ。チャコールグレーに朱色とでも言うべきか?このシックな色をジャケットに使ったのがオランダのメカノというバンドだ。と言ってもこのジャケットのは再発盤らしい。
メカノというのは穴がたくさん開いた金属製の板をボルトやネジで組み合わせて好きな形に作る欧州発のおもちゃなんだが、我が家もコーナンで買ったスチールラックを所狭しと合体させた大型メカノと言えなくもないようなやや奇妙な部屋作りを基本としてるので、メカノ好きの心情もよくわかる。メカノの実物を見た事ないSNAKEPIPEもあればきっと珍妙なオブジェを作るはず。
その本物のメカノは置いといて、これはディック・ポラックという人物を中心としたオランダのニュー・ウェイブ・バンド、メカノの話。やはりまたジョイ・ディヴィジョン以降・・・と呼ばれるようなモノトーンな音作りのバンドに属する。しかしレコード・ジャケットの単調さとは裏腹に意外とダイナミックでスケールが大きな音楽を展開していて、ジョイ・ディヴィジョンというよりはむしろニュー・ウェイブ世代のドアーズとかに近い雰囲気がたまらない。どう考えても影響受けてないように感じるけどなぜか偶然、後の世代のスカコアとかを思わせる速い曲も80年代前半にやっていて侮れない。ROCKHURRAHは所有してない作品が多いがオリジナル盤は前述のおもちゃ、メカノをコラージュしたようなちょっとシュールでかわいいジャケットも魅力。スペインかどこかに似ても似つかぬラテン系ポップス・バンドのメカノが存在してるので要注意。


この色を見た瞬間にわかる人は絶対にわかる。そう、それは70年代後半に登場したディス・ヒートの1stアルバムで有名な配色だ。
レコード盤に針を落とすとモールス信号のような音がいきなり始まる。「何じゃこりゃ?レベル低いな」と思い音量を上げるとその直後にこれまで聴いた事のないような不協轟音(貧困な語彙力でごめん)が突然襲ってきて飛び上がるという寸法。伝説となった「Horizontal Hold」のイントロだ。
個人的にはロック史上で衝撃的だったイントロのベスト3に入るだろう。一般的なノイズ・ミュージックとは全然違うし歌もわずかだし、この後の展開も眠くなる人続出だから万人には決してオススメ出来ないし興味本位で買ってはなりませぬ。



世界的に著名な配色、この色と言えば誰でも連想するセックス・ピストルズの伝説的名盤「Never Mind The Bollocks」で決まりだろう。と思ったがあまりにも有名なので何も書けない。なので世間的には格段にマイナーと思われるペル・ユビュのこのジャケットを挙げたい。同じピンクx黄色でも若干色合いが違うだけで随分印象が変わるもんだ。
アメリカのオハイオ州クリーブランド出身のRocket From The Tombs、知ってる人も多いだろうがこれがデッド・ボーイズとペル・ユビュの母体となったバンドだ。
70年代当時のニューヨーク・パンクとは一線を画する派手なアクションとロンドン・パンクに近いルックスで人気だったデッド・ボーイズとデブ・ヴォーカリストによるノイジーでアヴァンギャルドな音楽性のペル・ユビュが同じルーツだというのも意外だな。
本作はペル・ユビュの入手困難な初期のシングルを収録した再発もので、素っ頓狂とも言えるデヴィッド・トーマスのヴォーカルが英国の渾沌音楽と比べるとよりギリギリ感に溢れていて好きな人には堪らない。


上に挙げたペル・ユビュの1stアルバムは工場地帯をバックに工場労働者がバレエを踊っているという奇妙なものだったが、このDAFの1stアルバムも機械そのものの中にいるプリマドンナという不思議に一致したコンセプトのもの。デザイン的に大好きなタイプのジャケットだ。
DAFと言えば男二人のちょいマッチョで単調なエレクトリック・ボディ・ミュージックの元祖というイメージがあるが、この1stではまだそういうスタイルにはなってなくてフリー・スタイルかつアヴァンギャルドなインストのバンドだった。曲目クレジットも何もなくて細切れのような演奏の断片がコラージュされている本作はニュー・ウェイブが「変な音楽デビュー」という若輩には理解が困難。これはジャーマン・クラウト・ロックの難解な音楽の延長線だと考えればそれほど遠いものではないかな。どちらにしても今回の記事はたかがロックだけど万人受けしない系統の音楽(最後の2つ除く)が多いので色々な音楽を聴きまくった後で辿り着いてね。


同じドイツつながりでAbwartsのこの派手なジャケットのアルバムも紹介しよう。アプヴェルツと読むのか?読めん。無学のROCKHURRAHはアブワルツと長年読んでいたよ。赤と黄色に黒が入ればドイツの国旗だね。ジャケットのイラストも戦争風?
アインシュタルツェンデ・ノイバウテンのF.M.アインハルトとマーク・チャンが在籍していた事でも知られるバンド。ジャケットはカラフルだが音の方はちょっと実験的風味も持たせたパンク・バンドという事になるのかね。随分前に売れてしまったので記憶もあやふや、あまり詳しくないのでアッサリしたコメントでごめん。今風の略語にするとアサコメ(意味不明)。


続いてはオレンジとレモンイエローのきれいなジャケット。英国リーズ出身の長い経歴を誇るメコンズのシングルだ。
70年代パンク・バンド達とほぼ同じ頃のスタートでずっとやってるというから驚きじゃありませんか。80年くらいから85年くらいの作品しか知らないが明るくも暗くもなく、何だかわからんくらいに抑揚のない音楽やってて個人的にはこのバンドの面白みとか良さが全くわからない(笑)。「んなもん紹介すんなよ」と言われてしまうけど、今回はあくまでジャケットの色についてのみなので。と言うか色についてもあまり語ってないな。


赤x黄に加えてターコイズ・ブルーのような色を組み合わせた三色使いはリヴァプール出身のワー!ヒート、79年作2ndシングルだ。知ってる人は知ってるけど知らない人も数多いバンドなんだが、元々はエコー&ザ・バニーメンのイアン・マカラック、ティアドロップ・エクスプローズのジュリアン・コープと共にクルーシャル・スリーという世に出なかったバンドをやっていたピート・ワイリーによるバンドだ。この人は同じリヴァプールのピート・バーンズ(後のデッド・オア・アライブ)ともバンドやってて、これほど有名人と共演したにも関わらず日本ではほとんど無名というのも珍しいほど不運なタイプ。
詳しくも書いてはいないけど過去記事「リヴァプール御三家編」も参照してみてね。ワー!という冠名だけ同じでバンド名を次々に変えてゆき、それによって音楽性も大きく変わるという柔軟かつ不可解なスタイルで一部有名。この曲はワー!の中でも最もドラマティックでエモーショナルな傑作。アルバムとはヴァージョンも違ってこちらの方が恰好良い。


いわゆるラスタ・カラー+紫というこの組み合わせは非常に有名なXTCの3rdアルバムより。大きく描いたXTCという文字が顔になってるというところが当時斬新だった、という程でもないか。
「Making Plans For Nigel」などヒット曲も入っていてこれまでにないポップな出来の本作は彼らにとって出世作となったわけだけれど、その前の二作のような勢いと若気の至りがなくなってROCKHURRAHとしてはもの足りないアルバムだ。やっぱり今聴いても元気になれるのは1stであり「Radios In Motion」であり、この後のポップ職人芸みたいな上級の完成度は個人的に求めてないのだ。リュースケ・ミナミならこの気持ちわかってもらえよう。


何だこの色合いは?横に並べるとかなり品がないぞ。がしかし色使いはアレだがこのジャケットは妙に大好きなブラム・チャイコフスキーの1stアルバム。絵の感覚はほとんど文化屋雑貨店か宇宙百貨か大中か、というより駄菓子屋のメンコ、軍人将棋のパッケージ?どれもこれも今の子供には通じない世界かも、というのが悲しいがこのレトロなジャケットで想像したような音楽とは全然違った極上のパワーポップ職人芸が本作だ。
元モーターズという以外には日本でほとんど知られてなかったブラム・チャイコフスキーだがこの時代にジャケ買いした人はみんなラッキーだったと言える。

まあそんなこんなで書いてる文章も本店オンライン・ショップのコメントと大差ないし「ジャケットの色で性格占い」などという興味深い記事にもならなかった。特に春らしい色も選んでないからタイトル通りかな。ただひとつ、ROCKHURRAHが全く身につけない黄色という色をレコード・ジャケットとしては案外好んでいるという隠れた傾向がわかっただけ。カラー・コーディネイト大好きなSNAKEPIPEにこういう記事書いて欲しかったよ。ではまた来週。

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