ふたりのイエスタデイ chapter16 /The Monochrome set

20190224 yop
【SNAKEPIPEが聴き込んだ一枚】

SNAKEPIPE WROTE:

SNAKEPIPEは夢を覚えていることが多い。
先日見たのは、三島由紀夫が登場する夢だったっけ。
SNAKEPIPEは撮影のための小道具を準備する役割を担っていて、何故だか三島由紀夫に藁で編んだ褌を用意しているんだよね。
藁を編むのが難しくて、「これで良いですか」と渡してみるとダメ出しされてたよ。(笑)
その翌日に見た夢に出てきたのは、かつてSNAKEPIPEと一緒に遊んでくれたお姉さんだった。
このお姉さん、イニシャルでIさん、としておこうか。
IさんはSNAKEPIPEよりも年上で、音楽、映画や本など様々な知識が豊富なため、SNAKEPIPEが好きそうな企画を見つけると一緒に行こうと誘ってくれた女性だった。
もうずいぶんお会いしていないけれど、このIさんが現在のSNAKEPIPEに、かなり影響を与えた女性だったと思う。
そして数日前、突然Iさんが夢に登場したんだよね。
本がぎっしり並んだ本棚を2人で見ていて、「まだこの本は読んでない」などと話している他愛のない夢だった。

Iさんが夢に登場したことにより、突然思い出したのがIさんが教えてくれた音楽のこと。
「きっと好きだと思うよ」
と言ってレコードから録音したカセットテープをもらったのは、いつのことだったんだろう。
手渡されたのはThe Monochrome Set(モノクローム・セット)というバンドの音楽だった。
帰宅後聴いてみて、すぐに虜になったSNAKEPIPE。
さすがIさん、よくSNAKEPIPEの好みを知ってるなあと感心したものだ。
何度も何度も聴いていたテープだったけれど、カセットデッキは壊れてしまい、時代はCDになっていた。
モノクローム・セットのCDを買おうとショップに行ってみるけれど、なんと売ってない!
何軒もCDショップを回ってみるけれど、結果は同じ。
ショックを受け、Iさんにそのことを伝えると
「CD持ってる知り合いがいるから、借りてきてあげる」
と言ってくれるではないの!
どういう知り合いの人なのかは聞かなかったけれど、実際Iさんからお目当てのCDを手渡された時には、飛び上がらんばかりに喜んだね。(笑)
もちろん聴いてから丁寧にお礼を言ってお返ししたよ。

その時にお借りしたのが「Westminster Affair」(1988年)というコンピレーションアルバムだったんだね。
アルバムの1曲目を載せてみようか。 

当時はパソコンもなかったので、今のように簡単に動画が見られる環境ではないからね。 
今回このビデオも初めて観たよ。(笑)
ジャンルを特定するのが難しい、無国籍で不安定な感じのメロディラインは、このヴォーカルの特性だったのか?
音楽しか知らなかったSNAKEPIPEだったので、少しモノクローム・セットについて調べてみよう。

モノクローム・セットは1978年にロンドンで結成されたバンドで、初期メンバーには後に「アダム&ジ・アンツ」で知られるアダム・アントも在籍していたというので驚いてしまった。
その当時のバンド名は「The B-Sides」だったという。
時代的に考察して、恐らく最初はパンク・バンドだったんだろうね?
ヴォーカルはインド出身、ギターはカナダ出身というので、国際色豊かなバンドなんだね。
4枚目のアルバムを出した1985年、バンドは解散している。
1990年に再結成し、どうやら日本ツアーも行っていたみたいだよ。
この頃のSNAKEPIPEはレゲエとテクノばっかり聴いてたなあ。(笑)
時代によって興味の対象が変わっていたので、来日を知っても興味を示さなかったかもしれないよ。

1998年、再びバンド活動を休止する。
それから10年が経った2008年、イギリスのインディーズ・レコード・レーベルの中でもラフ・トレードと並んで最も有名な大手インディーズ(変な言い回しだけど)であるチェリーレッドの30周年記念パーティのために再結成。
その後はまた活動を続け、現在に至っているようだよ。

モノクローム・セットについて書こうと思って、とROCKHURRAHに話すと
「やっぱり1stが良かったよね」
と語りだすではないの!(笑) 
ROCKHURRAHは、当時北九州に住んでいたけれど、ロクなレコード屋がなかったためわざわざ高速バスに乗り、福岡までレコード漁りに行っていたらしい。
その頃の目新しいニュー・ウェイヴは手当たり次第に買って、聴いていたという。
ROCKHURRAHは試聴をせずに、ジャケットやバンド名などからインスピレーションを感じるレコードを買うことが多く、その方法で好みのバンドを探し当てることに成功していた、とやや自慢げに言う。(笑)
モノクローム・セットを買う前のレコード漁りの時に、ジョイ・ディヴィジョンとディス・ヒートを同時に購入して、まるで宝くじを当てたような運命的な出会いをしていたROCKHURRAH。
その勢いがついた状態で、再びインスピレーションの赴くままにチョイスしたのが、モノクローム・セットの1stだったらしい。
ジョイ・ディヴィジョンのレコード・ジャケットを手がけたのはピーター・サヴィルというグラフィック・デザイナーだという。
モノクローム・セットの1stも彼の手によるものだったことに、ROCKHURRAHが気付いていたのかどうかは不明だけど、似た雰囲気を感じ取ったことに間違いないだろうね!
結果としてジョイ・ディヴィジョンの系列とは全く違ってけど…。
今まで聴いたことのないジャンルだったため、戸惑いながらも聴き続けていくうちに耳慣れていったという。
ROCKHURRAHのお気に入りを載せてみよう。 

モノクローム・セットだけに、モノクロ!(笑)
ライブなのでレコードとはかなり印象が違うような?

モノクローム・セットの真骨頂とも言える曲をもう1曲載せようか。

まるで呪文のように聴こえていた箇所の歌詞が分かったよ。
螺旋階段をぐるぐる回りながら上ったり下りたりするような、酩酊感があるんだよね。
なんとも不思議な気分になる曲だと思う。

ふとした瞬間に懐かしい人を思い出し、その連鎖で昔聴いていたバンドや曲を思い出したよ。
Iさん、今は何をしているんだろうなあ?
もう何年もお会いしていないけど、実はどこかですれ違っていたのにお互い気付いていなかったりして?(笑) 

ポーラ・シェア:Serious Play 鑑賞

20190217 top
【gggの入り口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

以前は仕事場だったため、昼休みにはギャラリー巡りをしていた銀座だったけれど、特に用事がなければほとんど行くことがなくなってしまった。
かつてのギャラリー巡りのおかげで、銀座に関しては◯丁目と言われれば、方向音痴のSNAKEPIPEでも、なんとなくの方向が分かるんだよね。(笑)
かつて歩いていた頃にあったはずの建物がなくなり、いつの間にか聞いたこともない建物があったりするので、あまり信用できないけど!

今回久しぶりに銀座を訪れたのは、ギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催されている「ポーラ・シェア:Serious Play」を鑑賞するため。
ギンザ・グラフィック・ギャラリー、通称gggは、公益財団法人DNP文化振興財団が企画・運営し、グラフィック・デザインを対象とした企画展を開催しているギャラリー。
以前鑑賞したのは、2012年3月に開催された「ロトチェンコ-彗星のごとく、ロシア・アヴァンギャルドの寵児-」だったので、今から7年前になるんだね。
とてもきれいなギャラリーで、展示数も多かったのに、入場無料に驚いた感想をまとめた記事を書いているよ。
本当にこのギャラリーの資金繰りは謎だなあ。(笑)
そして「なんとなくの方向が分かる」と豪語していたSNAKEPIPEだったけれど、今回も結局はROCKHURRAHがGoogle Mapで現在位置を確認しながらギャラリーに辿り着いたこと報告しておこう。(とほほ)

グラフィック・デザイナーであるポーラ・シェア(Paula Scher)について、少し調べてみよう。
1948年 アメリカ、ワシントンD.C.出身。
ペンシルベニア州フィラデルフィアのタイラー・スクール・オブ・アートで美術の学士を取得。
ワシントンD.C.のコーコラン・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインから美術の名誉博士号を受けている。
1970年代にアトランティックレコードとCBSレコードで、レコードジャケットのアートディレクターとしてグラフィックデザインの仕事を始める。
その後雑誌のアート・ディレクションに移行し、タイム社で働く。
1984年より、ニューヨークに共同設立したコッペル&シェアを経営。
1991年にはペンタグラム社にパートナーとして参画。
1998年 アート・ディレクターズ・クラブの殿堂(Hall of Fame)入り。
同年、アメリカン・インスティテュート・オブ・グラフィックアーツのニューヨーク分校の校長にも選出される。
2000年 デザインのイノベーションに対してクライスラー・デザイン・アワード受賞。
2001年 アメリカン・インスティチュート・オブ・グラフィック・アーツよりゴールド・メダル獲得。
ビーコン賞など受賞多数で、国際グラフィック連盟会員。 
作品はMOMAやパリのポンピドゥー・センターなどにコレクションされているという。

こんなに華々しい経歴を持つデザイナーさんだったとは!
お恥ずかしながら、ROCKHURRAH RECORDSは初見でございまして。(汗)
グラフィック業界の有名人だったのね!
展覧会が観られて嬉しい限りだよ。
そして今回の展覧会に合わせてポーラ御本人が来日し、講演会も行っていたんだね。
その時の映像がgggの2Fで視聴できたので、SNAKEPIPEとROCKHURRAHは少しだけ観てきたんだよね。
年代によってテーマが決まっていて、年を経るごとにミニマムになる話が興味深かった。
それでは気になる作品を紹介していこうかな。
gggでは撮影オッケーだったので、バシバシ撮影してきたよ!(笑) 

ギャラリーの入り口を入ってすぐに展示されていたのは、ポーラの代表作の一つであるMAPシリーズ。 
このシリーズは実物を観ないと面白さが伝わりにくいかもしれない。
画像ではガラスに光が反射してしまい、余計に分かりづらいかも。
載せているのは東京の地図なんだけど、手書きなんだよね。(笑)
非常に細かく文字が書かれているので、近づいてじっくり鑑賞してみたよ。
これがアップにした部分。 
「TOKYO BAY」の文字が見えるかな?
東京湾にあたる部分には何やらたくさんの文字が描きこまれているよ。
いろんな方角に文字が飛んでいるので、全部を読むのは難しいかもしれない。
MAPシリーズは世界全体から、アメリカ合衆国、ヨーロッパ、アフリカ、インドなど、地域ごとに作られていてどれも素晴らしいの!

2007年の作品「The Dark World」ね。
色味を抑え、 領土を示すような線が描かれていないところがポイントかな?
世界人口として6,400,000,000と書かれているので、 国というよりは世界全体について描かれている様子がよくわかる。
地図を描いた作品というと、世界平和を訴えたり、逆に分裂や紛争などをテーマにすることが多く、世界情勢に疎いSNAKEPIPEには難しい時があるんだよね。
ポーラの作品には政治的な問題意識を提示したり、共有を迫る姿勢が感じられなかったところに好感を持ったよ。

バウハウス的な色合いの「Best Of Jazz」は1979年のポスターね。
ロシア構成主義にも通じる文字を縦や横にしてバランス良く一枚に仕上げるセンスは見事!
この作品をgggのHPで観て、展覧会に行きたいと思ったんだよね。(笑)
数種類のフォントの使い分け方、勉強になるなあ!
ポーラが手がけたのはジャズ系のアーティストのポスターやジャケットが多かったようで、ROCKHURRAH RECORDSがあまり得意ではない分野になるよ。
そのため名前と曲が一致しない場合が多いけれど、観た時にグッとくる作品だね!

ポーラが1984年から経営していたコッペル&シェアが手がけたブック・デザインに見慣れた名前を発見!
フランツ・カフカの「変身」のカバー・デザインなんだよね!
これもロシア構成主義の影響を感じるデザインで、もしこのカバーの「変身」があったら、英語でも頑張って読むかもしれないな。(笑)
2019年2月に書いた「ROCKHURRAH紋章学 ブック・デザイン編」に加えたくなるデザインだよね!

「これはレコード持ってたバンドのだ」とROCKHURRAHが言う。
Fabulous Poodlesは1975年から1980年まで活動していたイギリスのバンド。
テディ・ボーイ達に大人気という触れ込みだったので聴いてみたけれど、ROCKHURRAHの琴線にはちっとも触れなかったらしい。
どうしてテッズに人気と言われていたのか、未だに謎で考え始めると眠れなくなるほどだという。(うそ)
ポーラの作品の中に知ってる名前があった、ということで取り上げてみたプードルちゃんだよ!

ポーラ・シェアの作品の特徴の一つに「遊び心」がある。
ちょっと捻って「くすっ」と笑いを取るような、上品なダジャレというのか。
「BLAH BLAH BLAH」と題された作品には、たくさんの「BLAH」が描きこまれているんだよね。
日本語にすると「とかなんとか」だったり「その他諸々」になっちゃうんだけど、「彼女があーだこーだ文句を言った」 のような時に使われるのを映画などで耳にすることがあるよ。
そのためどちらかというと「小うるさい」印象がある言葉なんだよね。
その雰囲気がこの作品にはよく出てるんじゃないかな?(笑)

これは演劇か何かのポスターで、2003年の作品ね。
「FUCKING A」って意味が分からないけれど、アメリカでは放送禁止用語じゃないのかな?
その単語をまるでパンクのレコード・ジャケットのように見える方法でポスターを作るポーラ、この時54歳かな。
演劇の内容に沿った印象で仕上げているのかもしれないね。
グラフィック・デザインというのが、インパクトを与え、一枚のポスターから観る人にイメージさせ、劇場に足を運ばせるための手段なる広告として機能していることがよく分かるよ。
SNAKEPIPEは一枚のポスターから、何か行動を起こしたことはあったかなあ。
例えば駅のポスターに目を奪われる経験は、非常に少ないと思うよ。
もし街や駅でポーラのポスターを目にしたら、人生が変わっていたかもしれないよね。(おおげさ)

現在70歳のポーラはまだまだ現役で、3次元までデザインの幅を広げ、プロダクトデザインも始めていると講演会の中で話していたよ。
新しいことに挑戦しようとするカッコ良さに憧れるね!
タイポグラフィやアスキーアートを効果的に使用したグラフィック・デザインの秀逸作品を鑑賞できて良かった。
またgggに足を運びたいと思う。

先にも書いたように久しぶりの銀座だったので、GINZA SIXなる商業施設に足を踏み入れるのは当然のように初めてのこと。
gggから近いのでせっかくだから、と行ってみたのである。
目的はアールグロリュー ギャラリー オブ トーキョーで開催されている「草間彌生と現代アート展」。
行ってみて分かったことだけれど、ここは展示販売のギャラリーだったんだよね!
売る気満々の店員が待ち構えているとは知らずに、鑑賞目的で入ってしまったよ。(笑)
一通り観て回り、販売価格をチェックしてみた。
草間彌生の代表作である「南瓜シリーズ」のシルクスクリーンは、300万から1000万(超える作品もあり)くらい。
肉筆画の一点物だったら、また違う価格設定がされるんだろうね。
販売価格を知ったのは初めてだったので、貴重な経験になったかな。(笑)

日本を変えた千の技術博 鑑賞

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【千の技術博の看板を撮影。バックにうっすらと積もる雪が見えるね】

SNAKEPIPE WROTE:

昨年の10月から国立科学博物館で開催されている「明治150年記念 日本を変えた千の技術博」を、今頃になって鑑賞した。
上野公園では、他に東京都美術館で「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」の展示もあり、どちらにしようか迷った結果「技術博」に決めたROCKHURRAH RECORDS。
2016年10月に鑑賞した「驚きの明治工藝」や「ビザール・マッチ選手権!33回戦」、「ビザール・ポストカード選手権!34回戦」で、日本の洗練されたデザインや卓越した技術力を知り、もっと明治・大正時代について知りたいと思っていたからね!
現在放映されているNHKの大河ドラマ「いだてん」の中で、天狗倶楽部というスポーツ大好き集団が登場する。
天狗倶楽部は明治42年頃から活動を始め、昭和初期には自然消滅したらしい団体だ。
ROCKHURRAH RECORDSは、天狗倶楽部のユニフォームに着けられているワッペンに注目したのである。
やや丸みを帯びたフォントを使用し、天狗をTNGと短縮した素晴らしいデザインなんだよね。
想像しているよりもずっと進んでいた明治時代以降の日本の文化に益々興味が湧いてくる。

3連休を利用して展覧会を鑑賞しようと計画したROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
鑑賞日を連休初日に設定してみたけれど、その日の東京は雪の予報!
雪の日に出かけたといえば、2018年3月に「レアンドロ・エルリッヒ展:見ることのリアル」 を鑑賞した日も大雪だったっけ。
あの時は、雪だから空いてるかもしれない、という予想が大きく外れてチケット買うのに30分以上並んだんだよね。
まさか今回も雪の日だから余計に人が多いってことはないだろうか、と不安に感じながら小雪がちらつく上野公園を歩いたのである。

予想最高気温は1℃か2℃だったはずなのに、完全防備していたせいもあり、そこまでの寒さを感じない。
更に全く大雪にもならず、長い傘をさす必要もないほどの小雪。
「備えあれば憂いなし、だから」
と言い聞かせながら歩くSNAKEPIPEだけれど、膝までの長靴は大げさだったなあ。(笑)

国立科学博物館前まで来ると、数人の人だかりがある。
やっぱり混んでいるのかも、と思ったのも束の間、チケット売り場にはすんなり到着。
会場内には「そこそこ」の人は入っていたけれど、展示物の前が黒山の人だかりで全く見えないということもなく、少し待ったり順番を変えて歩いていれば、必ず鑑賞できるくらいの余裕はあった。
撮影もオッケーだったので、バシバシ撮ってきたよ!
ただし、会場内は少し暗かったんだよね。
スポットライトを当てているせいで、しっかりと影ができてしまい、写真撮影には向かない状態だったことを最初にお断りしておこうかな。
決してSNAKEPIPEの腕が悪かったせいじゃないからね。(笑)
それでは気になった展示物を紹介していこう!

元はアメリカの「学校・家庭用掛図」で外国人が描いた図を、日本人が模写したもの。
「小學用博物圖」と旧字体で書かれているように、これは小学生用の植物図鑑だったんだろうね。
明治9年(1876年)に輸入されたネタを元に日本語訳版を作ったのが、これ!
日本人が外国文化を積極的に取り入れ、自分のものにしようとしていたことがよく分かるよね。
右上に「大阪師範学校 天野 皎 譚」と書かれているので、天野さんが描いたのかもしれないね?
8枚同じような掛図があるようなので、並べて見てみたいよ。 
学術用に制作されているはずなのに、アート作品に見えるところが面白いね!

こちらも教育用に制作されている展示品だよ!
明治28年(1895年)に島津製作所が製作販売していたという人体模型図なんだよね。
内臓がパーツごとに下部に並べられているところに、笑いと残酷さという相反する感情を持つことになって複雑な気分。(笑)
笑いがあるホラー映画、みたいな感じね。
明治時代にこんな模型が売られていたことに驚いたよ。
2010年1月に「医学と芸術展 MEDICINE AND ART」を鑑賞した時にも、17、18世紀にドイツで製作された象牙のミニチュア人体模型図を鑑賞したことを思い出す。
あの時も学術目的で製作された物品なのに、アート作品よりもアートだった感想を持ったんだよね。
この人体模型図も「おままごと」のように遊んでみたい衝動に駆られた逸品だよ!

何故病院に旗が必要なのか不思議だよ。
「奥羽追討陸軍病院(平潟口)の病院旗」とのこと。
明治元年(1868年)の物だという。
赤の生地に黒の菊の御紋は目立つよね。
明治時代のこのセンス、カッコ良いと思うよ。

これは一体なんだろう?
「世進電話雙録(よはすすむでんわすごろく」だって。
明治26年(1893年)に電話の使い方を主題にして作られた双六だという。
明治になって26年が経過しても、描かれた人物の服装は着物が主流だったことが分かるよね。
「文明開化」で「鹿鳴館」でドレスを着て踊る女性ばかりではなかったんだね。
電話の歴史としては、1878年に日本製の電話機が完成した、とWikipediaに書いてある。 
電話がだんだんと一般庶民に普及してきた頃に作られた双六ということになるんだね。
それにしても、この双六、遊んで楽しいのかな?(笑)

明治時代には薬の研究も進んでいたようで、薬の広告も展示されていたよ。
三共株式会社(現在の第一三共株式会社)が明治32年(1899年)に消化酵素剤「タカヂアスターゼ」、明治35年(1902年)に副腎髄質ホルモン剤「アドリナリン」を商品化して、販売していたことを初めて知ったSNAKEPIPE。
 「The Adrenalin Family」と書かれている広告は明治38年(1905年)の物。
フォントの使い方、素敵だよね!
それにしても明治から大正時代にかけて様々な研究を成功させていた医学博士である高峰譲吉、もっと知りたいと思ったよ。

このポスターに関しては、何のキャプションも提示されていなかったんだよね。
別の場所で似たようなポスターに付けられていたのは、大正9年(1919年)「生活改善ポスター」 だったので、恐らく同じタイプだと思われる。
「家庭の改良は先づ 臺所設備から」と書かれていて、右上に昔ながらの土間の様子が描かれ、中央には改良版としての台所の様子が描かれている。
大正時代にはもう現代とそれほどの違いがないキッチンが存在していたことになるよね。
L字型のシンクや食器棚、3口のコンロ(下部はオーブン?)に換気扇まで描かれている。
服装は和装のままではあるけれど、一般庶民にも椅子の生活が始まっていることにも驚いたよ!

重工業の分野でも大きな発展があった明治時代以降の日本。
詳しいことはよく分からないので、説明できないのが苦しいところ。(笑)
ただSNAKEPIPEは鉄やステンレスを使用している部品や鋼材に興味があるんだよね。
インダストリアル・デザインが大好きなROCKHURRAH RECORDSは、実際に可動して何の目的で使われていたか、というよりもそのカッコ良さに目を奪われる。
無理矢理名付けるならば、インダストリアル美、略してインダス美?インダ美?イン美か? 
短くすればするほど、本来言いたいこととは違ってくるのでやめようか。(笑)
この画像は「スターリングエンジン」だって。
かなり大型だったけど、何に使われていたんだろう。
チャコールグレーの塗料が印象的で、光の加減によっては鈍色に見え、更に重厚感が増す。
上部にある車輪状のフォルムまで含めて、インダストリアル好きにはたまらない逸品だったよ!

この車に大反応していたのはROCKHURRAHだった。
マツダのコスモスポーツは、1967年に世界で初めて販売されたロータリーエンジン搭載車だという。
ROCKHURRAHは子供の頃に、ウルトラマン・シリーズや石坂浩二の「平四郎危機一髪」などのドラマで使用されていた、この車が大好きだったらしい。
プラモデルでも作っていたそうで、それが大反応の理由のようだね。
確かに車に疎いSNAKEPIPEが見ても、昔の車には確かな個性と造形美があると思ったよ!
イタリア車だと言われても納得してしまう流線型は、まるでサメをモデルにしたように見える。
こんな車が一般道を走っていたかと思うと驚いてしまうね。

最後は「二式一一五〇馬力発動機」ね。
数字にすると「2式1150馬力発動機」なんだけど、やっぱり漢数字で書いたほうが「ザ・日本製」で良いみたいだね。(笑)
「隼」や「零戦」といった日本の戦闘機に搭載された航空機用のエンジンだという。
またこのフォルムが素晴らしいんだよね!
イン美の世界を堪能できる逸品だよ。(笑)
展覧会を鑑賞しているお客さんの大半は、ROCKHURRAHとSNAKEPIPEのような鑑賞法ではなくて、飛行機や電車好きのマニアだったようで、この発動機の前から動かない人がいっぱい!
「デザインがカッコ良い」
という感想を持つSNAKEPIPEも負けず劣らず写真撮影していたので、戦闘機好きだと思われたかもしれないね?
そしてこの発動機はお土産コーナーで、Tシャツとして売られていたのを発見。
版画のような1色刷りでのプリントでは、一体何なのか不明な物体にしか見えないのでは?
せっかく作るなら、もっと出来栄えを考えて企画して欲しいと思う。

大抵の展覧会でのミュージアム・ショップには不満があるけれど、今回もひどかった。
誰が「蚕」のぬいぐるみ(体長約70cm)を買うんだろう?
クリアファイルにクッキーや缶バッジは、いつでも販売されている企画品だけど、実際売れる物なんだろうか。
明治時代以降の展覧会ということもあり、ショップの半分は昭和を感じさせる駄菓子屋のような雰囲気になっていて、これもまた興醒めの一因だったよ。
展覧会でのお土産、購買意欲をそそる逸品の開発をして欲しいなあ。

日本の明治・大正時代については、これからも調べていきたいね。
この時代の展覧会があったら、また鑑賞したいと思うよ!

ROCKHURRAH紋章学 ブック・デザイン編 1

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【シンプルでオシャレなデザインがいっぱい!】

SNAKEPIPE WROTE:

最近は通勤時間が短くなったこともあり、なかなか読書の時間が取れなくなっている。
かつては片道の通勤時間が約1時間あり、ハードカバーの重たい本を持ち歩いていたことを思い出す。
読書家というには程遠い読書量だったけれど、毎日2時間本を読む時間があったことは、その後のSNAKEPIPEに大きな影響を与えたことは間違いないだろう。(おおげさ)
今はスマートフォンで本が読めるので、重たい本を持ち歩かなくても読書ができる。
でも本当は紙の手触りや匂い、ページをめくる感覚が好きなんだよね。
本屋さんが閉店するニュースを耳にすると悲しくなっちゃうし。
図書館や本屋さんでの運命的な本の出会いは忘れたくないし、これからも期待している。
本の楽しみは内容だけではなくて、レコードのジャケ買いならぬ、ブック・カバー・デザインの一目惚れもあるよね。
今回の「ROCKHURRAH紋章学」は秀逸なブック・カバーを特集してみようかな。
パッと目につき、思わず手にとってしまうデザイン、早速紹介していこう!
この特集に関しては、著作に関して充分な調査をした上で記事にしているわけではないことを最初にお断りさせて頂くよ。
あくまでもブック・カバー・デザインとして書いているので、タイトルから想像した文章を書き綴っていく予定。(笑)

今回は色数が少なくて、シンプルだけれどインパクトが強い作品を選んでみた。
最初はCAROLYN WELLSの「DE DREMPEL MOORDEN」、1931年の作品だよ!
キャロライン・ウェルズということは著者は女性ということね?
どうやらオランダ語のようなんだけど、タイトルを訳してみると「しきい値を殺す」になるらしい。
キャロライン・ウェルズはアメリカ人なので、これは恐らくオランダ語に訳されて出版された本なんだろうね?
オランダ語を訳しても全く意味不明なので、勝手に想像してみようか。(笑)
1階で格闘の末、心臓にナイフを刺された男は、地下室に向かう階段の途中で今にも息を引き取ろうとしているようである。
白・黒・赤の3色だけで小説の一端を表現した秀逸な作品だよね!
勝手に想像すると、この後男は生き返り、自分を死の淵に追いやった犯人への復讐を誓うストーリーではないかと想像する。
もちろん男は白髪になっているだろうね!(笑)

次は有名な「フランケンシュタイン」ね!
ご存知の方も多いと思うけど、「フランケンシュタイン」はメアリー・シェリーが1818年に発表した作品ね。
1931年に映画化されたことで、皮膚に糸の縫い目がある大男のイメージが定着したという。
右の画像も、映画のイメージを使用しているようだよね?
白・黒・緑という3色だけで怪物の不気味さと悲しみが上手く表現されているよ。
指の曲がり具合が最初の作品に似ていること、作者がどちらも女性という共通点を見出してしまったSNAKEPIPE。
20世紀初頭にホラーやミステリー小説の分野で、女性が活躍していたことに驚いてしまう。
ちゃんと調べたわけじゃないけど、意外と女性が蔑視されていなかったのかもしれないね?

「フランケンシュタイン」と題材が近いようなタイトルを発見したよ。 
「ANOTOMY OF A MURDER」 ROBERT TRAVERが書いた1958年の小説ね。
直訳すると「殺人の解体」だって?
このブック・カバーの下部に小説の紹介文が書かれているね。
「高等裁判所判事によって書かれた殺人裁判の背後にある情熱」とのこと。
実際の事件について書いているものみたいだね。
白・黒・オリーブの3色しか使用していないけれど、ちょっとコミカルにバラバラになった人体が逆に残酷さを増しているように感じる。
どうやら映画化もされているようで、裁判物のミステリーでは有名な作品みたいだね。
調べてみたら映画のオープニングシーンを発見したので、載せておこうか。

ブック・カバー・デザインと同じでオシャレ!(笑)
邦題は「或る殺人」(原題:Anatomy of a Murder) で1959年公開とのこと。
ジェームズ・ステュアート主演だって。
50年代の映画はほとんど知らないので、いつか鑑賞してみたいな。 

このデザインも良いなあ!
「The Nose On My Face」はLaurence Payne作1961年の小説ね。
どうやらスコットランドヤードの刑事Sam Birkettシリーズの1作目とのこと。
クライム物だと一目で分かる明瞭さが潔い!
9マスに緑と黒の2色だけを使用したシンプルなデザインなのに、なんとなくイメージが湧いてくるもんね。(笑)
ピストル、指示を出す上司、悪者のボス、流れる血、逃げる犯人って感じか?
それにしても「俺の顔にある鼻」ってタイトル、どういうことなんだろうね。
イギリス人にとって鼻をいうのが、どういう意味なのか知らないよ。
例えば日本だったら「鼻をつまむ」「鼻が曲がる」のように、あまり良い意味では使われることがないパーツだけど、世界的にはどうなんだろう。
調べてみるのも面白いかもしれないね? 

「Bill,the Galatic Hero」はHarry Harrinsonの1965年のSF小説だよ!
黒とピンク、紫と白の4色だけを使用しているにもかかわらず、ショッキングピンク色が強いので、非常にインパクトがあるよね。
銀河のヒーローと呼ぶのにふさわしく、まるで宇宙空間を闊歩しているように見える大胆な構図。
物語のあらすじを調べてみると、かなり荒唐無稽で面白そうなんだよね。
日本では「宇宙兵ブルース」として出版されていたみたい。
ハリイ・ハリソンは映画「ソイレント・グリーン」の元ネタの原作者でもあるという。
チャールトン・ヘストン主演で未来の食料品が枯渇した世界を描いた映画は、実際にそんな日が来るのではないかと思うほど怖かったよ。
今回紹介した「宇宙兵ブルース」も映画化されていることを知り驚いた。
監督はなんと「ストレイト・トゥ・ヘル」や「レポマン」でお馴染みのアレックス・コックス!
映画化されたのが2014年だというから、今から5年前なんだよね。
50年以上前の原作の映画化とは!

アレックス・コックスが最近でも映画を撮っていたことに驚いてしまったよ。
日本での公開はなかったのかな。

「All in The Racket」はWilliam E. Weeksによって1930年に書かれた本ね。
30年代にこのデザインセンスとは驚いてしまうよ。
タイトルを直訳すると「ラケットの中にあるすべて」?
ラケットはテニスやバドミントンで使う以外に、名詞で苦難や試練といった意味もあるようなので、恐らくこの本では「苦難のすべて」のような訳なのかもしれないな。
ロープが体にまきつき、がんじがらめになったせいで、抵抗することすら諦めてしまったような人物が描かれているよね。
自己啓発本の一種かもしれない、と勝手に想像するよ。
目に留まるデザインだけど、この本を手に取って、レジに向かうのは勇気がいるだろうな。(笑)

巨大なアリ!
古代人が着ているような服装をしたヒゲの男が驚いているようにみえる。
まるで版画のようなブック・カバー・デザインだけど、一体何語なんだろうね?
調べてみると、「Niezwykle Przezycia Doktora Dumczewa」は直訳すると「Dumczewa博士の異常に良い生活」だって。意味不明だね?
本の内容は「200分の1となって昆虫の世界に侵入した学者の冒険物語」とのこと。
1962年に刊行されているというので、「ミクロの決死圏」(原題:Fantastic Voyage 1966年)よりも早いことになるね。
オレンジとグレー、黒と白だけで本の内容を上手く伝えているデザイン。
絵本の表紙にしても良い雰囲気だよね!
ポーランド文学は殆ど知らないので、読んでみたいな。

「Self and Others」、自己と他者だね。
 イギリスの精神科医であるR.D.レインが1959年に発表した研究論文のようだね。
この本は違うブック・カバー・デザインだったら日本でも手にはいるみたい。
「 人間と人間との間で演じられる相互作用におけるもっとも基本的でもっとも微妙な「自己と他者」の関係を、著者は電子顕微鏡を透して見るように強拡大して見せる。
人間関係のからみあいを凝視して、螺旋的で錯綜したドラマを図式化し展開する。(Amazon販売ページより)

円だけを描いたデザインだけれど、本の内容をわかりやすく伝えることに成功しているよね。
単なる円だとあなどれないところがすごいと思う。
これぞ究極のシンプルさだよね。 

最後はこちら!
4冊分をまとめて紹介してみたよ。
まるで式神のような人型が登場する犯罪小説のブック・カバー・デザイン。
これはイギリスの出版社であるペンギン・グループが、「グリーン・ペンギン」としてシリーズ化しているデザインのようなんだよね。
黒・緑・白の3色だけで繰り広げられる世界は、見ているだけでワクワクしちゃう!
まるで記号のように単純化しているのに、一瞬のうちに状況説明できている秀逸さには脱帽だよ。
「野良猫の死」「棺を抱えて」「後幕」「バスマンの新婚旅行」という思わせぶりなタイトルが並んでいるよね。
内容は不明だけど、このブック・カバー・デザインを見ただけで購入意欲が湧いてくるのは間違いないよ。
こんなにデザイン的に優れている本だったら、読まなくても飾っておきたくなるくらいだもんね。(笑)

今回は色数が少なめのブック・カバー・デザインを集めてみたよ。
ヴィンテージと言って良い1960年代以前の物がほとんどだったのは、ROCKHURRAH RECORDSの好みの問題かもしれないね。
ヴィンテージ・デザインにはカッコ良いものが多すぎて、目移りしてしまうほどだった。
とても1回ではまとめきれなかったので、また別の機会に特集してみたいと思う。
温故知新の旅、次回もお楽しみに!(笑)