
【謎の人形と一緒のアントン・スタンコフスキー(左)とセルフ・ポートレート作品(右)】
SNAKEPIPE WROTE:
2025年8月に書いた「ROCKHURRAH紋章学 Herbert W. Kapitzki 編」で予告したように、「アイデンティティシステム」で気になったもう一人のデザイナー、アントン・スタンコフスキーについて特集しよう。
グラフィックデザイナーとして有名なスタンコフスキーは写真家や画家としても活躍していたみたい。
経歴を調べてみよう。
1906 ゲルゼンキルヒェンに生まれる 1926–29 フォルクヴァング造形学校で学ぶ 1929–34 チューリッヒの広告スタジオ、マックス・ダラング事務所で勤務 1938 シュトゥットガルトで「グラフィッシェス・アトリエ」をエミール・ツァンダーと共同設立
フリーのグラフィックデザイナーとして活動を始める1940–48 徴兵され、戦後まで捕虜となる 1951 キレスベルクにデザイン事務所を設立 1964– ウルム大学で教鞭をとる 1970– ドイツ銀行、ミュンヘン再保険、REWE、バーデン=バーデンのオリンピック会議などの有名なロゴや商標を制作 1972 ヴェネツィア・ビエンナーレに参加 1976 バーデン=ヴュルテンベルク州から教授の称号を授与される 1985 スタンコフスキー財団設立 1991 シュトゥットガルト市のハンス=モルフェンター賞受賞 1998 ドイツ芸術家協会よりハリー・グラフ・ケスラー賞を受賞
エスリンゲン・アム・ネッカーにて逝去
1920年代末から1990年代末までずっと活動を続けていたんだね。
1940年からの数年間は戦争のため拘束されていたようだけど、帰還後は『シュトゥットガルター・イラストリルテ』誌で編集者・グラフィックデザイナー、写真家として働いたという。
モンドリアン、ファン・ドゥースブルフ、マレーヴィチ、カンディンスキーらの抽象絵画に影響を受け、グラフィックデザインを「自由芸術家や科学者との協働を要する絵画的創造の領域」として提唱したとWikipediaに載っているよ。
情報と創造的衝動を統合し、純粋芸術と応用芸術を横断したとされるスタンコフスキーの作品を観ていこう!

かつてSNAKEPIPEがモノクロ写真を撮影し、自分自身で現像やプリントをしていたこともあり、モノクロームの作品に注目しちゃうんだよね。
写真家としても活躍していたスタンコフスキーの写真がとてもカッコ良いよ。
左は「Begrüßung(挨拶)」で 1934年の作品だという。
俯瞰して撮影しているところがモホリ=ナギを思わせるよ。
ハットをかぶった人物とシルエットのバランスが素晴らしい!
影の面白さは右の作品も同じだね。
1932年に撮影されていて、タイトルはないみたい。
恐らく水か何かが流れて筋を作っている様子を捉えているようだね。
写真の切り取り方がデザイナーらしい、と思ったよ。
これらの作品は販売されていて、左が30.3×23.7cmで$7,500(112万円)、右が22.9×17.8cm$9,500(140万円)とのこと。
SNAKEPIPE MUSEUMに所蔵したいね!
スタンコフスキーのコラージュ作品だよ。
1927年に制作された「Foto-Auge (Foto-Eye)(写真の眼)」は、スタンコフスキーの恩師であるMax Burchartz(マックス・ブルハルツ)へのオマージュなんだとか。
ブルハルツの最も有名な作品である、ブルハルツの妻の写真を見上げるブルハルツ、傘とブルハルツの髪を組み合わせているという。
黒色の扱いが大胆で、印象的だよね。
21x 28.5cmのサイズで6.448€ (約112万円)で販売されていたらしい。
この作品も並べて展示したいね!
スタンコフスキーの代表作として知られているのがドイツ銀行のロゴなんだよね。
「史上最高のロゴ」の2位にランクインしているという情報もあるほど、世界的に有名なんだね。
ロゴ・デザインの1位はウールマーク、3位は「ブリティッシュ・レール(イギリス鉄道)」だって。
ウールマークはセーターの内側についてる、あれね。(笑)
スタンコフスキーのロゴは、1973年に発表されてから現在に至るまで、ほとんど手を加えられることなく使用されているという。
「新しく、独自であり、時代を超えていたから」というのが理由で、銀行職員でも発表されてから受け入れるまでに2年かかったと書いてある記事もあったよ。
正方形をきっちり真ん中で分けるようにはされていない右上がりの斜線が、このロゴ・デザインを特別なものにしているんだとか。
「正方形の枠は安全性を象徴し、上向きの斜線はダイナミックな発展を表している」として採用が決定したというから、ロゴ・デザインを選んだ審査員は先見の明があったんだね。
一度見たら認識できるシンプルさも強力だよね。
SNAKEPIPEも、もう覚えましたとも。(笑)
とてもカラフルなシルクスクリーンの作品もあるよ。
1981年に制作された約60cm四方の17枚組の作品なんだよね。
1から17までをデザインしていて、とても楽しいよ!
色や構図などが念入りに考えられているんだよね。
と、書いたところで「5」だけが少し「ぞんざい」な気がするよ。
どれか一つ選ぶとしたら?
迷いながら「10」にしたよ!
あなたならどれを選ぶ?(笑)

スタンコフスキーが手掛けたポスターを2点載せてみよう。
左は1978年に制作された貯蓄銀行の「世界貯蓄デー」用のもの。
数字の「8」を表しているのかな。
マットなトーンの色合いがおしゃれだよね。
右は1984年の「クライス貯蓄銀行エスリンゲン=ニュルティンゲン10周年記念」ポスターだって。
10周年だから10色を使用しているのかと思いきや8色だった。(笑)
同じ屈折線を色と方角を変えて組み合わせたデザインで、シンプルなのに複雑に見えてしまうね。
構図の見事さと空間の使い方に日本画を思わせる作品だね!
MOMAに所蔵されているスタンコフスキーの作品がこちら。
「Buchstaben und Schriften BAG A–Z 1929–1934(文字と書体)」という本を出版しているようだよ。
内容についての表記がMOMAのページにないので、恐らくスタンコフスキーがタイポグラフィについて記しているんじゃないかな。
内容も気になるところだけど、表紙(?)と思われる画像のカッコ良さにノックアウトだよね!
白、黒、赤という3色だけの配色に3種類のフォントを使用したデザイン。
文字の上に文字を重ね、フォト・コラージュならぬフォント・コラージュ(というのか)しているなんて、PUNKの切り貼りみたいだよね。(笑)
今回はドイツのグラフィック・デザイナーで写真家のアントン・スタンコフスキーについて特集してみたよ!
独自の「デザイン理論」を打ち立て、構成的グラフィックアートの先駆者であったスタンコフスキー。
ロゴ・デザインや広告ポスターなどを勉強したり仕事で関わっている人にとっては、教科書のような存在なのかも?
SNAKEPIPEは、たまたまギンザ・グラフィック・ギャラリーの企画展「アイデンティティシステム」で知り、興味を持ったんだよね。
血湧き肉躍る(大げさ)ような作品に出会えて、とても嬉しかったよ!
こんなきっかけを与えてくれたギンザ・グラフィック・ギャラリーに改めて感謝だね。(笑)






















