SNAKEPIPE MUSEUM #52 Jody Fallon

【人間なのか動物なのか?もしくは怪物?!】

SNAKEPIPE WROTE:

今回は久しぶりにSNAKEPIPE MUSEUMをお届けしよう。
最近は展覧会に赴く事が多くて、アーティストを検索する時間が取れなかったんだよね。
たまには、と検索を始めたSNAKEPIPEの琴線に触れたのがJody Fallonの作品だった。

Jody Fallon(ジョディ・ファロン)は1971年、アメリカ合衆国ペンシルベニア生まれ。
アート系の学校に行ったわけではなく、近所の暗い野原や山、森を探索しながら、孤独な感情を表現する方法を探していたという。
その後、アメリカ海兵隊として沖縄にも来ていたらしい。
兵隊経験のある画家って、他にいるのかな?
1996年から2000年の間、ファロンは重要な3人のアーティストを見つけることになる。
フランク・フラゼッタ、ポール・レア、ロン・ウィングらの作品を通して、求めていた表現手段を探し出したという。
2000年以降、週末にペンシルベニアのスタジオでSFのイラストや彫刻を、イーストストラウズバーグの博物館でフラゼッタのイラストを勉強していたという。
漫画家で芸術家のロン・ウィングに師事し、芸術と絵画の哲学を発展させ、自分のスタイルを確立したジョディ・ファロン。
地元ペンシルベニアでの個展やグループ展、ニューヨークのギャラリーで作品が展示されている。
ネットでも販売しているようで、10インチ四方(25cm)の小さな作品で$350、日本円で約36,000円とのこと。
ジョディ・ファロンは現在もペンシルベニアに住み、作品制作を続けているという。

ジョディ・ファロンが心惹かれたアーティストの一人、ポール・レアの作品がこちら。
1950年代から80年代までパルプ本の表紙デザインをしたり、PLAYBOYなどの雑誌のイラストも手がけていたという。
小説の書評を読んでから本を購入するというよりは、表紙の絵を見て興味を持つことが多いんじゃないかな。
読者の気を引く、「そそる」表紙を描くのは大変だけど面白い仕事かもしれないね。
サイエンス・フィクションの世界を支配した、とまで言われたポール・レア。
1998年に亡くなるまで、活動していたという。
ポール・レアの作品も素晴らしいので、いつかブログで特集してみようかな!(笑)

ジョディ・ファロンもきっとポール・レアの作品を観て、ワクワクしたんだろうね。
似た雰囲気の作品もあるけれど、独自のセンスが光る、ちょっと不気味な作品も紹介していこう。

怪奇小説、幻想小説の先駆者であるアメリカの小説家、H.P.ラヴクラフト全集の表紙を手がけたジョディ・ファロン。
モノクロームで描かれた不気味な怪物(?)は、ラヴクラフトの小説にふさわしいように感じるよ。
と、言いながらも、実はほとんどラヴクラフトを読んだことないんだけど。(笑)
目標にしているアーティストが得意にしていた表紙の仕事を引き受けることは、きっとジョディ・ファロンにとって特別な意味を持っていただろうね。
他にもクラシックな小説の表紙を担当しているみたい。
どれも「おどろおどろ」しくて、きっと怖いんだろうと思わせることに成功しているよ!
もし本屋で見かけたら、手に取ること間違いなしだね。(笑)

ジョディ・ファロンのHPには、シリーズ毎に作品が載っている。
「Science Fiction」のシリーズは、まさにポール・レアの後継者と言うべき作品群を観ることができる。
レトロ・フューチャーという、懐古趣味的な未来像を表す言葉の通り、懐かしさを感じてしまう作品なんだよね。
このまま小説の表紙になったり、70年代のプログレッシヴ・ロック系のアルバム・ジャケットになっているような雰囲気。
実際プログレのバンドが、どんなジャケットを使用していたのかよく分かってないんだけどね。(笑)

SNAKEPIPEの琴線に触れたジョディ・ファロンの作品は「Imaginative Realism」というシリーズなんだよね。
この言葉も相反する単語が連なっていて、想像したものをリアルに描いた作品、という意味だと理解したけど、どうだろう?
夕暮れ時なのか、逆光になった人物(?)が、大きく口を開け、叫んでいる。
植物に棘があるのか、手から血が流れているように見える。
非常に不気味な絵で、歯しか見えない黒い物体が、まるでフランシス・ベーコンが描く人物のよう。
「孤独な感情を表現する方法を探していた」という、ジョディ・ファロンの自画像なのかもしれないね?

この作品も怖いよね!
背景がオレンジ色なので、より一層ベーコンっぽく見えてくるね。
人間には見えない物体もいれば、悲しみにくれ叫んでいるように見える顔もある。
一体どんなシチュエーションなのか不明だけど、こんな青い物体に追いかけられたらさぞや恐ろしいことでしょう。(笑)
夢に出てこないことを祈るよ!

うひゃー!今度は溶けてるよ!
頭は頭蓋骨なのに、腕だけは筋肉組織やら血管が見えるようじゃない?
これも一種の「叫び」なんだろうね。
さっきまで普通に会話していたのに、ウイルスやゾンビに感染した途端、全くの別人になってしまうシーンって、ホラー映画によくあるよね。
かつては人だったのに、今はもう人間じゃない、という恐怖を表現したように見えてしまう。
ジョディ・ファロンはSFとホラー映画が好きに違いないよ。(笑)
あくまでもSNAKEPIPEの想像だけどね。

この作品を観た瞬間、ROCKHURRAHが「永井豪みたい」と言う。
ぐわっと開いた大きな口と乱杭歯。
何かを噛み砕いた後なのか、それとも腹でも刺されて口から血が流れているのか。
状況はよく分からないけれど、尋常な顔立ちではないよね。
そしてこちらが永井豪の「デビルマン」。
雰囲気似てるよね?
きっとジョディ・ファロンは、漫画やアニメも好きに違いないと推測!
永井豪の漫画は今でも海外で人気があるようで、2019年7月にはフランス政府から芸術文化勲章シュバリエを贈られていることを知りびっくり!
エロや暴力を描くことが多い永井豪は、かつて教育に不向きという理由でバッシングを受けていたと読んだことがあったからね。
時代や場所が変わると評価も変わるものなんだと改めて実感したよ。

最後はこちらの作品ね。 
24☓36インチという大きさは、61cm☓91cmなので、恐らく30号のキャンバスになるのかな。
キャンバスについて調べてみたら、Fサイズ(人物)とかPサイズ(風景)のような種類があるんだね?
高校時代、美術部に所属していたSNAKEPIPEも30号のキャンバスを使って油絵描いていたけど、どの種類だったんだろうね。(笑)
黒い頭巾をかぶった黒衣の髑髏は一体何等身あるんだ、というくらいのモデル体型。
地面にはひび割れが見えるので、後ろに積み上がった骸骨の養分を吸い込んで、地面から生えているようじゃない?
すっくと立ったその姿から邪悪な精神は垣間見えないけれど、このまま佇んでいるとは思えない。
この絵から、様々な物語が作れそうだよね!(笑)

有名な美術大学在学中から注目され、個展を開いて、卒業後は当たり前のようにアーティストになる人が多い時代。
今回紹介したジョディ・ファロンは、独学からスタートして、自ら師を探し出し教えを請い、表現を追求しているので、とても身近に感じられるタイプのアーティストなんだよね。
これからもダークで不気味な作品を発表してもらいたいと思う。
調べたところでは、恐らく日本でジョディ・ファロンについて書いている人はいないみたい。
実物を観てみたいと思うのは、日本でSNAKEPIPEだけなのかな。(笑)

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