【ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの大好きな曲。映像酔いに注意!】
SNAKEPIPE WROTE:
去年のうちから森美術館10周年記念企画として「アンディ・ウォーホル展」が開催されることは知っていた。
そしてすでに鑑賞を終えた長年来の友人Mから
「ウォーホル展、すっごい良かったよ!あと3回は行きたい!」
という連絡も受けていたSNAKEPIPE。
ではせっかくなのでご一緒しましょうと、ROCKHURRAHも加わり、またもや怪しい3人組が六本木に集合することになったのである。
森美術館の開館時間に合わせて待ち合わせをする。
9時50分にチケット売り場を目指すと、もうすでにチケット購入を待つ人で溢れている。
ぎゃー!こんなにウォーホル展が大人気なのか!と思っていると、どうやら森アーツセンターギャラリーでは「ラファエル前派展」が開催されていて、半数以上のお客さんはそちらが目当てだったみたい。
あー、びっくりした!
きっとあやしい3人組は「ラファエル前派展」鑑賞チームとは思われなかっただろうな。(笑)
去年8月に国立新美術館で開催された「アメリカン・ポップ・アート展」も六本木だったので、2年連続でポップアートの展覧会が催されるのは珍しいんじゃないかな。
あの時はポップアートを支援していたパワーズ夫妻のコレクションが展示されている企画だったので、ウォーホルだけじゃなくて、複数のアーティストの作品を鑑賞することができたんだよね。
今回はウォーホル一人だけの展覧会。
「アメリカン・ポップ・アート展」の時のウォーホルについての感想に
有名な作品が展示されていたけれど、
あまりにも見慣れすぎているためか
確認作業をしている気分になった
と書いているSNAKEPIPE。
果たして今回の「アンディ・ウォーホル展」はどうなんだろう?
既に有名な作品については、その道の専門家もいてSNAKEPIPEが語るよりもずっと詳しい説明がされているはず。
シルクスクリーンについての説明はそんな御仁にお任せすることにしよう。
今回はもっと初期の、シルクスクリーン以前の作品について書いてみようかな!
入場するとすぐにウォーホルの自画像や写真など、ウォーホル本人に関する作品が展示されている。
確かにウォーホルってマリリンなどの有名な作品に負けないくらい、本人が前に出るアーティストだったもんね。(笑)
同じようにポップ・アートだったらすぐに名前の出てくるロイ・リキテンスタインは作品は知っていても、リキテンスタイン本人をすぐに思い浮かべることはあまりないよね。
ウォーホルの子供時代の写真や80年代の女装した写真などを鑑賞した後に、商業デザイナーとして活躍していた頃の作品が展示されている。
以前ウォーホルに関する本は何冊か読んだことがあり、デザイナーだったことは知っていたはずだけど、その当時の作品を観た記憶はない。
ウォーホルといえば、シルクスクリーンを使った例の作品群ばかりがクローズアップされるから余計だよね。
上の画像はウォーホルが女性ファッション誌用に描いたイラストである。
華奢なピンクのサンダルが横向きに描かれている。
他にも靴、バッグ、洋服など女性が喜びそうな素敵なイラストがたくさんあって
「ウォーホルって絵が上手!」
と今頃になって気付いてしまうのだ。
だってウォーホルの肉筆画を観たことないからね!
いくらアメリカのピッツバーグ生まれとは言っても元々スロベニア移民の子であるウォーホルだからなのか、色使いや構図がアメリカっぽくない感じがした。
鳥や蝶をモチーフにした作品が何点かあり、陶器や花瓶などに描かれていたら似合いそうな雰囲気。
そんな中、非常に目を引いたのが右の「2歳のアンディ」という作品である。
まるで子供がいたずらで描いてしまったような、ぞんざいな線がたまらない!(笑)
頭に乗ってる蝶、左右違う太さと長さの腕、無関心そうだけれど、ちょっと笑ってる顔!
本当にアンディ・ウォーホルが2歳の時はこんなだったのかな?
初期の作品でポスターがあったら欲しかったのが左の「feet」ね。
文字を描いている部分と貼り付けている部分が混在していて、とても魅力的だった。
別バージョンで手もあったんだけど、この2枚を並べて部屋に飾りたかったなあ!
ところが残念なことに、販売されていたのはやっぱりいかにもウォーホルらしいポップ・アート系の作品をモチーフにしたものばかり。
一目でウォーホルだ、と判るものじゃないと売れないんだろうね?
今回の展覧会で面白かったのは、ウォーホルがニューヨークで作品制作を行っていた「ファクトリー」を再現したスペースがあったことと、「タイムカプセル」と称されたウォーホルがコレクションしていた雑多な資料の展示。
「ファクトリー」に関しては、今までにも何度かブログで書いたことがあるけれど、SNAKEPIPEの憧れの場所なんだよね!
一度行ってみたかったなあ!
もちろん「ファクトリー」にたむろしているような人種は、何かしらアート関係に携わっているような、日本で言うところのカタカナ職業(死語)で成功している人たちだろうから、見学に行くような場所じゃないんだろうけどね。(笑)
芸術家達の交流の場だっただろうなと想像するだけでワクワクしちゃうんだよね!
「タイムカプセル」は、なんでも収集していつまでも捨てないでいる性格が見えて、ウォーホルらしさがよく解るよね。
お菓子の包み紙とか、どこかの店のコースターまであるんだもん。
生涯独身だったというウォーホルは、もしかしたら子供っぽさをいつまでも持ち続けていた人だったのかもしれないね?
「アンディ・ウォーホルTV」という番組があったのかな、あまりよく知らないまま用意された椅子に座り映像を鑑賞していた時、驚くことがあった。
何かのパーティのシーンで、会場までTVカメラを案内していたのがなんと「ツイン・ピークス」での赤い服を着た小人だったの!
その映像では「ゼルダの伝説」のリンクみたいな服装だったけどね。
赤い服の小人については先週のブログでも書いたばかりだよね!
友人Mと顔を見合わせ「あっ!」と叫んでしまった。(笑)
奇妙な偶然の一致に驚かされたよ。
複製をアートとして認めさせてしまった、というのがウォーホルのすごいところだろうね。
マルセル・デュシャンがレディ・メイドをアートにしたのは1917年とのことなので随分昔の話だけど、世の中で一体どれだけの人がデュシャンの「泉」を知っているのかなあ。
ウォーホルのことはかなりの人が知っているに違いない。
アートを大衆にも行き渡らせた功績は大きいよね。
一目でウォーホルの作品だと判ってしまう点も含めて、ね。
残念だったこと2点。
1点目はヴェルヴェット・アンダーグラウンドについてほとんど紹介されていなかったことかな。
出ていたのは映像作品で少しだけ。
鳥飼否宇先生から頂いた今年の年賀状にも「ルー・リードが亡くなってしまいました」と書かれていたけれど、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのメンバーだったルー・リード死去などについては一言もなかったからね。
音楽との関わりも楽しみにしていただけに物足りなかったな。
もう1点は、観客のこと。
情操教育のつもりなのか、鑑賞した日は子供連れの家族が多く、非常に不快な思いをさせられた。
子供が走り回る、奇声を発する、大声で泣く。
静かに鑑賞している他のお客さんに迷惑がかかるような場合には、森美術館側でも対処して欲しかったな。
美術館は遊園地とか公園じゃないから。
静かに鑑賞できない子供は入場させないルールを作ろう。
映画と同じようにR指定が必要じゃないかと思ってしまう。
扱いとしては図書館と同じではないかと感じるがどうだろう?
去年の「アメリカン・ポップ・アート展」とは印象を変えて、アンディ・ウォーホルというアーティストをよく知ることができた展覧会だと思う。
最初に書いた「確認作業」だけにならなくて良かったな。(笑)