【冬の日差しで強い影ができた庭園美術館の看板を撮影】
SNAKEPIPE WROTE:
東京都庭園美術館は、他の美術館にはない独自の切り口で展覧会の企画をしているので、マメにチェックするように心がけている。
美術館の舞台である旧朝香宮邸が重要文化財なので、背景に合う作品選びをしているのかもしれない。
2015年「マスク展」、2019年「岡上淑子展」、2022年「奇想のモード展」など、ユニークな展覧会を鑑賞した総合的な感想ね!
そして今回は「交歓するモダン 機能と装飾のポリフォニー」で、1910年代から30年代のモダニズムについての企画だというから、ROCKHURRAH RECORDSの大好物。(笑)
NHKの日曜美術館アートシーンでも紹介されていたので、少し時期をズラして、2月の寒い日、ROCKHURRAHと目黒に向かったのである。
東京都庭園美術館は目黒駅から歩いて10分程度の距離だけど、日なたを選ばないと指先や耳が冷たくなってくる。
何度か訪れているので道に迷うことはないけれど、寒い中を歩くと美術館への道のりが更に遠く感じる。
庭園美術館の門を入ってから、旧朝香宮邸までも敷地が広いため、なかなかたどり着けない。(笑)
気候が良い時なら、周りの植物を眺めながらゆっくり行くんだけどね。
ようやく到着すると、開館と同時のチケット予約だったのに、すでに数名のお客さんがいる。
そして何やらサークルになって、説明を受けている7、8名くらいの団体までいるじゃないの!
うーん、はっきり言って鬱陶しい。(笑)
その団体とは、入り口で遭遇しただけだったから良かったよ。
前述したように旧朝香宮邸は重要文化財なので、撮影は禁止なんだよね。
素敵な企画ばかりなのに、この点だけが本当に残念でならないよ。
そのため使用している画像は、購入した図録からのものなので、ご了承ください!
SNAKEPIPEが今回の展覧会で一番注目したのが、テキスタイルや壁紙のデザインだったよ。
目移りするほど素敵なデザインがいっぱいあった中で、3種類をチョイス!
全てアトリエ・マルティーヌがデザインした壁紙だよ。
上が「ジギタリス」で左下が「アーティチョーク」、右下は「アイリス」。
黒を背景にした鮮やかさや、野菜をモチーフに中間色を使用した素晴らしいデザインセンスに脱帽!(笑)
1912年にこんな壁紙を使って室内を装飾していたなんて羨ましい限り。
SNAKEPIPEも欲しくなったよ!(笑)
ダゴベルト・ペッヒェ、1912年の作品「蓋つきの物入れ」。
高さが16cmほどの小さな陶器なんだけど、細工が細かいんだよね。
黒をベースに白色だけで模様を入れた、まさにモダンな逸品!
こんなに可愛らしい小物入れに一体何を入れたら良いんだろうね?
密封容器ではないから、茶葉などは無理みたいだし。
当時の暮らしぶりが分からないけど、きっと容器に見合う素敵な使い方をしていたんだろうなあ。
想像するだけでも楽しいね!
左はポール・ポワレが1910年から11年にデザインしたテキスタイルをシルクにプリントして作られたタイ。
原色使いが何とも派手で、使いこなすのが難しそう。
もしかしたら1910年代のほうがファッションに貪欲で、冒険する人が多かったのかも?
右はラウル・デュフィのスカーフで、モチーフは「連合国」だって。
各国の国旗で縁取られ、中央には6名の騎馬隊の勇姿があるよ。
これもシルクにプリントされてるんだけど、当時の染色技術が高いことが分かるよね。
染色の歴史に詳しくないので、詳しい方には叱られてしまうかもしれないけれど、こんなに細かい部分もくっきりと残っていることに驚いたよ。
このスカーフのデザインを使って、せめてハンカチでもミュージアム・ショップで売ってたら良かったのに!
右側は1923年にピエール・シャローが制作したフロア・スタンド。
「修道女」と名付けられているんだよね!
確かに遠目では、くるぶしまでの長いワンピースを着て、白い頭巾をかぶっているシスターのように見えるよ。
秀逸なネーミングに笑いそうになる。
「修道女」を配した室内画が左なんだけど、とてもオシャレだよね!
上部に三角形を組み合わせたシンプルなデザインは、現代でも通用するはず。
レプリカの販売希望だよ!
ROCKHURRAH RECORDSが憧れている1920年代。
上で紹介してきたような美しいデザインに囲まれて、街や生活の全てが文化的だったように想像する。
そんな時代を生きた紳士淑女は、きっと皆様オシャレだったよね!
載せたポスターは、1929年の「カンデーのゴム靴と雪靴」で、エドゥアール ・ガルシア・ベニートによるもの。
深めの帽子をかぶり、大きな襟巻きをした女性が傘をさし、颯爽と歩いている様子が描かれている。
長靴のポスターなので、赤色で強調しているよね。
色味を抑えたシンプルな構図でも、宣伝効果は抜群!
とても気に入った作品だよ。
上のポスターで女性がかぶっていた帽子は、きっとこんな感じだったんじゃないかな。
ブリム(つば)が小さくて、すっぽりと深くかぶるタイプ。
載せたのは、カラフルな糸をふんだんに使用して刺繍されてる帽子なんだよね。
素晴らしい出来に目を見張ったよ!
そして驚くのは、サイズの小ささ。
日本人と頭の大きさが違うんだよね。
こんな帽子が似合う1920年代の女性たち、益々憧れるよ!
同時代、日本にもモダンの先駆者がいたんだね。
SNAKEPIPEは初めて知る名前のようだけど、「日本初の商業デザイナー」とされる斎藤佳三!
載せた画像は「表現浴衣」と題された、大胆な模様の布だよ。
この布を使って実際に浴衣が縫われていて、その制作年が1930年頃になっていたので、布はそれより前に完成しているんだね。
大胆なデザインにROCKHURRAHからも感嘆の声が上がる。
斎藤佳三について調べてみると、あまりの偉業にびっくり!
図案家、作曲家、舞台美術家、演出家、ドイツ表現主義の紹介者、2度の渡航により20世紀初頭の西欧表現主義と多面的な活動によって「総合芸術」を目指した人物だというから只者ではない!
斎藤佳三については、もっと調べたいと思う。
森谷延雄、1925年の作品「『朱の食堂』の肘掛椅子」の派手さは、画像でも伝わらないかもしれない。
岡本太郎みたいに「なんだこれは!」と口にすること間違いなしの、圧倒的な存在感だったからね。(笑)
森谷延雄は家具やインテリアのデザイナーで、1920年から22年にロンドンでデザインを学んでいたという。
ハートをモチーフにしたモダンな椅子が、とてもオシャレだったよ!
1920年から21年にフランシス・ジュールダンがデザインした「コーヒー・サーバー」。
黄色をベースに、白と黒がポイントカラーにしてとてもキュートだよね。
「かわいい」「欲しい」
と2人で騒いだ逸品!
1920年代、恐るべし!
展覧会は、旧朝香宮邸から新館へと続き、第4章は1926年から1938年までを特集していた。
大好きなバウハウスを中心に作品が展示されていたよ!
その中で目が釘付けになったのが、1929年「U.A.M. 現代芸術家連盟」のポスター(もしくは冊子の表紙?)。
「U」「A」「M」を効果的に配置し、単純な仕掛けながらもインパクトのある仕上がりになっているデザインだよね!
まさにバウハウス的で気に入ったよ!
こんなデザインをROCKHURRAH RECORDSでも作ってみたいね。
1910年代から30年代のモダンを特集した企画展は、展示数のボリュームもあり鑑賞できて良かった!
東京都庭園美術館の情報は忘れずにチェックしていこう。
今度はどんな展覧会になるのか楽しみだよ!