ロックンロール世界紀行 Transit03

【独自の視点で世界を旅する、観光的要素はほとんどないけどね〜】

ROCKHURRAH WROTE:

3回目ともなるとさすがにくどい前置きなど要らないと思えるが、単に国名や地名のついた曲名(バンド名になる予定もあり)を挙げて、それにまつわるちょっとしたコメントをするだけというのがこの企画だ。

こういう趣旨のブログ記事が他にあるのかどうかさえ調べてないが、曲名の条件さえクリアすれば何でもいいというわけではなくて「70〜80年代のパンクやニュー・ウェイブが話題のメインで」というかなり限定的な内容となっている。当然だが、曲名としてよく使われるメジャーな国や都市は何回も紹介するだろうし、逆立ちしても一曲も出てこない不人気国なんてのも数多く存在してるに違いない。
あと、一番上の世界地図にバンド写真を分布させるという手法を取っている関係上、あまり同じ地域に固まるのは避けているのも当たり前。マンチェスターとシェフィールドとリヴァプールがそれぞれ曲名に付いたのを偶然発見したとしても同じ日のブログに載る可能性はないということだね。

やっぱりくどくて言い訳がましい前置きだな。

Mexico / The Waltons

自分でそういうジャンルの服装にトータルで挑戦した事はなかったけどROCKHURRAHの今の風貌で最も似合うのはウェスタンな服装だと言われる。いや、みんなに言われてるわけじゃなくてSNAKEPIPE一人に言われてるだけなんだけどね。
確かに怪しいガンマンのような格好させたら「そのもの」になってしまう。何十年もこういう格好してるに違いない、と思うような爺さんとかたまに見かけたりするけど、たぶんROCKHURRAHも一式揃えたら即日で年季が入ってそうなウェスタン野郎になってしまうに違いない。だから敢えてそういう方向性を避けてるんだけどね。
正統派ではなくてマカロニ・ウェスタンと呼ばれるような映画も色々見てきたし、子供の頃はクリント・イーストウッドではなくてリー・ヴァン・クリーフ(主に悪役)に憧れていた。ああいうオッサンにだったらなってみたい気はするな。
そのマカロニ・ウェスタンに登場するメキシコ人は絵に描いたような卑劣漢で裏切らない筈がない、という印象を叩きこまれて育ったものだ。
でも陽気で死をも笑い飛ばしてしまえるようなタフな国、実は大好きだよ。ロバート・ロドリゲスは大好きだしトルティーヤは好物だし。あまり説得力ないか。
この国も間違いなく危険そうな印象はあるけど、個人的に一度は行ってみたい国の候補だね。

そんなメキシコの魅力を存分に伝えてくれるのがウォルトンズのこの曲、そのものずばり「Mexico」だ。カウパンクやラスティックの年季が入ったファンならばこのバンドの事ももちろん知ってるだろうけど、一般的にはほとんど知名度のないドイツのバンドだ。
本人たちは出てきた当初は自分たちの音楽性をウェスタン・ロカビリーというような言い方していたが、カウパンクとかラスティックという一言でどんな音楽かピンと来ない名称よりも非常にわかりやすくていいな。
ドイツという、どうあがいてもウェスタン気取りにはなれないような環境で1985年にデビューして以来、延々と同じ路線を貫いている筋金入りのカウパンク・トリオがこのウォルトンズだ。ベースはロカビリーのウッドベースではないんだが、キレのあるギターと軟弱そうなヴォーカルが魅力、曲も典型的カウパンクで作曲センスもROCKHURRAHの大好きなパターン。とにかく軽快で時には軽薄、典型的なんだけどインチキ感満載でペラペラなのかそれとも懐が深いのかよくわからない紙一重の世界。
しかし見た目がネルシャツのみでウェスタンを表現するという貧弱さ、ルックス的にはどうでもいいタイプ。この音楽でせめてアラームやイップ・イップ・コヨーテ(どちらもウェスタン系ファッションが似合ってた80年代のバンド)くらいに決めてくれれば良かったのに。人に勧めるのを躊躇してしまうタイプのバンドだよ。
曲はちょっと聴いただけで典型的メキシカンな雰囲気バツグン、哀愁のある名曲だな。今まで3回もこの「ロックンロール世界紀行」をやってきて、これだけ地名と音楽が一致したのもはじめてかも。

La Düsseldorf / La Düsseldorf

特にどこの都市が、と指定があるわけではないが、ROCKHURRAHにとってはドイツは行ってみたかった国の上位に必ず入るところだ。ニュー・ウェイブの時代にドイツ音楽に傾倒していた時期があって、DAF、デイ・クルップス、デア・プラン、フェールファーベンなどなど、愛聴していたものだ。これらのノイエ・ドイッチェ・ヴェレ(このブログでは何度も登場しておなじみの言葉。ドイツのニュー・ウェイブの事)のバンドの多くは首都ベルリンではなくデュッセルドルフ出身であり、だから短絡的によく知りもしないデュッセルドルフに憧れていただけの話。
ドイツの都市の中でも特に発達した大都会で音楽や芸術も盛んな場所という印象だけで、ここはどうしても行きたい、見ておきたいというような具体的な願望はないんだよね。
ROCKHURRAHとSNAKEPIPEは元からそういう欲求が薄くて、旅に行ったらぜひここに行かないと、という目的がそもそも通常の観光とはかけ離れていたりもする。ただそこに居て風景が違うだけ。日常と同じ行動してるだけでも満足なんだよね。
まあそんな風に書くと高尚ぶったヤツなどと思われかねないが、欲まみれの旅行だけはしたくないな。
とにかく整然とした街並みや建造物に自然、もし行けたとしたらドイツのどこを見ても感動する事は間違いないだろうね。

そんなデュッセルドルフの魅力を余すところ無く伝えてくるのがラ・デュッセルドルフのこの曲、そのものズバリ「ラ・デュッセルドルフ」だ。さっきからひねりが全然ないぞ。
元々クラフトワークのメンバーだったミヒャエル・ローターとクラウス・ディンガーの二人が1970年代半ばに結成したのがノイ!というジャーマン・ロックの伝説的なバンド。その二人が決別した後にクラウス・ディンガーの方が弟のトマス・ディンガーなどと共に作ったのがこのデュッセルドルフなるバンドだ。
ノイ!はひたすら単調に反復するハンマービートというドラムのスタイルを創りあげて、後の時代のパンクや80年代以降のリズム・マシーン(を使ったテクノやエレクトロニクス・ポップといった音楽そのもの)に多大な影響を与えたバンドとして著名だが、そのハンマービートの創始者がクラウス・ディンガーという事になる。その人がやってるわけだからラ・デュッセルドルフの方もやはりはじめにハンマービートありき、というスタイルを踏襲している。
このバンド自体はパンクでもニュー・ウェイブでもなくジャーマン・ロックやプログレッシブ・ロックの範疇で語られる事が多いが、ほとんどニュー・ウェイブっぽいような曲もあり、ちょうど境界線上にある音楽だと言える。
この曲は1976年の1stアルバムに収録のものだが、反復するハンマービートに投げやりなヴォーカル、途中でちょっと巻き舌。まさにパンクやニュー・ウェイブの登場を予見するような名曲だ。
ちなみにこの1stアルバムは1曲目が「Düsseldorf」2曲目が「La Düsseldorf」という掟破りな曲目となっていて、13分以上ある最初の曲も静と動のメリハリがあって素晴らしい。彼らのアルバムが割とどうでもいいような、アートなのか何なのかよくわからないジャケットなので素通りされがちだが、音楽は本当にいいので聴かず嫌いだった人はぜひ体験してみて欲しい。

Hiroshima Mon Amour / Ultravox!

海外のバンドが日本を曲名にする時、東京以外の場合はかなり少ないがその珍しい例がこれ。とは言ってもこれはマルグリット・デュラスが脚本を手がけたアラン・レネ監督の映画「二十四時間の情事」なる作品の原題らしいので外国人が知ってても全然おかしくはないタイトル。
スキッズのリチャード・ジョブソンもデュラス大好きで詩の朗読をしたソロ・アルバムを二枚も出してるね。
海外における広島のイメージはたぶん=原爆でしかないんだろうな。決して「仁義なき戦い」とか「もみじまんじゅう」とかは連想しないわけだ。
ROCKHURRAHはなぜか大昔に受験でこの地を訪れたのが唯一の広島体験だ。全然旅行気分じゃないシチュエーションだったから普通の観光も皆無だったにも関わらず、どういうわけだか真っ赤なサテンのジャンパー(スカジャンとかではなく本当のサテン・ジャンパー)を買ったのだけは覚えている。受験だからおそらく真冬、その時に何でサテンのジャンパーを買うか?しかも大学が僻地だったから電車やバスではなく、リッチにタクシーで向かい、その車中でなぜか運転手とヒバゴンの話題をしたのを思い出す。広島の比婆山で目撃されたという未確認生物ね。
何だか若い頃のROCKHURRAHは理解に苦しむところの多い人物だな。

そんな広島の魅力を充分にうまく伝えてくれるのがウルトラヴォックスのこの曲「ヒロシマ・モナムール」だ。
1980年代初期、男が化粧してモード系に着飾ったニュー・ロマンティックなる音楽が大流行した。その頃に注目されたバンドのひとつがウルトラヴォックスなんだが、実はロンドン・パンク発生よりさらに前から活動していたベテラン・バンドだった。
初期の3枚のアルバムはジョン・フォックスがヴォーカル、その後は元スリック、PVC2、リッチ・キッズのミッジ・ユーロがヴォーカルとなっていて「ニュー・ロマンティックがなんとかかんとか」などと評されるウルトラヴォックスはミッジ・ユーロ在籍時のもの。
彼が入る前が個人的に最も好きな時代だな。
「Young Savage」や「RockWrok」などの曲は早口でアグレッシブな歌と演奏でパンクの理想型そのもの、今でも色褪せない素晴らしい名曲だ。シンセサイザーなどの電子楽器をいち早く取り入れた曲作りでテクノやエレポップの元祖的存在と言われる先進的なバンドだったが、それは後の時代の評価。やってた当時はパンクっぽい曲しか評価されなかったらしい。あと2年ほど遅ければドンピシャだったのにね。

ジョン・フォックス在籍時のウルトラヴォックスはバンド名の最後に!がついていて、上に書いたデュッセルドルフの前身バンド、ノイ!の影響が感じられると色々なところで書かれていているがROCKHURRAHはそんなに感じなかった。もしかして鈍感?
シンセサイザーもプログレ風というよりは同じ未来派バンドであるビー・バップ・デラックスあたりとも通じると個人的には思ったよ。

1stアルバムはネオン管の下でメンバー全員がマネキン人形のようにつっ立っているSFっぽいもの。2ndはアンディ・ウォーホルのポップアート風(+イーノの「Taking Tiger Mountain」ぽくもある)。
このようにアルバムアートのデザインもなかなか凝っていたがPV見てわかる通りジョン・フォックスはエラが張った怖い目つき、ややおばちゃん顔の男だし、他のメンバーも見た目がちょっと気色悪かったり、スタイリッシュなアートワークとのギャップが残念なバンドだったな。

脱退後ソロになったジョン・フォックスはこの鋭い目つきでホンダ・タクトというスクーターのCMに出演したりもしたが、ROCKHURRAHはホンダではなくヤマハを愛車としてたので彼とは縁が薄い。
やっぱりソロよりもウルトラヴォックス時代の方が数段いいなあ。

世界紀行などと言っておきながら相変わらずまるっきり旅情をかき立てないこの文章。パンクやニュー・ウェイブの曲の題材がそもそも「こんな感動的な景色の国に行って来ました。ショッピングもグルメも満喫」というような趣旨とは違う場合が多いから仕方ないよね。そんな内容の歌だったらたぶん聴いてないだろうし。
TVと違って誰も読んでくれなくても書き続けるし不人気だから打ち切りにもならないけど、ここまで読んでくれた方には「ありがとう」と言いたい。
まだネタとしては色々あるから次回もよろしくね。

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