【グラム集大成、とも言いがたい。さて、この曲をやってるのは誰でしょう?】
ROCKHURRAH WROTE:
二週連続で書くだけの気力がなかったので間があいてしまったが、予告通り今回はグラム・ロック編サイドBを書いてみよう。読んでない人はA面から読んでね。
グラム・ロックが流行したほんの短い間だけに音楽活動を集約させたバンドはありそうで実はあまりない。だからグラム・ロックのみで語られるバンドというのも非常に少ないわけで、この記事で取り上げたバンド達も「昔ちょっとグラムやってまして」程度のものばっかりだが、まあそれは仕方ないと思って許して。
男が女っぽい格好したり過剰なまでの化粧したり、代表的なグラム・ロックにはそういう部分が多いが、このスレイドはヴォーカルがモミアゲにヒゲ男で普通の意味でのグラムっぽさはない。がしかし、イギリス伝統のタータン・チェックを多用した衣装や派手で陽気なステージなど、グラムを感じさせる部分も多く持っていて人気があったな。
この曲はクワイエット・ライオットがカヴァーした事でハードロック&ヘヴィメタル界では有名。You Tubeとかで気軽にいつでも映像が見れるようになる前の時代では、むしろスレイドの原曲の方に馴染みがないという人が多かったのじゃなかろうか。その後はオアシスとかもカヴァーしていたな。
個人的にはスレイドはグラム・ロックの時期よりも80年代のヒット曲、スキッズやビッグ・カントリーの推進したスコットランド民謡+応援歌風の「Run Runaway」が好きだ。かくいうROCKHURRAHも応援団出身という意外な過去があるし(笑)。これは関係ないか。
70〜80年代に大活躍したロック界一のダンディ男(?)、ブライアン・フェリー率いるロキシー・ミュージックもグラム・ロック出身の大物バンドだ。後期エルヴィス・プレスリー、シャナナ、そしてゲイリー・グリッターなどに共通するキンキラのスーツに「浮浪雲(ジョージ秋山)」のような長髪リーゼント(笑)、そして非常に好き嫌いの分かれる粘着質のいやらしい声を武器に登場したのが71年。後の「大人のダンディズム」というバンドのイメージとは大違い・・・ああいやらしい。
当時のロキシー・ミュージックは見た目のインパクトも音楽も革新的。その主人公ブライアン・フェリー以上に派手だったのが後にアンビエント・ミュージックの創始者となるブライアン・イーノだ。ウィンドウズ95の起動音作曲者としても有名だが、この時代はまだグラム真っ只中。この人の異色なきらびやかさとクジャクのような衣装には誰もが圧倒される事間違いなし。
この初期ロキシー・ミュージックの名曲「Re-Make/Re-Model」は一般的なロックの世界でシンセサイザーやサックスなどのノイズ的演奏を楽曲に取り入れてヒットしたという、当時としてはかなり先駆的な作品。やっぱりイーノはいいのう。
ロキシー・ミュージックはROCKHURRAHごときが語るまでもなく、後の時代にもスタイリッシュなヒット曲を数々と出して有名になってゆくバンドなんだけど、やっぱり初期のイーノがいた頃の音楽的まとまりのなさ、キワモノっぽさが一番だと思う。
何か「初期」「当時」という表現が多いな。
グラム時代にはちょっと遅れすぎの1974年にデビューしたビー・バップ・デラックスは元々ソロ・シンガー&ギタリストだったビル・ネルソンによるバンド。デヴィッド・ボウイやクイーンといった大物がやっているような音楽的世界をよりB級に展開しただけという見方もあるけど、好きな人にとってはこのB級加減がたまらない魅力でもある。ROCKHURRAHも若年の頃、最初に自分で気に入って全部買い揃えたバンドがこのビー・バップ・デラックスなので、後の自分の音楽的人生に方向性を与えてくれた師匠のような存在だ。個人的にコックニー・レベルと共に最も思い出深い。
さて、このバンドはセミアコ・ギターの形をしたドクロというインパクトのあるジャケット「Axe Victim」でデビューしたが、初期は濃い目の化粧でグラム度も高かった。デヴィッド・ボウイやT-Rexなどと比べるとかなりマイナーな存在なのでこの初期の映像はほとんどないのが残念。ビル・ネルソンの美学に溢れた流麗なギターとメロディアスで未来的な音楽、売れる要素はたっぷりだったのに日本ではさっぱり人気なかった。しかし映像(初期とはメンバー総入れ替えとなった75年の2nd時期)を見ればわかるように70年代ヤクザが好んで着ていたような幅広襟の白いスーツにパンタロン。そしてビル・ネルソンは後のウルトラヴォックスのジョン・フォックスとも相通じるようなおばちゃん顔、ギター持ってなかったら良く見ても演歌歌手、とてもロック・ミュージシャンには見えないよ(笑)。ルックス面でかなり損をしてたバンドだなあ。これで何故にグラム特集で取り上げたの?と突っ込まれる事必至だな。単に書きたかったから。わかってくれる人もいるじゃろうて。
しかし彼らの事を書いてたらキリがないので短いコメントになってしまったが、きっと何かの形でまとめて書きたいとは思っている。
それまでロックをあまり聴いた事がない婦女子や子供でもファッションや見た目の面白さから音楽を聴くようになる。そういう通俗的な部分でグラム・ロックや後のパンクが果たした役割は大きいはず。そのグラム・ロックの中でもピカイチに金ピカだったのがこのゲイリー・グリッターだ。過剰なまでの光具合とステージ・アクション、後のロックに与えた影響云々、というよりは、にしきのあきらや西条秀樹が目指したものと見事に呼応する世界だろう。しかしゲイリー・グリッターのキワモノさもこの時代には充分カッコイイものだったのは確かで、グリッター・サウンドの継承者もいる。80年代初頭に大流行したアダム&ジ・アンツ(アダム・アント)は間違いなくニュー・ウェイブ世代のグリッターだったし、サイコビリー界の大御所クリューメンはこの曲を見事にサイコビリー風にカヴァーしている。サイコビリーがサイコビリー風にカヴァーしてるのは当たり前だが・・・。2行程度に5回もサイコビリーと書いてしまったROCKHURRAHは尋常じゃないが・・・。この映像のギンギラ衣装もすごいが、ゲイリー・グリッターはグラムが廃れた後でもずっとグラムな事やってて、「北斗の拳」もしくは「マッドマックス」の悪役みたいな衣装だったり、継続は力なりという言葉を見事に体現した類まれなロック・スターだったと言える。
有名な音楽プロデューサー、ミッキー・モストが設立したRAKレコードで、スージー・クアトロなどと共に人気だったのがこのバンド。前にA面でも書いたマイク・チャップマン&ニッキー・チン(Sweetの項)が手がけた大ヒットが「Tiger Feet」だ。見るからに軽薄そうなメンバーの振り付けはともかく、この曲の光り輝くポップさ(何じゃこの頭悪そうな表現?)は素晴らしい。圧倒される。A面B面通して今回のROCKHURRAHは圧倒されまくっているな(笑)。この曲はまたしてもサイコビリー・バンドのグリスワルズがサイコビリー風にカヴァーしている事で一部のサイコビリー界では有名。しつこい?なんかグラムのカヴァーしてるのはサイコビリーばかりのような書き方だなあ。
しかしそもそもMud、この見た目で本当にグラムなのかという疑問が生じるな。まるで池沢さとしの漫画に出てきた、スーパー・カー乗り回してるプレイボーイの御曹司みたいなヴォーカルの風貌を見てふと思った次第だ。
つまりグラムというのは音楽でもきらびやかな見た目でもなくて、我々の心の中にある固定観念なのかも知れないね。というのは大ウソだから信じないように。
2回で書き終わる予定だったグラム・ロック特集だが、まだ少し書き足りないところがあるなあ。「シルバーヘッド忘れてねー?」とか「アメリカのアリス・クーパーやニューヨーク・ドールズは?」などと不満もいっぱいだろうね。しかしこのブログの続きを熱望する人もいないだろうし書いてる本人もさすがに飽きてきた。
次をやるかどうかは未定だけど、気が向いたらまたまとめてみたいと思う。