トム・サックス ティーセレモニー 鑑賞

20190609 01
【会場入り口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

長年来の友人Mから展覧会ハシゴの誘いを受けた。
2つ共、面白そうな企画である。
移動距離はあるけれど、時間配分して回ってみよう!
ROCKHURRAHとウォーキングをしているSNAKEPIPEなので、足腰も強くなっているはずだし。(笑)
梅雨入り前の、割と涼しい日に友人Mを待ち合わせたのである。
冷房に弱いSNAKEPIPEは、脱ぎ着できるようにジャケットを着用。
なんと友人Mはノースリーブ一枚とは!
しかも背中部分はレースで、インナーが透けて見える状態。
「ストール持ってくれば良かった」
って、ちょっと服装が先取りし過ぎでしょ!(笑)

まず向かった場所は初台の東京オペラシティ アートギャラリーである。
このギャラリーに何度も足を運んでいる友人Mとは違って、今回が初めてのSNAKEPIPE。
オペラシティアートギャラリーではトム・サックスの展覧会が開催されている。
恥ずかしながらトム・サックスの名前を聞くのも、作品を鑑賞するのも初めてのSNAKEPIPE。
まずはプロフィールを調べてみようか。

1966年ニューヨーク生まれの52歳。
彫刻家、という括りで良いのかな。
バーモント州のベニントン大学卒業後、ロンドンの建築協会建築学部で建築を学んだ後、フランク・ゲーリーの家具店で2年間働く。
1990年頃ニューヨークでスタジオを設立。
その後、数年間は百貨店バーニーズ・ニューヨークの照明ディスプレイなどをしていたらしい。
1994年にクリスマス・ディスプレイを任され、「Hello Kitty Nativity(ハローキティ・キリスト降誕)」というタイトルで発表されたのが左の作品だという。
賛否両論のため注目を集めたというのは、納得だよね。
1995年にニューヨークのモリス・ヒーリーギャラリーで開催された個展「Cultural Prosthetics」では、ファッションと暴力の融合をテーマにしたという。
この発想は「収集狂時代 第6巻 Louis Vuitton編」で記事にしたモノグラムのチェーンソーやガスマスクを思い出すね。
トム・サックスのHPで確認すると、シャネルのロゴが入ったチェーンソーやギロチンを発見!
この手の作品を誰が一番先に発表したのか不明だけど?
経歴からは、例えば美大を卒業した、というような記述は見当たらない。
ディスプレイを任されたことからアーティストになったとは、異例かもしれないね。
トム・サックスの作品はニューヨークのメトロポリタン美術館、ソロモンR.グッゲンハイム美術館、ホイットニー美術館、パリのポンピドゥー・センターなど世界の主要美術館に所蔵されているという。
かなりの有名人であるトム・サックス、今回の展覧会は「ティーセレモニー」だって。
ギャラリーの受付で、撮影オッケーの確認を取る。
こういう美術館、大好きだよ!(笑)

「現代」と「茶の湯」が出会う「トム・サックス ティーセレモニー」は、アメリカ国内を巡回し、今回、日本で初めて開催する待望の展覧会です。
トム・サックスは茶の湯の精神や価値観を、21世紀の宇宙開拓時代に必須の人間活動の一つとして考え、ティーセレモニー(茶会、茶道)に真摯に向き合っています。
彼のユニークな発想や視点を通じて映る日本の姿は、新しい価値観や世界観を気づかせてくれる貴重な機会となるでしょう。

展覧会のイントロ部分を引用させて頂いたよ。 
キティちゃんをキリストになぞらえてしまうような、レディ・メイド(既成品)作品を発表しているトム・サックスは、どんな「茶の湯」を展開するんだろうね?
展覧会でも流れていた動画があったので、まずはこちらから。
13分以上あるので、時間に余裕がある時にゆっくり観ようね! 

2012年から本格的に茶道を学んだというトム・サックス。
動画は、まず掃除をするところから始まっているよね。
お客様を迎える準備に余念がないけれど、道具や様式が日本人から見るとやっぱり変!
展覧会では動画で使用された様々な機械(?)や仕掛け、小道具などが展示されていた。
右は動画の中で木を切るために使われた機械じゃないかな。
切った木を花入れのような器にしていたように見えたけど。
この作業を行うために、わざわざ兜を模したヘルメットをかぶっていたのはギャグなのか?
日本人でも完全な茶室に入ったことがないSNAKEPIPEは、こんな儀式が茶道で行われているのかは不明だよ。
茶器を清めるために布で拭く動作を、トイレでも行うのはやり過ぎだと思ったけどね!
実は、動画を観たのは立体作品を観た後だったので、立体だけを観ている時には何のための道具なのか分からないまま鑑賞していたんだよね。
あの順番が逆だったら、もっと興味深かったのかもしれないな。

動画を鑑賞している時に、思わず吹き出してしまったのが鯉のシーン。
会場には、本物の鯉が泳いでいたよ。
動画では、この鯉を乱暴に網ですくい、刺し身にしていたよね。
あのー、日本人は茶道の席で、刺し身は食べませんから!
何か色んな日本的な習慣がごちゃまぜになっていて、その「ちぐはぐさ」がおかしい。(笑)

枯山水に見立てた日本庭園を表現している空間。
中央にあるのは盆栽で、左には五重塔が見える。
この位置から見ると、日本のイメージをうまく捉えているようだけど、、、。
盆栽に近寄ってみると、綿棒や歯ブラシが枝や葉の代わりになっていることが分かる。
更に枝部分はネジ止めされているし、植木鉢代わりになっているのは、アルファベットが印字された木箱。
既成品を流用して制作するというトム・サックスらしい作品なんだろうね。
松のようにも、桜にようにも見えて、日本っぽい仕上がりになっていたよ。

「おもてなし」をするための茶室。
茶室も掃除していたけれど、畳の縁を踏んでいたのは仕方ないだろうね。
恐らく多くの日本人は「畳の縁を踏んではいけない」と教育されてきたはず。
SNAKEPIPEは、この理由を知らなかったので、早速調べてみることに。
かつてはこの縁に、家紋が使用されていたという。
縁を踏むことは、家紋を踏みつけることになるため「踏んではいけない」になったらしい。
現代でも家紋を使用した畳の縁はあるのかもしれないけど、一般家庭ではお目にかからないよね。
マナーの部分だけが残ったということかな。
トム・サックスの茶室は、何故か3つのカメラでコンクリートブロックを縦にしたような木枠(?)を写し続けていた。
鯉の後ろにもその映像が見えるよね?
これは意味が分からなかったなあ。

茶室に向かう前に、ゲストが立ち寄るポイント。
火鉢にある焼けた炭をキセルに入れて、一服していたよね。
キセルについてもよく知らないんだけど、炭を持ちながら吸ってるシーンは見たことないよ。
茶室に入る前に手を清めていたけれど、あれも神社や寺にある手水舎だよね?
これもまたミックスされちゃったのかな。
一連の作法になっていたのが、観ていておかしかった。

アメリカ人であるトム・サックスが掛け軸を作ると、こうなるんだね。(笑)
これも観た瞬間に笑ってしまった作品だよ。
誰でも知っているマクドナルドのマークに、落款印代わりのアメリカ国旗。
ハンドメイドだから仕方ないかもしれないけれど、欲を言えばもっと掛け軸の土台をきっちり作ってもらって、表装部分に例えばハンバーガーの包み紙などを使用してもらったら、もっと良かったと思ってしまったよ。(笑)
他にもロケットの絵や、禅画の円相を描いたのか、日の丸を描いたのか不明の掛け軸などが並んでいた。

トム・サックスの動画は、特別に制作されたジオデシック・ドーム状のシアターで上映された。
このドームも作品だったんだね。
鑑賞するための椅子本体はサムソナイトで、これもトム・サックスの作品。
表側には「NASA」の文字があり、背面にはロットナンバーと人の名前がマジックで記載されていた。
人の名前にも意味があったのかもしれないけど、よく分からなかったよ。
30分おきに上映時間が設定され、SNAKEPIPEと友人Mは12時40分の回を鑑賞。
なんとも不思議な茶会風景を観たよ。

茶道はもてなしの心を慈しみ、儀礼を通じて地域の発展やコミュニティの強化を促し、「地」「空」「火」「水」といった基本的な要素を取り入れながら、心身の世界との一体感や親密なつながりを見出し、自身を静かに見つめ直す機会を与えるものです。
トム・サックスによる茶道はその無限の空間を探求することによって、新たな世代や観客層がこれらの価値観やそれを支える文化を体感できる、豊かで心動かされるプロジェクトなのです。

2016年に「ティーセレモニー」が開催されたニューヨークにあるイサム・ノグチ美術館のキュレーターの方が話した内容を転記させてもらったよ。
なんか拡大解釈してるような?(笑)
外国人からは、「日本の文化を再現」しているように思って「これぞJAPAN」と感じてしまうのかもしれないよね。
SNAKEPIPEは「豊かで心動かされるプロジェクト」というよりは、トム・サックスの「ブラック・ジョーク」と感じたよ。
トム・サックスがちゃんと正座ができていたところはすごいと思ったけど!

和菓子の代わりにOREOクッキーを出したり、映画「スター・ウォーズ」の登場人物であるヨーダのディスペンサーから出たPEZをふるまう。
抹茶を点てる時に使用する茶筅(ちゃせん)はモーター付き。
既成概念をおちょくったアートというと、会田誠を思い出してしまう。
会田誠の作品は、かなりブラック・ジョークに満ちているからね!(笑)
トム・サックスの「ティーセレモニー」では、会田誠のような禁忌に触れる作品は見当たらなかった。
レディ・メイド作品を初めて発表したマルセル・デュシャンを継承している、ということなのかな。

今回作品を鑑賞し、感想をまとめていて、非常に調べ物が多いことに気付く。
例えば道具の名前など知らないことだらけなんだよね。
茶会の席には掛け軸と花入、更にお香を炊くなんて知識もなかったし。
外国人の作品を鑑賞することで、日本の文化を勉強することになった、というのが驚きと収穫かな。
ただし、本気で茶道やってる人からは不評だろうけどね。(笑)

ハシゴしたもう1つの展覧会は、次回まとめることにしよう。
SNAKEPIPEは一体何を鑑賞してきたのだろう?
正解は次週を待て!(笑)

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