マーク・マンダースの不在 鑑賞

20210418 top
【いつも同じ構図でスミマセン!】

SNAKEPIPE WROTE:

2019年5月に鑑賞した「百年の編み手たち〜ただいま/はじめまして」 で、恐らく「はじめまして」だったオランダ人アーティスト、マーク・マンダースの作品は、今でも強く印象に残っている。

かなり犯罪めいた雰囲気で、ドラマ「ハンニバル」の殺人現場を思い出してしまう。

そんな感想を書くほど、怖い作品だったんだよね!
東京都現代美術館でマーク・マンダースの個展が開催されることを知り、ワクワクした。 
タイトルは「マーク・マンダースの不在」だって。
その意味について解説が載っているので、転用させていただこう。 

架空の芸術家として名付けた、「マーク・マンダース」という人物の自画像を「建物」の枠組みを用いて構築するというもの。
その建物の部屋に置くための彫刻やオブジェを次々と生み出しインスタレーションとして展開することで、作品の配置全体によって人の像を構築するという、きわめて大きな、そしてユニークな枠組みをもつ世界を展開しています。
タイトルにある「不在(Absence)」は、インスタレーションに見られる時間が凍結したような感覚や静寂、既に立ち去った人の痕跡、作家本人と架空の芸術家との間で明滅する主体など、マンダース作品全体の鍵語として複数の意味を担うものですが、それはまたこの建物が作家の不在においても作品として自律的に存在し続けるものの謂いでもあるでしょう。
(展覧会サイトより抜粋)

長文になってしまったけれど、マーク・マンダースというアーティストを知る手がかりになるんじゃないかな?
SNAKEPIPEが架空の美術館に展示するための作品を集めるという企画である、当ブログの「SNAKEPIPE MUSEUM」に近い発想といえるのかも。
マーク・マンダースについてもう少し調べてみよう。 

1968 オランダ生まれ
1988〜92 アーネムのHogeschool voor de Kunsten(アーネム市芸術大学)で芸術を学ぶ。
最初にグラフィック・デザイン、次に作家を目指したという。
自身のスタジオを始める
1992 アート&パブリックスペースのカテゴリーにおいてDutch Prix de Romeの2等賞を受賞
1998 サンパウロ・ビエンナーレに参加
2002 ドクメンタ11に参加
2010 Dr.A.H.ハイネケン芸術賞を受賞
2013 ヴェネツィア・ビエンナーレに参加

1968年生まれなので、現在52歳。
1986年から「建物としての自画像」というコンセプトで、彫刻やオブジェを制作しているというので、かれこれ35年間になるんだね。
80年代を経験した人ということで、同志と呼ばせてもらおう。(笑)
世界各地で個展を開催し、現在はベルギーを活動拠点にしているという。
マンダースの個展、とても楽しみだよ!

久しぶりに晴れた風の強い日、長年来の友人Mと待ち合わせる。
気温も低く、冬に逆戻りしたような寒さに驚いてしまう。
初夏を思わせる陽気の3月を経験した後だから、尚更だよ。
友人Mはあまりの寒さに3回、着替えて用心したらしい。
SNAKEPIPEも友人Mも寒がりなんだよね。(笑)
現代美術館に到着すると、入り口に観慣れない彫刻を発見!
「これ、マンマンのだよね?」
友人Mは、いつの間にかマンダースのことを「マンマン」と呼んでいるよ。(笑)
「2つの動かない頭部」というブロンズ彫刻は、表と裏で顔が違っていた。
明るい日差しを浴び、木場公園の新緑を背景にした彫刻は、とても良かったよ!

撮影を終えて、入場する。
この日は行列もなく、すんなりチケットを購入。
空いてて良かったよ!
マンダース展は、一部作品の撮影が可能とのこと。
どんな作品が待っているのかな?

マンダースの代表作とされる2010-11年の作品、「マインド・スタディ」。
遠景で観ると分かるように、ロープを張った微妙なバランスの作品なんだよね。
両腕と片足がもがれ、残った1本の足を思い切り突っ張らせて、ようやく立つことができそうだよ。
人物のアップも載せてみよう。
顔立ちは穏やかというより無表情。
恐らくマンダースは子供時代、何かしらの適応障害だったんじゃないか、と予想する。
周りに馴染めず、読書や絵を描くなど一人の時間を多く過ごしていたように思える。
孤独感や精神的に追い詰められた様子を、この作品から感じたSNAKEPIPEだよ。

2014-18年の作品「黄色と青のコンポジション」。
今回展示されていた作品に多く観られたのが、この黄色い板(?)が左目から頬に埋め込まれているもの。
何かの抑圧を意味しているのかな、と思ったのは作品が「自画像」だと知ってからだよ。
作家本人を表しているのでなければ、狂気の犯罪者になってしまうからね。

1992-93年作の「狐/鼠/ベルト」は、床に置かれた作品だった。
動物がこの状態でいるということは、恐らく死んでしまった状態だと思うけれど、とてもかわいらしかったんだよね。
どうして鼠がベルトで固定されているのか?
鼠がマンダースで、なんて想像は陳腐と言われてしまうかな。(笑)

東京都現代美術館の「ただいま/はじめまして」の展示も、薄いビニールで仕切られた空間に、ポツンと作品が展示されていたんだよね。
今回も作品ごとにビニールの仕切りがあり、次のスペースに行くまで、 どんな作品が待っているのか分からないようになっている。
ビニールを抜けて目に飛び込んできたのが、この4体の彫刻だった。
観た瞬間に「うわっ」と声を出してしまうほどの大きさと迫力!
巨大な仏像が目の前にあるような感覚だよ。
そしてこの彫刻も左目に黄色い板が埋め込まれているんだよね。

2019年に鑑賞して怖かった作品「椅子の上の乾いた像」。
東京都現代美術館が所蔵している作品なので、当然ながら東京都が購入した、ということになるんだろうね?
現在東京都民のROCKHURRAH RECORDSなので、アートに関することに税金使ってくれるなら喜んで払いますとも!と両手を挙げて賛成するよ。(笑)
そしてやっぱりこの作品は、犯罪っぽく見えたんだよね。

まるで「ブレードランナー2049」に出てきたような巨大な頭部の彫刻作品。
タイトルは「乾いた土の頭部」で、2015-16年の作品だよ。
この作品も大きさがあるので、インパクトが強いよ。
SNAKEPIPE MUSEUMに展示して、ブレード・ランナーごっこしようかな。(笑)
この作品が中庭にあったら嬉しいだろうな。
早速価格交渉してみよう!(うそ)

「wrapped in plastic」な状態の作品「黄色い鉛筆のある土の像」を観て、真っ先に頭に浮かんだのはアメリカのTVドラマ「ツイン・ピークス」のローラ・パーマー!
ビニールからはみ出たブロンドヘアは、絶対ローラだよ。(笑)
きっとマンダースも観て、ファンだったに違いないと勝手に解釈する。
そしてツイン・ピークスの迷宮のような謎に、SNAKEPIPEや友人Mと同じように喜んだだろう、と想像する。
同志、と書いたのはそんなこともあったからなんだよね!

この作品を観て「欲しい!」と2人で声を出してしまう。 
「黄色い縦のコンポジション」は、木の間に切断された頭部がはさまっている。
不気味さと美しさが混在している作品なんだよね。
「こんなブックスタンドがあったら良いのに」
友人Mがいう。
確かに、本棚にこの作品があったら素敵だろうね!
本を探す度に、ギョッとしそうだけど。(笑)

大量のドローイングは非常に気になった作品群だよ。
頭に浮かんだヴィジョンを即興で描いた、という雰囲気の作品に見えたけど?
このエリアも「かなり犯罪めいた」タッチで怖いんだよね!
「ヴァニラ画廊の『シリアルキラー展』に展示されてもおかしくないよ」
2016年に友人Mと鑑賞した、本物の(?)シリアルキラー達が描いた作品が展示されていた企画を思い出したんだよね。
マンダースも内に異常性や残虐性を秘めているんだろうか。
ドローイング群は撮影できなかったので、この作品はSNAKEPIPEの撮影じゃないのが残念!

「調査のための居住」(だったと思う)も、色鉛筆やカセットテープが床に直置きされていた、撮影禁止の作品だった。
カセットテープというところが、やっぱり同志!(笑)
TDKのカセットを見て嬉しくなってしまう。
「the cureのPornographyって書いてあるよ!」
友人Mがすかさずカセットテープを確認する。
1982年に発表されたザ・キュアーの「ポルノグラフィ」を、マンダースも聴いてたんだね!
マンダースが同時代に、似た傾向の音楽を聴き、恐らく同じように感じていただろうと思うと、より一層親近感が湧いてくる。
素晴らしい展覧会なので、ROCKHURRAHと一緒にもう一度鑑賞しよう!(笑)

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