ヴォルフガング・ティルマンス Moments of Life展  鑑賞

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【エスパス ルイ・ヴィトンの看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

先週書いたジャイル・ギャラリーで鑑賞した「超複製時代の芸術」で表参道を訪れたROCKHURRAHとSNAKEPIPE、もう一箇所立ち寄った場所があるんだよね。
それはエスパス ルイ・ヴィトン東京、ハイ・ブランドであるルイ・ヴィトンが主催しているヴォルフガング・ティルマンスの「Moments of Life展」だよ!
2019年8月にクリスチャン・ボルタンスキーの「ANIMITAS II 」、2021年10月にはギルバート&ジョージ の「Class War, Militant,Gateway」を鑑賞したことがあるSNAKEPIPE。
ROCKHURRAHは今回が初めてのエスパス東京なので「ルイ・ヴィトンのお客さんじゃないのに、入って良いのか」と悩んでいる様子。(笑)
ドアマンが扉の前に立っているので、ちょっと緊張するのは確かだよね。
にこやかに出迎えられ「いらっしゃいませ、どうぞ!」と案内されエレベーターに向かう。

今回の展覧会は、事前に計画していたわけではなく、ジャイル・ギャラリーに向かう道沿いのポスターを偶然目にしたために行くことにした。
かつて写真に興味があったSNAKEPIPEには、ヴォルフガング・ティルマンスの名前は聞き馴染みがあったからね。
どんな写真と聞かれたら「雰囲気写真(SNAKEPIPE命名?)」と答えたくなるんだけど、ちゃんとした説明になってないか。(笑)
ここで簡単にヴォルフガング・ティルマンスの経歴を書いてみよう。

1968 ドイツ、レムシャイト生まれ
1990-92 ボーンマス・アンド・プール・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインで学ぶ
1992-94 ロンドン在住
1994-95 ニューヨーク在住
1995 「ベッヒャーシュトラーセ美術賞」
「アルス・ヴィヴァ賞」受賞
1996〜 ロンドン在住
1998-99 ハンブルク美術大学客員教授を務める
2000 「ターナー賞」受賞
2001 ボーンマス・アート・インスティテュート美術名誉研究員を務める
2003〜 シュテーデル美術大学教授を務める
2015 「ハッセルブラッド国際写真賞」受賞

68年生まれということは、現在55歳かな。
ロンドンとベルリンを拠点に活動しているんだって。
教授になっているとは知らなかったよ!
2000年にターナー賞を受賞しているということは、2008年の「ターナー賞の歩み展」でも作品を観ていたんだね。
ちゃんと記事にも書いているね。(笑)
SNAKEPIPEが最初にヴォルフガング・ティルマンスを知ったのは、90年代だったはず。
その当時話題を集めていた若手写真家として紹介されていたように記憶しているよ。
何気ない日常と友人達を作品にしていて「オシャレな写真」の代表格だったね。
それ以降、日本の情報雑誌などでもヴォルフガング風の写真が載っていたっけ。
ヒロミックスや蜷川実花、ホンマタカシなどが出てきたのもこの頃だったかな。
似た雰囲気だなと思ったSNAKEPIPEだよ。

会場に入ると、複数のお客さんが鑑賞していた。
撮影オーケーとのことなので、バシバシ撮らせてもらったよ!
2005年から2020年までに制作された21点が、大小様々なサイズで展示されていた。
これがヴォルフガング・ティルマンスの特徴らしいね?

室内の様子が撮影されている。
ロンドンとベルリン、2つのスタジオ兼自宅の様子かな、と勝手に想像する。
窓が広くて日当たりが良さそうな一室と、雑多でガランとした部屋は倉庫っぽくて良い感じ。
2011年5月のブログ「SNAKEPIPE SHOWROOM 物件1 世界3大都市編」に「SNAKEPIPEの最も理想に近いのはガレージや倉庫みたいなガラーンとした、だだっ広い空間が広がるだけの家」と書いているね。
ティルマンスの写真が、まさにこれ!って思ったよ。(笑)

植物をモチーフにした作品。
ティルマンスは静か動か、といえば静だと感じる。
見過ごしてしまいそうな瞬間や光を捉えているんだろうね。
載せた2枚は、どちらも大きく引き伸ばされた作品で、クリップで止められていただけ。
額に入れる場合との違いはなんだろうね?
作者にしか分からない心理的なものかもしれないけど、想像すると面白いかも。(笑)

人物を被写体にした作品もあったよ。
ティルマンスはゲイであることを公言しているらしい。
そのせいなのか、モデルは全員男性だったよ。
セルフ・ポートレートも含まれていたみたいだけど、どの作品だったんだろう。
被写体を正面から撮影して、モデルと写真家の視線が交わる作品がなかったところがポイント。
ゲイ・コミュニティのメンバーへの配慮なのか、ティルマンスのスタイルなのか?

ここでようやく、人の顔が見える「Summer party」があるんだけど、まるで覗きみたいな撮影なんだよね。
草むらから隠し撮りしてると感じたSNAKEPIPEには、「マネの名作『草上の昼食』を彷彿させる」という文章には首をかしげてしまうよ。
『草上の昼食』で思い出すのは、アルバム・ジャケットでパロディやってたバウ・ワウ・ワウ
ヴォルフガング・ティルマンスもニュー・ウェイヴを聴いていたかもしれないね?

「Osaka still life」と題された2015年の作品。
なんで大阪?と思ったSNAKEPIPEだけど、どうやら2015年に国立国際美術館で大規模な個展が開催されていたらしい。
東京にも巡回したのかなあ?
これはその来日時に撮影された作品なんだろうね。
桃を一個食べ終わったみたいだけど、美味しかったかな。(笑)

ヴォルフガング・ティルマンス以降、写真界の流れが変わったと言っても良い程影響を与えた写真家だと思う。
先にも書いた「何か雰囲気がある」「オシャレな」写真の先駆けだからね。
若者文化を発信する写真家と言われたティルマンスも、もう50歳超え!
活動の幅を広げ、映像や音楽などにも挑戦しているみたいよ。

映像も音もヴォーカルもティルマンスが担当してるって、マルチだね!
これはまるでデヴィッド・リンチみたいじゃないの。(笑)
年齢に関わらず、エネルギッシュに創作活動を続ける大人がいっぱいいるのは嬉しいね。
行って良かった展覧会だったよ!

超複製時代の芸術:NFTはアートの何を変えるのか? 鑑賞

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【ジャイル・ギャラリーの入り口を撮影。いつも通りだね(笑)】

SNAKEPIPE WROTE:

表参道にあるジャイル・ギャラリーで開催されているのが「超複製時代の芸術:NFTはアートの何を変えるのか?ー分有、アウラ、国家権力ー」という長〜いタイトルの展覧会。
これだけでも難しそうに感じてしまうよ。(笑)
実際、今までジャイル・ギャラリーで2021年3月には「2021年宇宙の旅 モノリス_ウイルスとしての記憶、そしてニュー・ダーク・エイジの彼方へ」、2022年6月に鑑賞したのは「世界の終わりと環境世界」というように、タイトルから観念的な展覧会だと想像できる企画が多いんだよね。
好みのアート作品かどうかは別として、アート・シーンの潮流を知りたいという気持ちから出向くことが多いギャラリーになるよ。

今回の企画展のキーワードは「NFT」とのこと。
「NFT」って一体なんだろう?

NFTはNon-Fungible Tokenの略語で、これは非代替性トークンを意味するという。
ブロック・チェーン技術を活用することで、デジタル作品にオリジナルの価値や著作権を持たせ、固有の資産にできるんだとか。
具体的な技術面のシステムはよく分からないけれど、デジタル・データが一点物として証明できるというのは画期的だよね。
画像や音声、動画など大抵のデジタル・データはコピーが可能で、複製や改ざんが可能と認識していたからね。(笑)
更にNFTアートは販売後も著作権は作者に帰属し、二次流通時にも収益の一部が作者に還元されるというのも、新しい試みなんじゃないかな?
自分で作った作品をNFTアートとして販売することもできるというのも面白い。
ブロック・チェーン技術の部分は、NFTマーケットプレイス側で暗号化してくれるというので、安心、安心!(笑)
SNAKEPIPEはその技術から学ぶ必要があるのかと思っていたからね。

載せた画像は75億円で落札されたBEEPLEのNFTアート作品「Everydays: The First 5000Days」だって。
BEEPLEとはマイク・ウィンケルマンというアメリカ人で、グラフィック・デザイナーであり、10年以上毎日3Dアート作品をアップしているという。
落札されたのは、アップした自身の作品を一枚にまとめた作品なんだね。

ここで思い出すのは、かつて写真もアートとして認められていなかった、という事実。
複製が可能だからというのが理由だったはず。
いつの頃からか、一枚一枚の写真にも価値が見出され、アートになっていたっけ。
デジタル・データも同様の道を歩むことになるのか。
まだ開発途上で、様々なことが実験段階だというNFTアート、ROCKHURRAHと一緒に行ってみたよ!

元々、外国人観光客が非常に多い原宿だけど、ジャイル・ギャラリーに行った日も見渡す限り外国人だらけ。
ジャイル・ギャラリーがあるのはMOMAデザイン・ストアやコム・デ・ギャルソンのショップと同じフロアなので、ここにも外国人ツーリストがいっぱい!
ショッピングが目的のようで、ジャイル・ギャラリーに入ってくる人はいなかったよ。
画像はチーム・ラボの「Matter is Void」。
作品は誰でもダウンロードして所有できるけれど、文字の書き換えができるのは作品所有者のみだという。
「所有者と作者の垣根がなくなり、複数人の共創により作品は変化し続ける」
というのがテーマらしい。

レア・メイヤーズの「Certificates of Inauthenticiy(非真正性の証明)」を観て「ジェフ・クーンズのバルーン・ドッグじゃないの?」と言ったのはROCKHURRAH。
この時は分からなかったけれど、後から知ったのは「ジェフ・クーンズのバルーン・ドッグを3Dデータ化し、誰でもダウンロードしてプリントできるようにした」んだとか。
作品の真贋はNFTが販売する証明書の有無で変化するという点がポイントなんだって。
他にマルセル・デュシャンの「泉」データもあるというので、いつか3Dプリントしてみたいよね。(笑)

今回の展覧会で一番のビッグ・ネームはダミアン・ハーストだよね!
カラフルな水玉が描かれたペイントとデジタル両方の作品が展示されていた。
これだけ観ても意味不明。(笑)
2021年にデジタル化した水玉を1万点発行し、1点を約20万円で販売したという。
所有者は、1年後にNFTか絵画のどちらかを選択する必要があり、選ばれなかった絵画4851点が焼却されたという。
実際にハーストが消防服を着て、約10億円相当を燃やしたというから驚くよね。(笑)
SNAKEPIPEが最も驚いたのは、この水玉作品を1万点描いたところかな。
燃やすために描くって行為がすごい!

鎌谷徹太郎の「The Dream of Butterfly」は色鮮やかで目を引く作品だった。
タイトルは訳すと「胡蝶の夢」だよね。
周りを取り囲んでいる建築は京都の平等院とのこと。
髑髏に花とは、そんなに目新しい題材ではないかもしれないけど?
説明を読んでびっくり!
なんと5万匹の蝿を樹脂で閉じ込めた上に描かれていたんだって。
これは作品観た後で知って良かったかも。(笑)
そして隣にはNFTが並んでいて、絵画と2つでワンセットの作品だという。
所有者が変わるとNFTが変化するらしいけど、どういう仕組なんだろうね。

ルー・ヤンの「マテリアルワールドの大冒険」というゲーム映像作品は、実際にコントローラーが接続されていて、鑑賞者がゲームできる仕掛けになっていた。
8つのエピソードがあり、アイデンティティを変容させていく内容らしい。
ROCKHURRAHにコントローラーを操作してもらい、少し動かしてもらったけれど、画面に登場する人物の顔が気になって仕方なかった。
画像下に見える男、狂気を孕んでいて、ものすごく怖いんだよね!
それにしてもルー・ヤンが女性とは思わなかったよ。
自身のサイトでは、コスプレして踊っているので、気になる方は訪れてみてね!

森万里子は、ジャイル・ギャラリー参加率が高いアーティストだよね。
今までいくつかの作品を鑑賞したSNAKEPIPEだけれど、今回展示されている「Eternal Mass」は、最も難しいコンセプトに感じるよ。
「空間と時間という4次元に加え、人間に知覚できない次元が6つ存在する」と説明する超弦理論を可視化したという。
「すべての粒子には同じ質量と反対の電荷を持つ反粒子が存在する」という量子物理学の理論に着想を得たとのこと。
パール状の粒で構成された仮想生命体を対にした、森万里子初のNFT作品なんだって。
説明聞いてよく分かったよね!(笑)

施井泰平の「IT II」は、文庫本の背表紙を切り取り、キャンバスに貼り付けた作品なんだよね。
本棚に見せかけた偽物というのが面白い。(笑)
解説には「情報の絵画」なんて表現がされているよ。
難しい文章を読まなくても、観た瞬間に驚きがある作品は良いね!
施井泰平は2001年から「インターネット時代のアート」をテーマに作品制作してきたという。
2014年には東京大学大学院在学中に、大学構内で起業するという経営者の顔を持つアーティストとは気になる人物だね!

作品だけ観ても意味が分からなかったけれど、解説を読むととても興味深い展覧会だったことが分かった。
今後NFTがどうなっていくんだろう?
今まで知らなかった考え方やアーティストを知ることができて、有意義だったね!

映画の殿 第57号 韓国ドラマ編 part13

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【本文中に書き切れなかった気になる人物がいっぱい!】

SNAKEPIPE WROTE: 

前回「映画の殿」を更新したのは、およそ1ヶ月半前のこと。
そしてまた韓国ドラマの特集を書くことになるんだから、よく観てるよね。(笑)

最初に紹介する「ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜(原題:더 글로리 2022年)」はシーズン1をかなり前に観ていたけれど、シーズン2の完結まで観終わってから書くことにしたよ。
シーズン1と2に間が空き過ぎると、「この人誰だったっけ?」と忘れてしまう登場人物がいるので要注意なんだよね。
ドラマが完結してから観たようが良いかもしれないね?
あらすじはこちら。

建築家になることを夢見るムン・ドンウンは高校時代にいじめが問題になっても、相談相手が誰一人もいないことから、自主退学に追い込まれる。
退学後、彼女の夢は復讐を果たすことへと変わり、高校退学後の人生を全て「復讐」に命を捧げ続けた。
16年ぶりにドンウンと再会する加害者メンバーらは、自信に満ちたドンウンに恐怖を抱く。
ドンウンはいじめグループのリーダー格で現在はお天気キャスターのパク・ヨンジンへの復讐から開始する。 (Wikipediaより)

トレイラーを観てみよう。

高校時代の壮絶な「いじめシーン」がひどいんだよね。
犯罪といっても良い行為なのに、訴えに耳を貸さない大人たちに驚愕する。
韓国ドラマでよく見かける、金持ち一家を優遇する腐った社会構造。
現実に、こういうことが「まかり通ってる」のかなあ?
復讐が筋書き通りにいかず、邪魔が入ったり予想外のことが起きたりするところにリアリティがあったよ。

復讐に生きる女性を演じたソン・ヘギョが、第59回百想芸術大賞TVドラマ部門優秀演技賞を獲得したという。
感情を押し殺した演技が評価されたと書いてあるよ。
途中から大好きな女優、ヨム・ヘランが登場して嬉しかった。
旦那からのDVに苦しむ姿が真に迫っていたよ。
「カウンターズ」の続編で、チュさん役を観たいね!

ドラマの中で最も印象に残ったのは、ヨム・ヘランと共に第59回百想芸術大賞TVドラマ部門助演女優賞にノミネートされ、見事栄冠を勝ち取ったイム・ジヨン。
あらすじにあった「いじめグループのリーダー格で現在はお天気キャスター」で、いかにも性格悪そうな憎々しい表情が秀逸だったよ!
この女優には「いじめ」のイメージを持ったままになりそうだね。(笑)

ちょっとタイプの違うドラマを観ることにする。
ユミの細胞たち(原題:유미의 세포들 2021年)」は、同名の漫画が原作で、「トッケビ」に出演していたキム・ゴウンが主役のドラマ。
前回観たキム・ゴウンのドラマは「シスターズ」なので、ROCKHURRAH RECORDSではよく観ている女優になるよ。
そして「ユミの細胞たち」はシーズン2まで終わっているので、安心して観ることができたよ。(笑)
「ユミの細胞たち」のあらすじを書いてみよう。

細胞たちと一緒に食べて恋して成長する、平凡なユミの話を描いた、刺激と共感に満ちた細胞ラブストーリー。 (Wikipediaより)

実写と3Dアニメを組み合わせた新しい形の恋愛ドラマってどういうこと?トレイラーで確認しよう。

タイトルにある「細胞たち」をアニメ化しているんだね。
理性や感情のような細胞以外にもファッション細胞など、人それぞれ持っている細胞に違いがある。
そしてどの細胞が第一優先になるのかも、時期によっても変化する。
このアニメのシーンがとても面白かったよ!

そしてキム・ゴウンが使用している化粧品が気になったのは、SNAKEPIPEだけではないようで、調べると簡単に情報をキャッチすることができた。
キム・ゴウンがイメージ・キャラクターになっているというスキンケアなんだけど、思わずSNAKEPIPEも購入してしまったよ。
ドラマ内で宣伝していることは分かってるけど、キム・ゴウンのお肌がキレイなのでつい。(笑)
韓国ドラマを観てチャミスル飲んでみたり、チヂミを作ったりはしたけれど、化粧品まで影響を受けてしまうとは。
韓国ドラマ、恐るべし!

Netflixで評判になっていたドラマを観ることにした。
悪の花(原題:악의 꽃 2020年)」と聞いて、フランスの詩人シャルル・ボードレールの「悪の華」を連想してしまったのはSNAKEPIPEだけ?(笑)
以前観た「シーシュポス: The Myth」はカミュだったので、今回も文学をネタにしてるのかと思ったけど違ったみたいね。
「悪の花」は百想芸術大賞で5部門にノミネートされ、演出賞を獲得している。
クオリティが高いドラマとして評価されているんだって。
一体どんな作品なのか、あらすじを書いておこうか。

金属工芸作家のペク・ヒソンは、愛する妻ジウォンと娘のウナに囲まれ、平凡だが幸せな日々を送っている。
ただひとつ、刑事である嫁を厭う両親との関係だけが問題だ。
そんなある日、ジウォンはひょんなことから知り合 いの記者キム・ムジンにヒソンを紹介することに。
18年前の連続殺人事件に関する連載記事を手がけるムジンは、 事件の犯人と同じ金属工芸作家であることからヒソンに興味を抱き、彼の工房に足を運ぶ。
だが、ヒソンの顔を 見たムジンは……。(FILMAGAより)

予告を観ると、非常に面白そうだよね!
「18年前の連続殺人事件犯人」の息子が主役で、現在は偽りの人生を送っている様子。
善良な夫の仮面をかぶっているというのが、とても良く似合う顔立ちの俳優だし。(笑)
観始めた最初のうちは興味を持っていたけれど、回を重ねるうちにドラマの緊張感が薄れてきた。
妻役の女優は全く刑事に見えないし、泣いているシーンばかり。
「クオリティの高いサスペンス」とは思えなかったよ。
最後もお粗末で、オススメのドラマとは言い難いのが正直な感想。
好みは人それぞれだからね。(笑)

最後に「ラブコメの女王」、コン・ヒョジンに登場してもらいましょう!(笑)
プロデューサー(原題:프로듀사 2015年)」は今から8年前のドラマで、2011年の「最高の愛〜恋はドゥグンドゥグン〜」と2019年の「椿の花咲く頃」の間の出演作品になるんだね。
今回はテレビ局のプロデューサー役だって。
「悪の花」で疲れてしまったROCKHURRAHとSNAKEPIPEに笑いを届けてちょうだい!(笑)

大学時代、好意を寄せていた先輩がKBS芸能局に入社したことをきっかけにKBSへ入ったペク・スンチャン。
出勤初日から誤解によってミスを起こし、芸能局の女王蜂タック・イェジンに目を付けられてしまい…(Wikipediaより)

ベースはラブ・ストーリーになるんだろうけど、随所に笑いがあって楽しかった。
コン・ヒョジンは厳しい先輩役かと思いきや、やっぱり良い味出してるんだよね!
「サイコだけど大丈夫」や「ある日」などで主役を演じているキム・スヒョン、アイドル歌手として出演していたIUも良かったよ。

そうした大物出演者の中で、ひときわ存在感を発揮していたのは、テレビ局内の総務(?)を仕切っていたイェ・ジウォン演じるコ・ヤンミ!
「コピー用紙は裏まで使え」「トナーは振って最後まで使え」といった倹約を呼びかける厳しい女性なんだよね。
その割には派手なメイクと服装で、アンバランスさが最高だった。(笑)
背筋をピンと伸ばしたデスクワーク、お疲れ様です!

あまりセリフがなかったのにも関わらず、露出度高めの服装で目立っていたのがキム・ソナ演じるキム・ダジョン。
コン・ヒョジンが手掛ける音楽番組のスタッフの一人だけど、大抵ピチピチの服装で無表情。
先輩に対しても歯に衣着せぬ物言いで、ぶっきらぼう。
こんな後輩がいたら、やりにくいだろうな。(笑)

テレビ局や芸能界の裏側を舞台にしていて、楽しめたよ
コン・ヒョジン主演のドラマは他にもあるので、機会があったら観てみたいね。

エドワード・ゴーリーを巡る旅 鑑賞

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【松濤美術館入り口の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE: 

初めて渋谷区立松濤美術館に行ったのは、2022年10月の「装いの力 ー 異性装の日本史」だったROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
独自の視点を持つ企画に興味を持ち、マメに情報をチェックすることにしたんだよね。
現在開催されているのは「エドワード・ゴーリーを巡る旅」という、絵本作家であるエドワード・ゴーリーの企画展だという。
今まで聞いたことがない名前だよ。
絵本の世界について知識がないから当然かな?(笑)
サイトに小さく載っている作品は、モノトーンでちょっと不穏な雰囲気が気になるよ。
半年前の「装いの力」の時は、ネットで事前予約した記憶があるけれど、コロナの対策が緩和された現在は、直接美術館に行ってチケットを購入する以前のスタイルに戻ったみたい。
事前予約をしても、先日の「佐伯祐三展」のように、みっしりと人を詰め込み、販売枠を大幅に広げる美術館もあるけどね。(苦笑)

まずはエドワード・ゴーリーについて調べてみようか。

1925 イリノイ州シカゴに新聞記者の息子として生まれる
1942 シカゴ・アート・インスティチュートに入学
1943 半年だけ美術を学んだ後、アメリカ陸軍に入隊
1946 兵役を終えハーバード大学に入学(フランス文学を専攻)
1953 ニューヨークに移住、出版社に就職
1956〜 ニューヨーク・シティ・バレエに傾倒する
1957 「うろんな客」刊行
1972 「アンフィゴーリー」(Amphigorey)を出版
ニューヨーク・タイムズ・ブックレビューの「今年度最も注目すべき美術書の5冊」に選ばれ、「ベスト・デザイン・ブック15」として、アメリカン・インスティテュート・オブ・グラフィックアーツ賞を受賞
1973 サイラス・ピアース劇場の公演「ドラキュラ」のセットと衣裳デザインを担当
1978 「ドラキュラ」でトニー賞の衣装デザイン賞を受賞
1980 アメリカの教育テレビ番組『ミステリ!』(Mystery!)のオープニング・アニメーションを制作
1986 マサチューセッツ州ケープ・コッド、ヤーマスポートの館を買い取り移転
2000 心臓発作のため75歳で死去

除隊後にハーバード大学に入学というところに注目しちゃう。
世界屈指の有名大学、ハーバードだもんね!
アートを学び、フランス文学を学び、イラストやグラフィック・デザインをしていた絵本作家とは驚きだよ。
1980年のテレビ用アニメーション制作が気になるね。
会場でも流れていた動画がYouTubeにあったので、載せてみようか。

1980年のテレビ放送なので、画質が荒いのは仕方ないね。
輪郭が少しボケてるけど、アニメーションの面白さは充分伝わるよ!
世界中にファンがいる、というエドワード・ゴーリーの展覧会、行ってみよう。

10時の開館に間に合うよう、渋谷に到着したROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
渋谷は11時開店の店舗が多いためか、美術館までの道のりに人が少ない。
美術館まで優雅なお散歩を楽しんだよ。(笑)
この分では、美術館も空いているかもと密かに期待していたSNAKEPIPEは、裏切られることになる。
松濤美術館の立地のせいなのか、前回鑑賞した「装いの力」の時と同様、「ゴーリー」も若い女性の割合が高い。
2022年7月の「シリアルキラー展2022」にも書いたように、「ちょっと不気味」を好む人が多いんだろうね。

会場に入った瞬間、最初に持った感想は「作品が小さい!」だった。
照明が落としてあり、作品名は小さく、説明文が長い。
前回の「装い力」の時もそうだったけれど、文章を読むために立ち止まる人が多いため、作品鑑賞するために長蛇の列ができてしまうんだよね。
これはSNAKEPIPEの苦手な鑑賞法だよ。
空いている、観られる作品から観ていく方法にする。
並ぶのが苦手なんだよね。(笑)

会場は地下と2階に分かれていて、全部で5つの章で区切られていた。
松濤美術館は基本的に全ての作品の撮影が禁止されているんだけど、地下の会場前に撮影可能な作品があったよ。
引き伸ばされて大型作品になった、1961年の「不幸な子供」。
この1枚だけを観ると、タイトルの「不幸な」は全く連想できないよね。
人形遊びをしている、裕福な家庭の子供に見えるよ。
壁紙やジュータンの柄など、細部まで描きこまれた緻密な描写。
子供の顔が全く可愛らしく見えないところがポイントかな?(笑)

第1章は「ゴーリーと子供」で、先に載せた「不幸な子供」も含めた原画が展示されていたよ。
左はゴーリー自身が子供だった頃に描いた絵。
「ひよこ」と「うさぎ」は1930年頃の作品だというので、ゴーリーが5歳くらいなのかな。
生涯猫と暮らしていたというゴーリーは、子供の頃から動物好きだったんだろうね。
「ひよこ」と「うさぎ」はとてもかわいかったよ!

「不幸な子供」から2枚載せてみたよ。
前述したように松濤美術館は撮影禁止なので、画像は購入した図録からの引用にさせていただこう。
ご了承ください!
ゴーリーの絵本を読んでいないので、絵からストーリーを想像したり、もしくは絵そのものの雰囲気を楽しんだROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
線描の細かさが際立ち、ゴシックな印象を受ける。
「不幸な子供」は、本当に悲惨な最後を迎える少女の話で、びっくりしてしまった。
1950年代のアメリカとは思えないダークなバッド・エンド!
眉をひそめる人も多かったんじゃないかな?

第2章は「ゴーリーが描く不思議な生き物」。
画像は、「うろんな客」で1957年に刊行された絵本の中の一コマね。
「不幸な子供」と同様、恰幅が良くヒゲを蓄えた成人男性が登場している。
ゴーリーは読書家で有名だったようで、特にお気に入りはイギリスのヴィクトリア朝時代の本だったという。
ゴーリーが描く人々の服装はその時代を彷彿させるよね。
「うろんな客」とは、いつの間にか居座り家族に迷惑をかけ続ける、右側のペンギンみたいな謎の生き物を指している。
これは何かのメタファーなんだろうけど、それぞれ感じることができれば良いんだろうね。

左から「蟲の神(1961年)」、「狂瀾怒濤 あるいはブラックドール騒動(1986年)」、「音叉(1983年)」の画像ね。
どのシーンが何の意味を持つのかを考えずに、一枚の作品として観てもシュールさが良く分かるよね。
特に真ん中の画像は、鎖に繋がれた指の上に切断された指がバランスを取っているのが不気味。
右側の「てるてる坊主」みたいな人物(?)の行動は、順を追って観ていても何をしているのかよく分からなかった。
そこがゴーリーの魅力なんだろうね。

第3章は「ゴーリーと舞台芸術」。
年表にあったように1956年頃から、ほとんど全てのニューヨーク・シティ・バレエの公演を観劇していたというゴーリー。
映画鑑賞も好んでいたらしく、載せた画像「具体例のある教訓(1957年)」は、まるで映画のシーンみたいだよね。
こちらも絵だけを観る限り、一体どんな教訓が示されているのか不明だけど、構図やタッチが素晴らしかったよ!

「金箔のコウモリ(1965年)」は、バレエを題材にした作品。
時代を象徴する世界的なバレエ・ダンサーになった少女のサクセス・ストーリーではないようで。
ゴーリーは、絵空事のハッピー・エンドではない、掘り下げた心理を描きたかったのかなと想像させる作品が多いみたいだね。

2階の会場前に展示されていた「ドラキュラ・トイシアター(1979年)」の表紙は撮影して良いマークがついていて嬉しかった。
ゴーリーはミュージカル「ドラキュラ」の舞台演出や衣装を担当し、トニー賞を受賞する快挙を成し遂げた後、組み立て式の絵本「ドラキュラ・トイシアター」を刊行したという。
各ページを切り取って組み合わせると、「ドラキュラ」の舞台が再現できる仕掛けになっていたんだとか。
もったいなくて切り取れないよね。(笑)

第4章は「ゴーリーの本作り」で、実際にゴーリーが使用していたペンや画材が展示されていたよ。
特別感はなく、普通の道具に見えて好感を持ったよ。
画像は「不幸な子供」の表紙と裏表紙だって。
ガーゴイルが描かれていて、ゴシックだよね。(笑)

「金箔のコウモリ」と「中国風オベリスク: 四つ目のアルファベット(1961年)」の表紙。
「中国風」のほうはボツにした作品のようだけど、まるで墓地のような雰囲気で、一体どんな絵本だったのか気になるよね。
「コウモリ」はタイトル通りのデザインで、驚愕し倒れ込んだ大げさな3人の男性が面白い。
右手前のボトルにタイトルを描いているのが憎い演出だね。
「ドラキュラ・トイシアター」、「不幸な子供」や「金箔のコウモリ」が本屋に並んでいたら、興味を持って手に取るだろうね!

最終章である第5章は「ケープコッドのコミュニティと象」。
ニューヨークからケープコッドに移り住んだ時には、60歳を過ぎていたゴーリー。
その頃から新たな試みとしてエッチングを始めたという。
象を題材に選び、限定版の「エレファンタモス(1986年)」を発行したとのこと。
載せた画像左は、躍動感溢れ生き生きした印象で、まるで岡本太郎の作品のよう。
右の作品は岩の隙間に立ち、月光を浴びてエネルギーを蓄えているように見えるよ。
呪術的なイメージを持ったSNAKEPIPEだけど、どうだろう?
晩年になって抽象的な作品に取り組んだゴーリーだけど、年齢を感じさせない力強さがあるよね。
75歳は早すぎる死で、とても残念に思うよ。

最後にミュージアム・ショップを散策。
図録の購入は最初から決めていたけれど、ROCKHURRAHが面白い物を発見した。
それは「The Fantod Pack(不安な箱)」という、1995年に776部限定で出版した20枚のタロットカードの復刻版なんだよね。
展示されていた時にも「面白いね」と話していたら、ショップにあったとは!
図録と一緒にROCKHURRAHが買ってくれて、嬉しいよ。(笑)
どのカードを引いても、不安を煽り悲惨な気分になる言葉を聞かされることになるというもの。
制作したゴーリーはもちろんのこと、喜んで買う側も同類のブラック・ジョーク好きってことだね!

今まで知らなかったアーティストを知り、行って良かった展覧会だった。
作品が小さいため屈むように鑑賞した結果、解説や作品に影ができてしまい、更に鑑賞し辛くなることなどは、改善されないんだろうか?
照明の当て方や展示方法について、もう少しご配慮いただけると良いのに、と思う。