【この作品を見ると横溝正史の小説「悪霊島」を連想してしまう】
SNAKEPIPE WROTE:
朝の出勤前に時刻と天気予報を確認するために、テレビをつけている。
何かしらせわしなく動いているため、テレビの音を聞いている、というのが正確な言い方になるのかな。
この時間だけは民放チャンネルなんだよね。(笑)
そのためCMが入り、宣伝文句がなんとなく聞こえている状態である。
「はじめてのレース編み」という雑誌の宣伝も耳に入ったことを覚えている。
最近、レース編みやってる人いるのかなあ。
昔は電話機のカバーか応接室のガラステーブルの上に敷いたり、ドアノブのカバーとして大人気だったっけ。
などとすっかり昭和の気分に浸ってしまった。
あらっ、ウチでは今でもレースよ!というご家庭もあると思うけど、これはSNAKEPIPEのイメージだからね。(笑)
そんなプチブル(死語!)のレース信仰をぶち壊す作品を発見したよ。
どうやら2016年にヴァニラ画廊でも作品を鑑賞することができたようで、日本でも全く知名度がないアーティストではないみたい。
今頃知ったSNAKEPIPEが遅いのかもしれないね。(笑)
早速アーティストを紹介していこう!
アーティストの名前はCaitlin McCormack、ケイトリン・マコーマックの表記で良いのかな。
そういえばマコーミックって昔、スパイス・メーカーあったよねえ。
最近聞かないなあ、と思って調べてみると、ライオンと合弁後ミツカンに販売委託、現在はユウキ食品に事業譲渡している関係で、名前がユウキMCに変わってるんだって。
どうりで聞かないと思ったよ。
って関係ない話だったので、元に戻ろう。(笑)
ケイトリン・マコーマックは1988年のアメリカ生まれ、ということは今年32歳かな。
2010年にフィラデルフィア芸術大学でイラストレーションの学士号取得。
当初はイラストレーターを目指していたようだけど、路線変更したみたいだね。
フィラデルフィアを拠点に活動している繊維アーティスト、とのこと。
繊維アーティスト、なんて呼び方初めて聞いたよ。(笑)
大学卒業後より個展を開催したり、グループ展にも参加しているみたい。
あまり詳しい情報がなかったので、これだけで許してね!
では早速作品を紹介していこうか。
マコーマックは綿素材の糸を使った、いわゆるレース編みで作品制作を行っているという。
左の作品からレース編みは想像し辛いけど、編んでることは分かるよね。
そのレース編みを接着剤で固めているらしい。
骨の標本を形にしているようだけど、お花と骨というなんとも不思議な雰囲気だよ。
「Granny」は2019年の作品で、サイズは101.6 × 71.1 cmというからかなり大きめだよね。
こんなタペストリーが部屋にあったら、印象がガラリと変わりそう。
作品は販売されていて、$3,500とのこと。
日本円で約38万5000円。
そこまで手が出せない金額じゃないね。
どれどれ、他の作品も購入候補で考えていこうか。(笑)
「Storm of Uncles」が気に入ってたんだけど、調べてみたら売り切れだった!
2015年の作品で、大きさが94 × 64.1 × 7.6 cmと書いてあるよ。
奥行きが7.6cmあるということは、かなり盛り上がった厚みのある作品なのかもしれないね?
直訳すると「おじさん達の嵐」って意味不明だけど、トカゲの骨格のような謎の生物は擬人化されてるってことなのかな。
マコーマックは「時間の経過や自らの視覚的偏見による記憶の歪みを修正し、再構築することが目標」なんだとか。
分かるような分からないような言葉だよね?
例えばマコーマックが子供の頃に、親戚のおじさんが突如暴れだした時の記憶を基に作品になっている、というようなことなのか。
そうして見ると、荒れ狂ったおじさんの姿に見えなくもないよね。(笑)
「A Thing I Said (Fuck You, You Motherfucking Fuck)」という、Fから始まる放送禁止用語連発のタイトルがついている2019年の作品はいかが?
よく見ると、作品に文字がレース編みされてるじゃないの!
ちゃんと「fuck you」って書いてあるよ。(笑)
34.3 × 26.7 × 8.9 cmという小さめの作品なので、家に飾るには丁度良さそう。
マコーマックは、それぞれのパーツをかぎ針編みしてから、何度も何度も秘密の接着剤で固めていき、最終的に硬化したパーツを縫い合わせているという。
その「秘密の接着剤」というのが非常に気になるよね。(笑)
そしてこの作品は、一体どんな状況だったのかも想像しちゃうよ。
お値段は$2,500、日本円で約27万5000円!
自宅でじっくり鑑賞しながら、ストーリーを考えるのも楽しそうだね。
アンティークの時計ケースに入った「Boy Now」という作品。
そのまま直訳すると「少年は今」なんだけどね。(笑)
2段構えなので、非常に単純に考えると上が過去の少年で、下が現在なのか。
大きくなって背中が丸まった?
開いてた口が塞がった?
快活だった子供が、現在は物思いにふける思慮深い少年に変化した、と見るのは安直過ぎるかな。(笑)
マコーマックの作品はほとんどがモノクロームなので、額やケースが変わると印象が違ってくるんだよね。
アンティーク時計のケースも、ドーム状のガラスケースも、見え方が違って良いね。
「Boy Now」は69.9 × 39.4 × 10.2 cmの大きさで、お値段は$1,700、日本円で約18万7000円だって。
東京駅近くのKITTE内にある「インターメディアテク」に、そっと置かれていても誰も気付かないかもしれないよ。
博物館に展示されている標本みたい、って意味なんだけどね。(笑)
「Chicken」は、今まで観てきた「謎の生物」とは様子が違うよね。
ほとんど人間なのに、タイトルでは「にわとり」だって。
外国では「チキン」というと、「臆病者」や「腰抜け」と言った、かなり相手をバカにしたような単語としても用いられるからね。
作品では心臓部分が透けているから、余計にそう見えるのかもしれない。
SNAKEPIPEは、この作品はマコーマック自身、つまりは自画像かなと勝手に想像する。
腕は曲がり、手先も使えない状態。
八方塞がりで出口が見えないような、陰鬱な精神状態を表しているように見えるよ。
ROCKHURRAHの解釈では、頭と心臓部分が欠落していることから、思考と運動機能が停止している様子を表現してるのではないか、という。
そしてそんな状態を人間ではなく、「チキン」と呼んでいるのではないか、と推測するらしい。
なるほど、それも説得力あるなあ!(笑)
26.7 × 34.3 × 8.9 cmという大きさで、販売価格は$1,200、日本円で約13万2000円とのこと。
マコーマックの心象を伝えているような作品、他にも紹介してみようか。
「See You All in There」は、マコーマックに珍しく黒糸を使っているんだよね。
本に絡みつくように糸が増殖し、ついには塔が立ってしまったのか。
直訳すると「これらの中に全てがある」 というタイトル、本はメタファーだろうね。
SNAKEPIPEの勝手な想像を続けると、本は記憶や人生、つまりはその人の魂を表現しているのではないか。
糸を使って心象を作品にしているので、2019年9月に鑑賞した「塩田千春展:魂がふるえる」を思い出す。
マコーマックも塩田千春と同じように、苦しみに囚われているんだろうか。
トラウマや苦しみを作品にする女性アーティストって多いんだね。
35.6 × 27.9 × 20.3 cmというサイズの「See You All in There」は$1,800、日本円で約19万8000円だって。
どの作品もアート作品としてはお手頃価格じゃないかな。
ちなみにトップに載せた作品「Morgellons」が$10,000、日本円で100万を超すんだよね。
サイズも横幅が162cmという大型作品。
SNAKEPIPE MUSEUMに所蔵したいね!(笑)
レース編みという伝統的な手法を用いながら、アート作品を作るマコーマック。
ヨーロッパでは家庭的な要素があり、日本では先にも書いたように昭和には「ちょっとお上品」の象徴だったレースが不気味なモチーフに変身しているところがポイントかな。
どれほどまでに細かい作業なのか、そして「秘密の接着剤」の正体を知るためにも、実物をじっくり間近で鑑賞してみたいね!