好き好きアーツ!#27 鳥飼否宇 part6–迷走女刑事–

【「迷走女刑事」の中で店名として登場したソフト・マシーン】

SNAKEPIPE WROTE:

大ファンの作家、鳥飼否宇先生の新作が発売される情報をもたらしてくれたのはROCKHURRAHだった。
Kindleのような電子書籍を読むための端末が人気のご時世だからなのか、鳥飼先生の新作はハードカバーではなく新刊として文庫本で登場!
実際SNAKEPIPEも通勤電車で読むのはスマートフォンに落とした電子書籍だもんね。
でもこれって、新作じゃなくて前に発表した作品の文庫化じゃないの?
だってタイトル同じじゃない?
おや?よく読んでみると「迷走女刑事」!
2012年に発表されたのは「妄想女刑事」!
鳥飼先生のファンと言っておきながら、読み違えるとはファン失格‥‥‥。
いやいや、しょんぼりする必要なし!
鳥飼先生の新作が読めるんだもんね!(笑)

近所には本屋が何軒もあるので、発売日当日に出向けば問題なく手に入ることは分かっていたけれど、発売の情報を知ったその時にネットで予約注文した。
確実に入手できることがはっきりしないと安心できないんだよね。(笑)
あとは到着を待つのみ!楽しみだ。
お待ちかねの発売日当日。
郵便ポストにメール便が到着!
やったー!
慌ててページをめくるSNAKEPIPE。
早速読み始めたのである。

前作では妄想し、本作では恐らく(?)迷走するであろう主人公の宮藤希美と、前作でコンビを組んでいた荻野正則が居酒屋で飲んでいるシーンから小説が始まる。
キュートなルックスに似合わず酒豪の宮藤に付き合うように、下戸の荻野が烏龍茶を飲んでいる。
どうやら本作では、宮藤と荻野がペアで捜査しているのではなく、それぞれが新しい相棒を得ているという。
ここで新しい登場人物の紹介だね。
宮藤の相棒は甲賀忍者の末裔で、武芸十八般に通じているという望月暁子。
武芸十八般とは弓・馬・槍・剣・水泳・抜刀・短刀・十手・銑鋧(しゅりけん)・含針・薙刀・砲・捕手・柔・棒・鎖鎌・錑(もじり)・隠(しのび)のことらしい。

そして暁子が得意としているのが手裏剣、鎖鎌、十手とのこと!
2012年に行った明治大学の博物館で実物を観たっけ。(笑)
常にこれらの武器を携帯してるんだろうか?(笑)
宮藤と同い年だけれど、ノンキャリアのため刑事歴は宮藤より長い。
「踊る大捜査線」でもよく出てきた構図だね。
そんな叩き上げで、ルックスも男まさりの力強い女だからこそ宮藤に反感を抱いてしまうのも仕方ないのかもしれない。
本作でSNAKEPIPEが1番注目したのは彼女!
友達になりたい、というよりは見ていたいんだよね。
ネタが豊富そうで。(笑)

そして荻野の相棒になったのは、宮藤の場合と同じように荻野とは正反対の特徴を持つ三谷浩二朗。
女性に人気がありそうなルックスの新人だというから荻野は完全な引き立て役になっちゃうね。
でも実は三谷は‥‥文章にするのは差し控えておきましょ。(笑)
本作は2組のペアが難事件に挑むお話なのである。

事件ファイル1 三人の数学教師の問題

大学の数学教師の死体が河川敷で発見されるところから話が始まる。
調査をする宮藤と荻野。
テンポの良い二人の掛け合いは相変わらず面白いね!
趣味全開の荻野の発言は刑事らしくないし。(笑)

SNAKEPIPEが大注目だったのはやっぱり望月暁子だね。
灯火目付という視力の鍛錬法により、視力が3.0あるという。
いつの間にか視力が0.02くらいになっているSNAKEPIPEには信じられないよ!
灯火目付、本当に効果あるんだろうか?
今からでもやってみようか!もう遅い?(笑)

数学教師の事件なだけあって「フェルマーの最終定理」についての説明がされていたね。
「ドラゴン・タトゥーの女」で主人公リスベットが夢中になっていた問題だったことを思い出したよ。
実は最近になって理数系の面白さに気付いたSNAKEPIPE。
学生の頃から好きだったら良かったのに!
きっと「ブレイキング・バッド」を見てから、化学に興味を持つ人もいるだろうね?
えっ、動機が不純?(笑)

宮藤は自慢の妄想がなかなか発揮できない様子。
まだ本人は何が理由だったのか気付いていないんだね。(笑)
ところがヒョンなところで、またもやロッターズクラブのバーテン・御園生独、登場!
宮藤にヒントを与えてくれるのである。

めでたく事件は解決。
まさかそんなことだったとは!
「んなバカな!」と叫んでしまったSNAKEPIPE。
こんな事件は前代未聞だよ。(笑)

事件ファイル2 三枚の天狗の面の問題

代議士の子供が誘拐される事件が発生する。
ところが宮藤希美は相棒である望月暁子と共に、誘拐事件とは別の骨董品を扱う「夢幻堂」の壺盗難事件の捜索に駆り出されたのである。

この「夢幻堂」のオヤジが良い味出してるんだよね!(笑)
宮藤希美をクドミ、望月暁子をモチコと勝手に名付けてしまう。
実際に関わると面倒なタイプだろうけれど、本当は誰かに構って欲しくてたまらない孤独な老人なんだろうと推測できるよね。
この古物商で望月暁子が棒状の手裏剣に見惚れるシーンが良かったね。
あまり手裏剣に詳しくないSNAKEPIPEなので調べてみると、武術の世界での手裏剣とは棒状のタイプが一般的らしい。
忍術について勉強になるなあ。(笑)

この事件の中で最も興味を感じたのは、話の中に登場する油絵!
青系の暗い絵の具が塗り重ねられ、まるで子供の落書きのような人物や動物が描かれている絵とは?
人物が死にかけのアザラシやトドとかセイウチに見えてしまう具象画ってどんなだろう?
SNAKEPIPEが思い浮かべたのはリンチの油絵だね。
最近のリンチはリトグラフで作品を制作することが多いみたいだけど、80年代後半から90年代に描いていたのが、まさに大人の落書きのような油絵!
参考にした画像は1996年の「Dr. Howl’s Philosophy」という作品ね。
こんな雰囲気の絵だったら、観てみたいな!

事件に関しては読んでいる途中で、
「もしかしたら?」
と真相を予想したSNAKEPIPE。
そして結論は当たっていたんだけど、理由までは推理できなかった。
そして更にまさかそんなことだったとは!(笑)

事件ファイル3 三体の不明死体の問題

続いはゴミ屋敷で発見された男性の全裸死体にまつわる事件である。
確かにゴミ屋敷というのは、どこに何があるか判別できないだろうから、死体の隠し場所としては最適かも!(笑)
捜索にはものすごく時間がかかるだろうからね。
この小説の中でも、捜索は難航していて、何が物証なのかを判断するのにも苦労している様子。
こんな舞台を事件現場に設定されるとは、さすがは鳥飼先生!
何が出るかな?何が出るかな?(ごきげんようのサイコロ風)

3つ目の事件の頃には、宮藤と望月はそれなりに意気投合しているようで安心した。
お互いの役割を認識したということかもしれないけれど、1番近くで長い時間を過ごす同僚とは気持ち良く付き合えるほうが良いからね!

この事件で望月暁子が使用したのが、直径4センチほどの中央の輪に長さ35センチほどの3本の分銅鎖が付いた微塵と呼ばれる武器である。
扱い方次第では敵の骨を木っ端微塵に打ち砕く威力をも発揮することから「微塵」と名付けられたというから恐ろしいよね!
そして金剛力士像のように憤怒の表情を浮かべている記述もあったので、本当に敵に回すとロクなことがない女性なので、宮藤希美は仲良くなれて良かったよね。(笑)

事件には驚くべき真相が隠されていて、SNAKEPIPEは横溝正史を思い出したよ!

事件ファイル総括 三件の重大事件の問題

タイトル通り3つの事件の締め括りである。
もうそれぞれの事件は解決してるじゃない?
そう、もう事件は解決してるんだけどね。
宮藤希美の元にまたもやバーテン・御園生独が登場する。
そして宮藤希美は「世界の真理」を知るのである。

最後の最後まで「やられた〜!」って感じだったね。
大満足のSNAKEPIPEである。(笑)

ミステリー小説でキモになる部分は書きたくないので、核心に触れないような感想しか書けないのがもどかしいね。
鳥飼先生の魅力を充分お伝えできていない気がして残念だけど、非常に楽しい読書時間を過ごせて嬉しかったな!
そして来年、2015年1月10日にはまたまた鳥飼先生の新作が発売だよ!
死と砂時計」なんて、タイトルだけでもワクワクしちゃうよね。
早速予約しないと!(笑)

2 Comments

  1.  鳥飼否宇

    いつもありがとうございます。
    『妄想』では「ロッターズ・クラブ」を使ったので、『迷走』では「ソフト・マシーン」にしてみました。
    『死と砂時計』もよろしくお願いいたします。

  2. SNAKEPIPE

    鳥飼先生、いつもコメントをありがとうございます!
    「妄想女刑事」、「迷走女刑事」と来ましたので、次の展開もあるのではないか、と期待しております。(笑)
    その時にはまた違うキャラクターが出るのか?
    そして望月暁子は続投なのか?などと勝手に想像して楽しんでいます。
    「死と砂時計」は現在読み進めておりますので、また感想を書かせて頂きたいと思います!

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