【「指切り」から連想してROCKHURRAHが制作したイメージ・ビデオ】
SNAKEPIPE WROTE:
ついに待ちに待った我らが鳥飼先生の新作が発売された! タイトルは「指切りパズル」。 事前に得た情報では発売日が9月29日だったため、「整形水 」を観に行った池袋で新刊を手にする予定だったんだよね。 ジュンク堂の検索機で確認すると「発売前 10月1日発売予定」になってるじゃないの! Amazonの嘘つき!とブツブツ言いながら、書店を後にしたSNAKEPIPE。 10月1日に、まずは電子書籍を手に入れたのである。 あとで保存用に書籍も手に入れる予定だよ!
まずは出版元である南雲堂のサイトから、あらすじを転載させて頂こう。
綾鹿市動物園で行われるチタクロリンのコンサート。 予想以上の集客で混乱する中メンバーの飯岡十羽が撫でようとしたレッサーパンダに指をかみ切られてしまう。 チーフ警備員の古林新男は綾鹿署の刑事・谷村の聴取に応じるうちになし崩し的捜査に協力していく。 そして関係者次々に襲われて指を切断される事件が続いていく。
今回の舞台は綾鹿市! やったー!「綾鹿市シリーズ」だ!(笑) 2018年の「隠蔽人類」以来になるんだね? あらすじには、谷村警部補の名前もあり、ますます嬉しくなってしまう。 寝る間も惜しみながら、一気に読み進めたSNAKEPIPE。 ページをめくるごとに、顔がニヤニヤしてしまう。 なぜって、デヴィッド・リンチが「ストレイト・ストーリー 」の後、「マルホランド・ドライブ 」を発表した時みたいな感じだから!(笑) 分かりづらい例えかもしれないけど、一言でまとめると「戻ってきた!」かな? ROCKHURRAH RECORDSでは、鳥飼先生の小説を2倍以上楽しむ秘訣があることは、今までまとめてきた「トリカイズム宣言 」でも実証済。 鳥飼先生の小説に登場する人物名が、実在するミュージシャン(主にニュー・ウェイヴ系、ノイズやアヴァンギャルド、プログレなど)からの名前のパロディで、解明することに喜びを感じているんだよね。(笑) 「指切りパズル」では、「名前ミステリー」が数多く存在していたので、「戻ってきた!」という第一声が飛び出した、というわけ。 ここまで「名前ミステリー」があったのは、2008年の「爆発的 」以来かもしれないね?
鳥飼先生の小説は、章ごとに感想を書くことが多かったけれど、「指切りパズル」は登場人物ごとにまとめていこうかな。 そして「名前ミステリー」の解読も併せて書いてみよう! ROCKHURRAHが解いたので、SNAKEPIPEはお役に立ってないんだけど。(笑)※ネタバレしないように書いているつもりですが、未読の方はご注意ください!
「指切りパズル」 の舞台となるのは、綾鹿市動物園。 チーフ警備員である古林新男(こばやしあらお)の目線で話が進められていく。 58歳の古林はいたって真面目な性格で、趣味は推理小説を読むこと。 特徴的なのは、「笑っていいとも」にクイズに出演していた佐野量子みたいに「人を動物に例えて」表現するところじゃないかな?(笑) そして古林自身はラクダ、もしくはロバに似ているらしい。 今回は、古林が例えた通りの動物画像を載せながら、人物をまとめていこうと思っている。 そして古林新男を「こりん」と読み、新しい男を「ニューマン」にすると、ワイヤーのコリン・ニューマンになったよ!(笑) ワイヤーってどんなバンドなの?とROCKHURRAHに聞いてみようか。
ワイヤー(WIRE)は、70年代パンクの時代に出てきたバンド。 パンクから初期ニュー・ウェイヴに移行していく時に重要な役割を果たし、数多くのミュージシャンや後に出てくる音楽ジャンルに多大な影響を与えたユニークな存在。 同時代の日本ではそこまで有名な人気バンドではなかったけれど、独特のセンスがある曲が多く、ROCKHURRAHも大好きだったという。 そんなワイヤーのメンバーの名前がパロディとなっているなんて、嬉しくなっちゃうね。(笑)
デビュー当時の珍しい動画があったので、載せてみようか。
荒削りでパンクっぽいよね! さすが1977年のイギリスだね。
動物園関係者で進めていこう。 綾鹿市動物園の園長である田名仁久(たなひとひさ)は、ヒグマに似ているらしい。 こぐまちゃんたち、なんてかわいいんでしょ!(笑) 田名園長も動物の赤ちゃんをSNSで配信するなど工夫をして、動物園の集客に努め、成功しているという。 動物アイドルグループ、TiCrP(チタクロリン)を綾鹿市動物園に呼び寄せたのも園長とは、勉強熱心さに恐れ入るよ。 チタクロリンについての説明はあとにして、田名仁久の名前を解読してみようか。 仁久を音読みして「にく」にすると、ホークウィンドのニック・ターナーになるよ!(笑)
再びホークウィンドってどんなバンド?とROCKHURRAHに聞いてみる。 1970年にデビューしたイギリスのバンド。 なんと50年以上経った現在でも活動している長寿バンドなのだ! 極悪レミーでお馴染み、モーターヘッドのレミーが元在籍していたことでも知られている。 サイケデリックやスペース・ロックなどと呼ばれているけれど、ヌードダンサーがステージで踊ったりパフォーマンス的な要素のあるバンドとしても有名。 ではホークウィンド、1972年のヒット曲「Silver Machine」をどうぞ!(笑)
この曲は割とポップで聴きやすいロックだね。 途中のギター・ソロがサイケっぽいのかな。
手足をバタつかせながら話をする様子がペンギンに似ているというのは、飼育員の霧師レミ(きりしれみ)。 慌てふためく、ちょっとおっちょこちょいな雰囲気がよく分かるよね。 名前については、前述したホークウィンドのレミー・キルミスターで間違いないでしょう。 レミは、そのまんまだしね。(笑) 霧師レミはレッサーパンダの世話をしている。 その時、事故が起きてしまうのである。
ひゃー!かわいいっ!(笑) 鳥飼先生の「パンダ探偵 」にもレッサーパンダのミンミンが登場したっけ。 綾鹿市動物園のレッサーパンダは3匹いて、名前がルイス、グレイ、ギルバートなんだって。 なんと、これがワイヤーのメンバーであるグレアム・ルイス、ロバート・グレイ 、ブルース・ギルバートから来ているんだね。 コリン・ニューマンは人間だったけど、他の3人はレッサーパンダとは!(笑) こんなにかわいいレッサーパンダでも、人間の指を食いちぎることができるんだね。 調べてみると食肉類とのことなので、撫でたりするのは厳禁だよ!
動物園の警備員である泥部武六(どろべたけろく)は、精悍な顔立ちでジャッカルのようだという。 警察官や警備員のような人を守る職業の人は、強そうな顔だと安心感が増すよね。 制服というのも武器の一つだと思うけど、体格とか顔も重要なポイントだから。 それにしても名前で「泥部」っていうのはあるのかな? どうやら山形県に「どろぶ」と読む村があったようだけど、現在は廃村となっているようだね。 泥部を音読みすると「でいぶ」で武六は「ぶろく」。 ホークウィンドのデイヴ・ブロックのでき上がり!(笑) このパロディ、すごく好き!
もう一人の警備員はティモシー・ブレイク。 イギリス人で、今年採用になったばかりの新人警備員だという。 どういう経緯で日本に来ていて警備員になったのか不明だけど、意思の疎通に全く不便がない流暢な日本語を話しているよ。 ラブラドールレトリバーに似ているらしいので、ブレイクも見た目、合格だね!(笑) ブレイクは、ホークウィンドのティム・ブレイクでどうだ! 同じイギリス人なので、さほどの違和感もなかったね。
ロシアのフィギュアスケート選手である、ザギトワが溺愛していることで有名になった秋田犬。 その秋田犬に似ているのは、綾鹿市動物園の副園長である一日市愛(すていちあい)。 一日市は地名で新潟や岡山に「ひといち」や「していち」として存在するようだけど、「すていち」は珍しいんじゃないかな? この名前には頭を悩ませたROCKHURRAH。 そしてついに解答を発見! なんと先に載せたホークウィンドの動画で、前衛アートのパフォーマンスみたいなことをやってる女性の名前がステイシアと気付いたらしい。 「すていちあい」とステイシア。 いい線いってるんじゃないかな?(笑)
綾鹿市動物園の創設者であるムアコック博士の銅像は、正門に建っているという。 ムアコックとは、イギリスの有名なファンタジー・SF作家であるマイケル・ムアコックで間違いないね。 エルリック・シリーズなどで日本でも人気だけど、ホークウィンドのメンバーとしても活動していたロック好きの作家なんだとか。 二足のわらじ、今だったら二刀流と言うべきか?(笑)
続いて動物アイドルグループ、TiCrP(チタクロリン)のメンバーを紹介しよう。 メンバーそれぞれのイニシャルからチタクロリンというグループ名ができているとのこと。 Tiは飯岡十羽(いいおかとわ)、ニックネームはトワワ。 元素記号ではチタンを意味し、そこから連想される動物としてTiger(トラ)をマスコットに設定してるんだとか。 最近のアイドルだったらこうした「こじつけ」での命名もしてるのかもしれないね? それにしても飯岡十羽という名前は、何かのパロディなのかな。 トワワと聞いて連想したのは、テイ・トウワとか、トワ・エ・モワくらい。(笑) どちらも違うだろうなあ。 ROCKHURRAHも思いつかないと言う。
ハーフで帰国子女である六本木キャサリンのイニシャルはCr。 元素ではクローム、マスコットはCrocodile(ワニ)とは! ワニをペットにしていたのは「コインロッカー・ベイビーズ」のアネモネだったね。(笑) 六本木キャサリンにいたっては、参考にする人名すら思い浮かばないよ。 そもそも名字で六本木ってあるのかな?(笑) 調べてみたら、全国に2400人実在するとは驚き! いるんだね、六本木さん!
丹波凛(たんばりん)の愛称はリンリン。 これはもうリンリン・ランランしか浮かばないよ。(古い!) 調べてみると、実在している丹波凛さんが複数人いて、びっくり! 丹波凛の場合はイニシャルを無視し、リンの元素記号であるPが採用されている。 そのためマスコットはパンダなんだって。 パンダといえば、「パンダ探偵」のナンナン、元気かなあ? 最近話題の上野動物園の双子のパンダ、シャオシャオとレイレイもかわいいよね。 映像が流れると、顔がニンマリしちゃうもん。 動物の癒やし効果は絶大だね!
チタクロリンのマネージャーは、スローロリスに似ている出口美紅(でぐちみく)。 スローロリスというのはリスではなくて、ロリスという夜行性の猿の一種なんだね。 えっ、わざわざ書かなくてもみんな知ってるって?(笑) 出口美紅は、ホークウィンドのディック・ミックのパロディで間違いないでしょう!
チタクロリン(通称チタクリ)は以上3名で構成されるアイドル・グループなんだよね。 全国の動物園でプロモーション活動を行い、ファンを増やしているという。 チタクリには「ピンクの旗」「消えた椅子」「わたしはハエ」などの曲があるようで、これらは全てワイヤーの曲やアルバムのタイトルなんだよね。 ROCKHURRAHはこれらの曲から即座にワイヤーを連想し、そこから「名前のパロディ」を解明していったらしいよ。
チタクリには熱狂的なファンがいるので、続けて紹介していこう。
マレーグマに似ているとされたのは多門悦治(たもんえつじ)。 トワワのファンらしい。 声が野太くて顔がコレとは、あまり関わりたくないタイプに見えるよね。 それでアイドルの追っかけとは、ちょっとびっくり。 多門悦治は、クロームのダモン・エッジだろう、とROCKHURRAHが言う。 ここで3つ目のバンドが登場したよ。
クロームは1970年代後半に登場したサンフランシスコのバンドで、暴力的で歪んだノイズが散りばめられたような音楽を得意としていた、とはROCKHURRAHによる説明ね。 SNAKEPIPEもインターネット・ラジオで聴いて「この曲いいね」と話すと、「クロームだよ」と教えてもらったことがあるよ。 ガレージとインダストリアルのミクスチャーみたいでカッコいいんだよね!(笑)
ファンのもう一人はコモドドラゴン似の栗戸縁男(くりどへりお)。 獰猛そうで、危険な雰囲気を感じる男なんだろうね。 実際コモドドラゴン(コモドオオトカゲ)は、強力な歯を持ち歯の間から毒の注入ができる構造を持っているらしいよ。 コモドドラゴンには出会わないほうが良いね! 栗戸縁男も上述したクロームのメンバーであるヘリオス・クリードのパロディで良いみたいね?
綾鹿中央病院の看護師長は西紋菫(さいもんすみれ)。 画像はマヌルネコで、寒冷地に住む野生のネコとのこと。 スナネコは知っていたけれど、マヌルネコは見たことないかも。 この動物に似てると言われても、即座に「あの雰囲気ね!」と反応できないなあ。(笑) そしてこの西紋菫、音読みにすることで謎解きできたよ。 「さいもんきん」にすると、ホークウィンドのサイモン・キングのパロディと判明! スミレの漢字がこの字とは知らなかったなあ。
義指製作者の針金一五四(はりがねいつよ)はコツメカワウソに似てるんだとか。 とてもカワイイ動物だけど、人間の顔になったらどうなんだろう?(笑) 最近はペットとしての人気もあると聞くけれど、同時に密輸事件も摘発されているよね。 密輸の途中で死亡する報道もあり、聞くたびに怒りがこみ上げてくる。 本当にこんなことはやめて欲しいよね! 話を針金一五四に戻すと、「これはそのままワイヤーだね」とROCKHURRAHが言う。 針金がワイヤーで、一五四はワイヤーの3rdアルバム「154」とのこと。 それにしても針金さん、実在する名字なのね。(笑)
「綾鹿市シリーズ」で、以前より馴染みのある綾鹿警察署の谷村警部補も登場する。 古林から見た谷村警部補は、笑っているように見える顔から「世界一しあわせな動物」と呼ばれるクオッカに似ているそうだよ。 クオッカ、とてもカワイイね! 「逆説的 」では、谷村警部補はキューピー人形に似ている、とされていたっけ。 どっちにしても童顔の「とっちゃん坊や」(死語?)ってことだね。 だみ声が特徴とされていた点が、「指切りパズル」には書かれていなかったよ。 かわいい顔でだみ声っていうギャップが面白かったんだけどね。(笑)
谷村警部補とコンビの南巡査部長も登場してるよ! 赤ら顔をした南巡査部長は、ニホンザルにされてしまった。(笑) この特徴は「逆説的」にも描かれているね。 谷村警部補と南巡査部長は、動物園のチーフ警備員である古林に捜査の協力を求め、事件の解決に挑む。 チタクリがアイドル3人組なら、こっちはおっさん3人組ってとこだね。(笑)
「指切りパズル」は、連続指切断事件という猟奇的な題材を扱っているけれど、「親指がなくなったらヒッチハイクできない」や「中指がなくなったらファックサインができない」などの例えに笑ってしまう。 残酷な事態なのに笑いが出る、というセンス、最高なんだよね!(笑) 谷村警部補がわざとなのか、いつまでたっても「チタクリ」を言い間違えるところには、プッと吹いてしまった。 きっと社内で変な人だと思われてしまったSNAKEPIPEだよ。(笑)
動物園とアイドルとミステリー、そして名前のパロディまでミックスされた「指切りパズル」の世界に、ぐんぐん引き込まれた。 連続切断事件の途中で、ROCKHURRAHが「わかった!」と言う。 何が分かったのかを聞き、「そんなバカな」と答えたSNAKEPIPE。 ところが読了して、ROCKHURRAHの「そんなバカな」意見通りだったことに驚いてしまった。 まさかそんな結末?と腰を抜かすこと間違いないね! そして鳥飼先生の作品に慣れ親しんでいるために、結末を予想してしまったROCKHURRAHにも拍手だよ。(笑) 「指切りパズル」の「名前パロディ」に関しては、SNAKEPIPEの出る幕一切なし。 双頂山(ふたかぐめやま)は、「もしかしてツイン・ピークス?」って思ったけど。(笑)
現在ROCKHURRAHと2巡目の読書中。 鳥飼先生の著作って、何度読んでも面白いんだよね。 今回も楽しませて頂き、ありがとうございました!