江之浦測候所 見学

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【江之浦測候所入口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

写真家で現代アーティストの杉本博司が、2017年に竣工した「江之浦測候所」については、以前より知っていた。
蜜柑畑だった11,500坪の広大な敷地に、ギャラリーや野外舞台、茶室、庭園などが配された複合アート施設だという。
正式名称が「小田原文化財団 江之浦測候所」で、場所が小田原なんだよね。
遠い場所だから行くのは難しいと思っていた。
ところが昨年、ROCKHURRAH RECORDSの事務所移転で神奈川県民になったので話が違ってくる。
小田原がそんなに遠くなくなったんだよね。(笑)
「江之浦測候所」は2ヶ月前から予約受付を開始しているので、8月の間に10月訪問の予約をする。
野外を歩くことになるので、季節の良い時期を選んだんだよね!

そしてついに予約当日になった。
いつ雨が降ってもおかしくないような「どんより」した空模様。
「雨男」と呼ばれなくなって久しいROCKHURRAHと共に、根府川駅に向かったのである。
根府川駅は東海道線で小田原から2つ目の無人駅。
江之浦測候所行きの始発バスを予約していたので、そんな早い時間に人がいるわけないと想像していたSNAKEPIPEは目を見張る。
改札を抜けた先に約20名ほどの行列ができているじゃないの!
江之浦測候所ってそんなに人気なのか!と驚いていると、大型のバスが駅前に到着。
バスには「ヒルトン小田原リゾート&スパ」と書かれていて、お客さんや従業員らしき人が続々と乗り込んでいく。
根府川駅から無料送迎バスが出ているんだね。
ヒルトンより小型の江之浦測候所行きのバスも到着し、ROCKHURRAHと乗り込む。
定員20名ほどのバスは、いつの間にか満席になっていた。

江之浦測候所は安全性を考慮し、乳幼児を含む中学生未満の入場を禁止している。
子供がいない代わりに、高齢者の姿が多い。
60代から70代の女性3人組が車内で雑談を始め、騒々しい。
海外からのお客さんもバスに乗っている。
バスのドライバーも高齢に見えたけれど、ハンドルに握った瞬間F1ドライバーに変身したようだ。
くねくねとした坂道を猛スピードで駆け抜け、スリルを楽しんでもらおうとしているよう。
車に弱いSNAKEPIPEは目をつぶり、景色を観ないことにする。
気分が悪くならないようにね!
10分もかからずに到着し、バスから開放される。
ここからは徒歩になるよ。

駐車場から受付まで細い山道を上ったり下ったりしながら参道を進み受付を目指す。
「歩きやすい服装、靴でのご来館をおすすめします」とサイトに注意されているのも納得だね。
事前に購入していたチケットを受付に見せると、入館を示すシールを服に貼るよう指示され、パンフレットを手渡される。
受付から一番近い建造物が「夏至光遥拝ギャラリー」で、杉本博司の代表作である「海景」が展示されている。
美術館で観るのとは違う印象で、「あるべき場所におさまって」いて素晴らしかったよ!
アート作品は背景や空気も一体となって完成することに改めて気付かされたね。
100m先まで歩いていくと、眼の前に相模湾が広がっている。
海外の豪邸に足を踏み入れたみたいだよ。(笑)
こんな風景を独り占めできたら素晴らしいだろうなあ。

続いて向かったのは「冬至光遥拝隧道」の上部。
冬至の日に光が差し込むように設計されているトンネルは、70m相模湾側に突き出ている。
「止め石」という「立入禁止」を示す石まで歩き、前方を眺める。
SNAKEPIPEもROCKHURRAHも高所恐怖症だけれど、眼前に広がる景色に胸がすく。
くもり空だったことも幸いしていたかもしれないね。
眩しさもなかったので、しばらく海を見ていたよ。
「冬至光遥拝隧道」横にある「光学硝子舞台」と呼ばれるカメラレンズに使用される光学硝子で作られた舞台は、光を反射することなく単なる台にしか見えなかったのは残念だったかも。

「冬至光遥拝隧道」の中を歩く。
「止め石」から先の風景がこちら!
ここに冬至の光が差し込んだら美しいだろうね。
今年は12月21日に「冬至光遥拝の会」が開催されるらしい。
パンフレットにその時の写真が載っていて、神々しいよ。
1年に2回だけ光が差し込むエジプトのアブ・シンベル神殿やマヤ文明のククルカン・ピラミッドなど、太陽光を計算して作られた建造物と同じだよね。
「古代人の意識」をテーマにしている江之浦測候所らしい建造物だと思ったよ。

相模湾と逆の出口に向かう。
70mの間には天井から光を取り込む空間があった。
真ん中にある井戸には、硝子が入っていて光を反射していたよ。
荘厳な雰囲気に酔いしれるはずのROCKHURRAHとSNAKEPIPEに邪魔が入る。
バスで一緒だった高齢の3人組女性達が、はしゃぎながら同じ空間に入ってきてしまったのだ。
嫌な予感が的中してしまい、非常に不快になる。
場所をわきまえない会話をしたり、行動を律することができない人は、入場制限すべきではないだろうか。
何のために江之浦測候所を訪れたのか、目的が不明だよ。
あんな連中に出くわしてしまったのが不幸だね。

トンネルを抜けた先には、円形石舞台があった。
真ん中の石に立ってみる。
イメージは邪馬台国の卑弥呼だよ。(笑)
古代人が祭祀で歌い踊る姿が想像できる。
杉本博司は石に対してこだわりがある話を、以前テレビで見たことがあったよ。
選びぬかれた石が配置されているんだね。
他の場所も探索してみよう。

入室ができない茶室「雨聴天」を見たり、広大な「みかん畑」を進んでいく。
最初にマップをもらっているけれど、方向音痴のSNAKEPIPEには意味がないものだよ。(笑)
歩道になっている道を歩いていくと、建物が見えてきた。
坂を下ると小屋の前にスタッフの姿も見える。
ここは杉本博司の化石コレクション展示場だったんだよね。
手前にある大きな岩(?)は4億年以上前のウミユリの化石で、後ろの棚に並んでいるのはアンモナイトなど2億年前の化石だという。
古美術商としての経歴を持つ杉本博司なので、化石もコレクションしているんだね。
博物館以外でここまで多くの化石を観たのは初めてかも。

「竹林ルート」を通って山道を歩く。
風景に溶け込むように、杉本博司の彫刻作品「数理模型」が展示されている。
2023年7月に森美術館で開催された「ワールド・クラスルーム」で、杉本博司の三次関数の数式を立体化する「観念の形」シリーズを鑑賞しているROCKHURRAH RECORDS。
自然の中にシルバー色の彫刻が配置されているのも素敵だったよ!
道なりに沿って歩いていくと「甘橘山 春日社」が見えてきた。
複数の石灯籠が見事に配置されていて、圧巻の風景だったよ。
「甘橘山 春日社」は海をバックにしていて、朱色がより一層鮮やかに見えた。
まるでアート作品のようだったよ!

ROCKHURRAHがマップを確認し、まだ見学していないエリアを特定してくれた。
2時間程度歩き通しだったので、石庭のベンチで一休み。
中央の石は平安時代の東大寺七重塔礎石だったものらしい。
枯山水の中央に置かれて、存在感があった。
外国人観光客は、江之浦測候所で存分に「ザ・日本」を感じることができるんじゃないかな。
SNAKEPIPEも改めて日本の美意識を認識したよ。
特別な空間を見学できて良かった。

杉本博司の「海景」を真似て撮った一枚がこれ。
どんよりした雲がたれこめて、良い写真だね。(笑)
杉本博司は映画の最初から最後まで露光した「劇場」シリーズや古代人が見たであろう海を撮影した「海景」シリーズなど、「時」をテーマにした作品を多く手掛けているアーティスト。
江之浦測候所も「古代人の意識に立ち返る」ために創設され、今後1万年は存在し続けることを想定した施設であるという。
古代から未来に向けた壮大なスケールで構想を練った杉本博司の頭の中を知りたくなるよ。(笑)
日常から離れたショート・トリップで心身が蘇った感じ。
帰りに小田原でいただいた「魚フライ定食」も絶品で、とても美味しかった。
ROCKHURRAH、ごちそうさまでした!
またどこか鑑賞に行きましょう。

大人社会科見学—アド・ミュージアム東京—

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【アド・ミュージアム東京を外から撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

近場で行ってみたい場所として、以前より候補に上がっていたのが、汐留にある「アド・ミュージアム東京」だった。
ここは公益財団法人 吉田秀雄記念事業財団が運営している施設で、入場無料なんだよね!
事前予約を済ませ、汐留に向かったのである。

アド・ミュージアム東京は、汐留駅直結のカレッタ汐留というビルの地下2階なので、道に迷うことはないよ。
予約時間の12時少し前に到着すると、すでに入場を待つ列ができていた。
お客さんのほとんどは10代の女の子達で、ちらほら年配者が混ざっている状態だよ。
行ったときは夏休み期間だったせいもあるし、入場無料も影響してるだろうね。
入り口で名前を確認され、会場へ。

「ニッポン広告史」として、江戸時代の広告からスタート。
江戸時代が想像以上に進んだ文化を持った時代だったことは、NHKの「浮世絵 EDO-LIFE」などを観て知ったROCKHURRAH RECORDS。
当時の人たちは、美味しいご飯食べたり、オシャレをしたり、旅行に出かけたりして現代人と、それほど違いがない暮らしぶりだったみたいだよね。
載せた画像はお店の看板だったのかな。
左から「櫛屋」「鍵屋」「かつら屋」「両替屋」「あめ屋」だって。
ここで驚くのが、江戸時代に「かつら屋」があったこと!
調べてみると、歌舞伎役者などが使用していた以外に、お侍さんも使っていたらしいよ。
看板が残されてるくらいだから、愛用者が多かったのかもね?

続いては明治時代の広告コーナーへ。
浮世絵の中に洋装の人物が描きこまれた「木村屋」の宣伝や、商品のポスターが並んでいた。
「味の素」や「アサヒビール」のレトロな広告は、入場者にも大人気。
ガラス面で光ってしまうため、斜めからの角度で撮影してみたよ。
この中にあった「ミツワ練歯磨」のポスターが鏡になっていたので、ミュージアム・ショップで衝動買い!(笑)
大正時代のデザインって好きなんだよね。

戦中〜戦後の広告では、標語のようなポスターが多かった。
大正時代までの商品を宣伝するために作られた広告とは、まるで性格が違っているよね。
左上の「買わないですませる工夫」は、現代でも通用する工夫で、納得しちゃう。
「何がなんでもカボチャを作れ」も、かなりインパクトが強いポスターだよ。
「必勝食糧」になっているカボチャは、代用食として栽培が奨励されたという。
戦後の広告では、少しずつ現代に近づいてきて、ホッとしちゃうね。

広告がライフ・スタイルをリードする、というコーナーでは、懐かしい80年代の広告が並んでいたよ。
2021年1月に鑑賞した「血が、汗が、涙がデザインできるか」の石岡瑛子の手によるポスターもあったね。
確かに80年代は広告が面白かった!
大好きなニュー・ウェイヴの音楽がCMに採用されていたり、遊び心に溢れた広告が多かったように記憶しているよ。

昭和初期に発行されていたポスター研究雑誌や、お菓子のパッケージなどが観られるコーナーで発見したのが不二家のミルキー。
いつ頃販売されていたパッケージなのか記録するのを忘れてしまったよ。
舌をペロッとさせているところは今でも同じだけど、顎のラインがいびつ。
なんといっても目が怖い!(笑)
ペコちゃんは誰でも知ってるキャラクターだけど、こんな顔で売り出されていたこともあるとは。
強い衝撃を受けたSNAKEPIPEだよ。(笑)

隣のブースでは「ほほ笑みをとりもどす世界の広告-Good Ideas for GoodⅢ-展」という、世界の面白いCMが展示されていたよ。
SNAKEPIPEが面白いと思った2作品を載せてみよう。
残念ながら日本語字幕付きは探せなかったよ。

メキシコ最大の航空会社・アエロメヒコ航空が実施した驚きのキャンペーン広告なんだよね。
なんとメキシコのDNAの割合によって、航空券を割引くんだって!
恐らく一般的には、メキシコの血が濃いというのは歓迎されないように思うけど?
CMでは「私はもっとメキシコの血が濃いはずよ」などと逆ギレするんだよね。(笑)
アメリカ人へメキシコへの旅行を促すためのキャンペーンだったとはいえ、逆転の発想で話題をさらうところが素晴らしいと思ったよ。

ブラジルでは「This Coke is a Fanta(外側コーラでも中身はファンタ)」という言葉がLGBTQを揶揄しているんだとか。
その言葉通り、コーラ缶の中身をファンタにした商品を売り出し、ゲイ・パレードとコラボ。
LGBTQへの偏見を逆手に取ったコカ・コーラの作戦勝ちだね!
紹介した以外にも、わざとスペルを間違えたロゴで正規品を販売した、ファッション・ブランドのディーゼルのCMなども企業側のアイディアに感心させられたよ。
結構ドギツいCMもあったけれど、世界レベルになるとさすがに面白かった!(笑)
日本の企業だったら、恐らくゴー・サインが出ないようなキワドい内容に触れるCMを率先して制作し、好感度をアップさせているんだもん。
日本のCMとはレベルが違うように感じたよ。

アド・ミュージアム東京は、予想していたよりも「こじんまり」していたけれど、浮世絵のように4回押すと絵葉書が完成するスタンプが配置されていたりして、楽しめる工夫がされていた。
SNAKEPIPEの個人的な好みは大正時代や昭和初期のポスターやデザインなので、もう少しミュージアム・ショップのアイテムが多かったら良かったかもしれないと思ったよ。

またどこか近場で社会科見学行ってみよう!

金沢初上陸続編!KAMU kanazawa 鑑賞

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【温泉旅館から見えた風景】

SNAKEPIPE WROTE: 

先週書いた「金沢初上陸!金沢21世紀美術館 鑑賞」の最後に予告していた、金沢観光2日目を書いていこう!
SNAKEPIPEの希望は金沢21世紀美術館に行くことだったけれど、ROCKHURRAHは追加の企画を立てていてくれた。
それは山中温泉にある鶴仙渓の散策と、金沢21世紀美術館近くにある私設現代アート美術館「KAMU」に行くこと!
温泉旅館を山中温泉に決めたのは、鶴仙渓が目的の一つだったからなんだよね。

金沢観光初日は、旅館の夕食に舌鼓を打ちすぎてしまい、お腹が破裂するくらい食べ過ぎてしまったROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
更に「利き酒セット」という日本酒3種の飲み比べもしたため、早目に床につくことに。(笑)
露天風呂付きの部屋を取っていたので、早起きした翌朝、ゆっくり湯に浸かってから鶴仙渓の散策に出かけたのである。

朝から日差しが照りつけているのに、宿の方からは傘を持つように勧められる。
晴れているけれど念の為、宿の傘を借りて歩き始める。
地図を見ながら歩いていたはずなのに
「遊歩道ってゆうほどうの道じゃないよね」
バカなダジャレに大笑いするROCKHURRAH。
確かこのダジャレは、10年以上前にも使ったはずだけどね。(笑)
ここで道を間違えていたことが判明し、正しい道を見つけて一安心。
大聖寺川に沿って遊歩道があり、気持ちの良い朝の散歩になった。

前日の夜に雨が降ったのか、木々の葉から雫が落ちる。
晴れているのに傘が必要、に納得するSNAKEPIPE。
傘をさしていなかったら、全身濡れてしまったはずだからね。
朝靄が川や木々を薄いベールで包むような風景の中を歩き続ける。

遊歩道とはいっても、予想以上のアップダウンがあるので、奥多摩に雰囲気は近いと思ったよ。
朝の時間帯を選んだせいか、誰もいない空間はとても気持ちが良かった!

「あやとり橋」という、S字型の赤い橋も見事で、木々の緑に映える。
橋の中央から川を見下ろすと、かなりの高さに驚く。
実はROCKHURRAHとSNAKEPIPE、高所恐怖症なんだよね。(笑)
「あやとり橋」から折り返して、宿に戻ることにする。
1時間ほどの散策だったけれど、清々しい気分になったよ!
早起きして良かった。

昨日の食べ過ぎを警戒しながらも、やっぱり旅館のごはんが美味しくて!
お昼がいつになるか分からないからね、などと言い訳しながら、「おかわり」してしまう。
お米がおいしい、というSNAKEPIPEに、「水が良いから」と答える宿の方。
こんなにおいしいごはんを毎日食べていたら、絶対太っちゃうよね。(笑)

宿の送迎で加賀温泉駅まで戻る。
昨日から気になっていたのが、道路脇の電柱に貼ってある「娘娘饅頭」という広告だった。
どうやら山中温泉名物のお饅頭のようだけど、「娘娘」を「にゃあにゃあ」と読むところが可愛い!
これはお土産に買って帰らなければ、などと話しながら金沢へ。
金沢21世紀美術館方面に行くバスに乗るところで、JRバスが走っていることに気付く。
ICカードが使える!(笑)
北陸鉄道バスでは小銭が必要だったので、JRバスを見つけてラッキーだったよ。

私設現代アート美術館KAMUは、金沢21世紀美術館からすぐの場所にあった。
この美術館は6つの異なる会場で展示を行うタイプとのこと。
すべての会場は徒歩圏内なので、アートと街巡りを楽しむことができるという。
最初に向かったKAMU Centerでチケットを購入し、会場のマップを手に入れる。
Centerは3F建で、フロアごとに1人のアーティストがフィーチャーされている。
作品保護のため、すべての荷物をロッカーに預けよう指示される。
小さいポシェットまで禁止と言われるのは初めてかも。

1Fにはレアンドロ・エルリッヒの「インフィニティステアケース」が展示されている。
前日の金沢21世紀美術館では、1週間前に予約をして、代表作である「スイミング・プール」を鑑賞したROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
KAMUでは、予約の必要もなく、入り口入ってすぐに鑑賞することができるよ!
降りて行くはずの螺旋階段が横向きに展示され、鏡による効果も加わり、自分がどこにいるのか分からなくなってしまうんだよね。
エルリッヒのトリックアート、面白かった。(笑)

2Fではステファニー・クエールの彫刻作品が展示されている。
1982年イギリスのマン島生まれというから、現在40歳になるのかな。
作品はすべて粘土で作られている。
クエールの作風なのか、粘土でキッチリ形を作り上げているのではなく、少し溶けたように見えるところがユニーク。
それなのに動物の種類が特定できる出来栄えなんだよね。
小さな作品が会場の階段に配置されていて、とてもかわいかった。

3Fには桑田卓郎の陶芸作品が並んでいた。
1981年広島生まれ、現在は岐阜在住とのこと。
桑田卓郎の作品、ものすごく気に入ったよ!
いわゆる陶芸とはまるで別物。
ポップで色鮮やかな作品は、岡本太郎にも通じる遊び心にあふれている。
調べてみるとロエベの2020年秋冬コレクションに、桑田卓郎の作品が使用されていたみたい。
伝統工芸とファッションの融合とはね!(笑)

最初に受付を訪れた時、12時から13時は展示を取りやめているギャラリーがあるけれど、よろしいですか?と確認される。
訪れたのが11時半頃だったからね。
Centerの次に、12時までに余裕で行かれるのはKAMU k≐kですね、と受付の方に勧められ、行ってみることにする。
MAPに記載されたQRコードを読み取ると、Googleマップが表示され、現在位置から目的地までの道のりを知ることができる。
無事に会場に到着することができたのは、ROCKHURRAHのおかげだね。(笑)
ここでは諏訪綾子の「TALISMAN in the woods」が展示されていた。
白山で間伐された杉の枝葉が中央にモニュメントとして吊り下げられている。
暗い室内には杉の香りがたちこめ、原始に帰るような印象の音が鳴っていた。
作者の思いがあることは理解できるんだけど、作品として見ると難解系だね。

次の会場は13時まで開かないので、その間にランチを取る。
金沢来たからには、やっぱり寿司だよね!(笑)
朝ごはんを「おかわり」してたらふく食べたのに、まだ食べるつもりか!
量が調整できるから回転寿司にしよう、と近くの店に入ってみる。
適当に何皿か注文すると、これがすべて美味しいの!(笑)
「のどぐろの炙り」、目ン玉飛び出るくらい美味で感動してしまう。
回転寿司でこのレベルとは、金沢すごいよ!

13時を過ぎたので、次の会場に向かう。
KAMU Lでは森山大道のインスタレーション「Lip Bar」が常設展示されているという。
さすが森山大道だけあって、会場は裏通りの夜の街にあった。
ちょっとわかりづらくて、暑い中を何度も行ったり来たりしながらたどり着く。
入ってみると、一面赤い唇、唇、唇!(笑)
口がポカンと開くほどのインパクトで、圧巻の一言だよ。
室内のエアコンまで唇柄になっていて笑ってしまった。
20時〜24時はバーとしても営業しているようで、メニューを見せてもらうと「オリジナルカクテル Lip」やジン、ラム、ウォッカなどが記載されている。
Lipがラベルになった日本酒も置いてあったよ。
サイン入りの限定100本が、通販でも手に入るみたい。
お値段は27,500円なので、ちょっとお高めだね。
「Lip Bar」で飲むから良いのかもしれないし?

次はKAMU BlackBlackへ。
受付に入ると、表の注意事項を確認してから中に入るよう指示される。
光の点滅に関する注意喚起などが書かれていたので、読んでから再び会場へ。
ここでは黒川良一の作品「Lithi」を鑑賞できる。
黒川良一は1978年大阪生まれ、現在はベルリンで活動を続けるビジュアルアーティスト。
テート・モダンやポンピドゥー・センターで展示されたという国際派なんだって。
ビジュアルと音を体感するアートなので、ここは動画を載せておこうか。

KAMUには、他に2つ展示会場があるけれど、新幹線の時間などを考えて、これにてアート鑑賞は終了!
初めての場所を地図を頼りに歩いて鑑賞するのも楽しかった。
歩きやすい気候の時だったら、もっと良かったのかもしれないね?

金沢駅に戻り、お土産を物色する。
絶対に買って帰りたかった「娘娘饅頭」は、お土産屋の受付嬢に場所を訪ね、探し当てることに成功!
帰宅後食べてみると、普通のいわゆる温泉まんじゅうだったよ。
これはネーミング勝ちだね。(笑)

アートあり、温泉あり、渓谷散策ありと大満足の金沢旅行だった。
ひとつ失敗だったのは、KAMUに行く前に、リュックをロッカーに預けておくべきだったこと。
二人揃って、わざわざ大きな荷物を背負って、暑い中歩き回ってしまった。
特にROCKHURRAHには、旅館で飲むはずだった酒類が入っていたため、余計に重かったんだよね。
その後数日は背中に痛みが残ったというので、申し訳ないことをしてしまった。
旅慣れていないとはいえ、もっと楽になる方法を考えないとね!
次回の旅へ教訓としておこう。(笑)

金沢初上陸!金沢21世紀美術館 鑑賞

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【加賀温泉駅に設置されていた販売機。Lady Kagaに大笑い!】

SNAKEPIPE WROTE: 

3月に誕生日を迎えたSNAKEPIPEに、プレゼントとして旅行を提案してくれたROCKHURRAH。
どこにしようかワクワクしながら考えていたけれど、当時はまだコロナのため、遠出できる状況じゃなかったんだよね。
もう少ししてからと言い続けているうちに、桜が咲き、つつじの鮮やかな色に目を奪われ、あじさいの季節になっていた。
月日が経つのは速いよね。(笑)
来月にはもうROCKHURRAHの誕生日が控えているので、2人の誕生祝を同時に執り行うことに決定!
せっかくなので、今まで行ったことがない場所を旅してみようということになった。

SNAKEPIPEには以前から密かに実現したいことがあった。
それは金沢にある金沢21世紀美術館に行くこと!
現代アートの展覧会情報などでもよく目にするので、一度行ってみたい美術館なんだよね。
ROCKHURRAHに提案すると快く承諾してくれる。
せっかくなので温泉旅館に宿泊し、日頃の疲れも癒やす計画を立てる。
そうと決まれば新幹線や宿、美術館のチケットなどの予約を素早く完了させるだけ!
あっという間に出発の日を迎えたのである。

朝早くに家を出て、東京駅から新幹線「かがやき」に乗車。
約2時間半で金沢に到着する予定である。
ROCKHURRAHも金沢に行くのは初めてとのこと。
東京駅で朝ごはんを買い、新幹線で食べると旅行気分が高まるよね!(笑)
少し眠ったり、景色を眺めているうちに金沢に到着。
テレビの旅番組などで目にするシンボル的存在の「鼓門」は、圧倒的な迫力。
「もてなしドーム」と呼ばれる幾何学模様のガラスの屋根もカッコ良くて、ここだけで何枚も写真を撮ってしまったほどだよ。(笑)
そしてバス乗り場の配置が非常にわかりやすくて、初めて訪れた人でも迷わない構造なんだよね。
到着した瞬間から「金沢、素晴らしい!」とROCKHURRAHとうなずきあったよ。(笑)

どのバスに乗っても、たいていは金沢21世紀美術館近くまでは行くことができるようなので、最初に来たバスに乗ってみる。
乗車の時にICカードをタッチしようとすると「SuicaなどのICカードは使用できません」と書かれているじゃないの!
えー?使えないの?
仕方なく整理券を取り、小銭を用意する。
調べてみると、どうやら北陸鉄道バスでは独自のICカードのみ対応とのこと。
JRバスの場合は問題ないようだけど、走ってるバスはほとんど北陸鉄道バスなんだよね。
金沢行く時は、100円玉を大量に用意しないと駄目かも!
そうこうしているうちに見覚えがある建物が見えてきた。
金沢21世紀美術館だ!(笑)

オラファー・エリアソンの「カラー・アクティヴィティ・ハウス」が見えてくる。
2020年9月に東京都現代美術館で「ときに川は橋となる」を鑑賞したアーティストだよね。
「あなたに今起きていること、起きたこと、これから起きること」という黄色、緑色、青色3色のハロゲンランプを使用した作品は、自分の影が壁に投影されることで表情が変化する作品だったっけ。
「カラー・アクティヴィティ・ハウス」も同様にシアン、マゼンタ、イエローの色ガラスの壁が渦巻のように立っていて、その中を歩くと色が重なり、自分や外の風景が変化していく「参加型」の作品だった。
画像で観ているだけでは分からない面白さがあったよ!

金沢21世紀美術館ではいくつかの企画展が同時に開催されていて、今回は「ムン・キョンウォン&チョン・ジュンホ:どこにもない場所のこと」を鑑賞することにした。
SNAKEPIPEは全く知らないアーティストなんだけど、韓国を代表する2人組とのこと。
また韓国になってしまったか。(笑)
ユニットを結成した当初の2009年より「現代世界における芸術の社会的機能と役割は何か」と問い直すプロジェクト「News from Nowhere」(ウィリアム・モリスの小説からインスピレーションを得て名付けられた)を展開しているという。
なんだかちょっと難しそうじゃない?

ほとんどの作品がいわゆるビデオ作品で、最初に鑑賞したのが2012年の作品「世界の終わり」。
2つの画面で進行している「現在(左)」と「未来(右)」。
未来のほうに出てくる小道具が面白かったよ。
物語そのものは、そこまで突飛ではないので、まるで映画を鑑賞しているようだった。
これからは、電飾見る度に、この作品を思い出すはず。(笑)

「どこにもない場所のこと:エクリプス」は2022年の作品だって。
小さな船の中で、漂流する孤独な男を描いているんだよね。
時々表示される升目のせいで、男の船はプールに浮いているだけに見える。
SNAKEPIPEは、漂流や孤独が男の心の内側を描いているだけで、実際に大海原を漂っているわけではないように感じたよ。
韓国人ユニットの作品を一通り鑑賞したあと、いよいよ金沢21世紀美術館一の有名作品に移動する。

レアンドロ・エルリッヒの「スイミング・プール」は、今まで何度テレビで観たことか。
2018年3月に森美術館で鑑賞した「見ることのリアル」も、最初のエリアソンと同じように参加型のアート作品が多かったよね。
感想を書いた記事にも「エルリッヒの最も有名な作品は、金沢21世紀美術館にある『スイミング・プール』」だって。それはテレビで観たことある!(笑)」と書いているよ。
ついに今回、初めて鑑賞することができた!
「スイミング・プール」は、展覧会チケット購入とは別に、プール用の予約をする必要があるんだよね。
5人くらいまでをワンセットにして、5分のみ入場が許されている。
タイミング良く、ROCKHURRAHとSNAKEPIPEの2人だけの時間があったので、夢中になって撮影する。
日差しが出てきたので、プールの底に光の美しい模様と影が写ってキレイ!(笑)
プールの上に人がいなかったのが残念だけど、楽しい時間を過ごすことができたよ。

無料展示コーナーにジェフ・クーンズのバルーン・シリーズが並んでいた。
バルーン・シリーズは、風船でできているように見せかけたステンレスの作品だけど、今回展示されていたのは、フランスの磁器ブランド、ベルナルドとのコラボなので、素材が磁器だったとは!
SNAKEPIPEは説明見るまでてっきり従来のステンレス素材だと思っていたよ。(笑)
ジェフ・クーンズの作品は高額取引されることで有名だけど、自分の作品を高く売り、自分の価値を高めようとするジェフ・クーンズの姿勢や行動がアート行為なのかなと勘ぐったりもする。
パッと観ただけで「ジェフ・クーンズだ」と分かるところは、すごいしね。

無料スペースにAKI INOMATAの展示もあったよ。
Acting Shells」というタイトルで、真珠貝をモチーフにした作品が並んでいた。
AKI INOMATAといえば、2022年6月にジャイルギャラリーで鑑賞した「世界の終わりと環境世界」で作品を鑑賞したアーティストだったね。
この前は南部馬で、今回は真珠ということは、動物系アートということか?(笑)
展示室が暗かったので、あまりよく見えなかったけれど、真珠に彫刻されてたみたいだね。
監視員の高齢女性が、全くアートとは無縁なタイプの方のようで、
「ロープありますから、そこから中へは入らないでくださいねっ」
と大声で注意する。
いやいや、あなたの大声と傲慢な態度のほうが、よほど迷惑に感じるんですけど?(笑)

2018年5月に「SNAKEPIPE SHOWROOM 物件13 建築家設計の物件編」で初めて名前を知ったジェームズ・タレル。
記事の中で「金沢21世紀美術館などには常設展示されている作品もあるみたい」と書いているよ。
ついに!
その展示を目にすることができたんだよね。(笑)
1,117cm四方の何もない部屋の天井部分にポッカリと広がる空間。
タレルの作品は、長く滞在して空や壁に映る色の変化を感じることだとは知っていたけれど、この日の金沢の気温は35℃!
少しの間だけど、「ブルー・プラネット・スカイ」を体験することができて感動したよ。
パシャパシャ撮影して、開口部を見上げて撮ったのがこの画像。
右上の画像と比べてみても全く別物。
まるでQRコードのように見えた空、面白いね!(笑)

大型の立体作品が多いせいか作品数自体は少なめだけれど、憧れの場所に行くことができて本当に嬉しかった!
こんなにワクワクしたのは久しぶりかもしれないよ。
この後、ROCKHURRAHと温泉旅館に向かい、夕食を苦しくなるほど食べて翌日に備える。
金沢観光、翌日の話は次週に続くよ!(笑)