ROCKHURRAH紋章学 ブック・デザイン編 4

20190526 top
【「盲獣」の英訳は「Blind Beast」だよ!】

SNAKEPIPE WROTE:

今週は「ROCKHURRAH紋章学」をお届けしてみよう。
これで4回目の特集になる「ブック・デザイン編」は、これまでカッコ良いデザインや「とほほ」なデザインをまとめてきたよね。
今回は少し趣向を変えて「外国で出版された日本の小説のブック・デザイン」を集めてみたよ!
そうは言っても、日本の小説だったら何でも良しではROCKHURRAH RECORDSらしくない。
大好きな作家、江戸川乱歩の外国バージョンに絞って紹介していこう!

英語が苦手でも「Edogawa Rampo」くらいは読めるでしょう。
そして乱歩で椅子とくれば「人間椅子」だな、という予想はつくはず!
これは乱歩の短編作品を集めた英訳版なんだよね。
「人間椅子」は1925年の作品だけど、この英訳版が出たのは2011年とのこと。
もしかしたらそれ以前にもあったのかもしれないけどね?
短編集にはどんな作品が掲載されているのかと調べてみる。
「The Human Chair 人間椅子」
「The Psychological Test 心理試験」
「The Caterpillar 芋虫」
「The Cliff 断崖」
「The Hell Of Mirrors 鏡地獄」
「The Twins 双生児」
「The Red Chamber 赤い部屋」
「Two Crippled Men 二癈人」
「The Traveler With The Pasted Rag Picture 押絵と旅する男」
一番初めに「人間椅子」が収録されているせいもあるだろうし、内容的にインパクトが強いためかブック・デザインに採用されているよね。
短絡的ではあるけれど、内容を忠実に表している点が秀逸だと思う。

英訳されると分かりづらいタイトルもあったけど、ほとんどが即答できるのは自称乱歩ファンとしては当たり前か?(笑)
同じシリーズのスペイン語版のカバーが右の画像ね。
上のアメリカ版のほうが少しおどろおどろしくて、乱歩の世界観を表しているように思ってしまうね。
日本の小説だから長い黒髪の着物を着た女を描くのは、常套手段なのかもしれない。
少しだけ狂気を孕んだように見える女の顔から、上に書いた小説に出てくる誰かに当てはまるか考えてみるけどなかなか難しい。
特にこれといったモデルを想定したわけじゃないのかもしれない。
どちらの画像も共通項は「障子」だね。
これはタランティーノの影響なのかも?(笑)

これは上のスペイン語版のバージョン違いなのか。
今度はかなり現代的なブック・デザインにしてるよね。
ゲームのパッケージにありそうな雰囲気で、外国で流行りのカタカナも配置されている。
わざとやってるのか、全く意味を成さない文字の羅列。
和製ホラーは海外で人気のようなので、その一貫で乱歩の小説も括っているのかもしれない。
乱歩ファンとしては「そんなに軽くしてもらっては困る」って言いたいんだけどね。
もっと人間の根源的な部分を掘り下げて、小説にしてるのが乱歩だと思うんだけど。
しかも今から100年くらい前に書いてる小説なので、最近出ているサイコ物の源流と言っても良い作家じゃないのかな。
調べたわけじゃないので、断定はできないけど。

これも完全に勘違いバージョンだよね。(笑)
フランス語版の「パノラマ島奇譚」のようだけど、浮世絵風の半裸体女人が意味不明!
和風を表現するのに効果的だと思ったのだろうか。
「パノラマ島奇譚」は「なりすまし」のドキドキ感と、建設されたパノラマ島の壮大さが魅力の小説なので、このデザインからは内容を想像することは不可能に近いように思ってしまう。
国によっては、日本の小説は「浮世絵風」として、ある程度形式化されているのかもしれないけどね?
そしてフランス語版での乱歩の表記が「RANPO」と「N」になっている点にも注目。
英語圏ではヘボン式ローマ字表記「RAMPO」に対して、フランスでは採用していないことが分かったね。(笑)

次はスペイン語版の「盲獣」だよ。
「盲獣」は1931年から1932年にかけて「朝日」に連載された小説で、1969年に増村保造監督により映画化されている。
この映画については2009年に「CULT映画ア・ラ・カルト!【01】邦画編」としてまとめているんだよね。
スペイン語版ブック・デザインにあるような「凶々しさ」というよりも、触感芸術の作品に注目している記事を書いている。
スペイン語版で気になるところは、うっすらと透けて見える「感受性」という文字!
誰がこの言葉を選んで載せることにしたのか、謎だよね。(笑)

一体これは乱歩のどの小説を翻訳したものなんだろうね?
「明智小五郎 初期の事件簿」とでも訳したら良いのか。
そうして調べてみると「一寸法師」や「屋根裏の散歩者」などが、明智小五郎シリーズでは初期に当たる作品のようだけど、この本に収録されている内容については不明だった。
ブック・デザインに注目してみよう。
まず、手前の明智小五郎だと思われる男性。
どお、この髪型と顔!(笑)
そして後ろに丸く大きく存在感をアピールしている邪悪そうな顔。
これが「一寸法師」ということなのかな?
叫んでいるような女性が前にいるよね。
なんとなく言いたいことは分かるんだけど、もう少し読者の興味を誘うような描き方はできなかったのか。
この本が売れたのかどうか聞いてみたいね!(笑)

乱歩作品の中で、映画化や舞台化により何度も上映されているのが「黒蜥蜴」だよね。
1968年に映画化された作品については「CULT映画ア・ラ・カルト!【09】黒蜥蜴」で記事にしているよ。
黒蜥蜴役を美輪明宏が演じていて、その気高き美しさに圧倒されてしまったSNAKEPIPE。
そんな黒蜥蜴のイメージ通りのマダムをブック・デザインに採用しているのが、スペイン語版なんだよね。
バックにちょっと不気味なトカゲが控えているのも、良いみたい。
今回集めた江戸川乱歩の海外版の中では、このデザインが一番気に入ったよ!

今週の「江戸川乱歩の海外版ブック・デザイン」は、検索していて楽しかったよ。
まずはRAMPOの表記を探し、単語からタイトルを予想する作業が面白かった。
そして外国人が乱歩作品に対してどんな感想を持っているのかを知ったのも初めてのこと。
なんと、乱歩は高評価で人気があることがわかったんだよね!
「エロチックでグロテスク」と感想に書いていながら、星5つが付いていたりして。(笑)
日本の作家で人気があるのは三島由紀夫と村上春樹くらいか、と勝手に思っていたSNAKEPIPEには、とても意外だったよ。
誤訳がある、という感想も読んだので、翻訳家の方にも頑張ってもらいたいね!
そして今度はSNAKEPIPEが英文で乱歩読んでみるかな。(笑)

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