ライアン・ガンダー われらの時代のサイン 鑑賞

20220821 top
【東京オペラシティアートギャラリーの入り口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE: 

面白そうだから行ってみよう、と長年来の友人Mから誘われたのが、東京オペラシティアートギャラリーで開催されている「ライアン・ガンダー われらの時代のサイン」。
東京オペラシティアートギャラリーでは、2022年5月に「篠田桃紅展」、2022年3月に「ミケル・バルセロ展」、2020年2月には「白髪一雄展」を鑑賞しているんだよね。
他の美術館とは少し違う視点を持ったチョイスが素晴らしいよ!
今回のライアン・ガンダーは初めて聞くアーティスト。
経歴を調べてみようか。

1976 イギリス生まれ
1996 マンチェスター・メトロポリタン大学でインタラクティブ・アートの学士号を取得
1999 オランダのヤン・ファン・エイク・アカデミーに美術研究参加者として滞在
2005 アートバーゼルにて、ビデオ作品「Is this Guilt in You Too? 」でBaloise Art Prizeを受賞
2019 クンストハレ・ベルンで大規模な個展を開催
2010 ニューヨークのセントラルパークに屋外彫刻などのパブリックアートを展示
2017 国立国際美術館(大阪)で個展を開催

1976年生まれということは、今年46歳だね。
2005年のビデオ作品で3万スイスフラン(日本円で約430万円)を獲得して、アート活動に専念することができたという。
車椅子のユーザーであるというガンダーだけれど、自分自身のことを障害者とは認識していない模様。
しかし受賞したビデオ作品では、部屋を迷路のように障害物で埋め尽くしたインスタレーションにより、障害者が困難に感じる状況を表したという。
このようなエピソードを知ると、展示の違った側面も見えてくるかも。

今回も東京オペラシティアートギャラリーは、事前予約なしでチケット購入できたよ。
そこまでお客さんが多くなくて、快適に観ることができそう。
会場に入ると、床に黒く四角いガムテープのようなシールがたくさん貼ってある。
あとから分かったのは、クレジットカードや航空券などのシルエットだったそうで。
単なる印の剥がし忘れかと思っていたよ。(笑)
会場に並ぶ黒い立方体も説明がないと意味不明。
どうやら立方体の一つ一つに時間の設定があり、バックライト付きのLCDプログレスバーが内蔵され設定の最大継続時間が再生される仕組みだったとか。
例えば「イギリス人がシャワーを浴びる平均時間」だったり「皆既日食の最大継続時間」といった、ガンダーが思いついたアトランダムな設定なんだよね。
難しいなあ!

「編集は高くつくので」というタイトルのステンレス製のオブジェ。
撮影するために近づくと、いびつな自分自身がいくつも見えて面白い。(笑)
江戸川乱歩の「鏡地獄」を連想させるよ!
台座が重さに耐え切れず潰れているのも作品なんだろうね。
説明によるとジョルジュ・ヴァントンゲルローという彫刻家の直線でできた作品を、曲線にして制作しているらしい。
ガンダーは、ひねりを効かせる作品が得意みたいだね。

2つの作品を並べてみたよ。
じっと見つめていると、小さな丸がオセロみたいにひっくり返る。
不規則な動きなので、しばらく立ち止まって観ないと気づかないかもしれない。
アルゴリズムによってランダムに雫を生成するフリップドットサイン、と説明がされているよ。
プログラミングされた作品ということだね。
とても面白かった!(笑)

2017年に大阪で開催されたガンダーの個展でシンボル的作品だったという「最高傑作」。
その女性版「あの最高傑作の女性版」が並んで展示されていた。
壁に眉と目が配置され、眉の形が変わったり、まぶたが閉じたりする。
恐らくこれもプログラミングされてるんだろうね。
この作品もしばらく立ち止まって鑑賞しないと変化に気付かない。
ガンダーは「観る/観られる」という関係性についての問いかけとして制作したらしいけれど、SNAKEPIPEは「慌ただしい日常からの開放」の意味も感じられたよ。
辛抱強く待ち続ける必要がある展示だから。
上のフリップドットサインも同じ印象だね。
書き忘れていたけれど、フリップドットサインには「緩慢な消滅について、またはサイレントマジョリティ」や「緩慢な消滅について、または現実世界のほんの小さな裂け目」といった非常に観念的なタイトルがついているんだよね。
これには草間彌生も真っ青かもね?(笑)

友人Mが指を指す。
椅子が置いてあるだけに見えるけど?
指先をよーく観ると、なんと蚊が!
ガンダーは注視しないと分からないような小さな作品も好きみたいだね。
帰宅後読んだ説明では、どうやら蚊はアニマトロニクスで動いていたらしい。
そこまで近づかなかったので、痙攣してる様子までは観てなかったよ!

友人Mが会場のすみっこでしゃがみこんでいる。
また何か見つけたの?
そこにいたのは小さなネズミ。
「眠ってる」と友人M。
「死んでる」とSNAKEPIPE。
説明によれば、正解は友人Mで、このネズミもアニマトロニクスで浅い呼吸をしていたらしい。
あちらこちらに視線を巡らし、小さな作品を発見することが大好きな友人Mにもってこいの展示だね。(笑)

ネズミといえば、展覧会のポスターにもなっている「2000年来のコラボレーション(預言者)」も、小さく屈まないと観られないほど、低い場所に展示されていた。
壁に開いた穴から頭を出して、一生懸命お喋りしているネズミがとってもキュート!(笑)
家に持って帰りたくなるほどだったよ。
喋っていたのはチャップリンの「独裁者(原題:The Great Dictator 1940年)」での演説をもとに書き替えられたものだという。
どんな様子だったのか、YouTubeにあった動画を載せてみよう。

とても可愛いよね!(笑)
声を担当していたのはガンダーの娘だって。
YouTubeにいくつかネズミの動画を見つけたけれど、白いネズミのバージョンもあるみたい。
ポスター観た時には、まさかネズミが動くとは思わなかったよ。
この作品が、今回の一番かな!

2週間前のブログ「ゲルハルト・リヒターDrawings 2018-2022 and Elbe 1957他鑑賞」では、六本木にあるピラミデビルでの、複数のギャラリー巡りについてまとめている。
その時にNASU TAROも訪れていたんだよね。
ライアン・ガンダー展「Killing Time」が開催されていたよ。
東京オペラシティアートギャラリーの展覧会とは別だけど、今回一緒にまとめておこう。

ピラミデビルには何度か来ているけれど、TARO NASUは初めて。
恐る恐るドアを開けて、中に入る。
鑑賞して良いのか尋ねるため、奥に進む。
驚くほどにこやかに「もちろんです、どうぞ!」と対応してくれた女性に驚いてしまう。
どちらかというと仏頂面をして、自分の作業に没頭したままのような受付が多い中、TARO NASUにいた受付の女性は接客業向きだね!
これだけでギャラリーの印象がまるで違うよ。
撮影も大丈夫とのこと。
ありがたい限りだね!
画像は「Logic Murders Magic」で30枚(個?)の四角いキャンパスが展示されている作品。
訳すと「論理殺人の魔法」みたいな感じ?
意味不明だよ。(笑)

金属でできている人形が直立している。
骨組みしかないのに、手足によって人形(ひとがた)と分かるよ。
足元には小さな犬みたいなペットまで連れていて、とてもかわいかった。
画像にはペットが写ってなくて残念!
一生懸命撮影していたら
「それは後ろだよ」
とROCKHURRAHから指摘される。
確かにつま先が向いている方向が前だったので、撮り直したのがこれ。
言われるまで全く気付かなかったSNAKEPIPEなので、ROCKHURRAHに感謝だね。(笑)

デニムをキャンパスにした満月の作品。
東京オペラシティアートギャラリーに展示されていたのは、24枚で構成されたパズルみたいな満月だったんだよね。
パーツになっていたので、月は円形ではなくてバラバラになっていた。
TARO NASUでは1枚で完結した作品が展示されていた。
ゴミ箱の底にアクリル絵の具を塗り、日本製のデニムに押し当ててプリントしたものだという。
描いたというよりは、ペタンとハンコを押したみたいな感じなのね。
うまい具合に満月になっているところがさすが!(笑)

観た瞬間に「うわっ!」と驚いたり、「好き!」と思う作品を好むSNAKEPIPEなので、説明が必要な作品は少々苦手かもしれない。
ガンダーには観念的な作品が多いので、半分は面白かった!というのが正直な感想かも。(笑)
東京オペラシティアートギャラリーの展覧会は、これからも注目していきたいね!

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