【パロディ・カヴァーの元祖と言えばこの人】
ROCKHURRAH WROTE:
さて今回はタイトルでわかる通りカヴァー・ヴァージョンについて書いてみよう。
と言っても例のごとくROCKHURRAH流に最近のは全くなし。パンクやニュー・ウェイブ時代のちょっと偏屈なものをメインで。リンクが非常に多くてかなり読みにくいけども許して。
※タイトル下及び黄色文字色のリンクは全て音や映像が出ますので注意。
オリジナル・パンク時代で最もカヴァーが目立つバンドはやっぱりダムドが筆頭だろうか。デビュー・シングルのB面でいきなり「Help」だし、イギー・ポップ&ストゥージスの「1970(I Feel Alright)」、スウィートの「Ballroom Blitz」、ジェファーソン・エアプレインの「White Rabbit」、セックス・ピストルズの「Pretty Vacant」などなど、後の時代のバンド達に多大な影響と勇気を与えた節操のないカヴァーぶりはさすが。
スウィートのこの曲はサイコビリー系でも多くのバンドがなぜかカヴァーしてるんだが、ひとつの曲に対してカヴァーが集中するのはサイコビリーの奇妙な傾向だと思える。別の機会にその事も書いてみようか。
話がそれたがダムドのカヴァーでROCKHURRAHが好きなのはベルギーのプラスティック・ベルトランによる大ヒット曲「Ça Plane Pour Moi(「恋のウー・イー・ウー」「恋のパトカー」などという邦題がつけられてたな)」を「Jet Boy, Jet Girl」と歌っていたものだ。ん?これは単なる替え歌と言うべきか?
続けてニュー・ウェイブ時代のカヴァー・ヴァージョンについて考察してみようと思ってたんだが、実はあんまり面妖なカヴァーが見つからなかった。
例えばバウハウスがTレックスやデヴィッド・ボウイのカヴァーするのはそりゃ当たり前、というようなパターンが多くて、あまり飛躍がないんだな。
そんな中でちょっとだけROCKHURRAHの心に引っかかったのは元ティアドロップ・エクスプローズのジュリアン・コープが人気絶頂の頃にペル・ユビュの「Non-Alignment Pact」をカヴァーした事。今でも大した知名度はないけど、この当時(86年頃)はまだペル・ユビュはごく一部の好き者だけにしか知られてない(なかなか売ってなかったし)カルト的な、かなり難解で珍妙なバンドだった。この曲だけ聴くとストレートにカッコ良いけどね。
ジュリアン・コープは甘い顔立ちでアイドル・ポップスター的な面もあったが、亀の甲羅を背中にしょったジャケット(それじゃ花輪和一もしくは河童の三平でしょう)、と言うような奇怪な面もあり、むしろそれが本質だったように感じる。その辺に通じるものがあるのかも。そう言えば前述のバウハウスのピーター・マーフィーもソロでペル・ユビュの「Final Solution」をカヴァーしていたな。
パンク、ニュー・ウェイブとは直接関係ないかも知れないがSNAKEPIPEお気に入りのもちょこっと紹介してみようか。
フランスのアラブ系移民バンド、ラシッド・タハはクラッシュの名曲「Rock The Casbah」を大胆にカヴァー。と言うか元歌がそれ風なので逆にこっちの方がオリジナルのように聴こえてしまうな。このバンドはゴングなどで知られるプログレ・ギタリスト、スティーブ・ヒレッジも参加しているのがすごい。クラッシュのミック・ジョーンズがゲストでギター弾いてる映像などもあるので興味ある方は調べてみるべし。
音楽性は違うがドイツとチリ、テクノとラテンという相容れなさそうな組み合わせで活躍していたセニョール・ココナッツも面白い。ラテン・ミュージックでなぜにクラフトワークとかYMOとかカヴァーするか?という意外性と、聴いてみたら完璧にしっくりきてるというアレンジの上手さが素晴らしい。昔ドイツで活躍していたロスト・グリンゴスあたりを思い出してしまう。
あと、原曲とはかけ離れた楽器で演奏するというパターンで気に入ったのはYouTubeなどで見かける二人組。アマチュアが趣味でやってるっぽいんだが、これがウクレレでラモーンズ、バズコックスからBlubbery Hellbellies(!)、ゲイリー・ニューマン、ヴィサージまでカヴァーしてしまうという強者。彼らの場合はとぼけた味のビデオが楽しげ(ただ弾いてるだけなんだが)でかなり素晴らしい。
逆にこれはひどいカヴァー・ヴァージョンだと自信を持ってオススメ出来るのがアダム・アント。スパイス・ガールズの「Wannabe」をとんでもなくへっぽこにカヴァーしていたのをYouTubeで偶然見つけてビックリしたものだ。かつてはアダム&ジ・アンツで全英一位になってROCKHURRAHも大ファンだったものだがここまで堕ちるか?一体どうして?
意表をついたカヴァーと言えば最後にROCKHURRAHお得意の番外編としてこの人を挙げないわけにはいかない。マッド・モンゴルズやSxTxH、そしてソロとして名高いサイコビリー界の伝説(?)Mad Masato。カッコいい曲の間にさりげなくやっているのは山口百恵の「秋桜」、そしてなぜか「暴れん坊将軍」のテーマ。好きだからやってるのか狙ってやってるのかは不明だが何だかすごい。関東付近で滅多にライブやらないのが残念だが、もっと活動して欲しいアーティストの一人だ。