永遠に僕のもの 鑑賞

20190908 13
【映画館の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

先週はギンザ・グラフィック・ギャラリーで「Sculptural Type展」を鑑賞した記事を書いたよね。
文中にもあるように、実はその前に映画を鑑賞していたROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
今週はその映画についてまとめてみよう。

トレイラーを載せてみたよ。
映画のタイトルは「永遠に僕のもの(原題:El Angel 2018年)」。
まずは、あらすじを書いておこうか。(Filmarks映画より)

ブロンドの巻き毛に透き通る瞳、艶やかに濡れた唇、磁器のように滑らかな白い肌。
神様が愛をこめて創ったとしか思えない美しすぎる17歳の少年、カルリートス。
彼は欲しい物は何でも手に入れ、目障りな者は誰でも殺す。
息をするように、ダンスを踊るように、ナチュラルに優雅に。
やがて新しい学校で会った、荒々しい魅力を放つラモンと意気投合したカルリートスは、二人で様々な犯罪に手を染めていく。
だが、カルリートスは、どんなに悪事を重ねても満たされない想いに気づき始める。

1971年のアルゼンチン、ブエノス・アイレスでの実話をベースにした映画なんだよね。
美少年のシリアルキラーという点も驚きの真実!
11件の殺人、17件の強盗などを犯し「死の天使」と呼ばれた、カルロス・エドゥアルド・ロブレド・プッチをモデルにしているという。
アルゼンチンでは有名な事件らしいけど、SNAKEPIPEは全く知らなかったよ。
シリアルキラーには精通しているつもりだったのに、失格だわ。
画像がその本人らしいんだけど、まるでアイドルだよね!
こんなに美形に生まれたのに、どうして犯罪に手を染めてしまったんだろうか。
他の道はなかったのかなあ?
カルロスには、きっと「プリズン・グルーピー」(犯罪者を崇拝する人)がたくさんいただろうな。
残忍な犯罪者だけど、画像だけ見るとファンができてもおかしくない容姿だもんね。

ペドロ・アルモドバルが、この映画をプロデュースしたと聞いて納得しちゃうよね。
同性愛者を公言しているし、監督した映画には必ずLGBT系の人物が登場する。
バッド・エデュケーション(原題:La Mala Educación 2004年)」では、女装したガエル・ガルシア・ベルナルを登場させたこともあったし。
その時の感想は「好き好きアーツ!#23 Pedro Almodóvar part2」にあるので、ご参照くだされ! 
画像は映画のプレミアに参加したメルセデス・モラーンと一緒のアルモドバル。
ロマンス・グレーで貫禄がある風貌になってるね!

それでは映画の感想をまとめていこうか。
※ネタバレしないように書いているつもりですが、未鑑賞の方はご注意ください

主役のカルリートス。
実在のカルロスを意識した髪型や服装のせいもあり、画像検索すると区別がつかないほど似て蝶!(笑)
愛らしい童顔で、悪事を働き、平気で嘘をつく。
盗んだペンダントを「母の若い頃の物だけど」と言ってガールフレンドに渡す。
頭の回転が速いのか、嘘が巧妙なんだよね。
恐らく最初は冒険のつもりで留守宅に侵入し、そこで戦利品を得たんだろう。
少年院に入っていたというセリフがあったので、警察に捕まったこともあるようだけど、空き巣強盗はやめられない。
精神的に子供なので、短絡的に犯行に及び、善悪の区別がつかない。
人を殺すことに、何のためらいもない。
はっ!語尾に「ない」を3回も続けてしまったよ!(笑)
ピストルをあっさり撃って、へっちゃらな顔をしている。
人間的な感情を持っていないタイプのように見えるんだよね。
相棒のラモンに対する感情だけ、表れていたようだったけど。
単独で行動している頃は、小さな盗みで満足していたけれど、泥棒仲間と一緒になると犯行がエスカレートしていく。
もしかしたら「認められたい」と気持ちがあったのかもしれないよね。
歯止めがきかなくなって、仲間から見限られてしまう始末。
裕福ではなくても、良識のある家庭で育てられているカルリートスなのにね?
好物はお母さんが作ってくれる「ミラノ風カツレツ」。
どうして道を踏み外してしまったのか、疑問が残るよ。

カルリートスのお母さん役を、アルモドバル監督作品では常連のセシリア・ロスが演じていたよ。
最近観たセシリア・ロスといえば「アイム・ソー・エキサイテッド!(原題:Los amantes pasajeros)」なので、2013年なのかな。
5年程の間に、こんなに年齢が違ってみえるとは!
カルリートスの年齢が17歳から20歳として考えると、お母さんとしては老け過ぎかな?(笑)
息子を真っ当な道に戻すことができなかったのは、とても残念だね。

カルリートスの相棒、ラモン。
女の子みたいに見えるカルリートスに対して、男臭い風貌なんだよね。
恐らく映画のタイトルである「永遠に僕のもの」は、ラモンへの気持ちを表現しているのかなと思ったSNAKEPIPEだよ。
カルリートスはラモンに一目惚れしたようで、ちょっかいを出し、わざとケンカを売ることで近づいていく。
ラモン一家は泥棒を稼業にしている家庭なんだよね。
カルリートスも参加して、荒稼ぎをしていくことになる。
お金は稼いでいるけれど、ラモンの気持ちが自分に向くことはない。
カルリートスとラモンの怪しいシーンは何回かあって、観ている方が「じれったく」なってしまった。(笑)
カルリートスの恋心を考えると、成就させてあげたくなっちゃうんだよねえ。
ラモンにはその気は全くなかったのかなあ。

ラモンのお父さん、ホセ。
カルリートスの度胸と犯罪者としての素質(?)を見抜き、行動を共にする。
殺人に手を染めることはないようで、そういった意味での常識は持ち合わせている人物。
ホセがカルリートスにピストルの撃ち方を教えなければ、カルリートスがシリアルキラーになることもなかったのかもしれないよね。
それにしてもホセの衝撃的な「はみ出た」シーン、思わず笑ってしまったよ。(笑)

ラモンの母親であり、ホセの妻アナ。
旦那が泥棒であり、息子のラモンも同行していることを当然承知しているんだよね。
犯罪一家の家庭って、本当にあるのかな。
SNAKEPIPEは未鑑賞だけど、2018年のカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した「万引き家族」みたいな感じかな。
母親のアナは、カルリートスの美貌にクラクラしちゃったのか、ちょっかいを出そうとするんだよね。
まるでその気がないカルリートスは「ご主人に悪いよ」とお断り。(笑)
こうした機転が、カルリートスの頭の良さなんだろうね。
そう言われるとアナも引き下がるしかないもんね。

泥棒に入った家に飾ってあった絵を、カルリートスが気に入って持ち帰るシーンがある。
この絵にSNAKEPIPEも興味を持ったよ。
強烈な赤が印象的で、邪悪な雰囲気なんだよね。
SNAKEPIPE MUSEUMに所蔵したくなるよ。(笑)
アルモドバル監督作品には、アートが登場することが多いんだけど、今回も室内の装飾や絵画にその傾向があったね。
とは言っても、今回はアルゼンチンのルイス・オルテガが監督なんだけど。(笑)
恐らくこの監督の作品は初めてなんじゃないかな。
アルゼンチン映画で知っているのは「笑う故郷(原題:El ciudadano ilustre 2016年)」と「人生スイッチ(原題:Relatos salvajes 2014年)」くらいだもん。
「人生スイッチ」もアルモドバルが製作で関わっていたよね。

「永遠に僕のもの」は、実話を元にした映画だったけれど、クライム・ムービーというよりは、ゲイ映画として括ったほうがしっくりする感じがしたよ。
もっと強引に言ってしまえば、主人公カルリートスを演じたロレンソ・フェロのプロモーション・ビデオかな。
ちょっとぽっちゃりした幼児体型で、顔も丸くて子供のようだけど、実際には20歳だという。
「南米のディカプリオ」と噂されているらしいけど、どんな大人になっていくんだろうね。

映画館では、通常であればシリアルキラー物には興味がなさそうなのに、ロレンソ・フェロ目当てで鑑賞しているようなお客さんもいたようだったね。
男性が1人で来館している姿も目撃し、非常に気になったSNAKEPIPEだよ。
あの方々もロレンソ目的だったのかな。(笑)

モデルとなったカルロス・エドゥアルド・ロブレド・プッチは、現在67歳。
終身刑のため、服役中だという。
すでに45年以上、牢獄生活をしてるってことだよね。
どうやら同性愛者ではなかったようなので、映画で作られた設定になるみたい。
自分がモデルとなった映画が上映されていることに、どんな感想を持つのだろうか。

ペドロ・アルモドバルの新作に関するニュースがあるよ。

タイトルは「DOLOR Y GLORIA」。
アルモドバル監督の自伝的映画だという。
アントニオ・バンデラスやペネロペ・クルスの顔があるね!
日本公開はいつなんだろう?
今からとても楽しみだよ!(笑)

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