カッサンドル・ポスター展 グラフィズムの革命 鑑賞

【カッサンドル展のポスターを撮影。快晴ですな!】

SNAKEPIPE WROTE:

「この展覧会を観に行きたい」
とROCKHURRAHが言う。
なんて展覧会?
CASSANDRE?
カッサンドル、で良いのかな?
SNAKEPIPEは初耳だったけれど、ROCKHURRAHは以前より1920年代のアートに関心があったため、アーティスト名は知らなくて(読めなくて?)も作品は知っていたというのである。

カッサンドルの紹介文によると、どうやら沢木耕太郎の「深夜特急」のカバーにも、カッサンドルの代表作が使用されてるとのことだけど?
あっ、確かにこんな表紙だったよね!
知らないと言いながらも実は作品は目にしていたんだね。
トリミングされてるけど、確かにカッサンドルだ!(笑)
因みに「深夜特急」は友人の強い勧めで読んだことがあるんだけど、それより前に藤原新也を知っていたSNAKEPIPEには物足りなかったんだよね。
沢木耕太郎の著作も藤原新也にしても、ジャーナリズムを目指す人にとってはバイブルみたいな本になるんじゃないかな?
今は状況が変わってるのかもしれないけど。

ちょっと会場が遠いんだけど、と教えてもらったのが埼玉県立近代美術館
埼玉は全然知らないし、行ったことないよ。
と答えていたSNAKEPIPEだったけれど、なんと2012年12月「ベン・シャーン展 —線の魔術師—」を鑑賞した場所だったことを思い出した!
4年以上前だから忘れていても仕方あるまい。(笑)
そうだった、あの時は寒かったよねと話しながら、 北浦和に向かう。
この日は快晴、春の暖かさが感じられるでしょうという天気予報通りの気温の高さ。
少し風が強かったけれど、それでも前回の震える寒さとはまるで違っていたよ。

少し早めのランチを食べてから美術館に向かうことにする。
前回の北浦和と同じでまたもやイタリアンになってしまった。
お昼にするには早い時間なのに、いくつもの女性のグループが席を埋め尽くしているよ。
4年前のレストランでは女性の一人客が多かった、と記事にしていたんだよね。
もしかして北浦和って女性の割合が多いのかしら?(笑)

埼玉県立近代美術館は北浦和駅から徒歩3分程、しかも北浦和公園の中にあるという素晴らしい環境である。
もう少し風が穏やかだったら、お弁当を公園で食べてから鑑賞することもできたかもしれないね。
前回の北浦和は寒くて余裕がなかったけれど、今回は少し公園内を散策してみた。
3月に桜が咲いていてびっくり!
落ちている花びら見ても、桜に間違いないと思う。
とてもきれいだったね。(笑)
公園内には滝や池まであって、とても良い雰囲気。
近かったら、散歩に来たいなあ!

いよいよ「カッサンドル・ポスター展 グラフィズムの革命」に向かう。
以前も書いたけど、埼玉県立近代美術館の通称はMOMASなんだよね。
最後のSは埼玉のS!
うーん、やっぱりダサい。(笑)
今回は常設展の鑑賞は後回しにして、元気があったら観ることにした。
現在観られる作品、というポスターにグッとこなかったからね。

展覧会の感想の前に、まずはカッサンドルについて簡単に書いてみようか。
アドルフ・ムーロン・カッサンドル(Adolphe Mouron Cassandre)は1901年ウクライナ生まれ。
本名はアドルフ・ジャン=マリー・ムーロン(Adolphe Jean-Marie Mouron)。
1915年にパリに移住し、美術を学ぶ。
バウハウスへの興味はその時に生まれたようだね。
最初はお金を稼ぐために始めたポスター制作が大評判となって、1920年代にはパリの街中にカッサンドルのポスターが貼られていた写真も展示されていたよ。
その写真を撮影していたのが、なんとアンドレ・ケルテス
その時代のパリには後に名を成す大勢のアーティストがいたからね。
さすがは憧れの1920年代だよね〜!(笑)
1925年にはポスター「Le Bucheron」が現代装飾美術産業美術国際博覧会でグランプリを獲得する。
1936年、ニューヨーク近代美術館(MOMA)にて回顧展が開催される。
1936年〜1937年ファッション誌「ハーパース・バザー」の表紙デザインを担当する。
1968年、パリのアパルトマンで拳銃自殺する。

ペンネームとして使用していたカッサンドルは、ギリシャ神話に登場する悲劇の預言者とされるカッサンドラから来ているという。
イタリアではカッサンドラを「不吉、破局」として日常的に使用している、とWikipediaに書いてあったよ。
1920年代には一世を風靡したカッサンドルが、自らの命を絶つという最期だったというのは象徴的だね。
「名は体を表す」という言葉通りになってしまったみたいだもんね。
その事実を知って非常に驚いてしまったSNAKEPIPE。
67歳になっても苦悩していたなんてね!

それでは早速カッサンドルの作品を紹介してみよう。
今回の展覧会は撮影が禁止されていたので、使用している画像は自分で撮影したものじゃないんだよね。
最近は撮影オッケーな場合が多かったので、非常に残念だったよ。

今回の展覧会は「ファッションブランド『BA-TSU』の創業者兼デザイナーである故・松本瑠樹氏が築いたコレクションを通してご紹介します」と美術館のHPに書いてあるんだよね。
BA-TSUとは、懐かしい名前だ!(笑)
70年代から始まるDCブランド・ブームの人気ブランドのうちのひとつだったよね。
SNAKEPIPEもROCKHURRAHもBA-TSUの商品は持っていなかったけれど、当然のようにブランド名は知っていたよ。
そのデザイナーだった松本瑠樹氏というのは、ロシア構成主義やバウハウスに興味を持っていたようでコレクションを多数所持しているみたいだね。
カッコ良いと思う基準がROCKHURRAH RECORDSと同じ。(笑)
そう聞くとブランドとしてのBA-TSUはどんなファッションだったのか、今更ながら興味が湧いてくるよね。
もう遅いけど!
一番最初の画像は「L.M.S.The Best Way」1928年の作品。
鉄道会社用のポスターだと一目で分かるモチーフの選び方、その構図!
インダストリアル好きのSNAKEPIPEを刺激するね!(笑)

1920年代というのは様々な設備が整っていこうとしている段階だったんだろうね。
鉄道の歴史について詳しく調べたわけじゃないけど、恐らく大陸を横断する鉄道が庶民レベルになったからこそポスターになってるんじゃないかな?
左はパリ〜ブリュッセル〜アムステルダムを結ぶ鉄道である「Étoile du Nord」1927年の作品ね。

北に向かって走る、ということを示すために北極星を描いているんだね。
そして色彩の素晴らしさ!
線路を画面いっぱいに描く大胆な構図!
なんともスタイリッシュだよね。
部屋に飾りたくなっちゃうよ!
このポスターの場合はどうなのか不明だけど、カッサンドルのポスターには「1:1.618」の黄金比が使われているという記述があったんだよね。
黄金比ってなんだろう?

黄金比、と検索するとあっさり出てきたよ。

線分を a, b の長さで2つに分割するときに、
a : b = b : (a + b) が成り立つように分割したときの比a : b のことであり、
最も美しい比とされる。
近似値は1:1.618、約5:8

結局縦横比の話で、例えばパソコンのディスプレイでの解像度1920×1200などが黄金比に近くなるようだよ。
誰が最初に気付いたのか諸説あるみたいだから、ここでの言及はしないけれど、数学や幾何学とアートを融合させるというところがポイントだよね。
きっとこれはバウハウスやロシア構成主義でも行っていたんだろうな。
直感で己の感じたままに情熱で創造するアートとはまるで違うもんね。

右の画像はポーランドとアメリカの輸送船のポスター「Statendam」1928年の作品ね。
船のパーツをクローズアップで見せる手法とは、憎い演出ですな!(笑)
この色も素敵なんだよね。

インダストリアル好きのSNAKEPIPEが選ぶと、どうしても金属っぽいモチーフになってしまうよね。
今度はもう少し柔らかい雰囲気にしてみよう。
とはいっても、これもまた空輸便のポスターだね。(笑)
イタリア〜ギリシャ〜イラクから中国など世界各国に郵便が届けられることを一瞬にして分からせているんだよね。
「Air-Orient」は1921年の作品ね。
飛行機と鳩をダブらせて見せ、フォトモンタージュでエッフェル塔や南国っぽい景色で世界を表現している。
実際の手紙や品物だけじゃなくて、夢までも運んでくれそうな印象だよね。ポスターを「画家の個性を表現するためではない大衆のための芸術」と位置付けていたカッサンドル。
人が求めている物を熟知していて、それをポスターに取り入れる天才だったんだね。

カッサンドルの特徴の一つにタイポグラフィがあるんだよね。
ここまで5枚のポスターを載せてみたんだけど、それぞれ使っている書体が違うことに気付いただろうか。
カッサンドルは自ら書体を考案しているんだよね。
・ビフュール体(Bifur 1929年)
・アシエ・ノワール体(Acier Noir 1935年)
・ペニョー体(Peignot 1937年)
など、恐らく最も美しく見せるための書体を研究していたんだろうね。
右の画像「SAGA」は1927年の作品で、またもやインダストリアルになってしまったけれど、この書体と色のバランスも素晴らしいよね。
大きな木箱があることから、恐らくこれも輸送船と思われる。
カッサンドルはポスターにする前には一度油絵やグワッシュで描いてるんだよね。
その時にサインをしているみたいで、そのサインがそのままポスターになっても残っているみたい。
どのポスターにもサインがついてて、この時代の人が全員同じようにサインしていたのか、カッサンドルだけの特徴なのか不明だけど、商用のポスターとしては珍しい感じがするよね?
有名になる前からずっとサインしてるからね。(笑)

カッサンドルはファッション・ブランドとのコラボ作品も残しているんだよね。
左のトランプは、なんとエルメスとのコラボとのこと。
商品として販売していたのか、ノベルティのようなものだったのかは不明だよ。
恐らくエースや数字の書体は、自ら考案した書体なんだろうね。
そしてクラブのデザインが特徴的だよね。
カードの裏やカードのケースはどんなデザインだったんだろう?
エルメスではスカーフのデザインも行っていたようだね。

えっ!
このマークもカッサンドルだったの?
ファッション・ブランドであるイブ・サンローランのロゴ・マークのデザインなんだよね。
今でもこのマークは採用されているというから、カッサンドルの偉大な功績が分かるね。
化粧品のパッケージにも使われているというので、目にしている人は多いはず。
意外と身近なところにカッサンドルがいたんだね。(笑)

なんだか今回は画像の使用が多くなってしまったね。
最後は「ハーパース・バザー」で表紙を担当していた作品を紹介してみよう。
今回の展覧会にも作品が展示されていたんだよね。
ポスターの時と同じように、歩いている人を止めさせる効果が考えられていることが分かるね。
「あれ、なに?」と目を引くインパクトがある。
当時はどれくらいの雑誌が刊行されていたのか分からないけど、多くの雑誌の中から確実に手にとってもらうためには、目立つことだからね。
カッサンドルは広告の効果、宣伝の意味について熟知していたんだね。
その才能は生まれつきだったのかなあ。
非常に羨ましいと思うよ。(笑)

1910年代から始まるダダイズムやシュルレアリスムなどの芸術運動に興味を持つと、今から100年以上も前とは思えないような斬新でカッコ良い作品が数多く存在することを知る。
昔のほうが進んでたのかも、と思うこともしばしばあるし。
今回のカッサンドル展を鑑賞して、益々その思いが強くなったよ。
北浦和まで出かけて良かったな。(笑)

あー!タイムスリップできたら1920年代のパリに行ってみたいなあ!
アートの温故知新はこれからも続けていきたいと思う。

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