好き好きアーツ!#56 鳥飼否宇 part23−パンダ探偵-

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【絶滅危惧種をモデルにしたアンディ・ウォーホル、1983年の作品】

SNAKEPIPE WROTE:

5月22日、恐る恐る郵便受けを確認する。
あっ!あったーーー!(笑)
2周間ほど前「官能的」 について書いた冒頭、「パンダ探偵」について触れたSNAKEPIPE。
ついに鳥飼先生の新作が発売されたのである。
ネット予約注文をしていたSNAKEPIPEは、発売日当日に自宅で受け取ることができ、満面の笑みを浮かべる。

パンダといえば。
上野動物園でパンダを見たことがないROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
動物園には行ったけれど、残念ながらパンダ不在だったんだよね。
ぎゃっ、11年も前のことだったとは!
ニュースなどで「パンダの赤ちゃん動画」などを見かけると
「かわいい〜!」
と2人で目を細め、ほっこりした気分になる。
癒し効果バツグンだよね!(笑)

SNAKEPIPEの長年来の友人Mは、黒柳徹子に負けないくらいパンダが大好きで、パンダが描かれたグッズを見つけると必ず駆け寄り、商品を手に取る。 
グッズを見つける度に毎回同じ行動を繰り返す友人Mの先手を打って、「ほらパンダ!」「あそこにも!」とパンダ探しに付き合うSNAKEPIPE。
結局悩んでも購入することはほとんどないんだけどね。(笑)

パンダはWorld Wide Fund for Nature(世界自然保護基金)のシンボル・マークにもなっているよね。
地球上の生物の代表に選出されたと言っても過言ではないよ。
そして誰もが知っている動物ということになるんだね。
そんなかわいいパンダが探偵だって?(笑)

最初にタイトルを知った時、鳥飼先生の「昆虫探偵」を思い出したSNAKEPIPE。
「昆虫探偵」は、ある朝目覚めると人間から昆虫になっていたという、まるでカフカの「変身」のような書き出しから始まっていたね。
「パンダ探偵」に登場するナンナンは、変身することなく最初からジャイアントパンダだよ!
講談社のHPに載っているあらすじを転載させていただこう。 

「シロクロはっきりつけてやる!」
傍若無人に世界を支配していたヒトという種が絶滅して200年。
アフラシア共和国は動物たちのユートピアとなっていた。
ジャイアントパンダの若雄(わかもの)ナンナンは、先輩探偵であり、ライオンの父とトラの母から生まれたライガーのタイゴに憧れ、探偵事務所に所属することに! 
白黒ツートーンの動物誘拐事件、密室から消えた草食動物の干し草の謎、共和国大統領暗殺事件など、動物の国で起こる様々な事件に立ち向かう!

ユーラシア大陸とアフリカ大陸と呼ばれていた地域は、アフラシア共和国になっているんだね。
人間がウイルスによって絶滅した、なんてどこかで聞いたことがあるじゃない!
鳥飼先生がいつ構想を練られたのかは不明だけれど、予知能力をお持ちなのかもしれない。
もしくはタイムワープで直近の未来をご覧になったとか?

動物達は人類と同じように、いつしか二足歩行をして言葉を話す。
肉食動物は草食動物を襲うことはなく、平和に暮らしているという設定。
動物達が悠々自適な生活を送っている世界ってどんなだろうね。
そんなアフラシア共和国にある「アニマ探偵事務所」に依頼される事件が「パンダ探偵」が描かれている。

「パンダ探偵」の主人公ナンナン。
とても小柄で運動が苦手だという。
それでこの画像を選んでみたけど、ナンナンのイメージに近いかな?(笑)
自分は非力でできることは少ない、と自覚しながらも見た目のキュートさと頭の回転の良さを武器に探偵として成長していく。
ここまでかわいいと「雄性(だんせい)」として意識されるのは難しいかもしれないね?
美しい「雌性(じょせい)」に心が揺らいでも、相手から頭を撫でられて終わりそう。(笑)
雄(おとこ)らしさに憧れるのも無理ないかも。 

上述のあらすじにも登場したライガーのタイゴ。
「アニマ探偵事務所」のエースだという。
無知をさらけ出すのは恥ずかしい限りだけど、ライガーの存在を知らなかったSNAKEPIPE。
てっきり鳥飼先生の創作だと思っていたよ。
調べてびっくり、本当にいるとは!(笑)
凛々しい顔立ちに、縞模様のある足。
ライオンとタイガーでライガーなんだね。
ちょっと荒っぽいけど頼りがいがあるタイプ。
ナンナンが慕うのも納得だね!

「アニマ探偵事務所」の所長であるアフリカゾウのロックス。
ロックスが本気を出すと、ライガーのタイゴでもタジタジになるんだね。
力はあるけど、気も優しい。
「昆虫探偵」の時にはクマバチが所長だったので、似た雰囲気に感じるよ。
ドーンと腰を据えて構えているアンカーとして、所長にピッタリだよね!
「パンダ探偵」は3つの章から成る連作短編集で、全編通して登場するのはこの3獣(にん)。
どんな事件が待ち構えているのか?
章ごとに感想をまとめていこうかな! 
※ネタバレしないように書いているつもりですが、未読の方はご注意ください!

第一話 ツートーン誘拐事件

子牛の失踪事件が発生し、「アニマ探偵事務所」に捜索依頼がくる。
その事件を皮切りに、次々と誘拐事件が連続する。
狙われるのは、何故かツートーンの動物ばかり!
これは一体何故なのか?

ツートーンと聞いて、一番最初に連想するのはやっぱりSKA!

この曲をよく聴いたのはツバキハウスの火曜日、ロンドンナイト!
踊りまくってたなあ!(遠い目)
このツートーンではない?およびでない?(笑)

第一話に登場するツートーン・カラーの動物達。
左上はホルスタイン、右はマレーバク。
その下はパンダだけど、左下は一体なんだろう?
これはラーテルというイタチの仲間だという。
背中の白い毛が生えている部分が非常に硬いらしい。
コブラなどの毒にも耐性があり、何でも食べることから「世界一怖いもの知らずの動物」と呼ばれているとか?
あまり遭遇したくない動物かもね。 

ツートーン誘拐事件は、タイゴの鋭い勘により無事に解決する。
動物や生物、それぞれの事情があることが分かるね。
それにしても一体誰が目隠しをしたのか気になるSNAKEPIPEだよ。

第二話 キマイラ盗難事件

いつの間にか探偵事務所で探偵になっているナンナン。
仕事も板についてきて、一頭(ひとり)でも事件を解決できるほどになっている。
アフラシア警察が手一杯のため、「アニマ探偵事務所」は大忙し。
今回先輩探偵のタイゴと新入りナンナンが担当するのは、保管庫にあった備蓄草の盗難事件である。 

そもそもキマイラってなんだろう? 
調べてみるとギリシア神話に登場する怪物とのこと。
「ライオンの頭と山羊の胴体、毒蛇の尻尾を持つ。それぞれの頭を持つとする説もある。強靭な肉体を持ち、口からは火炎を吐く。」とWikipediaに書いてあるね。
載せた画像は、スペインのプラド美術館が所蔵しているJacopo Ligozziが描いたキマイラのドローイング(1590 – 1610作成)。
後ろはドラゴンになっているんだね。
複数の動物が合体していることから、種や品種が異なる植物や動物から生まれた子孫であるハイブリッドもキマイラと言えるのかな。
例えばライガーのタイゴもライオンと虎の子供だからキマイラ(ハイブリッド)なんだね。 

日本でキマイラと言えば「鵺」になるのかな。 
鵺とは、平安時代後期に出現したとされる妖怪だという。
猿の顔、狸の胴体、虎の手足を持ち、尾は蛇という姿だと平家物語に書かれているんだって。
その姿を歌川国芳が浮世絵にした画像がこれ。
ギリシア神話は紀元前に文字として記録されていたというので、平家物語のほうが2000年くらい後の文章だけど、発想は似てるよね。
ギリシア神話を読んで真似たとは考えにくいので、きっと鵺は実在したんだろうね!(笑)

話を「キマイラ盗難事件」に戻そうか。
第二話に登場する動物たちがこちら。 
何故か皆様、右を向いてるんだよね。(笑)
左上のラバは雄のロバと雌のウマから生まれたハイブリッド種。 
タイゴの仲間ってことだね。
ちなみに雄のウマと雌のロバとの間に生まれるとケッティと呼ぶことに決定してるんだって。(ぷぷぷ!)
その下は立派な角のあるサンバーで、隣は美しい馬!
右上はご存知カバなんだけど、カバについて説明されているところが興味深かったよ。
カバは獰猛で、草食とされているけれど肉も食べるという。
更に汗が赤色というのも知らなかったよ!
えっ、常識なの?(笑)

第二話で美獣(びじん)警部、レッサーパンダのミンミンが登場する。
ジャイアントパンダと同じで、タケを食べるんだね。
こんなにキュートなミンミンなのに、狐や狼を部下に従えているとは、アンバランスさが一層魅力的!
ナンナンがポーッとしちゃうのは当然かも。(笑)

備蓄草が盗まれた事件についても、タイゴが真相を明かし一件落着!
物知りじゃないと解決できない事件だったよね。
SNAKEPIPEはそういう知識がなかったので、読後検索して納得したよ!(笑)

第三話 アッパーランド暗殺事件

ついに最終話である。
アフラシア共和国の大統領である、チンパンジーのボノが暗殺されてしまう。
犯獣(はんにん)と疑われ、逮捕されてしまったタイゴを救うべく、ナンナンが奮闘するのである。

アフラシア共和国は3つの地域に分かれているという。
庶民が暮らすロウアーランド、非居住地区で政府の施設が建つミドルランド。
そして枢機院に所属する動物達が住むアッパーランドである。 

そのアッパーランドに住む動物達がこちら!
左上のチンパンジー、時計回りにゲラダヒヒ(用心棒)、ゴリラ、マントヒヒだね。
まるで「猿の惑星」みたいだけど、もちろん他にも枢機院に属する動物はいる。
アジアゾウが大統領だったこともあるし、ヒグマの名前も出てくるね。
枢機院のシステムはよく分からないけれど、アフラシア共和国には階級がある、ということは理解できるね。

アッパーランドには厳重な見張りが置かれているという。
日中、空からの監視はイヌワシ。
夜間にはガラガラヘビとワシミミズクが目を光らせる。
とても外部からアッパーランドへの侵入は不可能と思われるのに、ボノ大統領が殺されてしまうのである。
第一発見鳥(しゃ)はコクマルガラスのジャッキー。(画像右上)
ツートーン仲間のため、ナンナンに情報を与えてくれるのである。
ナンナンは、タイゴを助け出すことができるだろうか?

ナンナンの活躍はとても気になるところだけど、SNAKEPIPEが興味を持ったのはバーバリーシープのダッド!
カプリ教の教祖であり、アフラシア共和国に革命を起こすべく活動しているという。
バーバリーシープの画像を検索すると、教祖にピッタリの風貌!
穏やかな眼差しを持ち、まるで涅槃の境地に達しているようじゃない?
ダッドが教祖だったら人気あるだろうね。(笑)

ナンナンの頑張りが役に立ち、事件は無事に解決する。
第三話は密室殺獣(さつじん)に加え、幾重にもなるトリックもあり、読み応え充分!
なるほどねえ!と感心することしきりのSNAKEPIPE。
「いかに早くトリックを見抜くか」に重きを置いて推理小説を読む人がいるようだけど、そんな方々の中に解けた人はいたのかな?
やっぱり「かなりの物知り」じゃないと難しいだろうね。(笑)

「パンダ探偵」はほのぼのした雰囲気の中に、ナンナンやタイゴの個性が確立されていて、読み進めるうちにどんどん引き込まれていく。
2頭(ふたり)とは、すっかり知り合いになった気分だもんね!
今まで聞いたことがない動物を知ることができたのも楽しかった。
SNAKEPIPEもアフラシア共和国に住みたいな、と思ってしまうほどだよ。
何の動物になろうか、思案中である。 (笑)
もしかしたらまたナンナンに会えるのかな?
そんな日が来ることを期待して待っていよう! 

2 Comments

  1. 鳥飼否宇

    いつもながら、丁寧に読み解いていただきありがとうございます。第1話と第2話はそんな犯獣わかるわけないやん的なマニアックな動物ですみません。まあ、読者の皆様にいろんな動物を知っていただきたいと思いまして。

  2. SNAKEPIPE

    鳥飼先生、コメント頂きましてありがとうございます!

    「パンダ探偵」とても楽しく拝読いたしました。
    聞いたことがない動物を検索するのも醍醐味です。

    またナンナンに会いたいな、と思っています。(笑)

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