【川村記念美術館行きのバス停にて撮影】
SNAKEPIPE WROTE:
10月なのに30℃を超える気温を記録した暑い日に、久しぶりに展覧会に行くことにしたSNAKEPIPEとROCKHURRAH。
今年は猛暑、台風、竜巻と異常気象のオンパレード。
体力に自信がないSNAKEPIPEにはとてもキツいなあ。
年齢的な関係もあるのかな。(笑)
今年の夏は暑いせいで、休日はひきこもってばかりいた。
せっかくの秋だからお出かけしようと決めたのが、佐倉にある川村記念美術館。
9万坪の広い敷地内に併設されている美術館は、まるで小旅行に出かけたような気分になる気持ちの良い場所だ。
熱中症対策用の飲み物を用意し、佐倉に向かったのである。
川村記念美術館は2011年9月に鑑賞した「モホイ=ナジ/イン・モーション」以来約2年ぶりになるんだね。
モホリ=ナギ展覧会も素晴らしかったし、川村記念美術館がコレクションしている作品群も、こだわりが感じられ大変満足したことを覚えている。
今回はそのコレクションの中から「リコレクション」としてテーマを決めて展示しているシリーズの2回目とのこと。
これは期待できそうだね!(笑)
佐倉駅の川村記念美術館行きのバス停で待つこと10分。
同じようにバスを待っているのは女性2人組と他に女性1人のみ。
無料送迎バスは大型マイクロバスで立派なタイプなので、お客さんが5人程度しか乗っていないのは、ちょっともったいないくらい。
経営状態を勝手に心配してしまうよ。(笑)
佐倉近辺の住人だったら車を所持しているのが当たり前で、SNAKEPIPEとROCKHURRAHのように、何かしらの交通機関を利用しないとダメな人ばかりじゃないだろうけどね!
20分程度で美術館に到着。
駐車場には車がたくさん停まっていて、やっぱり他の人はマイカーで来るんだなと納得。
美術館に行く人は少なくても、自然散策路の散歩を目的とする人が多いみたいだからね。
おかげで美術館内はガランとしていて、ゆったり鑑賞することができたよ!(笑)
今回の展覧会の目玉はフランク・ステラとエーリヒ・ブラウアーの展示である。
フランク・ステラのコレクションは川村記念美術館で今までにも鑑賞しているけれど、今回は「フランク・ステラ・ルーム」として大型の作品16点を鑑賞できるとのこと。
常設展示に加えて企画展へとつながる順序に沿って鑑賞していく。
常設展では前回も鑑賞していたけれど、やっぱりマックス・エルンストの作品に目を奪われる。
2012年5月に横浜美術館にて「マックス・エルンスト-フィギィア×スケープ」を鑑賞した時にも非常に感銘を受けたね!
やっぱりダダとシュルレアリスムには興味津々だよ!(笑)
川村記念美術館にはもう1つお目当てがある。
世界に3つしかないマーク・ロスコの作品7点が展示されている「ロスコ・ルーム」である。
今回は本当にお客さんが少なかったので、「ロスコ・ルーム」はSNAKEPIPEとROCKHURRAHの専用貸し切り部屋になってしまった!
なんてラッキーなんでしょ!(笑)
言葉にできない、なんとも言えない感覚に襲われる部屋なんだよね。
真ん中にあるソファに座ってぐるりと展示されているロスコの絵をじっと観ていると、まるでトリップしているように意識が飛ぶ。
できるだけ長い時間滞在したい空間なんだけど、美術館の監視員と警備員にじーーーっと見られているのは苦痛。(笑)
特に今回は2人しか部屋にいなかったから余計だよね。
ちょっと名残惜しい気持ちを残しつつ、2階の企画展へ向かう。
【ヒラクラⅢ 1968年】
「フランク・ステラ・ルーム」はかなり広い2部屋を使用し、大型の作品を展示していた。
複雑な形のキャンバスに幾何学模様を描いたミニマル・アートからコレクションが始まる。
ミニマル・アートとは視覚芸術におけるミニマリズム(Minimalism)であり、装飾的・説明的な部分をできるだけ削ぎ落とし、シンプルな形と色を使用して表現する彫刻や絵画のことだという。
ミニマル・アートの先駆者としてロシア構成主義のアレクサンドル・ロトチェンコの名前が挙がっているのを発見!
やっぱり好きな雰囲気の作品は根本でつながってるんだね。(笑)
極彩色なのにバランスが良くて、部屋に飾りたい逸品がたくさんあったよ!
幾何学模様の美しさを堪能できるね!
【Western Driefontein 1982年】
フランク・ステラの別ラインは立体的な作品群である。
川村記念美術館の入り口にも、「リュネヴィル」というかなり大きなフランク・ステラの立体作品が展示されているんだよね。
川村記念美術館はフランク・ステラのコレクションとしても世界的に有名だというから「ロスコ・ルーム」と併せて、高い評価を受ける美術館といえるだろうね!
「フランク・ステラ・ルーム」に展示されていた立体作品も、とても素晴らしかった。
どの作品も「家に飾りたい」と思ってしまう逸品ばかり。
ステンレススチールやアルミニウムを素材にしている作品が多いので、「シルバー色でピカピカ光るもの」に目がないSNAKEPIPEにはよだれもの。(笑)
現在77歳のフランク・ステラは、現役で活動を続けているという。
もっとたくさんカッコ良い作品を作って欲しいよね!(笑)
【Cast thy bread upon the waters:For thou shall find it after many days】
もう1つの企画展がウィーンの画家、エーリヒ・ブラウアーの版画である。
旧約聖書の「ソロモンの箴言」から抜粋したテクストを元に制作された、12点の連作版画だという。
2012年9月に行った「ジェームス・アンソール展」も全く知らないベルギーの画家の展覧会だった。
今回のエーリヒ・ブラウアーも今まで聞いたことないんだよね!
エーリヒ・ブラウアーは1929年ウィーン生まれ。
リトアニアからの移民でユダヤ系だったため、少年期にはナチスによる迫害や強制労働を経験したという。
1945年にウィーンの美術アカデミーに入学し、同時に歌唱法も学んだというから多芸だよね。
1946年、ギュータースローに師事する。
この時同じようにギュータースローから教えを受けた画家たちは、ウィーン幻想的レアリスム派と呼ばれるらしい。
もちろんエーリヒ・ブラウアーも中心人物の一人だったのね。
それにしても、幻想的レアリスムってシュルレアリスムとは違うのかね?(笑)
その後フランス、スペイン、北アフリカなどを旅行しダンサーや歌手として生活費を稼いだらしい。
「芸は身を助く」を実践していて、アレハンドロ・ホドロフスキーに経歴が似てるね。
1955年の結婚を機に名前を「Arik」に改名。
これはヘブライ語で「神のライオン」を意味するらしいよ。
1956年にウィーンで個展を開催して以来、現在に至るまで活動を続けているアーティストとのこと。
絵画だけではなく、ミュージシャンとしての活動もあり、数々のアルバムもリリースしているとはびっくり!
舞台馴れしている雰囲気は上の写真でも判るよね。
まだまだ元気でおシャレな紳士だから80代には見えないよ。
今回の展覧会で初めて存在を知ることができて良かったなあ!
【With thou set thine eyes upon that which is not? For riches certainly make themselves wings. They fly away as an eagle toward heaven. 】
「ソロモンの箴言」を題材にした12点の作品は、大きく逸脱せず、内容を視覚化していて解り易い。
色彩の鮮やかさやモチーフの面白さは、遠目でも瞬間的に目に入ってくるほどインパクトが強い。
近寄ってじっくり鑑賞すると、かなりグロテスクな要素も含まれていることに気付く。
上の作品では流線型の物体から緑色の女の足が伸びているんだよね。
なんだかよく分からない想像上の物体が多く登場して、作品全体を不気味にしている。
「これよ!まさにこれ!」
と口角泡を飛ばし、興奮するSNAKEPIPE。
前述したジェームズ・アンソールに求めていたグロテスクな要素が満載で素晴らしい!(笑)
ジェームズ・アンソール展もこんな風に、たくさんのグロテスクを展示してくれたら良かったのに期待ハズレだったからね。
最後に一点だけ、残念なこと。
なんでミュージアムショップにブラウアー関連商品が一点もなかったんだろう?
せめてポストカードだけでも置いて欲しかったなあ!
SNAKEPIPEのように図録を楽しみにしているような客もいることを知って欲しいな、と思う。
小さな残念なことはあったけれど、大好きな雰囲気の画家に出会えて、とても嬉しかった。
行って良かった、素敵な展覧会だったよ!
さすがに川村記念美術館、最高だね!(笑)