【会場入り口の看板を撮影】
SNAKEPIPE WROTE:
2020年10月に鑑賞した「鴻池朋子 ちゅうがえり」 は、一年に一度アーティゾン美術館で開催される特別な企画展だった。
ジャム・セッションと称する、石橋財団コレクションとアーティストのコラボレーションなんだよね。
今年の企画は、写真を使って作品を発表している現代アーティストの森村泰昌だというから、楽しみにしていたんだよね!
森村泰昌を最初に知ったのは、1990年のNHK趣味百科「近未来写真術」という番組だったみたい。
調べてびっくりの、今から約30年前のこと!(笑)
篠山紀信が司会をしていて、一回に一人の写真家を紹介し、全12回放送されていたよ。
なんとその時のテキストを保持していたので、調べられたんだけどね。(笑)
森村泰昌の仕事場を篠山紀信が訪ねて、制作についての話を聞いていたように記憶している。
その時の篠山紀信が「おかしな」小芝居やってて、その「わざとらしさ」が面白くて笑ったっけ。
SNAKEPIPEの父親と一緒に番組を観ていたことを思い出す。
そして、森村泰昌の作品を観て「面白いね!」と話したよ。
森村泰昌は自分を作品に登場させる、という作風を貫き通している。
今回、アーティゾン美術館から出されたお題は、青木繁という画家だという。
青木繁の作品に、森村泰昌が入り込んだ作品になるんだろうな、と予想できる。
問題は、SNAKEPIPEが青木繁をほとんど知らないことだね。(笑)
青木繁について調べてみようか。
1882年福岡県久留米市生まれ。
16歳で単身上京、18歳で東京美術学校(現在の東京藝術大学)に入学。
卒業後、恋人と友人2名で千葉県館山市に滞在し、その時制作されたのが代表作とされる「海の幸」だという。
1911年、28歳の若さで肺結核により死去。
夭折した画家だったんだね。
「海の幸」は美術の教科書に載っていたような気がする。
ROCKHURRAHは、青木繁が登場する「らんぷの下」という漫画を読んだことがあり、ある程度の知識があったらしい。
漫画の題材にもなるほど、有名とは!(笑)
森村泰昌は、どんな作品を見せてくれるんだろうね?
キレイな青空が広がっているけれど風が冷たい日に、ROCKHURRAHと日本橋に向かう。
道を歩いている人は少なめだったけれど、美術館前には開館を待つ人がちらほら。
「印象派 画家たちの友情物語」が同時開催されているので、もしかしたらそちらを目当てにしてるのかもしれない。
10月から開催されている展覧会なので、多少はお客さんが少ないかもしれないという淡い期待は裏切られ、会場は混雑していたよ。
写真撮影OKなので、たくさん撮らせてもらおう!(笑)
展覧会は『序章 「私」を見つめる』から始まる。
今まで絵画の中の人物や、実在の人物に扮した作品を発表している森村泰昌らしい、青木繁の自画像に成り切っている作品がこちら。
青木繁の自画像に光が反射してしまい、見づらくてごめんなさい。
ポーズの取り方や、帽子などの小物、背景に至るまで完成度高いよね!
青木繁の自画像は1903年の作品だというので、21歳の時に描いているんだね。
絵画だけにとどまらず、青木繁本人にも迫る森村泰昌。
左が青木繁の写真で、右が森村泰昌の成り切り版ね。(笑)
こちらも衣装や髪型、メガネなど、よく揃えたと感心しちゃうよ。
アーティストというよりは、モノマネ芸人みたいだよね。(笑)
第4章では、この扮装で青木繁に成り切り、演技まで見せてるから驚いてしまう。
森村泰昌は役者として映画に出演していることを鑑賞後に知って、納得しちゃったよ。
第2章では青木繁の作品を基にしたジオラマが展示されていた。
造形したのは別の人で、着色したのが森村泰昌だって。
画像は「海の幸」の背景部分なのかな。
作品はかなり小型で、ジオラマが10点程並んでいたけれど、意味不明だった。
一応撮影しておこうと撮っておいて正解だったかも。
今になって意味が解ったからね。(笑)
もう少しあとで解説しようかな!
森村泰昌の作品制作プロセスを展示しているコーナー。
ここで突然女装姿の森村泰昌が登場するんだよね。
序章から鑑賞しているけれど、全くそんな作品には対面してないんだけど?
自分の顔を組み合わせて構図を決めている様子が、スケッチやコラージュで展示されている。
SNAKEPIPEだったら、自分の顔だらけって戸惑うけどな。(笑)
続いては衣装展示コーナー!
なんでしょ、このミニ・スカートばっかりの衣装は?
60年代後半から70年代の雰囲気だよね!
大好きなバンド、The B-52’sが着てそうじゃない?
森村泰昌、まさかこの衣装身に付けてるのかな!(笑)
次のコーナーに、急ぎ足になって進むSNAKEPIPE。
『「ワタシ」が「わたし」を監視する』というビデオ作品が面白かった。
12分割されたモニターに、監視カメラの映像がランダムに流れているんだよね。
それぞれの画面に、森村泰昌が写っている。
化粧しているシーンや撮影のためのポーズをとっているシーン。
右上は、まさかのメイドさん?(笑)
第2章では、森村泰昌の舞台裏を覗いているような展示が多かったね。
『第3章 M式「海の幸」変奏曲』に来て、第2章の意味を理解する。
横幅280cm、縦幅120cmという大型作品がドーンと展示されている。
その数10点!
まずは青木繁の代表作である「海の幸」の完全実写版ね。
「海の幸」には10人の人物が描かれているんだけど、その全員を森村泰昌が成り切ってるんだよね。
こちらが青木繁の「海の幸」。
全裸の男たちが、漁で仕留めた獲物を担いでいる。
大型の魚はサメなのかな?
比べてみると、森村泰昌が忠実に再現していることが分かるよね。
ちなみに真ん中辺りに見える白い顔の女性(?)は、恋人を描いていると言われているらしいよ。
青木繁の完全模写で終わらせないのが森村泰昌!
明治時代から21世紀までの世相を反映させた作品を、「海の幸」の別バージョンとして発表してるんだよね。
ここで前に観たコラージュや衣装がお目見え!
この辺りから森村泰昌の真骨頂が始まったよね。(笑)
なんだか嬉しくなって、顔がニヤニヤしてしまったSNAKEPIPEだよ。
「海の幸」発展形の中で秀逸と感じたのは、この作品。
60年代や70年代のデモ隊を表現しているんだろうね。
旗や角棒の持ち方、中央付近に女性を配置するところなど、素晴らしい!(笑)
「海の幸」を踏襲していながら独自の路線として作品化していて見事だよ。
上に載せた「世相版」とは別格の出来だね。
10点展示されていた中で1番かも!(笑)
別の意味で1番だったのは、こちら!
んも〜、森村泰昌、いいわぁ!(笑)
思わずプッと吹いてしまった。
現代の世相ということになるのか、メイドさんやら女子高生がいるよ。
このメイドさんが、監視カメラの時に出演していたんだね。
登場している人数が10人ということだけが「海の幸」と同じで、あとは森村泰昌の好き放題。
きっとこの扮装がやりたかったに違いない。(笑)
この作品が、まさに今なんだね。
コロナの影響がなかったら、マスク姿の人物に扮することはなかったはず。
医療従事者と思われる2人には、どんな物語があるんだろうね?
靴を手にしている左側の意味がよく分からないよ。
そして第2章で鑑賞したジオラマが、これらの作品の背景だったことが解った。
あんなに小さいジオラマと、森村泰昌の実写が組み合わされて一つの作品になっていたとはね! (笑)
30年以上前から知っていたアーティストだけれど、展覧会を鑑賞したのは初めてのこと。
最初はちょっと地味目だと思っていた作品が、最終的に「M式」になっていて楽しかった。
作品を観て笑うってなかなかないことだからね。(笑)
そして30年以上「私」を見つめ続けている森村泰昌の創作意欲にも感心だよ。
現在70歳の森村泰昌。
まだこれからも色んな扮装を見せて欲しいね!(笑)