【ロスト・ハイウェイのトレイラー】
SNAKEPIPE WROTE:
2000年より前のこと、自分でHPを制作し、例えば写真作品を発表したり、観た映画の感想を書き連ねていたことがある。
あの頃はまだホームページビルダーを使ってたりして、恥ずかしいページだったんだよね。(笑)
もうどこにも残っていないことを望むなあ。
その時にも当然のように敬愛するデヴィッド・リンチ監督の映画について書いた。 「ブルーベルベット」について、かなり真剣に感想をまとめたっけ。(遠い目)
ROCKHURRAH RECORDSのブログを開始してから、リンチの様々な話題を取り上げているけれど、映画についてはほとんど書いていないことに気付いたよ!
こんなに長い間リンチの作品に触れていながら、なんたる失態!
これから少しずつ、リンチ作品を振り返って紹介していきたいと思う。
「ロスト・ハイウェイ」(原題:Lost Highway 1997年)
「マルホランド・ドライブ」(原題:Mulholland Drive 2001年)
「インランド・エンパイア」(原題:Inland Empire 2006年)
上記の3本は「こっち」と「あっち」というような複数の世界を行き来する映画だ。
リンチは「イレイザーヘッド」より前から夢想シーンを織り交ぜた映像作りをしているし、シュールな映画は特にこの3本だけということはないけれど、ここ最近の3部作として扱っていきたいと思う。
今回は3部作の1番目「ロスト・ハイウェイ」について書いていくことにする。
1997年というと16年前になるんだねー。
割と最近観たと思ってたのに。(トホホ)
「ロスト・ハイウェイ」についてのあらすじは必要ないだろう。
妻の浮気を疑った夫が、挙句の果てに妻を殺す、という話だからね。
えっ、乱暴過ぎ?(笑)
Wikipediaに冒頭部分などの記載があるので、そちらを参考にされるとよろしい。
SNAKEPIPEは気になった部分だけを紹介していくつもり。
自分のためのメモみたいな感じかな。
それでもネタバレになることもあるので、観てない方は注意して下さい。
リンチの映画には必ずといって良い程登場するのが異形の役者。
「ロスト・ハイウェイ」ではロバート・ブレイクがミステリーマンを演じている。
白塗りメイクでまばたきしないまま話をする、かなり不気味な存在!(写真左)
そのままでも充分異形なのに、逆光で見えない妻・レネエの顔が、いつの間にかミステリーマンになっているシーンがあるんだよね!
右の写真なんだけど、ロン毛のヅラを被って、女装よ!
旦那であるフレッドが「ヒィッ!」と声を上げるんだけど、これはかなり怖いよね。
どう、こんな人が隣に寝てたら?(笑)
ミステリーマンの正体は、人によって解釈があると思うけれど、やっぱりフレッドの妄想とか想像の産物ということで良いように思う。
ラスト近くでミステリーマンがフレッドに何やらゴニョゴニョと耳打ちする。
この耳打ちっていうのは、リンチファンにはお馴染みだよね。
「ツイン・ピークス」でローラ・パーマーがクーパー捜査官に耳打ちする、あのシーンね。
今、Wikipedia読んで初めて知ったけど、クーパー捜査官のフルネームって
「デイル・バーソロミュー・クーパー」っていうんだね?
バーソロミューといえば、バーソロミュー・くま!
もしかしてクーパー捜査官の名前をもじったのかな?
話が脱線してしまった。(笑)
ミステリーマンは耳打ちしたあと、すっかり画面から消えちゃうんだよね。
直前まで持ってたピストルも、いつの間にかフレッドの手に渡ってるし。
それ以降は登場しない。(この表現で良いのかは疑問だけど)
「自分なりの解釈で記憶する」と話していた、フレッドの記憶にはもう出てこない、ということで良いのかしらね。
解釈が人それぞれ違ってくるだろうと思われる、もう一つはビデオテープ。
何者かによって届けられる謎のビデオ・テープは、最初はフレッド宅の外観だけを写した「不動産屋よ、きっと」レベルの軽いものだった。
一番最後に出てきたのは、上の画像のような凄惨な殺害現場。
サブリミナルのように、パッパッと画像が移り変わるので、何度も静止させながら確認すると、完全に上半身と下半身を真っ二つにされ、手足がバラバラに切断された現場を観ることができる。
カメラに向かって泣きながら大声を上げる血まみれのフレッド。
どうあがいても、このビデオが証拠で有罪判決間違いないでしょう。
ところで、このビデオテープは本当に実在してたんだろうか?
SNAKEPIPEが大好きなシーンは、ミスター・エディことディック・ロラントが交通ルールを守らないヤツをコテンパンにやっつけるところ。
後ろから来た車が煽ってきた、というのが怒りの理由。
更に追い越して行く時に、中指立てるポーズで挑発してきたところで、キレ・モードにスイッチオン!
スピード上げて前の車を追いかけ、後ろから追突すること数回。
銃を突きつけ、運転手を引きずり出し、殴る蹴るの暴行を加える。
これだけなら普通なんだけど、ここで説教するのが面白い。
「おまえみたいなバカのせいで昨年は5万人事故で死んでるんだ!」
なんて非常にマトモな演説を、強面の人が言うパラドックス的な感覚。
ここらへんがリンチの言う「ハッピー・バイオレンス」なのかもしれないね?
キレるキャラクターは、「ブルーベルベット」のフランク・ブースこと、デニス・ホッパーが秀逸だったよね。
ディック・ロラント役のロバート・ロッジアも、かなり良い味出してたね。
フレッドの妻であるレネエ(もしくはアリス)は、ポルノ女優だった!
そのポルノ映像が上の写真なんだけど、ここだけカットしてみると、マドンナに見えてしまうのはSNAKEPIPEだけかしら?
ディック・ロラントと、いかにも不健全な商売してます風の男・アンディは、ポルノ映画やスナッフ系のビデオを制作・販売していたようだ。
そこにレネエも加わり、結婚後も彼らとの関係を断ち切らなかった。
クラブで演奏をするのが生業の夫が外出すると、レネエはかつての男達に会いに出かける。
レネエの本来の姿は、フレッドの妻ではなかったのかもしれないね。
夫婦間の冷めた会話や態度、視線の動かし方は、全然フレッドを愛してるようには見えないからね。
どうしてフレッドとレネエが結婚したのか、馴れ初めを聞いてみたいよね!(笑)
ディック・ロラントとアンディが制作していたビデオを、皆で酒を飲みながら鑑賞しているシーンがある。
そのビデオは、今だったらR指定がされてしまうような内容なんだけど、その中にマリリン・マンソンが出てるんだよね。
それが上の写真!
マリリン・マンソンはこの映画のサントラにも「I Put A Spell On You」で参加していて、「アイラブユーーー」とヒステリックに叫んでる。
そんな風に愛してると言われたら、相手は逃げるわ!って感じね。(笑)
多分これはスナッフ系のビデオだと思うので、リンチファンからみると羨ましい限り!
リンチの映画に死体で出られる、もしくは殺される役をやるっていうのは憧れだもんね。(←解ってくれる人はいると思う)
上はラスト近く、フレッドが逃走を図ってる時の映像の静止画像。
流して観てる時には、フレッドの顔がカクカクしてたり、歪んでいたり、目が素早くあらぬ方向を見たりして精神や肉体が崩壊していく様を見ている気分になる。
実際、その時のフレッドは妻殺しのみならず、他に2人を殺し追われている身だから、壊れていくのは仕方ないのかもしれない。
静止画にして気になったのは、上の写真の口と、またまた登場のフランシス・ベーコン!
左の絵は口だけの部分なんだけど、良く似てるよね。
「ツイン・ピークス」の時にも、叫ぶ口を映像として取り入れていたリンチだけど、今回は歯がガタガタになってるよね。
これはもうフレッドではない、他の何者か、だね。
「Who are you?」ってミステリーマンにも尋ねられてたもんね、フレッド。
フレッド/ピート、レネエ/アリスの入れ替わりや、「ドグラ・マグラ形式」の作り、そしてミステリーマンやビデオテープの存在については、例えばリンチ評論家の滝本誠氏などが詳しく論じてくれてるから、SNAKEPIPEみたいな素人が発言することもないだろう。
「謎は謎のままでいい」
というリンチの言葉通り、シークエンスの羅列として楽しめば良いと思っている。
2007年5月の記事「かもめはかもめ、リンチはリンチ」に、少しだけ「ロスト・ハイウェイ」について書いていたSNAKEPIPE。
リンチは実際に瞑想をしているし、夢と現実の境がないような映像が得意なので、支離滅裂で筋が通ってないストーリーでも何の問題もなく提示してくる。
リンチの夢想の世界をすべて理解なんてできないのは当然だろう。
すでに6年前、なんとも簡潔に感想を要約して書いてたね。(笑)
それをもう少し掘り下げて書くことができて、良かった。
また日を改めて「好き好きアーツ!」の特集として、リンチの迷宮系3部作第2弾「マルホランド・ドライブ」を書く予定である。
今からとても楽しみだ。